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財団法人海上労働科学研究所
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研究調査の概要昭和58年度1.国民の職業動向の多様化のもとでの船員職業の社会的位置づけについて
(3年計画初年度)
担当者 篠原陽一,青木修次
高学歴・高年令化社会における船員職業の社会的位置づけを解明するため,最近の若年層の職業動向と職業意識についての文献調査,また全国4地域の男子高校生の進路選択と船員職業評価に関する質問紙調査を実施し,今後の船員給源の開発促進に関連させて分析した。
前者にあっては,最近の若年層は高学歴化のなかにあって,中学生時代から学業成績の偏差値による進路指導が徹底しているため,進路選択の形骸化が進み,職業アイデンティティが未確立となり,仕事にも余暇にも積極的な生きがいを見出しえない状況にある。こうした状況は,若年層が船員職業に流入しうる条件を絶対的に狭めたといえるが,同時に相対的には拡げたといえる。それが拡がったとはいえ,その流入が積極的な関与でないだけに,いままでにもまして定着性は低くなるとみざるをえない。
後者にあっては,船員職業は現代の高校生からみると,かつてのマドロス的古い職業イメージとして映っている。船員職業は,小学生時代にはパイロットと同様あこがれ的職業の1つではあるが,中高生時代には志向者激減していく。
また,希望ある職業との関連で職業評価をみると,“勤務条件”(労働時間,休日など)と”仕事の質”(適性,能力発揮,仕事の自律性)において極めて強くマイナス評価に傾いている。
一方,船員志向者は非志向者に比ベ”適性”,”親の反対”,”能力発揮”をより強くプラス評価しており,また職業イメージ(S.D法)においても明らかに肯定的評価に傾いている。
それらの分析を通じて,船員職業が他の職業以上の職業的魅力を提示すれば,若年層を吸収することも可能であろう。
2.技術的環境の変化が船員の労働態様に及ぼす影響に関する予備的研究
担当者 大橋信夫・服部 昭
近年の船舶運航システムにおいては,技術的環境の変化は大きい。したがって船員の労働と生活とに及ぼす影響も大きいと考えられる。これらの影響について,労働科学の立場から研究することは,過去の技術的変化を評価するためにも,今後の新技術の導入を検討するためにも重要なことである。とりわけ,安全性への影響は,新技術にもとづく技術的環境の変化の導入に当って,特に考慮すべき領域である。
そこで本年度は,内外の関連資料を収集すると共に,いくつかの国々の船員に対して京浜地区港で面接凋査を実施し,さらに,かねてより親交のある海外の研究者達との個人的手紙の交換などを行なって,海外の動向を若干さぐってみた。
これらの知見のうちから,ノルウェーと西ドイツにおける関連プロジェクトなどについて,報告書としてまとめた。
3.漁船員の腰痛予防のための体力づくりに関する実験的研究(2年計画 最終年度)
担当者 神田 寛
漁船員の腰痛多発が問題となっていたが,外川まき網漁船員にも腰痛が多い。年令は50代を中心とした高令者が多く,今後わが国で予想される高令化社会の典型ともみられた。
われわれが腰痛予防にかかわる対策の提案を考えるにあたって,大きな検討材料が得られた。それは腰部を中心とした脊椎のレントゲン撮影結果であり,写真撮影による脊柱偏倚であった。
これらの成績は,その人のきびしい仕事を長年やってきた経過を示してくれるものであった。またこのことは,対策の提案に当って,作業姿勢の改善,からだの使い方,さらに日常生活の中に組入れたねらいのはっきりした,短時間(3〜4分)の体操をこまめに行うなど,広く生活や仕事までも含めた人間の行動全体を改善していくという発想の転換が必要であることが理解できたことである。
このことは,研究協力者である日体大の塩谷宗雄氏の永年の研究実績によって証明されていることでもあった。そして運輸省の腰痛予防体操をはじめ,われわれ独自の体力づくりの対策の提案にしたがって指導してきた。
この提案の実施の状況は必ずしもよくやったとはいえないが,ときどきやっている者も含めて船の中では78%,家では37%が体操の中のぶらさがりを実行し,その他の提案した体操は68%が実行していた。また健康面では実施前と実施後の比較で息切が56%から32%へ,腰痛が51%から34%へ,肩こりが42%から30%へ,その他の項目でかなり改善がみられた。実施後の所感でも「腰のいたみが少なくなった」では40%の者が効果を認めている。
そして2年たった今,やっと日本沿岸に点在する漁港を基地とする漁船員の生活と労働の実態がわかってきたが,この研究で示唆しているところは間違っていなかったと考えている。
今後残された問題は,腰痛予防のための健康・体力づくり体操等の提案が,どのように漁船員に理解され,実施が広められるかにある。われわれは漁船員についての研究は始めてのことで慣れていなかった点もあるが,多くの漁船員に接触する機会を十分もつことができなくて苦労した。
この接触を困難にしているのは漁業労働と生活のきびしさにあるが,実際問題として大きくは異常気象などによる漁ろう海域の異変,毎日の問題としては天気,漁群の発見,漁獲量の変動,漁値の変動と低落などにともなう不安定な漁船の行動があげられる。やはり漁業協同組合,船主,船員組合を中心とした組織的な健康・体力づくり運動と,漁船員の実行しようという意欲が必要であろう。さらによき指導者養成も大切なことである。何んとかして漁船員の腰痛多発を防ぎたいものである。
4.有害物による船員の健康障害に関する実態調査(1年計画)
担当者 久我正男、村山義夫
(1)目的
前年度に調査未施行有害貨物を狙った対象船を選定,環境測定を併施した特殊検診を行なって題記実態を調査した。
(2)方法
有機溶剤系貨物船 4隻
特化則系(神経性毒物)2隻 碇泊港訪問
強酸,強アルカリ系 2隻 調査施行
対象乗組員数 82名
(3)結果
本調査は血液データの経月推移に注目,その判定から題記を検討しその結果を応用しての検診方式,手技について提案した。
作業状況・自覚症状・暴露量について
内航ケミカルタンカー乗組員の有害物に起因する健康障害と有害物への暴露状況を把握し,作業環境管理の方途を探る実態調査を実施した。
調査は,関西地区において,7〜8月の2週間,オぺレータ8社の安全衛生担当者との面接,この扱い船のうち8隻の訪船と3隻に対する郵送により実施した。昨年度と合わせて各々25社,31隻,18隻にのぼり,この2年間で,内航ケミカルタンカーでの有害物取り扱いに関する全体的な概要を明らかにすることができた。その主な点は次のとおりである。
有害物を取り扱う回数は,月当り約8回で,合計53時間である。そのときの暴露時間荷重平均濃度は,荷役時で許容濃度の1/100〜1/10,タンククリーニング時で1/10〜10倍であり,局所的にはこの10倍の濃度になる。
食欲不振の自覚症状が漁船等に比べて全体的にやや高率で,有害物による尿中代謝物又はウロビリノーゲンの多いものが散見された。
荷役の密閉化は進行中である。一方,タンククリーニング等の暴露抑制は経験に負うところが多く,不十分な場合もある。
以上の結果に基づき,暴露濃度の測定法,特珠健康診断の補助資料,設備の有効性について,簡便さを考慮した検討を行った。
5.カーフェリーにおける自動車排気ガスが船員に与える影響とその対策
担当者 久我正男
(1)目的
当研究所では開所以来延50隻に及ぶ題記調査を行なって来た。本年度は近年フェリーの艙内環境の過去に比較しての変化と長期フェリー乗組員に対する健康障害推移について調査を行なった。
(2)方法
対象船は,東京湾内フェリー10隻,瀬戸内海フェリー2隻で各1往復乗船調査した。調査に際しては環境測定,乗組員に対する健康診断を行ない,なかでも体内蓄積鉛量測定,スパイロメータ検査による肺機能検査,レントゲン撮影による艙内粉塵の呼吸器影響について調査した。
(3)結果
従来もっとも関心の高かった加鉛ガソリン影響の体内蓄積鉛量は1/2以下に減少し問題はない。ディーゼル車輌の増加にともない排出カーボンならびに車輪土砂による粉塵々肺については一応漸進の傾向と考慮する必要がある。
関連を推擦され追及の必要があることを検討した。
6.漁船員の海中転落事故の発生要因に関する調査研究(初年度)
担当者 服部 昭,大橋信夫
漁船員の海中転落事故がどめような要因のもとに発生するのかを明らかにすることを目的にして,今年度は,遠洋まぐろ延なわ漁業について実施した。
海中転落事故の多くは,当事者が死亡しているため,既存の統計の原資料にさかのぼってその要因を析出する一方で,海中転落事故に遭って救助されたケース,船から落ちかかったケース,事故を目撃したケース,救助した経験をもっているケース等潜在的な海中転落事故について,宮城県気仙沼市,静岡県焼津市,高知県室戸市に出張してヒヤリング調査した。
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