今井君の音楽
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ボクは動画を作っていて、今井君には折に触れ動画につける
音楽を作ってもらってきました。かれこれ10年くらい前
ウクレレマンというアニメーションを作ったのですが、
その時ボクがつけたウクレレのフレーズを今井君が膨らまして
曲にしてくれたのが最初です。それ以来、「ゴー!ゴー!コニーちゃん!
のテーマ」をはじめたくさんの曲をつくってもらってきました。
曲によっては、ボクが細かく注文をつけて作ってもらったものもありますし、
今井君が自由に作ったものをそのまま使わせてもらう事もありました。
また、ボクが作ったカンタンな曲をアレンジして、仕上げてもらう事を
お願いしたりもしました。
どんな時もボクが今井君の音楽に感じたことは、「素直」だということでした。
彼は、彼の「心がならす音」に素直に従って曲をつくっていました。
それは、とてもピュアで無防備な音楽でした。
適当ににごまかして作ってしまうというような事を彼は絶対にしませんでした
・・・というか、したくてもできなかったんだと思います。
それは、彼の人柄がとても「素直」で「誠実」だったからでしょう。
ウクレレマンの曲をつくってくれた時、ボクは彼がおもしろがるだろうと思って
こういう話をしました「ウクレレマンでボクがつくったフレーズ、ビートルズの
When I'm Sixty-fourからパクッたんだよ、そう言われればそう聞こえるだろ?」
すると彼はこう言いました「その話、あんまり聞きたくありませんでした・・」
出会った時から今井君とボクはずっと違うところを見てたのかもしれません。
木原庸佐
[イラストレーター。コニーちゃんの原作者。
学生時代のサークルの先輩でもあり、夫の音楽仕事の主なクライアントでもありました]
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音楽に関する今井君の思い出
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今井君の音楽に接した最初がいつだったか思い出せないのだが、
吉祥寺のライヴハウスで90年代の前半頃にいくつかのバンドが
演奏会をやって、そこに今井君の所属する「フラジール」という
バンドも出ていた。今井君はアクースティックギターとヴォーカ
ルの担当で、どちらもとても上手かった。歌は口を大きく開け、
絞るような感じで歌い、ギターは弾くだけでなく、ボディを叩い
てパーカッションとして使うようなこともしていた。
フラジールはあと一度、あるパーティーで演奏しているのを見
た。このときはドラムキットをリズムボックスに換えていた。
フラジールの音楽は静かで耽美的で、回り灯籠のような幻想性
があった。ロックコンボという感じでもなかった。ただし今井君
はメンバー4人の内の1人だったのだから、彼の音楽性が全面的
に反映されていたわけではないだろう。
そのライヴの先だったか後だったかはっきりしないが、何かで
彼と会いそのあと「うちに寄りませんか」と言われてアパートま
でついていったことがある(94年頃か)。そのとき今井君は既
にマッキントッシュにシーケンスソフト(シンセサイザーなどを
自動演奏させたり、そのためのデータを打ち込んだりするパソコ
ンソフト)を入れて曲作りをしていて、そうやって作ったピアノ
ソロのような曲を聴かせてくれた。「こうやって聴いていると自
然に流れていくように聴こえるけど、ほんとはデータを打ち込む
のにすごく時間がかかって苦労してるんですよ」と彼は言ってい
た。それは今思うと「未来のあなたに」という曲だったのではな
いかと思われる。他に、4トラックのカセットレコーダーで作っ
たらしい曲もいくつか聴かせてもらった。フラジール風の曲や言
葉遊びのような曲があったが、中でも印象に残っているのが、町
の雑踏の音をバックに彼がアカペラで歌っている曲だ。たぶん歌
と背景音とは別々に録ったのだろう。ある種実験的な音作りだが、
僕も当時似たようなアイデアをもっていたので記憶に残ったのだ
った。
そのあと、僕が自分の曲を入れたテープを彼に郵送すると、彼
はその中の一曲をアレンジし直し、録音し直して、自分の曲数曲
とともに送ってくれた。うれしかった。
一度、僕がベースギターを担当していたバンドの練習に今井君
に来てもらったことがある。だがあまりうまくいかず、彼の実力
を発揮してもらえなかった。(というか、そのバンド、その後活
動しなかった。)
これも順序があいまいだが、忘年会で彼が白いアクースティッ
クギターでソロ演奏をするのを見たこともある。3曲演って、ど
れも危なげのない演奏でよくまとまった曲だった。たまたま僕は
ピアノの前に座っていて、小さな音でキーを探ったら、3曲とも
Cだった。
これ以降、今井君と僕の間で音楽上の交流はほぼなくなってし
まう。彼の亡くなる半年ほど前、彼に久しぶりに電話して、バン
ドをやるので参加してほしいと誘ったのだが、多忙ということで
断わられてしまった。このときの電話が今井君との最後の会話と
なった。
今井君の音楽は、枠組みががっちりしていて、まとまりがよく、
安定感がある。あるべきところに必要な音がきちんとあり、地に
足がついている感じがする。きっと彼はバランス感覚に優れた人
で、ただ個性を主張するためだけの強引な手法は好まなかったに
違いない。また彼は様々な音楽の要素を自分の作品に取り入れて
いるが、その取り入れ方が実に屈託なく、素直だ。
そういう理由で、彼の音楽は聴く人を選ばない。老若男女誰も
が、何の抵抗感もなく、何の予備知識もなしに、すぐに彼の音楽
を楽しむことができるだろう。
そこが今井君の音楽の美しさだと思う。
千地隆志
[イラストレーター。
学生時代のサークルの先輩でもあり、夫の音楽仲間でもあります]
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