私のコンピュータ開発史
EUREKA
「爺放談」
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三  輪   修
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 MIWA Osamu

16CG (Computer Graphics)
16.4 科学万博 つくば−’85
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(1) 概要
(2) 富士通パビリオン
(3) CG 映画「ザ・ユニバース」
(4) 全天周立体映像
(5) CG による映画制作
(6) システム構成
(7) むすび
 
 
右の写真は  「富士通パビリオン」
 
 
(1) 概要
 1985年3月17日,国際科学博技術覧会が筑波で始った.わが国で開催される万博としては第三回目に当る “科学万博−つくば’85” で,そのテーマは “人間・居住・環境と科学技術”であった.万博は,1851年にイギリスで始ったが,この間富士通は ニューヨーク,モントリオール,大阪、沖縄と 4回万博に出展している.1985年は奇しくも富士通の創立50周年に当り,初めて“富士通パビリオン” として単独で出展した.
名     称  科学万博 つくば−’85
■テ     人間・居住・環境と科学技術
■開  筑波研究学園都市
開催期間  1985年3月17日〜9月16日  184日間
(2) 富士通パビリオン
  基本構想 : “人間・ゆめ・技術”
  「富士通パビリオン」の目標は21世紀の科学・技術のゆめである.コンピュータと通信によって未知なるもの,不可能な体験に近づきたいという人類のゆめである.科学・技術は人間のゆめによって発展してきた.人はゆめを描き,そのゆめを科学・技術が実現し完成する.そのときの感動が,また人間にゆめを与える.ゆめは人間と科学・技術のかけ橋であり,人類の文明はこのかけ橋を渡りながら発展してきた.
 富士通は最先端の科学・技術によって,21世紀の豊かな未来をはぐくんでいきたいと願っている. *参考:P.120
 富士通パビリオンはコスモドームを中心に構成され,そこで世界で初めてのコンピュータグラフィックスによる全天周立体映画を上映し,圧倒的な人気を博した.
 
(3) CG 映画「ザ・ユニバース」
 富士通はパビリオンテーマである“人間・ゆめ・技術”にふさわしい映像展示として,全天周立体映画を制作した.
 全天周立体映画の制作は,従来の映画制作技法では不可能であるため,映像は全てコンピュータグラフィックス(CG)で制作した. 「ザ・ユニバース−We are born of stars−」と命名されたこの映画は,世界で初めての全天周立体 CG 映画である.その内容は,太陽が誕生してから現在までの約46億年の長い歴史を約 9分に凝縮し,壮大な生命誕生の叙事詩として構成されている.  
  この CG 映画は,その立体視に 15.3(4)で説明した「赤青方式(アナグリフ方式)」をとっている.したがってカラー映像ではない.ここでの技術は,さらに5年後の大阪・花博に受け継がれ,フルカラーの全天周立体映画 『ユニバース2―太陽の響―』“Echoes of the Sun”として実を結ぶことになる.
  
(4) 全天周立体映像
 全天周映像は,プラネタリウムと同じよなドーム状のスクリーンに映写する.この映像システムを使用して立体映画を上映し,立体眼鏡を掛けて見るのが全天周立体映像である.
 通常の平面スクリーンに映写する立体映像は,図1に示すようにスクリーン枠と観客の目とで形成される四角錘の中でしか立体視ができない.したがって,被写体が近づいてくると,近づくに従って小さくなり,きわめて不自然な映像となる.
 全天周立体映像では,スクリーンがドーム状であるため観客の視野全体に映像が広がり,前後左右,上下のどこにでも立体感のある映像を見ることができ,平面スクリーンで感じたような違和感を感じることがない.とくに CG 映像の場合には,3D アルゴリズムという計算手法と相まって立体効果が一層強調され,観客はスクリーンを意識することなく空中に展開される映像を楽しむことができるのである.
 また,映写システムにはオムニマックスシステムを採用した.フィルム幅は70mmで,一こまの大きさは70mm 15P(69.6mm x 50.8mm; p:送り穴)という世界最大のフィルムを使用している.このフィルム面積は,35mm標準映画のフィルムにくらべ10倍の大きさに相当する.
 コスモドームの観客席はプラネタリウムのように水平ではなく,図2 に示すように23°の傾斜をもった階段状となっている.この上に直径20mのドーム状のスクリーンが,29°の傾斜角で覆い被さるように設置してある.映写機(プロジェクタ)は,劇場中央部やや後方に設置されている. 
 このような構造のため,観客がちょうどドームの空間に浮いたようになって映像を見ることができ,周りの映像に思わず手を出したくなるのである.
*参考:PP.134-137
(5) CGによる映画制作
 “ザ・ユニバース”は,核融合,水,氷,DNA などのカット(シーン)で構成され,それらの運動を科学的にシミュレートするプログラムを開発する必要がある.
 また,科学的観点からも正確性が求められ,そのための CG プログラムも新たに開発しなければならなかった.

 このように CG による映画制作には,スーパコンピュータなどの強力なコンピュータ資源と膨大なマンパワーが必要であった(21世紀の現在とは大違い).

 右の図3は,その CG 映画制作のプロセスを示したものである.

 シミュレーションプログラムはカットごとにあり,物体の運動に関する時系列データ(各時刻の物体の座標と速度)を作り出す.CG プログラムは,これらの時系列データおよびカメラ情報(カメラワークデータ)を入力として時刻ごとの映像を生成する.

 これらの映像は,デバッグ段階では静止画としてイメージディスプレイに出力し,そこで問題がなければ動画として VTR に記録する.さらに動画として問題がなければ,最終的にフィルム上に記録する.


*参考:PP.151-152
(6) システム構成
  CG 映画の制作は,コンピュータの能力が強力であればあるほど,より精度の高いシミュレーション計算と解像度の高い CG 計算が可能となり,より美しい映像が得られる.そのため,この CG 映画制作には当時の超大型コンピュータである FACOM M-380 を使用した.そのシステム構成を下の図4に示した.  *参考:P.153

(7) むすび
 “ザ・ユニバース”は,CG のみによる立体映像を全天周スクリーンに映写するという世界でも初めてのものであり,その内容も物理,化学,生命の各分野にわたる科学博にふさわしい画期的なものであった.
 膨大なシミュレーション計算や CG 計算には FACOM M-380 を用いたが,その計算機時間は CPU タイムで10時間程度を要するジョブは当たり前で,中には60〜80時間を要するものもあった.
 この経験は,スーパコンピュータ VP を駆使して開発,制作された5年後の花博におけるフルカラー CG 映画 “ユニバース2―太陽の響―” に受け継がれることになる.

*【参考文献】 (26)  FUJITSU  “科学万博−つくば’85” 特集号

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初 版  : 2005.04.13
文 責  :  三輪 修
改 版 :
2007.02.03