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財団法人海上労働科学研究所
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研究調査の概要昭和55年度1.漁船員の腰痛の現状とその予防対策に関する調査研究(2年計画第2年度)
担当者 久我昌男,村山義夫
遠洋まぐろはえ縄漁船員の腰痛について,三崎港に入港する4隻62名の船員に対し調査を行なった。
現状は遠洋漁場からの帰国入港時では現症あるものは5名で既往を訴えるものは40名である。
原因について,生化学的分析,レントゲン診断,問診による結果は陸上産業腰痛に比し腰痛部位は上位と下位とに隔差を以てわかれており,原因として投縄時,揚縄時の立位作業姿勢から来る脊椎管の負荷過剰ならびにまぐろ処理の前屈姿勢,冷凍庫内作業時間の低温環境が原因と考えられる。
以上のことから作業姿勢ならびに環境衛生上の対処方針について検討した。
2.衝撃、振動、動揺の評価基準に関する調査研究(3年計画第3年度)−高速艇における繰返し衝撃,振動と乗組員の腰痛に関する総合的研究−
担当者 神田 寛,村山義夫
繰返し衝撃,振動による腰痛発症と関係のある脊柱の動力学的反応指数(DRI)を航走中の高速艇において求め,船速,対船波向,波高などの種々の条件でのDRIの変化と大きさ別発生回数が得られた。これらの成績は高速艇のきびしい航海状況を示している。これに対して乗組員の]線撮影による椎体変形をしらべると,その椎体変形は陸上の重筋労と中等度の中間の労働者にみられる程度で第11胸椎から第5腰椎の全椎体にみられ,さらに第11胸椎と第1腰椎の脊柱の屈曲位置に楔状変形が多くみられるという特徹がある。このことは繰返し衝撃,振動による椎体変形であることを示している。
これらの事実をもとにして,繰返し衝撃,振動のDRIによる暫定的評価基準を提案した。縦軸をDRI,横軸を1日に受ける大きさ別DRIの発生回数とし,いずれも対数目盛としている。そしてこの基準は金属の疲労破壊の現象からヒントを得て提案されたものである。
高速艇の乗心地指数からみた検討もされているが,いずれもきびしい条件を示している。特に立位においては,全速,向波で波高が高いときはきびしく,身体の不安定を防ぐため物につかまって身体をささえ,艇の落下時にはひざを曲げるなど全身で身体の安定保持にかなりの努力を必要とした。しかしながら,腰痛アンケート調査の結果にみられるような腰痛多発は,繰返し衝撃,振動によって脊柱系に加わる過大な繰返し荷重が大きな要因となっており,脊柱をとりまく軟組織への刺激が由来しているとするのが妥当である。
対策の一つとしての防振椅子の効果について検討した結果,防振椅子上と椅子下の床のDRIにみられるように,防振椅子によってこの指数が増大され,そして脊椎変形に大きく影響することがはっきりした。これは高速艇の低振動数域の振動は,理論上防振椅子によって減衰させることはできないということである。一方では防振椅子の効果は姿勢安定に役立つし乗組員に好評であることである。したがって,このことは脊柱の変形または第12胸椎と第1腰椎を中心とした椎体の楔状変形のことを考えると,腰痛対策として十分検討し改善しなければならない重要な点である。
そのほか具体的な腰痛対策を挙げることができた。
その一つとして,高速艇乗組員を対象に腰痛予防と体力づくりの実験的検討を実施した。実験組と非実験組とをつくり,実験組には2ケ月間,作業始めと作業中の疲労回復ならびに家庭で朝と夜に腰痛の予防とその解消を中心とした体繰を行わしめ,それが健康と体力に,どのような影響をおよぼすかを非実験組との比較において検討した。その結果これらの対策を忠実に実行していけば,必ず成果が得られることが実証された。
本研究においては,日本体育大学大学院塩谷宗雄先生,井筒次郎先生の協力を得ている。
3.機関部員の騒音性難聴の実態に関する調査研究(2年計画初年度)
担当者 神田 寛,村山義夫
対象者は,海技大学MO講習生である一般商船機関部員75名と甲板部員47名,まぐろ漁船機関士20名,まき網漁船機関士26名,底曳漁船機関士28名の合計196名である。
今回の聴力検査は船の騒音暴露から離れていた期間の長い対象者をできるだけ選ぶよう努力された。評価にあたっては,三分法と四分法,ならびに労働省の労災補償保険法で平均純音聴力損失値といわれている六分法の語音域聴力損失を用いてなされた。
機関部員の聴力損失の特徴は,四分法という一般に使用されている評価法によると,陸上の騒音職場をもつ産業の成績に比べてその損失程度が軽いようである。しかしながら,C5dipにみられるような4,000Hzを中心とする聴力損失がきわめて大きいことが注目される。そして,従来余り心配されていなかった甲板部員にも程度は軽いが,この傾向が認められた。
六分法による評価によって補償の対象となる耳は,MO講習機関部員に1耳,漁船機関部員に8耳(5.5%)であった。また,C5dipにみられるような4,000Hzを中心とする聴力損失をおこしやすい機関部員,甲板部員においては,秒時計のみによる聴力検査では適していないことがわかった。
まだ資料が少ないので結論を述べることはできないが,今回の調査で予想外に聴力障害の程度が,陸上産業における騒音現場で働く者の成績と比べて軽度であったことである。このことについては十分検討してみる必要がある。
4.海運諸外国における船員の雇用制度に関する調査研究
担当者 篠原陽一,小石泰道,青木修次
資料的,時間的な制約から,イギリスについてのみ,かなり詳細に調査,分析した。第1に,イギリスにおける船員雇用とその制度の歴史について概括し,その不安定雇用の状態とそれをめぐる労使抗争,その妥協の産物としての船員常置制度にふれた。第2に,イギリスにおける船員雇用の統計的な概観を行い,非イギリス入船員の雇用,雇用量の逐年的な減少,そして若年労働力の吸収状況についてふれた。第3に,イギリス海運における船員雇用構造に関する現状を詳細に紹介し,船員常置制度の運用とその問題点をあきらかにした。第4に,イギリス人船員の入職,廃業,職業意識の実態を分析し,そのきわめて高い廃業率,会社定着に対する不安定な態度をあきらかにした。第5に,イギリス人における船員雇用とその制度の展望にふれ,シーライフ・プログラムが提唱する海運会社の船員の直接雇用の拡大について,その可能性,船員常置制度に及ぼす影響について分析した。 5.漁船における作業構造と消費エネルギーに関する調査研究
担当者 服部 昭,大橋信夫,青木修次
漁船の船上で行われる作業は,どのようなものがあるか,また,いつどの位の時間継続するのかといった作業構造の把握と,そうした作業を行なったとき,どの位のエネルギーを消費するのかを,カツオ一本釣漁船2隻に乗船して調査を行なった。
カツオ船の作業は,大きく魚群を発見するまでの静的作業と,発見してから釣り上げるまでの動的作業に分けられる。そしてその2つの作業の組合せは,いかに早く魚群を発見するかにかかわっており,1日のなかで一定していない。
加えて盛漁期になると動的作業の時間が長くなる。
このような作業実態を反映して,消費エネルギー量の変動も大きいといえる。
6.混乗船における東南アジア船員の生活行動と労働に関する調査研究
(2年計画第2年度)
担当者 大橋信夫,服部 昭
前年度に引続き,フィリピン入船員を主な対象として,その生活状況,労働意識,教育,・資格入手,入職,昇進などの実態について種々な資料の入手に努めた。
また,我が国で行なわれている混乗の方式や,それらの導入経過と評価及び将来の見通しなどに関する各方面の意見も,面接などの方法により聴取した。
これらの結果,質の良い東南アジア船員を如何に安定的に雇用し得るかという雇用問題と彼等の持つ能力を如何にしたら発揮させ得るかという管理の問題に関して,今後一層調査研究を継続してゆく必要のあること,特に諸統計や諸資料が未整備の国の多い東南アジア諸国の現状からして,腰を据えた現地調査の必要性が痛感された。
7.船員の健康管理
担当者 久我昌男
前年度にひきつづき神奈川県三崎の漁船々主から,近年多くなりつつある健康障害による出漁中途帰国者の予防のための健康管理の要請があり,今年度は出港直前の集団検診のみならず,入港船々員についても行なった。施行船は出港船3隻,入港船4集,他に毎年行なう水産高校練習船2隻の合計170名を対象とした。
結果において,最も注目されるのは循環器系とくに心臓疾患であり,治療を要するものも多い。今年度は長期出漁後の入港船について実施したため,下船中における治療の指示が有効となった。
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