Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

平成13年度

1.衝突・乗揚げの人的要因に関するインシデントレポートシステムの開発と応用についての調査研究(2年計画、最終報告)

                               担当者 村山義夫
目 的:
 事故になりそうだった危険事態をインシデントとして海難調査の一部に加えられようとしている。予防安全にとって有効な方法だが、どのようにすれば調査が可能か、調査結果をどのように活かすかについてはまだ検討段階である。ヒューマンエラーの研究などから得た知見をもとにこの問題を検討し、具体的な方法を提供する。
内容:
@調査方法の開発
操船者のワークロードやヒューマンエラー研究から、海難の人的要因の安全対策に必要な調査内容と調査結果の活用について検討した。
A内航インシデント調査
調査は平成12年4月と平成13年4月に、会社の安全管理者を経由して各船に配布し、船長がまとめて封印して会社に返送し、開封することなく会社から回収した。延べ151社の2,253隻の約5,000人の対象者のうち、1,005隻(回収率44.4%)の2,831人が回答し、2,292ケースのヒヤリ経験が報告された。
B外航インシデント調査
外航小委員会において、これまでの経験からの問題点や課題、将来検討すべき事項について自由討議した。討議方式はKJ方式で、これらについての参加者の自然発生的な発言内容を記録者が要約した表題をつけ、記録メモとした。内容的に類似した記録メモを集約して、大見出しをつけた。
結果:
@人的原因をもたらす間接原因や背景が問題と考え、ミラーの提唱する行動形成因子である「行動の能力」「行動のレディネス(準備、構え)」「技術的前提条件」「組織的前提条件」の各種要因についての調査票を作成した。分析は、要因の関連性を表すオッズ比を指標とし、第三の要因との関係を多重分割表分析する方法を提案した。
Aヒヤリ対象は漁船が半数以上で、左からの横切りが多く、漁船への航法指導が必要である。危険を感じてから最も危険な状態までの時間は全体的には30秒前後が多く中央値は約50秒であった。最も危険な状態の対象までの距離は50mが多く中央値は約100m前後で排他的領域内にほとんどが入っており、早めの対処が必要である。遅い原因をクロス集計表から求めた結果、気が奪われた、予想外だった、仕事に気遣いがあったことが影響し、予想外には相手船の不当航行が関連していた。
@報告制度はあるがISMコードと関係しており、報告数は少ない。他の報告書類が多くなっていること、業務評価に繋がる恐れ、報告の有効活用が不十分であるなども影響している。報告の簡素化、報告の取り扱い、報告のメリットを作り出すことなどが必要である。スクリーニングしてチェック項目を減らす、業務評価しない組織の取り扱い、分析方法の開発によって問題解決する必要がある。
 

2.船内作業における作業リスクと熟練度に関する調査研究 1年度目 まき網漁業を対象にして

                               担当者:久宗周二
目 的:
 近年、漁船船員の労働環境が厳しいこともあって、商船、漁船ともに乗船を希望する若年者が減少している。そのため、労働環境の安全性を向上し、若年者が就業しやすくする必要がある。船舶の運航に必要な人数は、船舶職員法によって乗船させなければならない船舶職員の資格および人数を決めている。しかし、この法律は船舶の航行の安全をはかることを目的としており商船における荷役作業などや、漁船の漁撈作業などの船内作業を行う場合は、船舶職員とは別に船内作業に必要な技能、人数を考える必要がある。これが満たされないと、作業能率や操業回数、漁獲量の低下を来し、労働災害の発生する可能性もあるが、これらの技術は船種毎、地域毎、トン数毎に異なるが、必ずしも体系化されたものはない。 そこで、船内作業を効率よく、かつ安全を確保するために、船種毎、漁種毎、地域毎に熟練漁船船員の持つ技能レベルと、工程毎の技能者の配置やリスクを調査し、リスクを低減させるための作業環境について考察するとともに、新人漁船船員を採用、育成する際に必要な技能を明らかにし、人事計画の作成、船内作業技術の資料を提供する。
方法
今後もまき網漁業が継続的に営まれるように、歴史的発展過程を調べ、労働災害要因を分析して、必要とする技能を調査した。さらに、全国の各海区の漁業会社を訪ねて、漁撈技術の習得に必要な年数や、雇用の確保や、今後の展開について調査した。
結果
@ 必要な技能を技能「ベテラン」指導管理者的作業能力、技能「一人前」応用的作業能力、技能「新人」基本的作業能力の3段階のレベルに分類した。大中型まき網の漁撈工程毎に、作業手順、人員配置を示し、それぞれのポジションで必要な技能を明示し、漁撈技術の評価を試みた。網船を例にして最低必要な人員配置から技能レベル毎に必要な人数を算出すると、技能「ベテラン」11名、技能「一人前」7名、技能「新人」が4名となった。各技能レベル毎に最低必要とする人数がこの数字であり、この人数を下回ると操業に支障をきたし、操業回数および漁獲量の低下につながり、無理な作業から労働災害の発生する可能性がある。この技術レベルを保持できるように、新人漁船船員を採用し、育成のための職場内の訓練をし、熟練漁船船員を確保する必要がある。
A 全国の漁業会社などを回り、主に人的要因の側面から現状と、必要な技術について研究を行った。技能「一人前」(コーンローラー、サイドローラー、まき揚げドラムなどの漁撈機器の操作、船の取り付けなどを安全に行える能力)になるには、1〜3年、長くて5年の経験が必要であった。指導・管理者となる「ベテラン」(漁撈作業の全体を考えながら、パワーブロックなどの揚網機の操作指示、統括する幹部職員の能力 甲板長クラス)になるには、短くて3年、大体6〜7年必要になってくる。また、年齢的には30歳以上が好ましいところもあった。このような状況をふまえて年齢構成、人材の採用、育成を考えなければならない。本調査による漁撈作業の評価の知見は、人事計画、及び漁撈技術教育の資料となり、漁業を継続していくための一つの方向性を示すものと考える。
 

3.女子船員の就労環境並びに意識に関する調査」

                         担当者:金崎一郎、三木奈都子
目 的:
 女性の社会進出や職場進出に伴い、海上労働においても優秀な人材を受け入れていく必要がある。女子船員及び事業者、また女子船員を志す女子学生に対して、聞き取り調査によって就労の実態や職業意識を更に明らかにし、海上労働における男女の望ましい共生関係を探り出すための基礎的な資料を提供しようとするものである。
内 容:
 女子船員については、基本属性、現在の仕事の状況、ライフヒストリー、職業選択の理由、就業の悩み、就業継続等について、女子船員を雇用している事業者については、採用・雇用状況、労働条件・受け入れ体制、今後の見通し等について、女子学生については、基本属性、大学の選択理由、就職等について、それぞれ聞き取り調査を実施した。
結 果:
 女子船員への聞き取りから、@職業選択では、運航要員の場合は船員になろうとする意志の強さがうかがわれるが、サービス要員の場合は海が好きであったり、サービス業が好きだったり、給料がよかったりすることが大きな要因である。A仕事上の目標としては、運航要員では一人前になることが挙げられる。B転職についてはかなりの人が考えているようで、運航要員では船の知識を生かせる職や日帰りできる船を望む声があったが、サービス要員ではあくまでも陸上職に就くことが強く主張され、他にやってみたい仕事があると言う。Cセクハラについては、程度の差はあるが何らかの形でセクハラが存在している。会社の対応についても、諦めから頼りにしているところまで様々であった。D職業継続については、今回の聞き取り対象の場合、結婚・出産・育児の障害をまだ身近には感じていないようであった。サービス要員では、結婚したら退職を考えているという者は半数であった。事業者への聞き取りから、@運航要員としての採用は少ないが、フェリーなどサービス要員では、計画採用に徐々に戻りつつある。A育児休暇等については今後の課題となっている。Bセクハラ等に関しては、フェリーなどで文書等での周知を図っている。女子学生への聞き取りから、@商船大学への入学は、機関科ではエンジンに対する興味、航海科では海や船に対するあこがれが大きな意味を持っている。A希望就職先は、船社が多いが、その就職の困難さから教職につくことを目指すものもいる。B就職活動での悩みは、男女の差別である。C男性の職場で働くことに対しては特別の思いはないようである。
 第2編の運航要員を中心とした分析では、@船員需要が低調な状況下において、女子は船員職への就職と出産・育児をまたいだ就業継続の困難、A事業者は女子船員を目的意識が明確で優秀でと評価しながら筋力的に劣るとし、必ずしも長期勤続を望まず受け入れ体制整備が高コストとしている。B今後、女子船員の参入に関する認識の定着や男女共通の労働力の流動化、社会の結婚観・家族観の変化等により未婚船員の労働状況に関する男女差は縮小していくと考えられるが、女子の妊娠・出産をまたいだ就業継続については陸上勤務への転換など制度の整備がなされない限り難しい。このような制度整備とともに、船員職としての多様な働き方や船員関連職について幅の広い選択肢を、女子学生や女子船員に対して提示することが求められると考えられる。
 

4.混乗船における外国人船員の就労実態とマネジメントに関する調査

                               担当者:金崎一郎
目 的:
 漁船丸シップの導入等によって、今後ますます外国人船員の増加が見込まれる中で、外国人船員の就労実態や船内マネジメントにはこれまでとは違った変化が予想される。混乗の過渡期的段階にあって、現実に生じている様々なトラブルへの対処等を含む船内マネジメントの質をさらに向上させることで、日本人船員と外国人船員とのより協調的な共生的関係を模索していかなければならない。本調査研究は、混乗漁船における外国人船員の就労の実態を把握するとともに船内マネジメントの実態を合わせて調査し、上記の課題に対して有効な方策を講ずる際の基礎資料を得ることを目的とする。
内 容:
 外航人船員の雇用経緯、状況、船内のマネジメントトラブルの事例等について遠洋マグロ事業者に対して聴き取り調査を実施した。聴き取り対象となった事業者の地域と数は、鹿児島県串木野5社、静岡県焼津4社、同清水3社の合計12社である。また、高知県室戸在住の漁労長1名に聴き取りを行った。更に、トラブルに関わるマンニング会社のレポートを整理・データ化し、集計を行った。
結 果:統計データから、特徴的な点をいくつか挙げておくと、中途下船の理由を見ると、@年齢では、24歳以下で怪我と職務怠慢が多く、25歳から29歳で反抗的な態度と暴力行為が増え、30歳以上になると病気が多くなる。A同時下船者の人数では、2人の同時下船では職務怠慢と暴力行為が理由として多く指摘されている。B乗船日数では1ヶ月未満で怪我と病気が多く、1ヶ月から3ヶ月未満では技能未熟が多く、6ヶ月以上1年未満になると再び怪我と病気が多くなる。乗船して1ヶ月ぐらいの間は、緊張と不慣れによる怪我や体調不良が多くなり、3ヶ月程度して、かなりの回数の漁をこなした上で、技能的な問題を見極め、半年以上経過すると慣れによる注意散漫などで再び怪我が増えると考えられる。事業者への聞き取りからは、マネジメント機能の5つの側面(計画、組織化、人員配置、指導、統制)について取りあげ、聞き取りの内容を整理した。漁労長への聞き取りについては、トラブルに対する経験的な対処事例を紹介した。
 

5.内航船員の需給動向及びその給源に関する調査

                          担当者:村山義夫、金崎一郎
目 的:
 内航船員の需給実態とその動向をリアルタイムに把握し、かつそれをデータベースとして蓄積することにある。
内 容:
 使用船員の状況、乗組員の状況、現在の在職者の状況、内航船員の移動状況について事業者を対象に調査票調査を実施し、特に移動の内訳について分析した。
結 果:
@ 使用船員の状況は、船員数と年齢構成において昨年度の予測と同じであり、離職に対する補充の差によって、総数の減少と高齢化が進行している。
A移動の状況は、1年間に1割以上が退職し、その半分近くが再就職し、外部からの補充は2%に満たない。外部流入が少なくリタイヤー者の補充は短期に転社する船員による場合が多い。
B今後の船員給源として熟練船員を望んでおり、リタイヤー船員の再雇用が現実的給源とみており、求人斡旋は公的機関の充実を期待している。

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