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財団法人海上労働科学研究所
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研究調査の概要昭和53年度1.衝撃、振動、動揺の評価基準に関する研究(3年計画初年度)
担当者 神田 寛
高速艇の乗組員に衝撃振動によって腰痛が多発するといわれている。またISOでは,高速艇,トラクターらの乗組に対する衝撃振動が,健康上の理由から問題とされ,国際基準としての衝撃振動の許容レベルが検討されている。そこで,第一は,高速艇上の波浪にともなう衝撃振動と人体応答との関連で,どのような方法で衝撃波形の解析を行えばよいかである。第二は,高速艇乗組員の腰痛発症の実態の把握である。
本研究は三年計画で実施されることになっているが,初年度実施されたものはつぎのとおりである。
(a)高速艇として最もきびしい条件のデータが容易に得られる,海上保安庁の高速艇(65トン,速力25ノット)を選んで実船計測した。
(b)この実船計測による衝撃振動を,船舶ぎ装品研究所の実時間振動分析機で解析した。
この解析では,脊柱破損と関連のあるDynamic Respons Index(DRI)といわれるISO提案の評価指数,作業能からみた動揺の評価指数,ならびに衝撃感覚からみた評価指数を求める方法を検討した。そして人体影響を評価するための指標を衝撃振動波形から求める一つの方法を確立することができた。
(c)腰痛発生の原因は,直接脊柱破損につながる衝撃波によるとは考えられないようである。むしろ姿勢の不安定による筋疲労の蓄積が,主な原因ではないかと考えられる。今後の検討にまつところが多い。
(d)アンケートによる腰痛実態を調べる方法を検討した。瀬戸内海の旅客高速艇上(約30トン,速力23〜26ノット),小型フェリーの乗組員を対象に予備的に調査した。約39%の腰痛症がみられたが,筋・筋膜性であり,慢性の筋疲労の蓄積が腰痛発生の主要な原因ではないかと思われる。
2.超自動化船に乗組む船員の労働と生活に関する研究(2年計画第2年度)
(新しい船員職業の設計)
担当者 青木 修次
第1年度においては,船員職業の基本的設計について検討したが,今年度は,船員のキャリアーデベロップメントについて調査を実施した。
(a)船員の社内勤務形態について
大手4社所属船員約1,500人について,過去10年間における,職業経歴を勤務型態別に調査した。本支店勤務,出向・派遣経験者は,船機長,一航機士で8割以上,二,三航機士で5割を超え,通信士では5割程となっている。一方部員でも各職とも5割を超え,陸上勤務はすでに船員職業勤務型態の一部に組み込まれている。これら陸上勤務型態は各社とも48年ごろから急増し,自社船の減少とともに陸上勤務者が増えてきたことを物語っている。
(b)船員教育機関出身者の職業経歴について
船員教育機関である商船大学,商船高専,海員学校の各卒業者がどのような職業経歴を経ているかについて戦前から昭和48年卒業者まで約5年毎に対象をえらび約2,000人について追跡した。整理方法としては,卒業直後の入職状況,52年時点における就業状況,入職時と現在時(52年時点)との関連,転職状況などを中心に整理,検討した。商船大学卒業者の場合,66%ほどが海運会社に入職したが,52年時点では46%が船員を継続しており,20%ほどが他出している。
高専卒者の場合77%が海運会社に入職し,52年時点では46%が船員継続し,30%強が他出している。また,52年時点における商船大卒者の就業状況は,海運会社46%(高専同じ),公務員12%(高専9%),海運諸団体2.5%(高専0.6%),海運関連会社20%(高専15%),非海運業15%(高専14%),不明,その他4%(高専16%)となっている。
3.将来の船内食料給与の方法研究(2年計画第1年度)
担当者 小石 泰道
船内の給食方式,内容,食料,調理作業,担当者の資格・教育等すべての検討資料の基礎に料理と献立がある。過去3年間の調査研究にひきつづいて,本年度は調理工程作業測定法と調理工数算定法をまとめた。
昭和35年以来実施してきた測定法によるデータにより,船内調理における稼動分析をまとめた。調理作業の目的別分類により,準備後始末作業,主体作業,余裕時間の構造を明らかにした。
さらに調理の主体作業を構成する下ごしらえから盛付までの調理工数の目安表を作求し(標準化),これを用いて外航船に出現する主要料理460種について原材料からの工数目安表を作成した。
これらの資料は,コックの定員算定,調理工数の算定,食材料の加工計画,献立や給食方式の変更計画,船内での実行献立の作成等の基礎的資料として有用であろう。
4.海水による蒸溜水飲用清水化の開発研究(2年計画・1年延長)
担当者 久我 昌男
蒸溜水の製造法には,常圧製法とイオン交換樹脂製法の2種類がある。それらの蒸溜水にミネラルを添加した場合の比較検討も加え,つぎのような基礎的実験を実施した。
(1)ラットによる有効なミネラルの処方の再検討。
(2)イオンポテンシャル度測定。
(3)ミネラル各成分の溶解実験。
(4)水質一般検査
(5)放置の状態における経日変化。
その結果,蒸溜水の有害性を実験から指摘し,その有害性をミネラル添加によって除去する見とおしを得た。
5.船員の心肺機能に関する調査研究(3年計画・第2年度)
担当者 久我 昌男
前回,沿岸フェリー(乗組員約20名)3隻を対象船として,レントゲン胸部直接撮影,スパイロメトリーによる秒率,努力性肺活量等による心肺機能検診ならびに血圧測定を実施した。
今回はじん肺法改正となり,スパイロメトリー式では結果推測に正確性が認められないことになった。そこで今回は,法で定めたスパイロメトリーにフローボリウム曲線を求める方法を採用することにした。
対象船は沿岸フェリー2隻の40名前後の甲板部職部員,その他船艙で働く他の部員である。
結果は,肺レントゲン所見では0.1%に相当するものが船艙内作業者に2名認められた。また,パーセント肺活量減少,1秒率減少,ヴィドットが規格より少ないものをみとめる。やはり前回と同じくフェリー船員の心肺機能についてはその原因を検討する必要がある。
6.海上労働災害の原因究明に関する調査研究(毎年度)(転倒事例研究)
担当者 服部 昭
諸外国における漁船員の労働災害防止対策の現状を把握することを目的として,今年度は,イギリスおよびドイツを中心に文献の蒐集を行った。一方で,災害事例の蒐集を昨年度に引続いて実施した。
7.船員福祉の理念とその具体策の調査研究(3年計画1年延長)
担当者 篠原陽一,青木修次,服部 昭,小石泰道,広田弥生
昭和50年度より4年にわたり,理論的検討をはじめ,中高年退職船員,船員家族対策,船内設備利用,船員家族の状態と意識,大都市港湾福祉などについて実態調査をつづけてきた。
今年度は,最終年度として今後の船員福祉のあり方を総括するとともに,中高年退職船員,船員家族,乗船中の余暇休暇中の余暇に関する具体的な施策について,若干の提言を試みた。また,最近,「長期休暇」生活が定着したとみられるところから,1都3県および石川県富来町居住船員の休暇中の生活時間,生活行動調査を実施し,1972年調査と比較した。
今後の船員福祉の方向づけについては,すでに昭和50年度報告においてあたえており,それを確認するようなかたちで,官労使福祉関係者が取上げ,議論している。そのかぎりで,今後の方向づけの論点はすでに整理されつつある。しかし,最近の海運産業は海外進出を進めており,また長期不況に陥っているが,それは船員福祉に大きな影をおとしている。その反面,失業,余剰船員が発生し,また船員の「長期休暇」=余暇欲求が増大し,福祉ニーズが強まっている。したがって,今後の船員福祉の方向づけは,そうした矛盾の解決としてあたえられていることをあきらかにした。
最近の船員の休暇生活は,1972年調査と比較すると,生活時間構成において行楽・旅行,外飲食といった金銭消費的な行動が減少し,スポーツ,読書・学習といったリクリェートな行動が増加している。そして,職業的仕事(研修会)が「長期休暇」に入ってきており,それによって休暇にタクトがみられるようになっている。生活行動の活動領域や対人領域については,大きな変化はみとめられないが,休暇生活意識のうえでは「長期休暇」を一つのまとまりある期間として受止め,堅実かつ計画的にすごそうとする考えが顕著にみられるようになった。
8.自動化船船内職務実態調査
担当者 大橋信夫,青木修次,服部 昭
船員制度近代化調査のため,運輸省(船員制度近代化対策のための調査),日本海技協会(船舶の航行安全に関する調査研究),船員制度近代化調査協議会(船員制度近代対策のための調査)から委託され,実船調査(外航コンテナー船,外航タンカー,内航コンテナー船,内航貨物船,近海材木船,外国コンテナー船),訪船調査,海外調査,及び同関連調査を実施し,その結果を,船員局の船員制度近代化調査委員会に報告した。なお,これらの調査に関し,当研究所の研究者が直接関与したのは,内航船2隻・近海船1隻・外国コンテナー船1隻についての乗船調査であった。またこれらの調査の報告書は,前記の船員制度近代化調査委員会から次のとおり発行された。
昭和53年度調査報告,実船調査編(その1−外航船及び外国船)
昭和54年3月,B5,450頁
昭和53年度調査報告,実船調査編(その2−近海船及び内航船)
昭和54年3月,B5,305頁
9.船員の健康管理
担当者 久我 昌男
神奈川県三崎の漁船々主から,出港直前の全員に集団検診を受けさせ,潜在する疾患の発生を予防したいとの要請があった。これは,まぐろ遠洋漁業に出漁中,疾病発生のため船員を帰国させざるを得なくなるケースが多く,その経済的損失が大きいということからであった。当所では水産高校練習船2隻の帰港時検診をここ数年間継続した成果をあげてきたが,その要領を応用して,これらの集団検診を実施した。
施行船は6隻で,受診者120名,人間ドッグ方式で検査した。結果としては,漁船員においては骨々格糸の疾患が多く,なかでも作業性の腰痛が頻発する。つぎに注目されるのは,心疾患であって心要因における有所見者はまれではない。さらに糖尿の多いことは商船のそれによく類似している。脂質代謝については意外と良好で,この点については商船々員よりはるかによい。近年,船員の腰痛問題が重要視されているときだけに,この方面の資料としては貴重なデータを得ることができた。
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