Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

平成2年度

1.漁船船員の労働実態調査(2年計画・第2年度)

                               担当者:三輪千年
 日本の遠洋・沖合漁業を代表する遠洋トロール,以西底曳網,沖合底曳網,北転船,大中型まき網,遠洋かつお・まぐろ,近海かつお・まぐろ,大型いか釣,いか流し網,中型さけ・ます流し網,さんま棒受網の11業種における,@労働時間,休日・休暇の定め方とその内容,A休息時間,休日・休暇の取得状況,B休日・休暇取得の記録,C雇用期間,D当直体制,E船内での生活時間(操業中,航海中)等の雇用関係及び就労形態について,管理者(漁労長・船長)アンケートと乗組員個人アンケートの2種類のアンケート調査を実施した。
 また,アンケート調査を補完し調査結果を労働の実感に接近させるために,現地における船主及び船員からの直接ヒアリング調査を八戸において実施した。八戸では,北転船漁業,沖合底曳網漁業,大型いか釣漁業,いか流し網漁業の4業種について調査を行うことができた。現地調査に赴いた時期がちょうど大型いか釣漁船が海外出漁に出港するための準備を行っている時に当たり,出航前の漁船船員から操業の実態や船内生活,休日・休暇の取得実感の話を具体的に聞くことができた。
 アンケート結果の槻要
<漁労長・船長アンケート(船ごと)>
・航海当直体制:甲機3直34.2%,甲3機2直9.0%,甲機2直15.6%,甲2機3直6.5%,その他26.1%となる。
・操業中の当直:甲板部,機関部ともに航海中とは当直体制を変え(80%以上),一定時間により当直者を回す体制が多いものとなっている(3割)。
 労働協約等の締結:航海中の労働時間及び休息時間を労使で規程する者の締結状態をみると,協約とするもの31.2%,規則55.8%,契約4.5%,その他6.0%,なし28.1%となる。
 休日制度を規定しているものとして規則が最も多く44.2%で,次いで協約28.1%となり,労働時間同様,取り決めが少ない業種ほど休日が補償されていないものとなっている。
 航海中の労働時間:1日当たり8〜10時間が最も多く33.2%,0〜6時間24.1%,次いで6〜8時間11.1%となる。
1週間当たりでは,56〜64時間が16.1%と最も多い。
 停泊中の労働時間:1日当たり0〜6時間30.7%,8〜10時間16.1%、1週間当たり0〜40時間21.6%,次いで48〜56時間5.5%となる。
・休息時間の定め:定めを設けているのは少なく16.1%でしかない。
操業中の1日当たり休息時間:6〜8時間,8〜10時間がともに21.1%で,この両者で全体の4割をしめる。次いで4〜6時間が19.1%となる。
・年間休日日数:11〜20日16.6%,21〜50日15.1%
<漁船船員個人アンケート>
・陸上休暇日数:0日30.0%,1〜2月27.0%,15〜31日15.2%,2〜6月14.3%
内 有給休暇:15〜31日28.1%,7〜14日6.8%,1〜6日3.7%
・疾病:回数1回12.1%,2回3.0%,3回以上0.7% 日数1〜6日10.4%,14日〜1月2.0%,7〜13日1.5%
・労災:回数1回10.8%,2回2.1%,3回以上0.8%
 日数1〜6日7.8%,14日〜1月1.6%,7〜13日1.2%
・健康状態:健康及び普通と答えたのは9割近くを占めるが,健康でないというのも4.2%と僅かではあるがいる。
・リタイア後:陸上の仕事37.6%が最も多く,次いで隠居12.5%,地元に帰って沿岸漁業の自営12.3%,沿岸漁業雇われ7.6%,内航船3.4%,カーフェリー1.2%,近海船1.1%,外航船0.5%と船船関係に転職希望するのは併せても6.2%でしかない。
・船内労働時間:航海中,操業中ともに2日間について記述してもらった。業種により時間数に違いがあり一概にいえないが,操業中の勤務時間は12時間を越える長時間労働となっている。一方,航海中の勤務時間は7〜9時間となる。
 

2.外航及び漁業離職船員の雇用動向と職域開発に関する調査研究(3年計画・第2年度)

                          担当者:青木修次 篠原陽一
目 的:船員のキャリアー形成は“生涯,船に乗り続けること”を前提としてきたが,海陸交互勤務形態が一般化しつつあり,この前提は崩れつつある。また,混乗船乗船機会の増大に伴い,キイマンに要請される海技の質,能力面も変化し新たなキャリアー形成が求められている。さらには,若者の職業観・生活観の変化に伴い,最近では,ライフサイクルに対応したキャリアー形成と選択の幅に関心が集まりつつある。そこで,こうした内外の職業環境変化を考慮し,船員の「経歴開発」(CDP)はいかにあるべきかについての検討資料を収集し,整理した。また,漁船船員に関する調査研究は平成3年度(第3年度)に実施することとした。
内 容:@外航船社からみたCDPの背景
    A陸上産業にみるCDPの動向
結 集:<船社調査>
 @CDP「実施中」は37社中4社,「検討中」26社「不能」7社(計画が立たない・予定なし)で,CDPの必要性を認め現在検討中が大勢を占める。
 ACDP実施上の障害条件としては,「長期経営方針の不明確」「高齢化」「若年船員の確保困難」「人事の2本立て」の指摘が多く,課題としては「新人の継続採用」「混乗ノウハウ蓄積・管理能力」「海技の伝承」等の指摘が目立つ。
 B5年後の配乗隻数は,社船は減少し混乗船は増大するとの予測結果である。
 C混乗船の配乗率が5割を超えた時の3大問題・課題は,「相手国クルーの確保」「日本人キイマンの養成・能力強化」「部員問題」である。
 D新人確保希望数は,毎年10人以上が8社,5人前後10社,2.3人13社,採用不能6社であった。また希望数に対する確保の見込みでは,“自信あり”8社“7.8割”9社,“良くて5割”10社,“見込みなし”4社,不能6社という結果であった。
 E“若者の海離れ”“職業の魁力化”に関連し,120件はどの受け入れ条件・対策の回答があった。収入増と休暇増大に関する指摘が最も多いが,この他船員のキャリアーモデルの明示,業界・船員職業のイメージアップ,人事の一本化と海陸交互勤務態勢,新人の縦続的採用等の指摘が目立つ。
 

3.船員職業に対する意識調査

 一船員及び船員教育機関在校生並びに−般社会人及び中・高校在校生の船員職業に対する意識について−(2年計画・第1年度)
                担当者:篠原陽一,青木修次,三輪千年,川崎友嗣
 海運業及び漁業が,活力ある産業たりつづけるためには,若年労働力の絶えざる流入が不可欠であるが,若年労働力人口の減少と一般国民の職業意識の変化のもとで,若年の船員及び漁船員を確保することは容易ではない。
 初年度は,商船・水産科学校の在校生が,船員職業についてどのような職業意識や定着意識を持っているかを調査した。
@ 商船料教育機関
 ァ.調査票回収数は,商船大学2校493人商船高専5校1,013人海員学校8校574人で,
回収率は43.4%,95.3%,89.5%であった。
 イ.船員職業を志向する比率は,商船大学44.2%,商船高専57.3%,海員学校73.8%であり,調査対象数からみれば,年間126人,121人弱,158人強となる。
 ウ.船員志向は,在学中,商船大学や,商船高専では低下,海員学校では上昇する。前者では,入学時の船員志望者のかなりの数が脱落したことによる。
 ェ.船員志望者の定着志向は,商船大学62.6%,商船高専51.4%,海員学校43.2%で,調査対象数からみた歩留まりは約28%=79人,約29%=62人,約32%=68人である。
 オ.船員志向の促進要因は収入面が恵まれている,仕事に満足できるであり,阻害要因は家庭生活に恵まれない,雇用が安定していない,デートの相手がみつからない等である。
A 水産科教育機関
 ァ.調査票回収数は,水産大学校1校55人,水産高等学校8校1,855人で回収率は55.0%,84.2%であった。
 イ.漁船船員を志向する比率は.水産大学校7.2%,水産高等学校10.3%,商船等の乗組員を志向する比率は,水産大学20.0%,水産高等学校9.7%である。
 ウ.船員志向は,在学中,漁船員については水産大学校,水産高等学校ともに低下するが,商船船員については大学校,高等学校とも上昇する。漁船,商船を合わせた船員志向は,大学校では変化がみられないが,高等学校では商船船員への希望が強まる。
 ェ.漁船船員志向者の学校及び学科の選択基準は,親の営む漁業経営を引継ぐためが,最も多く,次いで海・漁業の仕事に憧れていた,一般サラリーマンと違い面白そうだから,となる。           一
 オ.漁船船員及び商船船員志向への阻害要因には,離家庭性,水産業の将来に対する不安があがっている。
 

4.船員の健康・体力づくりの具体的方法及び環境づくりについての調査研究(1年計画)

                          担当者:神田 寛、村山義夫
目 的:
 船員の高齢化が進む中で,災害・疾病の防止に役立ち,かつ,船内で実行可能で,また実行意欲をも持続させうるような,健康促進,災害防止のための健康・体力づくりの具体的な方法及び環境づくり等について調査研究し,今後における「船員の体力づくり」を推進するための施策の検討に供する参考資料を得ることを目的てする。
内 容:
@船内での健康・体力づくりの具体的在り方の検討
 ア.成人病予防,ストレス対策としての運動処方の提示。運動設備,器具の提示。
 イ.運動効果が確認できる方法の提示。
 ウ.これからの新しい体育室の提示。
 ェ.船員の生活時間等からみた運動時間の配分についての提案。
 オ.その他
Aこれからの健康・体力づくりの船員意識と実態アンケート調査
B実船による新方式実施結果の検討
実施結果:
検討の結果,3編にわけてまとめた。
@第一編は,現代必要な健康・体力づくりの種類,運動生理からみた基礎知識,エアロビクスとアネロビクスの違いと特徴、エルゴメーターとトレッドミルのメカニズムなどの機器の検討,肥満,ストレッチングその他,実用的な基本的知識を中心として,主として“ハード”の面を中心にまとめた。
A第二編は石油備蓄タンカーと航海中のタンカー“かいもん丸”の実証的成果(昭和59〜60年)をまとめた。これらの成果から船員は自信をもって健康づくりにとりくむ資料を提供した。
B第三編は,1つには船員の健康・体力づくりのアンケート調査である,健康・体力づくりの必要性は強く意識しているが,何らかの運動を実施している者は3割,健康づくりに必要な週3回以上の者は少なく,運動効果があがっていないことがわかった。ついで2つには“ソフト”面を検討する乗船調査である,健康づくり推進の試みを行い,具体的な運動プログラム,体力評価法を明らかにした。
 調査を通じて,健康づくりのリーダー(ヘルスケアリーダ)の存在の重要性が指摘された。
 

5.海上労働に関する通信情報化についての方法の開発(第3年度)

                     担当者:小石泰道
                     協力者:篠原陽一,青木修次,村山義夫
 この調査研究の最終年度であるので,過去3カ年の調査活動を要約して述べる。
(1)目 的:海上労働における労務,技術,安全術生,船内生活等に関する情報のデータベース化,知識ベース化及び通信情報化の方法と体制の在り方を調査検討するのを立前としたが,時代のすう勢を考え,海洋・海事両域にわたる通信情報化の検討を加味しつつ実施した。
(2)第1年度の調査と結果
 a.通信情報化の方法開発計画
 3カ年のプロセスチャートの作成(内容後述)とネットワーク・リソースの想定。分散型ネットワーク,市販データベースソフトの利用,複合メディア(少なくともパソコン,ファクス)
 b.第1年度ワーキング
 (1)海洋海事検索用語の試案と海上労研文献の抄録DB化,(2)船内食事管理支援ソフトの開発,(3)危険物積載船における災害支援ソフトの開発,(4)混乗船における労務管理支援ソフトの開発
(3)第2年度の調査と結果
 a.通信実験:外航船(村山研究乗船),内航船(本船職員に委託)各1隻と海上労研との間で,インマルサット及び日本船舶通信経由の通信実験を行った。取扱い者の不馴れ船船電話系の電波障害,利用上の頻度化など問題点を認めた。
 b.第1年度に続くDB化ワーキング
(4)第3年度の調査と結果
 a.利用意向調査:関係企業,団体187か所を対称にニーズ調査を実施した。
 b.情報源の通信情報提供意向調査:前項回答事業所(78か所)を対象に実施したが,計画意向者はわずかであつた。
 C.まとめ:社会性,公益性をもったネットワーク構想づくりのための検討課題をまとめとした。(1)トップダウンかボトムアップか,(2)コンセンサスづくり,(3)サービス内容の段階区分,(4)システムやベースロードの拡張性,(5)国や地方行政機関のリード,(6)推進体制づくり(組繊と人材)
 

7.内航船員需要実態調査(第2年度)

                     担当者:篠原陽一,青木修次,川崎友嗣
 日本内航海運組合総連合会の委託に基づき,@内航船員に対する雇用実態や職業意識および,A内航船舶所有者に対する雇用管理の実態や今後の見通しに関する質問紙調査を実施した。

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