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財団法人海上労働科学研究所
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研究調査の概要昭和57年度1.有害物による船員の健康障害に関する実態調査(2ケ年計画第2年度)
担当者 久我正男、村山義夫
(1)調査目的
本調査は過去においても数ケ年実施した経験があり報告書をも刊行されているが、近年著るしく増加した化学製品輸送、いわゆるケミカル輸送と称される化学製品輸送船々員の健康調査を行なってケミカル輸送船々員の健康障害について調査し、健康障害の実態を究明する。
(2)実施した調査船とその項目
調査船を2種に大別し下記の如く調査した。
小型船 多摩川繋船場 10隻26名
中型船 川崎、名古屋、神戸、岩国各港 6隻69名
特殊検診方式による健康検査
労働衛生医学方式による健康検査
各船荷役中の環境測定とその評価
(3)調査結果
運送頻度の高い小型船々員に特殊検診方式調査では一見異常なき結果を示したが、問診で肝臓機能低下者多く、尿中蛋白陽性者の発生数が多いことは有意である。
中型船では小型船に準じ運送頻度の高い船舶に有機溶剤系の刺激症状の多発を認め蛋白尿陽性者が多い。本年度の血液検査では問題ないが経年経過において赤血球減少を認めている。今後積荷との関連究明の必要がある。タンク掃除直後の船員には一時的な有害貨物の影響が明らかである。
作業状況と自覚症状
内航ケミカルタンカー乗組員の貨物による健康障害が、相当以前から懸念されていた。そこで、健康診断の実施の徹底や、それを受ける必要のある扱い品目の見直しがなされつつある。
この一連の措置が障害予防対策に活かすには、取り扱いの実態との関係について明らかにすることが必要とみられた。
そこで、昭和57年7月と11月に、在京の内航ケミカルタンカーオぺレータ17社の扱い船のうち40隻について、運航、設備、就労に関する調査を行い、そのうち22隻に訪船して作業状況と作業中のガス濃度を測定し、合わせて乗組員151名の自覚症状・尿検査を行った。
調査の結果、いわゆる有機ケミカルタンカーのほとんどは、船員災害防止協会・有害物研究専門委員会提案の29品目のうちのいくつかを扱い、これらの乗組員の自覚症状にさらに詳し検討を要する内容がみとめられた。また、荷役やタンク清掃時のガス暴露は経験的に忌避していたが、有害性や環境濃度の認知あるいは作業標準による暴露抑制対策など作業管理、環境管理の手法の確立と周知の必要性が感じられた。
2.船員の乗船中の健康管理について(1年計画)
担当者 久我正男
(1)調査目的
船主側からの希望によって題記の調査を行なった。
(2)調査方法
衛生調査票、協約検診カード、健康調査票の3種を借用又は配布回収集計を行なった。対象船主は7社で予定の1/3の回収を得て集計した。
(3)結果
1)入渠中の集団検診方式が船員手帳検診方式にとらわれているため省略のみが先行し積診の目的に欠けているばかりでなく簡単に異常なしの判定を乱発した形になっている。
2)入渠中、中高年の船員精密検査の判定方式を船員に活用できるよう改良、その他検査項目を訂正改良したカードを作成した。
3)船員の糖尿、高血圧についての特異性について説明した。
4)問診票の活用をすゝめその診断法について表示した。
3.蒸溜水の飲用障害についての調査研究(1年計画)
担当者 久我正男
(1)目的
第1回、第2回の実験動物の標本をさらに細部に亘り実験分析を生化学、病理組織学的に行ない蒸留水飲用の人体影響についてさらに究明した。
(2)実験方法
第1回6ケ月120頭、第2回45頭のラット標本、大腿骨筋肉を灰化分析を行ない、Ca、Na、Mg、K、P、Feを検出した。
肝、腎については病理組織学的検策ならびに電顕観察を行なった。
(3)結 果
1)蒸留水飲用はカルシウム、リン比を狂わせて骨質の変化を来す。
2)重要臓器の脂肪変性が認められ腎肝における影響をも推察しうる。
3)骨質中に鉄の沈着量は大きい。
4.混乗船に乗組むフィリピン船員の実態調査(1年計画)
担当者 大橋信夫、服部 昭
かねてより継続的に研究してきているフィリピン船員について、今年度は、船員教育の実態を明らかにするため、現地調査を行なった。
フィリピンには、現在全国に48の船員教育コースを設置している機関があるが、我々はそのうち、16校(7都市)を訪れて設置しているコーース、カリキュラム、施設状況などを中心に、学生、生徒の状況、就職状況などを詳しく調査した。
さらに、関係政府機関を訪れて、一般教育状況、船員教育の歴史、海技試験制度、国家試験の内容などに関する資料を収集すると共に、日本船員と混乗した経験を持つ船員及びその家族に面接して、その意識状況などについて調査した。
予算の関係で、当初の計画よりも短期間の滞在であったが、現地の人々の温かい協力によって、かなりの成果をあげることができたが、残された課題もあり、なお一層の研究の展開がのぞまれる。
5.漁船員の腰痛予防のための体力づくりに関する実験的研究(2年計画初年度)
担当者 神田 寛
腰痛が多いといわれる漁船員の、腰痛予防のための体力づくりの手段を確立することを目的としている。そのため千葉県外川町のまき綱漁船員をモデルとして、腰痛予防体操をはじめとして、漁船員の健康と体力の現状からみて必要と思われる体力づくりの対策の提案を行ない、それを実施するための指導と助言またはその効果測定を行なってきた。
実験開始で行なった健康と体力の実態調査は、健康質問調査・体力測定・裸の写真撮影による姿勢、背骨の観察・レントゲン撮影による脊椎変形調査・加速度脈波による循環機能検査などである。そして対象者80名の成績が得られた。
その中で特に注目すべきことは、第11胸椎から第5腰椎の脊椎変形が、陸上の重筋労働者と比べてもかなり多いことである。
対象の漁船員の年令構成は50代が55%、60代が23%、40代が18%、30代が6%で高年令者が多いが、それにしても40代、30代でも全員に脊椎変形がみられた。この脊椎変形の多発は、腰痛多発の原因になるとみられる。外川漁船員では腰痛を訴える者が51%であった。この脊椎変形の原因については検討中である。
運輸省の腰痛予防体操をはじめ、われわれ独自の体力づくりの対策の提案にしたがって指導をはじめてきたが、体操の内容については、日常生活のなかで短時間で、かつ簡単にできるものでないと実行してくれないので簡素化し、そしてその実行を習慣づけるよう努力しているところである。
現在、提案実施の指導、助言または一部その影響測定中であるが、これを次年度8月までつづけ、その結果の効果をみて結論づける予定になっている。
6.船員栄養指導の活動方法開発に関する調査研究(1年計画)
担当者 小石泰道
最近における外航船および内航船の食料給与と乗組員の飲食物摂取の実態を明らかにし、船員に対する公衆栄養活動の必要性とその体制について考察をした。
(1)飲食物摂取の実態資料は、外航船は昭和55年以来乗船調査の機会を得た3隻の資料を用い、内航船については、1隻の乗船調査と2社19隻のアンケート(郵送法)によった。このアンケートは、厚生省策定の簡易調査票を船員給食に向くように改正したものを用いた。
(2)食料給与量は内外航船とも平均2,650キロカロリーぐらいで、総エネルギーの量は米の消費減少にともなって減っている一方、動物性蛋白や動物性脂肪においては上限域に達している観がある。
(3)船員の喫食実態は、@給食量に対してとくに主食の食べ控えが多く、給食摂取エネルギーは平均1,600〜1,800キロカロリーの範囲であった。Aこれに間食・喫茶の個人飲食量が200〜400キロカロリーぐらいある。B飲酒量は外航船では平均400〜450キロカロリーぐらいであったが、内航船では150〜170キロカロリーと少なかった。その結果、外航船の総摂取量エネルギーが2,400キロカロリー台であるのに対し、内航船のそれは 2,100キロカロリー台であった。
(4)個人別に年令、体格、肥満度等の要素や喫食・飲酒等の実態をみると、うまくその個人に適合した摂取を示している者が少ないことが明らかである。従って成人病の予防をふくめた船員健康管理の一環として、個人別に栄養指導がなされるような公衆栄養活動の展開が期待される。
7.船員雇用の実態と制度の国際比較に関する調査研究(1年計画)
担当者 篠原陽一、青木修次
世界海運の構造変化、船員の就労体制の変化、船員雇用の国際化のなかで、海運諸国における船員雇用とその制度が、どのような状況にあるかについて調査し、日本との比較を行った。既存資料の収集と若干の質問紙調査にとどまったため、本格的な分析は今後にまたねばならない。
船員の雇用形態として、会社雇用、継続雇用、属船雇用があるが、アメリカやイギリスのような間接雇用、その他の国の直接雇用の別なく、大手船主では会社雇用が、また中小船主でも継続雇用が進んでおり、属船雇用は例外的な状況にある。それら雇用継続方式は、日本の終身雇用とちがって固定的な制度となっておらず、弾力的に運用されている。しかし、船主レベルではもとより、一国レベルであっても、優秀な船員を確保して行くには、雇用継続の制度を開発せざるをえない。ただ、最近における自国人船員の雇用縮少にあっては、間接雇用と直接雇用、雇用形態の3類型のいずれが、船員の雇用安定や優秀な船員の確保にあたって、有意な方式であるといえない状況にある。
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