Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

昭和43年度

1.荷役機会化と労働需要

      担当者 小石泰道,玉井克輔,山岡靖治,服部 昭,池田宗雄,宮田義徳
  港湾労働実態調査報告書,275〜369("69.1)
 42年度下期において,横浜港にて時間研究的予備調査を行なったのに引きつづき,43年度においては,横浜港,神戸港,東京港において,本調査を実施した。
a,在来型定期船の荷役作業においては,港湾労務者の長時間拘束にかかわらず,有効な荷役作業時間が少なく,労働力の機会損失が大きい。すなわち主体作業時間/現場拘束時間−食事休けい時間×100において,船内作業員32%,船側作業員37%に止まっていた。
 不荷役時間による損失は,主として貨物,トラック,はしけの到着待ちと在来方式の船舶荷役設備やはしけの段取り待ちである。荷役時間中の損失は,主として各運搬リンク相互間の工程おくれによって生ずる。コンテナ専用船の荷役能率との見合いからも,荷役設備,用具の技術開発と作業の能率管理体制の近代化が必要であろう。
b,港湾荷役の機械化は,大量貨物の専用岸壁を中心に進展しており,荷役能率の格差が貨物別,船種別にひろがっている。岸壁機械,新鋭本船ギアのない場合について,可搬式,移動式荷役機械を開発,投入をすすめ,これにより手荷役型の作業を解消していくことが必要であろう。
 

2.漁労機械化が漁業労働に及ぼす影響

                     担当者 小石泰道,服部 昭,山岡靖治
  新技術漁業労働調査報告書,1〜86("69.3)
 漁労機械化の進展にともない,漁労作業員の編成,漁労作業の変化,機械化設備の問題点を作業実態調査から分析,評価する。43年度は以西底曳船について,乗船調査を行なった。
 今回の調査では,船型の大型化,スターントロール方式の採用によって,約2.6倍の漁獲量をあげている。
 一方,投網は省力化によって,投下工数では縮少し,エネルギー代謝率(R.M.R)は,歩行が多くなるなどの影響で増えている。揚網では機械化による影響を一番大きく受け,投下工数は変りないが,R.M.R.は低下した。漁獲物処理では,魚洗機の導入を行なっているにもかかわらず,R.M.R.は変らず,投下工数は漁獲量の増加にともなって,著しく増大した。したがって,時間量が労働負荷となっていると云える。
 労働負担の結果は,省力化船に,他覚的検査で,疲労回復のおくれや蓄積傾向がみられた。自覚的検査,特に情意不安傾向では,雀力化した,しないにかかわらず大きい点が注目される。
 

3.港湾荷役企業の労務管理

                          担当者 玉井克輔,篠原陽一
                    港湾労働実態調査報告書,7〜86("69.1)
 各企業形態の違いによって,その労務管理にはかなりな較差があり,両港間においても,若干の相違がみられる。
 原生的労務管理から近代的労務管理への移行は,若干労働力の欠乏傾向と労働者の意識高揚を基調とした,反人間的反社会的暴力型原生的労務管理の限界と社会問題化という大きな衝激−港湾荷役企業を貫いて上位企業に及んだ−の結果と考えられる。
 その体制整備は,横浜港に一日を長を見,相対的に神戸港から横浜港への指向が把握され,全体としては,こゝ4.5年の間に近代的労務管理の端緒についたものと理解される。
 しかしながら,強力な経済外的要請に強制された業界集約とコンテナシステムの導入を挺子として,未だ自らは労務供給業たる体質を払拭しえぬまま,近代的企業への変身をかりたてられる港湾荷役企業の労務管理は,如何ような体制をとろうとも,(特に労働力と賃金管理において)終局,その枠と矛盾につき当り,現港湾体制では自己完結を見出すことができないであろう。
 

4.港湾労働者の職業定着意識

                     担当者 篠原陽一,神田道子,大木修次
                   港湾労働実態調査報告書,89〜193('69.1)
(a)港湾労働者は,運輸業に隣接しない零細企業からの転職流入者によって構成されている。港湾労働者は,平均約27才でもってパーソナルな経路により,高賃金と不熟練を動機して,港湾に流入している。
(b)流入時,約40%が長期定着を希望している。定着意志は,前職が隣接職業の労働者であったもの,前職退職理由が社会的理由であったもの,希望職業をもちえないものほど高まる。現在時,平均勤続3年において,長期定着を希望するものは,約60%に向上する。
(c)定着意志は,集団定着と会社定着に対しても高い相関をなしており,定着意志が高いほど職場適応は良好である。定着意志が上向するものは,長勤続者,既婚者,リーダー,低学歴,パーソナル流入の属性をもつ。生産性が高く,協調他のある集団は,職業適応が良好で,定着意志が安定的である。
 

5.港湾労働の時間的構造と労働負担

    担当者 久我昌男,小石泰道,鈴木由紀生,玉井克輔,大橋信夫,山岡靖治,
               服部 昭,広田生,鳥井敬三,池田宗雄,宮田義徳
                  港湾労働実態調査報告書,197〜270('69.1)
(a)エネルギー代謝率からみた場合,機械荷役型と手荷役型に分かれる。前者の作業時間内作業強度は中ないし単作業に属し,後者は重作業になりやすい。したがって作業強度に応じた休憩時間制が考えらるべきである。
(b)定期船荷役においては,待ち・おくれ時間比率が大きいので,長時間拘束を可能ならしめているが,連勤においては疲労検査結果からみても問題があり,交替制について検討を要する。
(c)過長拘束時間は通勤時間とともに他の生活時間を圧迫し,労働力再生産に悪影響を及ぼしていると理解され,単位時間あたり荷役能率の向上等によって,生活時間構造の改善をはからないと,港湾労働を魅力ある職場となしがたいと思われる。
 

6.遠洋まぐろ漁船々員の家族に関する研究

                     担当者 岩崎繁野,神田道子,山口理子
     遠洋まぐろ漁船船員の労働の実態に関する調査報告(5),39〜94('69.3)
 まぐろ漁船々員の就労体制および労務管理と海難とに関する研究の一環として,主婦が漁船々員の妻としてどのような意識をもっているかについて調査を行なった。調査対象地は比較的新興漁港としての三崎港,古くから伝統のある焼津港,漁船船員の給源地として有名な唐桑の3カ所である。三崎は耕地をもたず,焼津は加工業が盛んな地域,唐桑は半農半漁の地域である。
 この3地域を比較すると,唐桑が最も生活が安定し,現在の状態に満足しているという率が高い。3地域とも収入がよい点は認めながら,その反面自分の子供には漁船々員という危険な職業につかせたくないという,矛盾した答えが圧倒的に多いことは,注目すべきであろう。
 夫の出漁に対しては航海の安全,無事故を祈ると答えた者が50%以上で,出漁中の健康を願うのが2位であり,大漁を希む率はそれをはるかに下廻り,海難に対する意識は相当高いことが認められる。
 しかし夫の出漁中の主婦の責任感等については,それぞれの地域の特徴がはっきり現れている。子供の健康に対しては3地域とも首位であるが,唐桑では老父母の健康が2位であるのに対して,三崎,焼津では子供の教育が2位にあり,しかし三崎に於て更に高い率を示していることは,その地域の社会構造や家族構成の関連が大きく影響しているものと思われる。
 家族の実態調査では,各地域の特殊性がかなり把握されたが,共通した意見では漁船々員の妻として一家を支える責任感が強く述べられた。
 

7.沿岸漁村の生活実態調査

                              担当者 岩崎 繁野
 42年度は主として生活環境に重点をおいて調査を行ったが,本年度では婦人の労働とそれが生活に及ぼす影響について調査した。対象地は新潟,千葉,長崎県で,県内の漁村2〜3個所を選んで,ききとり調査を行った。
 全体的にみると,若年労働者の減少が著しく,戦後の子女数の減少と,収入の不安定な生活を拒否するという傾向が強くみえる。しかし漁業を全然放棄するわけにもいかず,いきおい、労働年令は高令化し,それを支えるものは婦人の力によるというのが現状である。 そういう労働力不足が婦人を乗船して出漁させるという状態にまで追い込み,トトカカ船といわれる漁船まで出現している。このような婦人の漁業への参加は,当然家事労働にしわよせされ特に子女の家庭的,社会的な教育に大きな影響が現われ,それが漁業嫌悪につながるという悪循環を呈している。
 しかし地域的にみると収入のよい漁村や,半農半漁で飯米または生活の安定しているところでは,後継者はそれ程減少していないなど,ひとくちに沿岸漁村といっても各種各様の特色があり,沿岸漁業のむずかしさがうかがわれた。
 

8.あまの適応能力に関する研究

                              担当者 岩崎 繁野
 現在就労している日本のあまは,男女合せて約2万人といわれているが,正確な数は把握されていない。その分布は九州,四国地方及び東北では男子が多く,近畿,南関東では女子が多い。南限は沖縄であり,北限は北海道松前地方である。
 43年度は福岡県鐘崎の海女,壱岐,対馬の海士および海女,沖縄の糸満漁夫について就労状態の調査を行った。
 一漁期間の体重の減少や栄養の摂取は,他地方のあまに比較して大きな差はみられなかった。
潜水の方法では,おもりを用いて潜水するあまに,船上のパートナーを2名つかい,1人はあまの命づなを,1人はおもりを引き上げるという壱岐の作業方法に特色があった。
 沖縄の糸満には追込みあみという漁法があるが,これも従来の形態は失われ,深く潜水する作業方法は行っていない。
 いそがね,眼鏡等については各地方によって若干の相異がみられるが,3〜4年来のウェットスーツの普及によって男子の進出がみられるとともに,全国的に作業状態も統一され,地方による特色は年々失われつつある。
 

9.操船者の知的機能に関する研究

                              担当者 狩野 広之
                 操船技術構造に関する研究(6)5〜18,('69.3)
 以前は「R.K.P.401」検査として報告してきたが,最終報告として,S.A.B〔Sea- men's Apptitude Test Baltery)の一部に包含することとし,SAB FORMVとして報告する。本検査は甲板部士官採用のために,操船技能に関連のある人間の機能を測定できるか否か,検査することを目的としたものである。昭和38年から43年の6年間にわたり,パイロット試験受験者189名,海技大学生413名,海運会社社員85名,計588名を対象に実施してきた。
 本報告は最終報告として,6年間の研究結果をとりまとめると次の通りである。
(1)本検査の成績を規定する要因として一般的素質レベルと年令的機能低下の要因が大きく影響している。
(2)一般的素質と年令階層がほぼ同質である対象集団の成績の比較から,本検査は一般的素質の他に,さらに操船技能の特性に関連のある人間の機能の側面を検知する可能性がある。
(3)現在までの研究結果の範囲内で,採用規準を試案して提案する。
                 総合得点成績
 甲板部士官  商船大学卒業者   30点以上
         その他      30点以上
 パイロット   54才以下     20点以上
         55才以上     10点以上
 

10.船員の知的機能に関する研究

                              担当者 狩野 広之
                操船技術構造に関する研究(6)19〜28,('69.3)
 前年(昭和42年)部員の採用にあたり船内作業に適する者を検査する目的で,「SAB FORM T」検査法を開発した。本年(昭和43年)は前年に引続いて試験的に海員学校生385名,航海訓練所訓練生521名について実施した。両年にわたる検査結果より学校程度別,学校別科別に検討,学校程度別(商船大学,商船高校,海員学校)にかなり顕著な差が認められた。従って本検査法は一般的知的機能レベルを測定し得るものと考えられる。これらの結果より,部員の採用について,本検査を実施する場合,下記の採用規準を試案として提出する。
              (対象)
          商船高枚卒業者     海員学枚卒業者
 検査  満点  航海科  機関科    高等科  司厨科
 A   (37)  15以上  15以上   10以上  5以上
 B   (35)  20以上  15以上   10以上  10以上
  C  (107) 30以上  30以上   15以上  10以上
 D  (137) 45以上  45以上   30以上  30以上
合計点 (316) 120以上  115以上   90以上  70以上
 

11.船員のパーソナリティ・テストに関する研究

                              担当者 狩野 広之
                 操船技術構造に関する研究(6)29〜43('69.3)
 船員のパーソナリティ・テスト法としてM.M.P.Iをもとに前年(昭和42年)「SAB FORMU」検査法を考案した。本年(昭和43年)は前年の1,126名に続いて海員学校生385名,航海訓練所訓練生521名,パイロット試験受検者29名について試験的に実施した。両年にわたる調査例をまとめ,学校程度別(商船大学,商船高校,海員学枚),学校別,学科別,職種別に検討した。その結果を概要すると,
(1)学校程度別にみると,社会的適応度,情意安定度の各スケールにおいて,商船大学群が商船高校群及び海員学校群より適応及び安定傾向を示したが,後二者の間には差がみられない。
(2)社員,海技大学生,パイロット受験者の結果についてみると,一般的にいって各スケールとも甲板部群の方が,機関部群より得点の高い方へ分散している場合が多い。しかしその差は僅少であって,その結果を特に意味づけて考える必要はない。
(3)船員の採用にあたり,「SAB FORMU」を実施した場合,下記の採用規準を試案として提案する。
           T(社会的向性)  U(思考的向性)
職員 商船大学 N    30以上       30以上
   卒業者  E    30以上       30以上
   その他  N    40以上       20以上
        E    40以上       20以上
部員 甲板部・機関部   20以上       20以上
   事務部       30以上       40以上
   パイロット     30以上       30以上
 
           V(社会的適応)  W(情意安定)
職員 商船大学 N    40以上       30以上
   卒業者  E    40以上       30以上
   その他  N    20以上       20以上
        E    20以上       20以上
部員 甲板部・機関部   20以上       20以上
   事務部       20以上       30以上
   パイロット     30以上       20以上
 

12.船員の情報処理能力に関する研究

                         担当者 鈴木由紀生,飯田裕康
                 操船技術構造に関する研究(6)44〜54('69.3)
 操船する際に要求されると考えられる間隔の目測能力を調べるために,間隔評定検査装置を試作し,海技大学生112名を対象にして検査を行なった。この調査とともに,間隔評定検査に含まれる要因を検討する目的で,茨城大学学生10名を対象にして実験を行なった。なお実験は,
 実験T  刺激のポールの動く速度による評定値の差の要因,
 実験U  評定すべき標準刺激をどのように見積っているか,
 実鹸V  比較刺激面の横造の違い,以前の試行の影響から被験者の評定する手がかり      は何か,
の3実験より成立っており,前調査と同じ装置を用いた。
 結果は次のようである。
(1)目測能力調査では
 a 個人間にかなり大きな差がみられる。
 b 上行系列の方が下行系列より狭く評定する。
 c 下行系列の場合,速度が速い方が遅い時より狭く評定する。
(2)間隔評定検査にふくまれる要因を検討する3実験では,
 実験T 反応キーを押す反応時間による差よりは,反応しようと決意する時間に大きく     影響する。
 実験U 標準刺激の間隔を距離尺度に翻訳し,その翻訳に見合った大きさに合うように     評定する。
 実験V 長条件より短条件の方が狭い評定をする。速度別では上行,下行系列で評定が     異なる。
 

13.船橋における情報分析に関する研究

                     担当者 森清善行,飯田裕康,吉竹 博
                 操船技術構造に関する研究(6)57〜78('69.3)
 昭和38年春日丸から船橋における情報分析が開始され,昨年度,超大型船において試みられた。今年度(昭和43年)は国鉄連絡船にて実施した。調査方法は前と同じく船橋において交わされる言語情報とその流れの方向を記録するとともに,テープレコーダーで録音した。宇高連絡船24便,青函連絡船14便で得られた情報を,情報密度,補助情報検索比,情報の流れの方向と頻度から解析した。
 結果を要約すると次の通りである。
(a)宇高連絡船の場合
1)情報密度(=総情報数/操船所要時間)は入港時に最も高く,出港時,航海時の順である。
2)出港時の情報密度は経験による差はなく,どの操船者の場合もほぼ一定している。
3)入港時の情報密度は操船者によってかなり変動がみられる。
4)夜間航海中の情報密度は日中のそれに比べて高い。
5)補助情報検索比は航海中に大きく,出港時にくらべて,入港時の方がやゝ大きい傾向がみられる。
(b)青函連絡船の場合
1)入港時に情報密度がやや多いと思われるが,その他の点で特筆すべき傾向は認められない。
2)入港時,経験年数が多いと,補助情報検索比は小さくなる傾向が認められた。
 

14.操船者の精神的緊張に関する研究

                          担当者 大橋信夫,広田
                 操船技術構造に関する研究(6)79〜88('69.3)
 昭和43年度は,1.同一船長が異なる港で離着岸する際の心拍数の変化の比較(個人内の比較),2.異なった船長が同じ港で離着岸する際の心拍数の変化の比較(個人間の比較,)について検討するため,国鉄連絡船(青函及び宇高)の船長を対象として調査を実施した。宇高連絡船については9人の船長について出入港あわせて48回(1968,7月),青函連絡船については7人の船長について22回(1968,8月)の測定例を得た。これらについて分散分析を行なって検討した結果,青函と宇高とでは船長の心拍数の変化に相異がみられた。この相異は,宇高が入船づけ,青函が出船づけという操船条件のちがいからくると思われる。また,今回の資料と,これまでに得た大型外航船の資料とを比較すると,心拍数の変化はあってもそのレベルはあまり高くなく,これは連絡船そのものの運動性能が秀れていることと,情報取得が容易であること,操船者が船と港を熱知していることなどに原因があると考えられる。
 

15.船員労務のコミュニケーション管理に関する研究

      担当者 西部徹一,藤島良雄,神田道子・篠原陽一,大木修次,岸田孝
 船員労務におけるコミュニケーション管理に関する調査研究報告書,1〜109,('69.3)
 最近の労務管理が,従業員の意思をまったく無視しえず,従業員の自発的な職務態度を期待するとき,これにおけるコミュニケーションのあり方は,経営活動の推進や経営組織の維持におおきくかかわるものと,理解されはじめた。
ことに,海運会社のばあい,労務管理の連続性や持続性をかく職場組織をとり,さらに最近における企業規模の拡大,経営活動の急展開のなかにあって,コミュニケーション管理がそれなりに重視されてきた。
 海運会社にかける船員労務管理におけるコミュニケーション機構,海陸間コミュニケーション状況,船内コミュニケーション状況について実態調査をおこなった。この調査から,海運会社は管理手段を船内管理者との個別的な接触から,乗組員との直接的な接触に重点を移し,それに広報的な手段で補強する傾向にあるが,それらについての目標設定,手段整序,効果測定には管理意識が不足している,海運会社と乗組員とのコミュニケーション状況は会社が乗組員にあたえる情報の情報性,一貫性,権威の高さ,乗組員の会社にたいする好意度,要望のひろがりなどに依存している。船内ファストリセプターの評価・態度,それとオピニオンリーダーとの対抗関係などに依存している。船内コミュニケーション状況は船内管理者のリーダーシップ,インフォマルグループの状態,海陸間コミュニケーション状況に依存しているなどが,あきらかとなった。
 

16.船員の疾病災害に関する研究

                          担当者 西部徹一,山口理子
 近年,下船療養率が増加しつゞけて憂慮されて,それが昭和41年に至ってやゝ低下の傾向を示し始めた。しかし成人病の増加は依然としてつづいている。傷病の発生傾向とその背景にある諸要因を検討することによって,予防対策を立てるための資料とする。
 

17.船員の健康検査法に関する研究

                              担当者 久我 昌男
 船員の中には,ひん発下船者がいる。これらの多くは自律神経機能に異常がみとめられる。そこで,現場に適した簡単な自律神経機能検査法を研究し,実用に供するよう努力している。
 

18.南方材による皮膚障害に関する研究

                              担当者 久我 昌男
 南方材で問題なのは,スマトラ材,ボルネオ材であって,化学分析およびパンチテストの結果,揚荷のとき乾燥したとがった粉塵が食塩と作用して皮膚に障害を起こすのである。予防としては撒水によって,粉塵をおさえるのがもっとも簡単のよい方法である。
 

19.硫酸タンカーの安全衛生に関する研究

                              担当者 久我 昌男
 硫酸タンカーの安全衛生対策として実態調査を行なった。ガスのもれはほとんど問題にならないが,ポンプ・ルーム内のもれた硫酸の処理方法の改善,フロート,ゲージの設置,ペントラインを高くすることなど改善点として上げられる。
 なお,血液検査による所見については,調査を続行中で,はっきりしたことは云えない。
 

20.巡視船乗組員の健康管理に関する研究

                              担当者 久我 昌男
 海上保安庁の巡視船乗組員は,小型船で荒天に出動するという,特殊な環境化にある。したがってその健康管理には,実態に即した方法をとって,実効を上げる必要がある。そのため今年度は先ず厳寒季函館を基地とする巡視船乗組員について,健康状態の精密な調査を行なった結果,入港時と出港時の比較において,生化学的所見では,巡視航海による生理的負荷が,十分回復していない者がみとめられた。
 

21.機関制御室の人間工学的研究

   機関運転管理システムとしての集中制御方式の検討
                               担当者 神田 寛
 高度集中制御方式の研究に関連し,コンピュータを実用化する場合,如何なる機関管理システムにおいて,如何なる機関集中制御方式の装備が最も好ましいかという問題を文献を中心として検討した。
(1)航海当直中,計器盤を「じっと見張って」万一の事故にそなえるというような看視作業はさける。また従来の航海当直の考え方を止め,全員でデイリ.ワークとしての機関保守整備作業に当ることを立前とし,諸機械の運転状態の看視,巡視は定められた基準にしたがって定時刻に実施する。したがって第一に聴覚情報によることを主眼とすること。聴覚により異常を知り,ついて原因を視覚により容易に確認できる計装に目標を置くべきである。
(2)機関室には当直者が常時いないので,船橋から主機の遠隔操縦が可能であること。
(3)機関室の異状を適切に関係者に知らしめる居住区警報が必要である。
(4)データの自動記録が必要である。
(5)主機関等発停のための操作と直接関連する計器については,極力数を少なくして操作を中心に1つにまとめ,人間工学的配慮が必要である。
(6)セントラル・コンピュータを装備する場合には,その特性を十分に生かすためにも,高度の集中制御方式を目標にすることが望ましい。
 

22.船内体操の試案

                          担当者 広田生,大橋信夫
 当所考案による”肩ふり体操”を試案し,ソノシートにして普及をはかった。
 

23.船員の身体的機能に関する研究

                          担当者 広田生,大橋信夫
                操船技術構造に関する研究(6)89〜102,('69.3)
 今回,外航労務協会,某大手船会社,海技大学校,運輸省の好意により船員の体力測定の機会を得たので,文部省の壮年体カテストに基づき,敏捷性(反復横とび),瞬発力(垂直とび),筋力(握力),巧ち性(ジグザグドリブル),持久力(急歩)、の5項目5種目について測定を実施した。これらの測定項目は船上でも実施が可能であり,ラフではあるが測安値の比較も可能であることがわかった。大別すると航海中の船員(5種目廷ベ5,851名),陸上にいる船員(同2,196名)であり,各々海上群,陸上群とし,文部省の出した一般日本人の値と比較検討した。
 その結果,@一般日本人にくらべて船員がすぐれているのは筋力である。A職員の方が部員よりよい値をもつ。B海上群が陸上群よりよい値をもつ,ような傾向がみられた。なお特にここのBより,海上において行なった船員自身の体力測定が船内における体力づくわの一つの大きなきっかけとなったことが推察できた。
 

24.小型鋼船の騒音振動調査

                         担当者 神田 寛,小原 武文
 東京湾内航行の油槽船,大島航路旅客船を選んで,船内騒音,振動の判定とその評価,乗組員全員の聴力検査を実施した。
@小型鋼船においては,中速ギャードディゼル機関の採用によって,騒音振動とも,大型鋼船と異なった特徴を持っている。
A機関室騒音は大型鋼船に比べて極めて大きい(105〜110ホン(A))。しかし機関制御室があり,ギヤードディゼル機関のため船橋制御が簡単で信頼性も高く,機関室当直はほとんど聴力保護限界以下の騒音レベルである機関制御室内で行なわれている。
B乗組員の聴力検査では,機関部に高音域の聴力損失がみられ,明らかに甲板部との差がみられる。これは騒音性難聴によるものと考えられるが,会話困難となる語音域聴力損失30dB以上の者はいなかった。
C居住区は直接機関室の直上に位置することが多く,一般に騒音レベルは大きい。航海中は75ホン(A)をこえるところがある。大型鋼船では75ホン(A)をこえることは余りない。当面の目標として75ホン(A)以下におさえることである。反面,この種の船は日中運航,夜間停泊というように陸上の生活に近く,夜間の睡眠にはさしつかえがないことが多いという点があり,大型外航船より許容限界を緩和できるであろうが,75ホン(A)以上は居室としては好ましくない。
D振動はこの種の小型鋼船の特徴として,2,000c/mというような比較的高い振動数のものが主勢力となって振動感覚に影響する。振動は特に大きいとは考えられないが,しかし騒音がきわめて不快なうえに振動が加わってますます不快さを増すことも考えられ,今後この面の検討と対策が必要である。
 

25.騒音下における信号音の可聴距離に関する研究

                         担当者 神田 寛,小原 武文
 信号音を開く例の人間の聴力,環境騒音によるマスキング効果などの面から,1つの実験を通じて検討した。
 白色雑音の各スぺクトル・レベル下における純音の最小可聴値を実験結果から求め,信号を開く例の環境騒音を1/3オクターブで周波数分析し,各オクターブ・バンド・レベル下における最小可聴値を求めた。
 さらに,信号音を開く側の環境騒音のほか,信号音の距離減衰と空気吸収による減衰を考慮した場合の相手側の信号音の所要音圧レベルを求めた。
 これらの結果,従来の船の信号音より高い周波数(250〜500c/s)が望ましいことがわかった。しかし,今後信号音の音色と聴覚,信号発生器のパワー発生能力の機構上の問題,音の指向性等多くの検討すべき点が残っている。
 船は巨大化の一途をたどり,巨大化する程運動性能は低下し,衝突防止の際の急速停止距離もきわめて大となる。もしこのような巨大船が狭水道で衝突事故を起こしたなら,莫大な災害が生ずることは過去の事例から推察される。また小型鋼船では船橋騒音が大でマスキングされ信号が聞きにくいといわれている。レーダその他の航海計器の発達により,特に霧中による事故は大きく減少しているが,汽笛等の音響信号装置の果す役割はまだ決して減少していない。直接耳で聞くことのできる音の質を十分知った上で有効に役立てるための一つの研究である。
 

26.旅客船の空気調和に関する調査研究

                         担当者 神田 寛,小原 武文
 旅客船の空気調和のあり方と理想的な標準仕様を検討するための船舶整備公団からの依頼による。造船所,空調メーカの協力によるが,当所は衛生工学の立場からの検討が中心である。
 対象船として,あまみ大島航路のあまみ丸に乗船し,船内の温熱条件,室内の温湿度分布,気流,換気の良否の判定,旅客の意見調査を実施した。この結果をもとに船内温湿度条件,新鮮空気取入量,タクト,吹出口,換気口の適性位置を検討した。
 旅客船として冷房負荷を大きく左右する要素は,旅客数の多いことが原因となる人体発熱量,外気導入量であり,また船内スぺ−スが狭いことによる施工上の問題点も多い。さらにこれらの特徴をもった小型旅客船の設計条件の設定と標準仕様を策定し,基本設計に便なるよう一つの指針を与えることができた。
 

27.作業負荷からみた防火服の研究

                         担当者 沼尻 幸吉,神田 寛
 常温または火災時の高熱を受ける状態で,防火服を着装して作業する場合,どのような労働負荷がかかるかを実験的に把握し,防火服の改良の資料とした。
 火災時の実験は,船研火災試験炉前を利用し,普通作業服,軽装用防火服,重装用防火服着装のうえ,大中小の負荷を与え,エネルギー代謝率,心拍数,皮膚温,直腸温,衣服内温度,輻射熱等を測定し,比較検討した。
 今回の実験は防火服の予備実験ともみられるが,今後船舶用の防火服の装備がIMCOで勧告されている析がら,船舶用防火服の今後の研究に大きな示さが得られた。

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