| コンピュータグラフィックス(CG) は,映像をコンピュータの計算によって作成する技術・手法であり,テレビのコマーシャルフィルムや映画のシーンなど,幅広い分野において使用されているのは周知のとおりである.
今やエンターテインメントの世界で重宝される技術(ツール)となったが,もともと計算結果の可視化
(Visualization) など計算科学分野での貢献が大きい.
16.1 コンピュータグラフィックスとは
コンピュータグラフィックスは,一般に次のように定義されている.
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【コンピュータグラフィックスの定義】
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| いわゆるコンピュータ処理は数値や文字を入力し,数値や文字を出力する.これに対してコンピュータグラフィックス(CG)
は,数値や文字を入力して図形や画像情報を出力する画像の生成処理を行うことをいう.また,画像の加工や編集を行う処理をイメージプロセッシング
(IP),画像の計測や認識を行う処理をコンピュータヴィジョン(CV) といい,CG
とは区別している. |
これを図で示すと 図1 のようになる.
■CG の進歩は,コンピュータの計算速度の向上と大きく関わってきた.スーパコンピュータ
VP の項で触れたが,当時航空宇宙技術研究所では風洞をコンピュータ内に擬似的に作り出す「数値風洞」開発の計画があった.そのためにはスーパコンピュータ開発が必須の条件であった.
また,計算科学分野でも実験結果をより精密に,しかも目に見える映像として表現するには超高速コンピュータ(スーパコンピュータ)の開発が不可欠であった.このような計算結果の可視化は,1980年以前は超大型コンピュータの性能に委ねられていたが,1980年代に入るとスーパコンピュータが目覚しい活躍をするようになる.1990年の大阪・花の万博で富士通が出展した
CG 映像は,スーパコンピュータ VP を駆使してはじめて実現できた貴重な映像である.
■CG はまた,航空機などの事故解析にも利用される.1985年8月12日の JAL123便墜落事故では,NHK
の依頼で富士通の CG 技術者がその再現映像の制作に協力した.しかし,当時富士通は日航と大きな商談を展開中であり,NHK
申し出に対し協力できない旨お伝えした.
その後再び NHK から協力の依頼があった.他社をいろいろと当ってみたが,富士通に頼むしかないとの結論に至ったという.同じ85年,つくばで開催中の科学博(1985年3月17日〜9月16日)で富士通の
CG 映像「ザ・ユニバース」が圧倒的な人気を呼んでいたことと関係があったに違いない.
NHK からの依頼を受け,その折衝を命じられた.そこで,NHK に対し次の3条件を提示した.
@ 日航に迷惑をかけないこと
A CG 制作は無償とすること
B 富士通の名前は出さないこと
@は当然であるが,AはCG 制作の貴重な経験が得られると考えたからである.Bも富士通の宣伝ではないので当然である.
その年の内には放映したいとのことで,CG 制作者たちは時間を無視して没頭せざるを得ない状況であった.その映像は,「ふたたび飛んだ
JAL123 便」として放映され,CG 映像としての評判を呼ぶと同時に,事故原因の究明に貢献することとなったのである.放映後,あちこちから電話が掛かってきた.あの
CG は富士通で作ったのだろうと言う.確かに上記条件Bにあるように,富士通の名前は陽には出ていなかった.しかし制作風景の中で,背後にさりげなくスーパコンピュータVP
が映っていた.
12月15日の手帳に「NHK墜落」とのメモがある.日曜日であり,この日に放映したのだろうか.定かではない.
【参考】
富士通は CG 映像制作に力を入れていた.航空機の事故解析,泥流などの災害予防,分子運動,DNA
等々シミュレーション結果を可視化した科学ビデオを数多く作成した.主なものは以下のとおりである.
| 【富士通が作成したCG映像の例】 |
− TITLE −
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| ■ TV 放送(NHK) |
「JAL123便」 |
| ■ 科学万博での上映 |
「ザ・ユニバース」 |
| ■ '85 SIAGGRAPH 出品 |
「溶融塩の分子動力学シミュレーション」 |
| ■ TV 放送(NHK) |
「TRON チップ内の電子の流れ」 |
| ■ TV 放送(NHK) |
「十勝岳の泥流」 |
| ■ '89 SIAGGRAPH 出品 |
「−太陽の響−よりテストシーン」 |
| ■ 花の万博での上映 |
「ユニバース2−太陽の響−」 |
| ■ TV 放送(NHK) |
「銀河宇宙オデッセイ−超新星の爆発−」 |
(2005.5.18 追記)
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