静電気対策と静電植毛
2003.05.16
静電気対策
1. 合成樹脂の普及と共に静電気対策が重要になりました。
日本の化学装置の専業メーカは1960年代に肥料・石油化学プラントを主要分野にしていました。1970年代前半には公害対策中心の業態になり、さらに、半導体と生化学の分野で無塵室と純水プラントが重要な市場になりました。公害処理装置でも、プラスチックは化学的に安定であることから、低温分野で積極的に使われるようになりました。無塵室は低温低圧なので、化学的に安定していることにより、プラスチック配管、プラスチック系塗装が主体となり、そのため静電対策が重要になりました。
2. 主な対策は吸湿性を高めることです。
静電気対策の主流は湿気を与えた静電気を逃がすことです。このためには界面活性剤を主体とした薬剤を吹き付けるのが主流です。しかし、
無塵室等では湿気を与えられない環境が多くなります。その場合、固体と気体の輸送部分が問題になります。
これらの試作段階で静電気によると思われるトラブルが頻発したが、加湿剤を吹き付けられないので苦労したと聞いています。
固体の輸送の代表はエアスライドがあります。これはセラミックや焼結金属等で作った多孔質材料や金網を組み込んだルート・ガイドを設け、ルート・ガイドから吹き出す空気で上部にあるプラスチックのような軽い物体を移動させます。軽い物体の多くは絶縁性が高く、静電気を帯びやすい性質を持っています。またプラスチック部品にアルミ膜等を付ける真空蒸着でも似た条件になります。
無塵室の作業者の衣服も毛が飛ばないように長繊維系統の合成繊維なので静電気除去に苦労したという話も聞いています。

2. 除電器というのがあります。
除電器は900V位で放電して、周囲の空気を不安定にすることにより除電します。印刷工場等で紙やプラスチック・フィルムのようなシート状の物体をローラーで移動させる場合、印刷ローラーとシートとの間の摩擦による静電気を除去する必要があります。ローラーとの摩擦による静電気の電圧はローラーとの接触点から徐々に高まって、ローラーの円周長に相当する下流の地点でピークになり、それから下流はその高い電圧で安定します。「鉄は熱い内に打て」の格言と同様の理由で、安定した静電気は除去しにくいので、安定する直前で除去します。即ち、印刷ローラーからその円周長だけ下流の場所に除電器を付けます。安定し始める場所が特定できない場合が多いけれども、その場合は「しないよりした方が良い」という立場で、静電気の電圧がピークに達しそうな場所に設置した方が良いとされています。(1980年10月、東京都立工業技術センターの特殊印刷講習会)。

2003.05.23
静電植毛
1. 1970年代は「付加価値の高い合成繊維」の開発が繊維業界の課題でした。
特に成功したのはクラレの合成皮革(商品名クラリーノ)でした。繊維メーカのトップ企業と自負する東レは極細繊維の静電植毛によりスウェード調のエクセーヌを開発して、「販売総額ではクラリーノが上かも知れないが、技術水準ではエクセーヌの方が難しい」と自慢したと聞いています。
2. 以下の技術は1980年10月に東京都立工業技術センターの特殊印刷講習会で聞いた話です。

静電植毛とはパイル(フロックとも言い、例えば、1.5デニールの直径で長さ0.6mmの短毛のナイロンのような短繊維)を底に金網を張ったフルイに入れ、そのフルイとその短繊維を付着させるために接着剤を塗ったシート(紙、布、プラスチックシート)の間に高電圧(プラスかマイナスの2万−3万ボルト)を加え、20cm程度の高さからシートに短繊維をまき散らします。静電気を加えているので、短繊維は立った状態で付着します。
手作業で行う企業が多く、フルイには約1mの絶縁性の柄(アクリル等)を付け、その柄を持って散布しますが、フロックが静電的に凝集しないようにフルイを揺動させながら散布します。
付着させるシート(プラスチック成型品等も可能)は電源の一方の極に接続した接地板の上にのせますが、接着剤を塗布した部分も金属クリップ等で電源に接続します。
シートの絵柄に合わせて接着剤を塗ります。接着剤はスプレーかドブ漬けかスクリーン印刷(多くの場合、ナイロン109メッシュ級のスクリーンを使用)で塗布します。接着剤には導電性が必要で、シートが紙や木であれば酢酸ビニール系、ナイロン・シートにはアクリル系接着剤にアンモニア水を数滴垂らして導電性を与えたものを用います。金属シートには導電性を与えた二液性接着剤を用います。
自動化する場合は、パイルを下に置いて、静電気でシートに吸い上げるアップ法が多くなりますが、接地した金属棒で時々攪拌して凝集防止をします。
能率は1日50uで、1日の加工賃が1.5万円とされていますが、粗悪品は接着剤の処理が不十分で脱毛する場合が多くその対策がポイントになります。