Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

平成8年度

1.船員労働時間等実態調査

                          担当者:村山義夫、加藤和彦
 
目 的:
 船員の労働時間短縮の推進についての検討に資するため、昭和63年改正船員法の施行状況とその問題点についての実態調査を行う。
内 容:
全船舶所有者に対する乗組員の所定労働時間、休日、休暇日数、時間外、休日労働(労使協定の締結状況、内容等)等の調査。
結 果:
 @一部の例外を除いて、1日の所定労働時間は91.9%が8時間である。また、年間休日数は、104日以上の割合が全体で64.2%であった。104日以上の割合が最も高いのは外航船の98.6%であり、最も低いのが700トン未満の内航貨物船の57.4%となっている。
 A有給休暇日数は、外航船で20日以上が98.2%で最も多い。内航旅客船は、20日以上が55.6%で半数を超えているが、内航貨物船は28.4%と最も低い。補償休日労働日数の限度は、年間当たり18日以上が95.6%とほとんどであり、平均では27日となっている。
 B時間外労働の割増手当は、3割増がほとんどであり、全体では89.2%となっている。
 休日労働の割増手当は、3割〜5割増が最も多く78.9%となっている。船種別でみると、外航船が最も高く95.4%で、ついで700トン以上の内航貨物船、700トン以上の内航旅客船となり、それぞれ9割を超えている。700トン未満の内航貨物船、内航旅客船は、それぞれ76.8%と70.6%で低くなっている。
 C基準労働期間については、外航船では12月がほとんどで93.7%となっている。内航貨物船では、9月が最も多く59.3%となっている。トン数別でみると、最も多いのは700トン未満も700トン以上も9月であるが、700トン未満では次いで3月(18.3%)が多く、700トン以上では12月(34.9%)となっている。内航旅客船では12月が最も多く41.4%である。トン数別でみると700トン以上では12月が半数以上の61.9%となるが、700トン未満では12月が最も多いものの36.1%となっている。
 D 船舶別・トン数別船舶乗組員定員については、外航船では近海区域と遠洋区域を含むために、甲板部職員が500総トン未満で平均2.4人、500〜4999総トンでは平均4.1人、5000総トン以上では4.2人になっている。機関部もほぼ同様である。甲板部員数は、20〜199総トンで5.3人と多くなっているが、200〜699総トンでは1人程度である。700総トン以上になるとトン数の違いに関わらず5、6人程度である。機関部においては、700総トン未満で甲板部と同様に1名程度であり、700総トン以上ではトン数に関わらず3名程度である。内航貨物船、内航旅客船及び漁船の職員は、同様の傾向を示し200総トン未満で1名程度であり200総トン以上で2ないし3名となっている。甲板部員については、内航貨物船と内航旅客船で同様な傾向を示し700総トン未満で1名程度であり、700総トン以上で4ないし5名となっている。機関部部員は、内航貨物船ではトン数にかかわらず1名程度であり、内航旅客船では1000総トン未満で1名程度であり、1000総トン以上になると2ないし3名となっている。漁船の甲板部員は、20総トン以上の船船では、1000総トン以上の特殊な漁種を除き4、5人程度である。機関部部員については、699総トン以下で1名程度であり、500総トン以上では3名程度となっている。
 

2.船員のワークロードに関する調査研究 一国内海上輸送における海難・労働災害の発生との関係について−(第3年度 最終年度)

                     担当者:村山義夫、加藤和彦、久宗周二
目 的:
 国内海上輸送における船員の作業内容と作業環境、作業中の心身状態について総合的に評価し、事故を予防する適切な労務管理のための基礎資料を提供する。
内 容:
 @内航船の船橋当直者に対して、操船作業における事故の経験または事故には至らなかったがヒヤリとした2カ月間の経験(未然事故)についてのアンケート調査を行った。
 A内航船4隻に乗船して、作業観察、生活行動自記式調査票調査、蓄積疲労徴候調査票調査、疲労しらべと眠気(KSS調査票)の隔時調査、操船者の心拍数記録をおこなった。
 B操船シミュレータでの入港操船または狭水道操船作業中の心電図を記録し、心拍数の変化及び心拍間隔変動の周期解析から自律神経機能の活動レベルを明らかにした。
結 果:
 @484人の回答から、242人の延ベ403件の未然事故経験が報告された。対象が漁船、漁船以外の船舶、岸壁・桟橋はそれぞれ179、138、86件であった。発生頻度は、深夜から朝にかけて多く、日中の約2倍であった。発生状況は、輻輳状態が半数、漁場、狭水道、視界不良が約3分の1ずつであり、これらが複合したケースが多い。推計経験回数は、1隻あたり年間12.8回であり、内航船全体に対する内航船の衝突乗り揚げ海難審判裁決隻数の比の284倍であった。
 A内航貨物船の生活パターンは、当直制と運航に依存し、不規則な生活時間であり、停泊や荷役待ち時間、長距離航海などの機会に調整される。この影響を最も受けるのは深夜勤務者であり、比較的睡眠時間を多くとって対処していた。乗船日数が長い場合に蓄積疲労の訴えが多いケースがみられた。当直者の心身機能レベルは、当直中は初期に高く時間経過と共に逓減していた。以上の結果から、当直中の注意力維持と、睡眠効果を維持するためには、勤務スケジュールの設計の重要さが指摘される。
 B入港操船では制御目標への接近、狭水道内では衝突の見合い関係になる船舶の増加に伴って、心拍間隔変動にみる生理反応レベルが上昇し、精神的緊張状態が推定された。
操船の負担を心拍変動間隔の解析から推定することができる。
 

3.漁業就労の現状と漁業労働力の移動に関する調査(2年度計画の最終年度)

                          担当者:中村史也、久宗周二
目 的:
 現在、漁船での船員不足は、深刻の度を増しつつあり、そのため漁船船員の就労実態を調べ、漁業就労者の移動のあり方を調査・研究することによって、漁船船員の確保及び労働条件・労働環境の改善を図り、合わせて漁業の発展に資するための基礎資料を提供する。
対 象:
 平成3年から平成5年に掛けて実施された遠洋底曳網漁業と公海いか流網漁業の減船を行った経営体及び離職予定者(減船経験者)を対象とした。
内 容:
 アンケートと聞き取りの2つの方法により調査した。経営体に対する調査内容は、減船時の経営内容、減船による影響、乗組員の移動状況など。減船経験者に対する調査内容は、減船による職業の変化、現在の状態など。
結 果:
<経営体調査>
 @遠洋底曳綱の経営体は、大規模経営が多く、いか流網の経営体は、中小経営が多い。
 A遠洋底曳網経営体は、減船離職予定者に対し、雇用確保など比較的多くの対策を行ったが、いか流網経営体は、雇用継続の努力が主となり、十分な対策を行えたとは言い難い。
 B両業種による違いが、経営体が把握している離職後の船員の行方の上に表れた。
 C遠洋底曳網経営体では、商船に転職した者、他社の漁船に移った者、陸上に転職した者、年金生活となった者など、様々な方向に行った者がいた。
 Dいか流綱経営体では、他社の漁船、自社の別漁業に移った者が比較的多く、遠底より行方の幅が狭く、乗組員の行方を十分には把握していない。
 E乗組員の自社船間の移動では、両業種の違いは認められない。
 F遠底では、漁業縮小に伴う雇用調整が落ち着き、乗組員は自然減少に向かっているが、いか流網では、漁業縦続のため乗組員確保に腐心している。
 G遠底では、減船を契機に経営体としての新たな展開に向けた整備を行い、いか流網では、減船を梃子に地域漁業労働力市場の縮小再編を行い得た。
<遠底減船経験者調査>
 @遠底漁船船員は、比較的高年齢、高学歴で入職してくる者もおり、安定的な雇用先であった。
 A遠底の減船経験者の離職後としては、約9割が何らかの仕事をしている状態となった。
 Bその主な就職先としては、商船関係と陸上産業で約7割を占めており、完全リタイアは1割弱である。
 C内航タンカーが多い商船には、主に海技資格者が行き、陸上産業は土木建設が多い。
 Dスムーズな転職が行われたかにみえる遠底でも、収入の減少などの問題やミスマッチが窺える。
 E遠底離職者には、漁船船員としては恵まれた退職金等を得て、年金生活に入った者もいる。
 F遠底の減船経験者では、漁業種類を大きく変えた転職、移動例は少ない。
<いか流網減船経験者調査>
 @いか流網減船経験者は、鮭鱒、鰹鮪、いか釣りなど、北洋を中心とした各種漁業から移動してきた者が4分の3となる。
 Aいか流綱減船経験者には、雇用されていた漁業経営体のいか流綱への参入に従って、入職してきた者が比較的多くいた。
 Bいか流綱の減船経験者では、離職後も漁船船員を継続した者が約6割おり、主流となった。
 C商船関係や陸上産業への転職は、3割弱に留まり、漁業以外への転職の難しさが表れた。
 D継続した漁業は、いか釣り、鰹鮪、鮭鱒など、いか流し網と組み合わせていた、或いは経験のある業種が多く、雇用先の経営体は変わらなかった例の方が多い。
 Eこれらの業種では、船員不足が慢性化しており、いか流綱減船経験者を即戦力として新規或いは継続雇用した。
 F現在の就業状態としては、遠底よりも多い9割近い者が、何らかの仕事をしている。
 G就業内容は、漁船員継続が主流という枠組みが維持されている。漁業就業構造において、就業条件が残っており、就労者には労働意欲があり、収入確保の必要があることを窺わせる。
 

4.外航船舶及び内航船舶における日本人船員の職業意識とその背景に関わる調査

                           (2年度計画の初年度)
                          担当者:金崎一郎、久宗周二
目 的:
 若年船員の確保という緊要な課題に対して、船員職業を職業体系にのみに限定して調査研究を行うのではなく、船員をその背景となる家族との関係という広がりの中に捉え直し、職業意識の観点から接近しようとするものである。
内 容:
 本調査研究は2年度計画の第1年度にあたり、これまでの船員家族についての研究及び職業と家族との関連についての文献的考察と船員家族へのヒアリング調査の報告を行っている。本調査は、職業と家族との関連をトータルに捉えようとする立場に立っているが、こうした議論は、これまであまり行われてこなかった。この調査では、船員に関連しては2つの先行研究を参照しているが、いずれも基本的に船員家族の意識を調査することに重点が置かれており、職業と家族の相互依存的な役割関係を明示的に捉えようとするものではない。しかし、船員家族の職業意識の内実や調査にあたっての方法論的、あるいは理論的な問題については、いくつかの知見を得ることができた。
結 果:
 船員職業とその家族の連関を捉えるにあたっては、職業と家族を相互依存的なシステムと見なす<仕事(職業)−家族役割モデル>を基本的な分析モデルとした。その上で、乗船中・下船中、また海上勤務・陸上勤務といった船員職業の特性を踏まえ、基本モデルにいくつかの修正を加えた。その修正モデルを前提としながら、本調査の分析枠組を設定した。その設定にあたっては、職業上の構造的特性と夫婦関係との連関、また職業上の心理的特性と夫婦関係との連関といった光吉利之らの先行研究を参照したが、分析枠組には船員の就業パターンを考慮した修正を行った。2年度に行われる船員家族に対するアンケート調査に先立って、船員の妻に対して2度のヒアリング調査を行い、船員家族の現状についていくつかの知見を得ることができた。そうした知見を職業一家族役割モデルの仮説命題として生かす作業は2年度日の課題とした。

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