Maritime Labour Research Institute

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研究調査の概要

平成4年度

1.混乗船における外国人船員の労務・安全衛生管理に関する調査(2年計画・第2年度)

                          担当者:村山義夫、金崎一郎
目 的:
混乗船に乗り組む日本人船員に関する情報は蓄積されてきたが、外国人船員側からみた情報はほとんどない。外国人船の雇用・労働・生活実態を明らかにするとともに、安全活動の試行により、今後の混乗船における労務・安全衛生管理の資料を提供する。
内 容:
@フィリピン人船員に対する、職業意識、労務管理評価等アンケート調査
Aアンケート結果に対する、現地フィリピン船員とマンニング会社労務担当者のグループ討議
B実船における安全活動の試行
結 果:
@フィリピン人船員に対するアンケート調査調査票の回収数は2,868通(88.8%)であった。
 船員の知り合いの有無は“いる’’が74.8%で、その人は、親類43.6%、兄弟38.9%、知人23.8%であった。船員職業身近な環境に育っていると言える。学歴は単科大学卒が7割半であるが、これは専門学校を含めた学校を意味していると思われる。高等学校をこえる職業教育が外航船員の必要条件になっていることをうかがわせる。初職ははじめから船員と答えたものがほば6割である。
 混乗経験の有無は、“なし”11.3%、“あり”88.7%である。国別の混乗経験がないのは、アメリカ・ヨーロッパでは56.2%であり、日本以外のアジアでは78.4%である。契約したことのあるマンニング会社の数は1社が33.9%、2社が29.4%、3社が19.0%、3社までで8割以上を占めているが、ここでいう1社というのが、かなり広い意味で理解されているためだと思われる。
 船員になった理由は、給料の高さ67.9%、次いで船員職業の適性55.0%、外国に行ける43.6%という結果である。入職当時の船員継続の意志は、できるだけ長く45.6%、未決定25.8%、お金が貯まるまで17.1%であった。現在は、“できるだけ長く”53.4%、10年以上20.1%である。
 乗船中の満足度は、全体的にみて、評価は肯定的な方に片寄っている。満足度の高い項目は、家庭事情配慮・航路寄港・規則であり、低い項目は、食事の質・食事の量・危険手当と医療設備である。
 日本人クルーの労務管理についての印象は仕事管理の明確さ・職務能力の優秀さ・仕事の教え方のうまさの項目で肯定的評価が高い。逆に、説明のうまさ・命令の理解し易さ・フィリピンクルーの能力の活用といった項目では、否定的評価が高い。日本人クルーの能力と態度についての印象で評価の高い項目は、チームワークのよさ・教養があり紳士的・英語を話そうとする努力(英会話努力)である。低い項目は、飲酒をともにする機会・フィリピンクルーを差別しないことへの注意・英会話能力である。
 契約したマンニング会社で人数が多い上位10社の累積相対度数は73.7%である。前回もこの10杜であったケースの累積相対度数は42.1%である。今回契約しているマンニング会社と前回も同じだった人の数(リピーター率)は39.4%である。
 この次も現在乗船している船で働きたいかでは、乗船したい52.4%、同じ船会社ならどの船でも31.0%、リピーター指向をうかがわせる結果である。日本の船会社に対する満足度は非常に満足29.5%、満足68.5%で、合わせると満足していると回答した者は9割8分に及んでいる。将来も日本人クルーと働きたいかではできるだけ58.3%、しばらく38.5%。
 最近1週間の心配事(イライラ事)については、日本人クルーと比べると、家族・友人の割合が非常に高い。また日本人クルーの場合は、相手国クルーの性格・行動をあげる割合がトップにくるが、この調査の結果では5番目である。
Aマニラでの集団討議(マンニング会社の代表者、フィリピン人クルー)
 マニラにおいて現地マンニング会社の代表者とフィリピン人クルーのそれぞれのグループによって、以上の調査結果に対するグループ討議を行った。グループ討議では、(1)日比混乗において、ここ1、2年トラブルが減少していること、(2)日本船による昇進の難しさ、(3)船員職業につく理由としてサラリーの高さ(国内の経済状況との関係)、(4)日本の船会社による日本人船員に対するフィリピン文化の教育の必要性、などが指摘された。特に、(4)は2つのグループ討議で共通に指摘されている。
B安全活動の試行
 安全活動の一つとしてKYTを試行した結果、混乗船の労務・安全管理にとって大事なコミュニケーションを確かなものとし、かつ促進する効果が期待できることが分かるとともに、フィリピン船員との関係で配慮すべき点と具体的進め方の留意事項が明らかになった。
 その主な点は、フィリピン人船員の経歴と生活背景をよく理解すること、会話は単純明瞭で丁寧であること、非言語コミュニケーションを積極的に活用すること、場合によってかなり初歩的な技能でも説明を要することがあること等である。
 

2.船員労働時間短縮等実態調査(縦続)

                     担当者:村山義夫、中村史也、加藤和彦
目 的:
 船員の労働時間短縮の推進についての検討に資するため、昭和63年改正船員法の施行状況とその問題点についての実態調査を行う。
また、改正船員法付帯決議にもとづく漁船船員の雇用形態、有給休暇制度の実態調査を行う。
内 容:
@漁船所有者、漁船船員等に対する業種別漁船船員の雇用形態及び雇用期間、有給休暇の取得状況、歩合制の採用状況についての調査並びに時短促進に関する意識調査。
A全船舶所有者に対する乗組員の所定労働時間、休日、休暇日数、時間外、休日労働(労使協定の締結状況、内容など)、変形労働時間制の調査
結 果:
@調査項目は、業種別漁船船員の雇用形態及び雇用期間、有給休暇の取得状況、歩合制の採用状況についてのアンケート調査とし、調査票を作成した。
 調査対象は、遠洋底びき網漁業、以西底びき網漁業、沖合底びき網漁業、大中型まき網漁業、遠洋かつお・まぐろ漁業、近海かつお・まぐろ漁業、さんま漁業、及びいかつり漁業の漁船所有者と漁船船員とし、関係者と配布回収準備作業を終了した。
A所定労働時間実態調査を全船舶所有者を対象に、内航船700トン未満及び700トン以上、及び旅客船を700トン以上に分けて、労働時間週平均44時間の達成状況、補償休日労働、有給休暇制度の実態について調査した。
 

3.先進海運国船における船員の船内就労実態調査(2年計画1年度)

                     担当者:村山義夫、加藤和彦、福井 功
目 的:
 わが国の職業生活質的変化と船員労働環境変化の状況下における人材確保のため、先進海運国船員の生活と労働環境調査、船員職業の将来構想に資する資料を提供する。
内 容:
@各国の船員需給、労働条件、船員労働研究に関する資料を収集する。
Aイギリス、ノルウェーの船主団体、組合、会社に対するアンケート調査。
Bイギリス、ノルウェーの船主団体、組合、会社に対する面談調査。
結 果:
@FOC化に伴い自国人船員が大幅に減少していたが、第二船籍制度によって数年前から減少はとどまっている。しかしこの間に若年者の入職が著しく減少して、高齢化、有能船員の減少、海運関連産業の船員経験者不足に向かっている。
A最近は高齢化がややとどまっている。35歳前後で船長・機関長になることが可能であるが、会社および個人の差が大きい。
 以前から乗船と下船休暇の比は1:1また2:1が多く、4カ月乗船が多い。短期間交代のため1職位につき1:1人または一隻につき1:1.7チームとしている。上級職員の給与を手厚くしている。船内福利厚生、船内設備は会社間格差が大きい。全体として、調度品に力を入れ、家の雰囲気を提供している。
Bイギリスは、5年前に求人キャンペーンと財政援助を行った結果、若年者の訓練生希望者が増えたが、終了後に求人がなかったために再び減少した。これは初級職員に途上国船員を雇用しているためである。ノルウェーは、教育制度の変更で、依然として魅力のある船員キャリアーを若年者に与えるという方策をもっているが、求職者数回復の見通しはまだない。
 両国とも船員キャリアーを評価する海運関連産業での人材確保が懸念されており、また、依然として若者の海洋志向があることから、職場確保がなされれば若年者の船員志向は増す見通しをもっている。

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