[日立デジタル百科事典より抜粋」

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西洋料理

せいようりょうり

欧米諸国の料理の総称であるが,日本および近隣の中国,朝鮮などを除く諸外国の料理という意味で,より広義にインド,中近東,東南アジア,その他の料理を含めることもある。どの国の料理も〈焼く〉〈煮る〉〈揚げる〉〈蒸す〉といった調理法の基本に変りはないが,それぞれ異なる気候風土,産物,歴史などの影響を受け,特徴ある料理が発達している。西洋料理に共通する特色としては,獣鳥肉を主材料とすること,油脂類,香辛料を多く使うこと,穀物をおもにパンの形で粉食することなどがあげられる。

[欧米各国の料理]  

(1)フランス料理 西洋料理を代表するもので,変化に富んだ優れた料理法が発達し,他の国の料理にも大きな影響を与えている。現在,イギリス,アメリカをはじめ各国で, 正餐(せいさん) (ディナー) にはフランス料理が用いられることが多い。⇒フランス料理

(2)イタリア料理 古代ローマ以来の長い歴史を誇るイタリアでは料理も早くから発達し,ルネサンスの時代には,フランス料理に影響を与えて,その発達の契機になったといわれる。恵まれた気候風土がもたらす豊かな産物と,食べることをひじょうに重視する国民性が結びついて,数多くのパスタ,地中海の海の幸を生かした魚介料理,トマトやオリーブ(オリーブ油)の多用などに特徴づけられる,個性豊かな料理が生み出された。各地方の伝統的な郷土料理が受けつがれているのも特色の一つで,あまり手をかけずに材料の持味を生かす,家庭的で素朴な料理が多い。代表的な料理としては,子牛の骨つきすね肉の煮込みであるオッソブーコ ossobuco,子牛肉を生ハムで包んで焼くサルティンボッカ saltimbocca,野菜のたっぷり入ったスープのミネストローネ minestrone などが知られている。パスタはスパゲッティ,マカロニをはじめカネロニ,ラザーニャ,ラビオリなどさまざまな大きさや形のものが100種類以上あるといわれる。パンと同じイースト生地を薄くのばして好みの材料をのせ,チーズをちらしてオーブンで焼き上げるピッツァや,米をだしで固めの粥状に煮込むリゾット risotto も有名である。

(3)スペイン料理,ポルトガル料理 古来,多民族と接触のあったスペインの料理には,変化に富む気候風土も手伝って,地方色が色濃くあらわれている。中央部のカスティリャ地方の子豚の丸焼き,南部アンダルシア地方の生の野菜をすりつぶしてどろどろにした冷たいスープ,ガスパチョgazpacho,米の産地バレンシア地方の肉や魚介を入れてサフランの風味をつけたたき込み飯,パエーリャ paella など各地に名物料理は多い。丸く平らに焼く野菜入りのオムレツのトルティリャtortilla や,肉,豆,野菜などを煮込んだコシードcocido のように全国的に作られている料理もある。すべての料理に共通するのは,オリーブ油,ニンニク,豆,干ダラ,そしてハム,ソーセージなどの豚肉加工品が多く使われることで,地中海,大西洋に面していることから,魚介料理もよく食卓にのぼる。午後2時ごろの昼食が正餐で,夕食は午後10時ごろで軽いため,夕方の間食(メリェンダ merienda)の習慣がある。ポルトガル料理はスペイン料理と似ているが,魚介料理は干ダラを使うものなどもあり,種類は豊富で,香辛料の使用も多い。

(4)イギリス料理 一般に堅実で保守的なイギリス人は,食事も実質的なものを重んじる。調理法,味付けは全体に単純で,肉料理ならロースト・ビーフやロースト・ラムのようなロースト料理(ロースト)が代表的である。牛のしっぽを使ったオックス・テール・シチュー,ラム肉と野菜を使ったアイリッシュ・シチュー(シチュー)のような煮込み料理や,子牛やラムの腎臓を加えた詰物をして焼くキドニー・パイ kidney pie など,家庭料理に美味なものが多い。島国ならではの新鮮な魚介類を使ったものでは,北海のサケで作ったスモークサーモン smoked salmon は定評があり,街角で見られるフィッシュ・アンド・チップスという魚のフライとジャガイモの空揚げは,アメリカのハンバーガーのような手軽で庶民的な食べ物である。酒に漬け込んだ乾燥果物をたっぷり入れて作るプラム・プディング plum pudding はクリスマスの菓子として欠かせない。また,ティー・タイムに味わうビスケットやケーキの類の多様さ,朝食の豊富さもよく知られている。

(5)スイス料理,ベネルックス諸国の料理 ドイツ系,フランス系,イタリア系などの住民からなる多民族国家スイスでは,これら3ヵ国の料理がそれぞれスイス風にアレンジされている。そのため,スイス独特の料理をさがすのは難しいが,ワインを加えて溶かしたチーズをパンにからませて食べるフォンデュや,ゆでたジャガイモに溶かしたチーズを添えたラクレット raclette のように,特産のチーズを生かした料理が多いのが特色といえる。ベルギー,オランダ,ルクセンブルクの料理には,隣接するフランスやドイツの影響が見られる。総じて素朴な家庭料理といった趣が強く,オランダの牛肉やジャガイモ,タマネギを柔らかく煮込んでつぶしたフッツポット hutspot,ベルギーのウナギのグリーンソース煮などは伝統的な料理である。ヒラメ,ニシン,タラ,ムールガイなど北海でとれる生きのよい魚介類を使った料理も美味である。

(6)ドイツ料理,オーストリア料理 ドイツ料理は質実な国民性を反映して実質的,合理的な性格をもつ。肉料理では煮込みが多く,酢に漬けた牛肉を焼いてから煮込むザウアーブラーテンSauerbraten などが有名。これにはジャガイモのだんごやパンケーキが添えられて,ボリューム満点の食事となる。ジャガイモはそのほか,ゆでたり,ピュレーにしたりしてさまざまな料理の付合せとなり,毎日の食卓には欠かせない。豚肉が好んで食べられるのも特色の一つで,ローストや煮込みなどにするほか,ハム,ソーセージといった豚肉加工品もすぐれている。豚肉といっしょに煮込んだり,付合せとしてよく使われるザウアークラウトは,キャベツを塩漬にし,発酵させたものである。肉料理ではハンバーグ・ステーキや,生の牛肉をたたいて刻み,タマネギ,ケーパーのみじん切り,卵黄などを混ぜて食べるタルタルステーキ Tatar も好まれる。魚料理ではニシンの薫製や酢づけ,あるいはコイ,マス,ウナギなど,菓子ではバウムクーヘンがあげられよう。オーストリアでは子牛肉の薄切りにパン粉をまぶして揚げたカツレツのウィーナーシュニッツェルwiener Schnitzel や,ターフェルシュピッツTafelspitz という牛肉の煮込みが名高い。また,ザハートルテ Sachertorte と呼ぶチョコレートケーキやリンゴを使ったアプフェルシュトゥルーデル Apfelstrudel などの菓子もよく知られている。

(7)東欧諸国の料理 チェコスロバキアとポーランドの食事は,牛,豚,鶏などの肉料理が主で,魚料理はニシンの酢づけやコイが食べられる程度である。夏が短くて野菜に恵まれないため,野菜料理も種類が少なく,長い冬の間は,野菜やキノコの塩漬,酢漬,ハム,ソーセージなどの保存食品がおおいに利用される。体の温まるどちらかといえば重い料理が多く,ドイツやロシア料理と共通する点が認められる。ハンガリー料理は,料理用の油脂としてバターや植物油でなくラードを用いる点,パプリカやサワークリームを多用する点などに特色がある。とくにパプリカを抜きにしてハンガリー料理は語れないといわれるほどで,牛肉とトマト,タマネギなどにパプリカを加えて煮込んだグヤーシュ guys は有名である。

(8)ギリシアとバルカン半島の料理 ギリシア料理はオリーブ油が調理の基本となる。海産物はタコやイカまで食べるといった,スペインやイタリアの地中海料理に通じる面と,トルコなど中東料理の影響を受けた面が混ざり合っている。トルコ料理の流れをくむ料理は,名まえこそ国によって異なるが,ユーゴスラビア,ルーマニア,ブルガリアなど他のバルカン半島諸国にも共通して見られるものが多い。なかでも,肉や野菜の串焼き(シシケバブ i kebab)やひき肉とナスの薄切りを交互に重ねて焼くムサカ musaka が有名である。また,ブルガリアではヨーグルトがスープやデザートなどによく用いられている。

(9)北欧諸国の料理 北海,バルト海などの海産物に恵まれる北欧の国々では,魚料理に特徴がある。ニシン,サケ,タラなどを多く使い,乾燥,薫製,塩漬などの保存食も発達している。ニシンの薫製はそのままオードブルに,塩漬はサラダやグラタンなどの材料にする。新鮮なサケをディル(ウイキョウ)の葉を使って漬け込んだものも,ごちそうの一つである。肉料理では牛,子牛,豚などのひき肉で作る肉だんごの料理が各国に見られ,北部のラップランド地方ではトナカイのローストなどが食べられる。スウェーデンのスメルゴスボード smrgsbord という食事形式は,大きなテーブルに魚,肉,野菜の温冷さまざまな料理を何十種類も並べ,各自が好きなものを自由にとって食べるもので,日本では〈バイキング〉の名で知られる。デンマークでは,薄切りのパンの上に魚介類やハム,ソーセージ,酪農国らしいチーズなど,変化に富んだ材料をのせたオープンサンドイッチのスメアブレト smrrebrd に定評がある。

(10)ロシア料理 広大な国土を擁するロシアは,ヨーロッパ・ロシアのみを考えても,気候風土の地域差が大きく,また多民族国家であるため,料理もひと言では言い表せないほど多様である。全体としては,大陸性の気候で冬の寒さが厳しいため,肉,野菜,魚などで作る実だくさんのスープや,小麦粉を使った肉入りのだんごやパイのように,体を温め,たっぷりと栄養のとれる料理が多い。キャビア,イクラ,酢づけのニシンなどを彩りも鮮やかにテーブルに並べ,ウォッカとともに味わう前菜のザクースカ zakuska も忘れることができない。⇒ロシア料理

(11)アメリカ料理 人種のるつぼといわれるアメリカの料理は,世界中から集まった移民によって持ち込まれた各国の料理が混ざり合って形づくられてきた。世界一の農業生産力を誇る広い国土がもたらす農畜産物や豊かな海産物に支えられて,あまり手の込んでいないボリュームある料理が多いのが目をひく。地域ごとに特色ある郷土料理が見られ,代表的なものとしては,インディアンやカウボーイの野外料理のなごりをとどめるバーベキュー,豚肉と豆を煮込んだポーク・ビーンズbaked beans,アサリを使ったスープのクラムチャウダー clam chowder などがある。このような伝統的な料理が好まれる一方,加工技術がひじょうに進んで缶詰,冷凍食品,インスタント食品などの生産が多く,合理的な精神に富むアメリカ人はそれらを機能的に取り入れている。また,ハンバーガー,フライドチキンなど,大量生産による規格化された食品が普及し,外食産業の発達が著しい。

(12)メキシコ料理 香辛料,とくにトウガラシの一種であるチリ・ペッパーを用いる刺激の強い辛い料理に特色がある。主食はふつうトウモロコシの粉を練って平たく焼いたトルティリャで,そのまま食べるほか,タコス tacos といって,中に具を巻き入れたりする。また油で揚げてオープンサンドイッチ風に肉や野菜をのせたりもする。肉料理では,牛肉,豚肉,鶏肉をよく用い,祭日のごちそうとしては,シチメンチョウにチョコレート入りのソースをかけた料理が登場する。果物が豊富で,アボカドのスープやサラダなどもつくられる。  静雄

[日本の西洋料理]  禅僧南浦玄昌(なんぽげんしよう)述した《鉄炮記》の一節に〈西南蛮種の賈胡(ここ),その飲むや杯飲して杯せず,その食や手食して(はし)せず〉と,1543年(天文12)に種子島に漂着したポルトガル人の飲食風景が記されている。この記述は,日本人が初めて見た西洋の食風俗であろう。その後,ポルトガル,スペイン(南蛮)の宣教師が来航するようになり,さらに17世紀初頭にはオランダ,イギリス(紅毛)人が平戸に商館を開いたため,キリシタン大名,貿易商人,蘭学者たちに南蛮・紅毛料理が伝わったが,やがて和食と混在して,てんぷら,ひりょうず,カステラ,タルトなどの日本独特の料理,菓子に変化した。オランダのターフル(正餐)料理も中国料理と折衷して卓袱(しつぽく)料理となり,長崎に残ったにすぎず,南蛮紅毛料理は当時の日本にさしたる影響をあたえなかった。

日本に西洋料理店が登場したのは,幕府や各藩の役人,志士たちと外国人との接触が多くなった幕末から明治維新にかけてのころである。長崎の料理屋〈先得楼〉〈迎陽亭〉〈吉田屋〉が1857年(安政4)に西洋料理を兼業したのに次いで,文久年間(1861‐64)に〈福屋〉〈良林亭〉が,元治年間(1864‐65)には〈藤屋〉が長崎に西洋料理店を開業した。いずれの店もオランダ料理のツル,アヒル,鶏のブラート(あぶり焼き)を売物にしたというから,日本の西洋料理発祥の地は長崎であったわけだ。

 1859年から60年(安政6‐万延1)にかけて,横浜に開業した〈横浜ホテル〉〈アングロ・サクソン・ホテル〉ではイギリス料理を,68年(明治1),江戸に誕生した〈築地ホテル館〉ではフランス料理を外国人客に供したという。明治に入ると市中にも西洋料理店が開業しだした。《横浜沿革誌》に,69年,谷蔵なる者,姿見町3丁目に西洋割烹を開くとあるし,73年の《新聞雑誌》には,その前年に東京築地采女町に開業した〈精養軒〉をはじめ,〈築地日新亭〉〈茅場町海陽亭〉の名が見える。しかし,当時の西洋料理店はごく一部の人々に利用されるにすぎなかった。西洋料理を庶民が口にするようになったのは,町のコックによって日本独自のカツレツ,ライスカレー,エビフライなどがくふうされた明治末から大正にかけてのことである。以後,日本式西洋料理は洋食の呼名で一般家庭にも普及して,ようやく大衆のものとなった。

                         村岡 実

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ディナー

dinner

正餐(せいさん)ともいう。1日のうちで最も重要な食事,または正式の献立による食事のうち,とくに晩餐をさす。英語の dinner,フランス語のディネdner ともに俗ラテン語の disjejunare(断食を破る)から派生したことばである。ディナーをとる時間は時代によって大きな変化がみられた。例えばフランスではシャルル5世(在位1364‐80)のころには午前9時にとる朝食であったが,ルイ14世(在位1643‐1715)の時代には午前11〜12時,ルイ15世(在位1715‐74)のころには午後2〜3時にとる午餐となり,一日中で最も重要な食事の意味をもつようになった。その後さらに遅くなり,ナポレオン1世時代(在位1804‐15)には午後5時,そして現代になって午後7〜8時ごろにとる晩餐をさすようになった。日本ではディナー・パーティ(晩餐会)など正式な献立による食事をさすことが多いのに対し,欧米では一般に簡素な献立の〈夕食〉もディナーと呼んでいる。なお正式な献立による場合は,フランス料理が用いられる。⇒フランス料理  静雄

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