Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

平成3年度

1.船員職業に対する意識調査

 −船員及び船員教育機関在校生並びに一般社会人及び中・高校在校生の船員職業に対する意識について−(2年計画・第2年度)
                     担当者:篠原陽一、青木修次、三輪千年
目的:
 第1年度の調査対象であった船員教育機関在校生の給源である中学校・高等学校の在校生及びその進路選択に影響を及ぼす両親に対して、海運業、水産業に関する産業イメージ、船員に関する職業イメージ、進路選択の要因について意識調査を実施し、船員職業が進路選択にあたって、どのように位置づけられているかを明らかにし、船員後継者の確保や処遇に関する対策を立てるための検討資料とする。
調査対象:
 宮城県気沼市、神奈川県横浜市、富山県新湊市、愛媛県今治市、及び長崎県長崎市に所在する中学校、高等学校各1校の2年生男女とその両親とした。
調査結果:
@中学校及び高等学校生徒の結果
 ア.調査票の回収数は、中学校694通、高校生782通、合計1,476通であり、そのうち男子はそれぞれ53.2%、55.1%であった。
 イ.兄弟の平均数は1.53人である。父が船員である(あった)比率は中学生14.1%、高校生10.2%であり、船員志望男子は非志望男子より、その比率が高い。
 ウ.将来の就職希望地域は、中学生においては大都市希望39.2%、地元近県希望60.8%、高校生はそれぞれ38.1%、61.8%であり、船員志望男子の地元志向は顕著である。
 エ.海事経験については、旅客船・遊覧船、フェリーの乗船経験はかなり高いが、貨物船、タンカー、漁船の見学経験はかなり低い。海事知識は、業界の特定事項を除き、その正解率はかなり高いが、その評価率は概して低い。
 オ.船員養成機関の認識は、商船科機関よりも水産科機関の認知度が高い。船員のイメージは、全体として否定的な方向に片寄っているが、船員志望生徒は非志望生徒より肯定的な方向に片寄る度合が強い。
 カ.船員志向比率は、過去から現在にかけて、中学生では男子34.4%(女子6.6%)から17.7%(3.1%)、高校生ではそれぞれ25.0%(6.6%)から8.2%(2.3%)へと変化している。
 キ.船員志向生徒の船員養成機関の志望先は、中学生においては商船高専33.8%、水産高校29.6%、高校生においては商船大学33.3%、水産系大学23.1%、海員学校23.1%が上位を占める。
A保護者の結果
 ア.調査票の回収数は、中学校では父親310通、母親355適、高校ではそれぞれ333通、419通、合計1,417通である。
 イ.過去に憧れる職業として、父親においてはパイロットに次いで、船員職業が第2位である。その憧がれた職業と現実に就いた職業の一致度は約20%にとどまる。
 ウ.子供に希望する就職地は、地元約35%、県内約20%、近県約15%、他県約15%となっている。また、子供に就職してもらいたい職業は専門的・技術的な仕事が約50%である。
 エ.子供の船員養成機関への進学希望に対して、本人にまかせるは約70%であり、賛成するは約15%、反対するは約15%である。子供が船員になることに対しては、本人にまかせる約55%、反対する約40%、賛成する約5%となっている。
 オ.子供が船員になることに反対する理由は、危険な職業、家庭生活に恵まれない職業、馴染みの薄い職業、が上位を占める。
Bまとめ
 2年間にわたる調査結果から、意識調査結果としてではあるが、中・高校生において約10%ほどの船員志向者がいること、そして船員職業の世代継続が見込まれることに着目すると、海運・水産業界が陸上職業にくらべ目をそばだたせるような職業魅力を提示し、それが若者やその親に周知され、認識されていけば、船員のなり手は相当数いるといえる。
 

2.漁業離職船員の雇用動向と職域開発に関する調査研究(3年計画第3年度)

                               担当者:三輪千年
目的:
 1978年に200海里新海洋時代へ移行してから、我が国の遠洋出漁船は、操業海域からの締め出し、入漁条件の規制強化等により200海里減船が相次ぎ、今なお減船整理をしている業種もあり、この10年間で多くの減船離職者を生み出した。今後は、減船離職だけでなく、ペルシャ湾岸危機以降の燃油高騰の経営への影響などにより、離職船員が増加するものと考えられる。従って、最近の漁船船員離職者の動向、離職後の就職実感、陸転プロセスについての実態を明らかにし、漁船船員の職域開発を考える際の参考資料を得ることを目的とした。
調査結果:
 減船離職した年次は、サケ、マス漁業では平成2年が多く、トロール関係では平成3年に多いものとなっている。これは、調査対象者を過去3年間の減船により離職したものに限ったことにある。
 離職時に従事していた漁業種類は、北方トロール138名(29.2%)、転換トロール23名(4.9%)、南方トロール113名(23.9%)、母船式サケ・マス28名(5.9%)、サケ・マス独航船53名(11.2%)、中型サケ・マス57名(12.1%)、その他19名(4.0%)である。
 減船離職者の調査時点における就業状況を見ると、無職である者63名(13.3%)、職業訓練中の者6名(1.3%)、求職中の者20名(4.2%)で、何等の職業に就いていない者が89名(18.8%)もいる。反対に、現在就業している者は370名(78.4%)と8割近くが就業していることを示している。
 現在仕事に就いている者の就業先としては、陸上産業への再就職が最も多く191名(51.6%)と半数以上で、次に多いのが漁業で90名(24.3%)となり、商船への再就職は73名(19.7%)でしかない。陸上産業で再就職先として最も多い業種は、製造業16.7%、次いで建設業13.2%、サービス業7.8%、運輸業7.4%と続く。
 漁業への再就職先としては、イカ流し網や大型イカ釣漁船等この間に業績を伸ばしてきた業種が挙がっている。流し網等の業種は、環境問題等から最近では操業規制が強化されてきており、今後縮小こそすれ、拡大する可能性は極めて少ないと言わざるを得ない。また、再就職先業種としては、トロールはトロールにというように同一漁法の業種に就業する場合が多い。
 商船関係への再就職先としては、内航タンカー27.4%、内航貨物船24.7%と、内航海運で52.1%を占め、以下、タグボート13.7%、日本船籍の外航船8.2%、巡視船、自衛艦等の官庁船5.5%となっている。
 現在の職業を再就職先として選択した最も多い理由は、他に適当な仕事がなかったからで、4人に1人がこの理由をあげている。次いで、現在の職業を、能力が活かせる仕事だからと、自分の好みにあった仕事だからが同数で6人に1人の割合となっており、さらに、安定した仕事だから、収入が多いから、時間が比較的自由になるからと続く。
 

3.混乗船における外国人船員の労務・安全衛生に関する調査研究(第1年度)

                     担当者:青木修次、村山義夫、篠原陽一
 日本人と共に乗船している外国人船員が、労務・安全衛生管理をどのように受け止めているか調査し、一層円滑な運営方法についての基礎資料を得ることとした。
(1)乗船調査
 調査員2名が3隻の船に乗船し、合計58名のフィリピン船員の船内作業と生活を観察するとともに面談調査を行った。
 フィリピン船員の技術習得モチベーションは強く、それに応える日本人船員が多い。また安全衛生についてはKYTなど明快な方法が有力である。そして、仕事以外での人間的ふれあいを期待しており、その評価は仕事達成効果を左右するようであった。
 日本人管理者のマネジメントの個人差、他方フィリピン船員の技能と態度の個人差によって、船内作業と生活への適応における負担程度が左右される。
(2)フィリピンでの意見交換会
 マニラでフィリピンの学識経験者のコーディネートにより、船員間及び海運関係者間のグループの意見交換会を行った。
 57名が参加した船員グループでは、コミュニケーションをよくして誤解を招かないこと、適正な評価などの期待が寄せられたが、全般には混乗の乗船を明るく評価している。
フィリピン海運関係者8名と日本人4名のグループでは、文化と生活習慣の相互理解と日本人の会話力強化の期待が大きく、性急でない技術移転努力がみのりあることが指摘された。
 

4.船員労働時間短縮動向調査(1年計画)

                     担当者:村山義夫、加藤和彦、三輪千年
目 的:
 船員の労働時間短縮の推進についての検討に資するため、また、改正船員法等の実施状況を把握するため、労働時間、休日、休暇等の実態に関する調査を実施する。
内 容:
 @全船舶所有者に対する乗組員の所定内労働時間、休日、休暇日数、時間外、休日労働(労使協定の締結状況、内容等)、変形労働時間制の調査。
 A時短促進に対する意識のアンケート調査。
調査結果:
 @労働時間実態調査を外航船、内航船700トン未満及び700トン以上、旅客船700トン未満及び700トン以上、船員法適用船船、及び小労則適用船舶に分けて行なった結果、労働時間週平均44時間を達成しているのは、外航船からそれぞれ95.5、56.1、76.5、65.8、94.0、87.1及び57.8%であり、外航船が最も高く95.5%で内航船700トン未満が56.1%と最も低かった。全船船では、週平均44時間達成率は61.9%であった。
 A時短促進に対する意識調査は、1,000トン未満の内航船及びその船主を対象として行なった。調査票回収数は、それぞれ147隻、201社であり回収率は、67.9%、51.8%であった。乗組員は、現在の労働時間に対し、長い・やや長いと感じているのが87.9%おり、また労働時間短縮を大いに進めるべきであるとする人は、77.1%であった。労働時間短縮のためには、荷役当直時間を減らすのが効果的であると答えた人が最も多く46.9%であった。しかし、労働時間短縮は十分可能であると答えた人は、58.6%であった。
 船員確保のための対策を現在実施している船主が36.0%、検討中が48.9%であった。その確保対策として最も多かったのが休日の増加で75.3%、次に多かったのが給料アップで74.7%であった。今後船員不足が深刻化した場合は、労働条件を改善して船員確保に努めると答えたのが53.2%あったが、転業又は引退すると答えたのが21.5%であった。

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