Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

昭和51年度

1.騒音、振動の許容基準に関する調査研究(振動視覚)(3年計画第2年度)

                               担当者 神田 寛
 2年度における松平式振動試験機を使用した人体加振または視標加振による振動と視機能の実験的研究である。初年度の実験は予備実験であり,姿勢の不安定,足またはでん部をとおして頭部に伝達される振動量の個人差,眼の疲労など実験条件の設定上多くの問題点があり,振動と視覚の関係の機序の検討のむずかしさと,またこの機序が明らかにされないと基準を検討する手がかりが得られないことが痛感された。
 本年度はこの振動をうける眼球がどのような機序によって視力の減衰を生ずるかという問題に重点をおいて結論を得ることができた。
 第3年度にはこの新しい知見を基礎にして,本来の目的である振動の許容基準の検討に発展させる考えである。
 今回得られた結論としてつぎのことがいえる。
@視標の上下方向に変動して見える変動巾を一定になるように人体に上下方向の振動を印加した場合,すなわち5mの視標距離において1.5cmの振動巾(3mil line),1cmの振動巾(2mil line)ならびに0.5cmの振動巾(1mil line)において視力は12Hzから50Hzにかけて段階的に視力は減衰する。3milの場合には視力1から0.5に低下する。
Aこの現象は頭と眼球の関係において眼球の共振周波数が30Hzにあることが振動理論により明らかにされた。またこの眼球の共振によって距離に関係のない視角変動巾となる。
B5mの視標距離における3mil lineを生ずる加振の状態で0.3mの近点視力を測定し,両者の視力減衰率の比較から,0.3mでは頭部の上下方向の変位の影響でmil値は低周波域程3milよりかなり増大し,視力の減衰は著しくなる。したがって遠距離視力と近距離視力は,同じ人体加振の場合でも異なることがわかった。
 またそれぞれの条件がmil値を測定することによって視力の減衰の傾向が推察されることがわかった。
C視標加振の場合の視力減衰の傾向を把握し,人体加振の視力減衰の傾向と比較検討した。
視標加振の場合は約4Hzまたは6Hzにおいて変動する指標が融合して見え,この周波数以上では視力の減衰がない。また視標は上下方向の直線的な変動である。人体加振の場合30Hzにおいてこの融合が見られ,視標は直線的な上下変動ではなく,X型に見えるなど複雑に変動して見える。
Dその他,アイマークレコーダにより視標を追う眼球運動であるところの飛越運動を測定し,2Hz前後まで飛越運動が認められた。
 

2.超自動化船に乗組む船員の労働と生活に関する研究−(新しい船員職業の設計 第二部 船員のキャリアーディベロップメントに関する研究)(2年計画第1年度)

                        担当者 大橋 信夫,青木 修次
 将釆の魅力ある船員職業の具備すべき条件として,@職務,役割を順次展開させていけること,A職務・役割・技術に関して乗組員相互間に共通性があること,B職務・役割・技術の内容や資格に関して特殊性を減少させ,関連産業・陸上産業とのかかわりをもたせること,C教育・訓練を受ける機会が多いこと,の4点を,我々はこれまでの研究のなかから指摘した。すなわち,海事教育機関の教育を受けたとしても,必ずしも限定された職域のなかで職業生活を展開する必要はなく,むしろ,より広い職域のなかで,より豊かな職業生活の展開(キャリアーディべロップメント)が可能であるようにしてゆくべきと考えている。
 そこで今年度は,このキャリアーディペロップメントを積極的に可能とする方法を見出してゆく第一歩として,まず,これまでの海事教育機関を卒業した人達が,その後どのような職業生活を展開しているか,職種による差異,年令による差異,企業環境による差異,などはどうなっているかについて,ここ10数年間の堆移と現状を把握することに努めた。未だ充分な分析が終了しているわけではないが,将来の船員職業を設計してゆく上で興味ある傾向がうかがえるので,一層の研究をすすめる必要があると考えている。
 

3.積載自動車排気ガスによる船員の健康と船内環境改善に関する研究

                        (昭和48,49,50年度のまとめ)
                              担当者 久我 昌男
 本題に関する対象船をカーフェリーと自動車運送専用貨物船に大別するとカーフェリーでは,平水,沿岸,渡島,海峡に分類し,自動車専用船では外航,近海の2種類になる。
 排気ガスの人体影響は船体の大小による積載車輌数の多少によるものでなく排出ガスばくろ機会すなわち荷役機会の多少にあるものであるから,平水,渡島,海峡フェリーの如く1日10航海から最少片航海を行なっているフェリーの排気ガス影響こそ注目されるべきであろう。
 自動車専用船の排気ガス汚染は車輌積込荷役時の環境に応じ排気ガス汚染は強いことになるが,荷投の大部分は陸上担当者によって行なわれており,次のばくろ機会までは,近海でも1〜2昼夜を経過しており,ばくろ機会によるその回復は充分である。
 排気ガスの船員健康におよぼす重要問題は従来いわれている一酸化炭素等の排出有毒ガスの急性中毒を無視するものではないが,如何なる構造のものにおいても有害性の強いものにディーゼル車輌からの排出煤塵があることは重要である。至輌煤塵は呼吸器内で,アルデヒド,窒素酸化物,鉛粒子,砂塵等とともに肺,その他に悪影響をなし塵肺症はもちろん閉塞性の呼吸器障害,ぜんそく等の原因になる。
 我々は一酸化炭素について船鎗内環境調査を行なったが調査船の大部分は有害な汚染値をしめしていない。特に換気装置の効果は一酸化炭素については良好で,我々が報告している構造の船舶においての一酸化炭素の汚染値は低かった。
 一酸化炭素に関する調査においては意外に大きな値を検知し得た例であっても一酸化炭素許容値に比すればはるかに少ないことになるが,一酸化炭素検知値の大きい船舶における乗組員甲板部員では尿中鉛量が60μg/?を超えるも極くまれに認められていることは重要である。
 車輌荷役について換気装置の有効利用について無関心なものが多い。このため折角の換気装置が取扱い不良のため換気不良になっている例がみられる。報告書には荷役の手段により,一酸化炭素汚染をより減少せしめ得ると考えられるので,その方針について報告している。なお船鎗内における一般荷役に用いられるホーク車,トレラーから排出する煤塵汚染は注目せねばならぬ汚染原因である。また平水航路においては中間程度まで汚染環境は航海毎に増加していることや,フェリー全般に航海中出帆直後の12時間以内は換気装置が運転が中止されている場合が一般的であるが,この状態は最盛汚染時とは大差なき排気ガス汚染値を見ることがあるので注意すべき点である。
 

4.技術革新に対応した船舶司厨のあり方に関する開発研究(3年計画,第2年度)

                              担当者 小石 奉道
 将来の船内給食の方式とそれに対応する司厨部船員のあり方を検討するのに,給食方式,調理作業,知識技能,教育,資格等々の根拠となるものは,実施料理,献立とそのサービス方式である。この観点から献立・料理の分析にとりかかった。
1.外航船実施献立の料理分布と評価
 外航船25集延1120日分の献立から単位料理の頻度分布を明らかにした。各船の献立について,単位料理の種類数,回数,調理法,調味法,難易別の分布が得られたので,その分布から5段階の評点による相対的評価を試みた。
2.主材料別調理法別体系と頻度分布
 外航船献立に一般料理書を資料とした料理を加えて,主材料別に調理法別の体系を明らかにした。同時に外航船の頻度分布を加味した資料を作成した。比較的やさしい(あまり専門的でない)料理が主材料別にまとめられたので,今後の調査研究をさらにすすめ得ることになった。
 

5.海水による蒸溜水の飲用清水化の開発研究(2年計画,第2年度)

                              担当者 久我 昌男
 ラット120頭を用いて蒸留水群,ミネラル水群,水道水群の3群に別けそれぞれの水を6ケ月間与えて実験した。
 結果は動物に影響したと思われる症状としては成育が蒸留水群ではおくれる,全血比重の値は低下した。
 動物体の生体反応はもちろん動物体の生理抵抗をしめす血球数の白血球数は増加した。
 血色素は減少した。尿の分量を知る尿比重からみると尿量は増加して尿水素イオン値はアルカリ傾となった。
 飲水量では蒸留水群では実験前期,中期、後期と次第に減っているが,対象にした水道水群に比すれば多くのまれている。
 動物の症状としては蒸留水群,ミネラル添加蒸留水群ともに7週令−11週令の間に神経質な行動と腹張り,軟便の症状が認められたが,水道水ではそれらの症状はみられない。以上の結果を得たのであるが,さらに全頭屠殺解剖を行なった。生化学検査結果においても蒸留水の反応は明らかであるが病理学的検査とともに究明中であるが本実験によって蒸留水にミネラル投入の添加物はもちろん添加成分量についてさらに究明実験を要することを痛感した。
 

6.海上労働災害の原因究明に関する調査研究(初年度)

                               担当者 服部 昭
 本調査研究は,初年度目であり,海上労働災害の原因究明をするためには,いかなる調査研究を主体にしたらよいか,方法論的課題を主体にして行なった。そのためにいままで行なわれてきた海上労働災害の調査研究にとどまらず陸上の各種産業で行なわれてきた方法論を文献研究したが,原因究明するためには,いまの段階では,発生した労働災害について,あらかじめ定められたカテゴリーに強制的に分類するのではなく,なるべく詳細に記述することが最良の方法と思われる。そこで,某根拠地の沖合底曳網漁業を対象にして事例調査を行なった。今後さらに,事例の蒐集とあわせて,方法論的検討が必要である。
 

7.船員福祉の理念とその具体策に関する調査研究(3年計画,第2年度)

           担当者 篠原陽一,青木修次,服部 昭,小石泰道,広田弥生
@海運企業の船員家族対策の調査
 海運企業が行なっている企業福祉と福利厚生のなかにあって,船員家族対策はきわめて特異にして重要な役割をもっている。その実態については,1968年に実施されたことがある。そこで,今回はその後の変化と現状を調査し,個別企業と公共団体とにまたがっておこなわれている船員家族対策の調整や,最近における船員の労働,生活条件の変化のなかでの船員家族対策のあり方を検討する基礎資料をうることとした。
 海運企業の船員家族対策に関する調査は,昭和52年1月,外航・内航の4船主団体加盟の180杜に対しておこない,145杜から回答をえた。調査項目としては,生活機能促進のための対策−船員家族対策,家族呼び寄せ費,船内宿泊・便乗移動,余暇対策,生活援助のための対策−船員家族相談,被災時の応急措置,住宅貸付金,その他貸付金,社内預金,親睦・意志疎通−船員親陸会,意志疎通のチャンネル,船舶動静通知,広報紙の送付,家族会である。この10年間の変化としては,住宅貸付金や家族会の普及が,とくにめざましい。
 今後の船員家族対策を検討していくにあたって,船員宿泊施設をめぐる状況が参考になった。
宿泊施設は,その施設数としては増加・減少が相半ばしている。その利用率は,若干向上しているものの,それは教育・研修者の利用が増加したことにあり,本来的な面会のための利用は減少している。その利用率は,入港地の地方分散,停泊時間の短縮,休暇の増加にもよるが,施設自体にも問題がある。そこで,海運企業は宿泊施設の高級化をみとめつつも,公共施設の整備拡充にかなりの期待をよせているようである。すなわち,最近における生活様式の変化と休暇日数の増大のなかで,それぞれの海運企業が独自的に特徴のある船員家族対策をうちだすか,そして公共施設をどのように利用していくかが問われているようである。
A船内レクリエーションシステムに関する調査
 今後の船内レクリエーションのあり方を検討するために,船内レクリエーションの実態を調査した。調査は,船内レクリエーション施設とその利用および船内レクリエーションの志向について,某杜所属船を対象に実施し,31隻の有効資料を得ることができた。それとともに,船内余暇の実態(船内レクリエーション施設を利用したときも含めて)を就航航路,船種,レクリエーション施設状況等の要因を加味して11隻を選定し,各々30日間にわたって実施した。(延有効調査日数9,420人日)
 船内レクリエーションの状況は,船内レクリエーション施設の状況とのかかわりがみられるとともに,就航航路によっても異なる様相をみせているが,このような物的条件とともに,船内で自主的に作られるグループ活動の有無によっても,単にグループ活動のみならず,その波及効果が大きいようである。

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