課題3、平衡型/不平衡型ケーブル
私は1989年7月号のラジオ技術誌で「オーディオケーブルはなぜ同軸か?
バランス伝送の提案」という技術報告をしました。功を奏してか、現在アナログオーディオ
ケーブルにはバランス型(平衡型)ケーブルが多く使われる様になりました。
しかし残念ながらそのケーブルの使い方は私の意に反して不平衡である事が多いのです。
平衡型の利点を活用することなく、平衡型ケーブルを不平衡で使用し音質を損なっているなら、
広帯域に使用できる同軸ケーブルの方が適しています。
それが、「同軸ケーブル;4C−XEW」を製品化した理由の一つです。
いま少し詳細な議論をしますと、ケーブル構造の平衡型、不平衡型の定義ですが、
下図のように大地電位に対して同じ位置関係か否かによります。
同じように信号にも平衡、不平衡があります。一般的にはケーブル構造と信号の平衡、
不平衡は合わせたほうが伝送ロスが少なくなります。
AVCTの製品では平衡型の代表は「UTP−1」、不平衡の代表は「4C−XEW」となります。

シールド付き平衡型ケーブルを不平衡で使用すると、どの様なことが起っているのでしょうか?
アナログオーディオ信号の場合、機器間伝送はインピーダンス「ロー出〜ハイ受け」が基本で、
電圧伝送となります。 因って、ケーブル特性で主に問題になるのが導体間の静電容量です。
下図の左側が平衡型ケーブルを平衡に使用している場合です。信号は水色と赤色の線心間を
伝わりますので、ケーブルのロス特性を決める要素は静電容量のCrbです。 「UTP−1」の様に
シールドを取り去るとCbsやCrsは無くなり、大地間との静電容量となりロスは少なくなります。
一方、下図の右側のような結線をしてケーブルをお使いの方も多いことでしょう。
この場合、信号は水色の線心と(赤の線心+シールド)との間で伝送されます。 この為、
水色と赤色の線心間の静電容量CRBに加え水色線心とシールド間の静電容量CBも加わります。
このCBは直接信号伝送に係わっていますので、Cbsに比べ大きな値となります。
またじっくりこの断面状態を見ていただくと、中心導体が水色線心の導体となった同軸ケーブル、
即ち、中心導体が絶縁体の中心になく、偏心した同軸ケーブルと見ることも出来ます。
このことはこの断面内の電界の分布が歪んでいることに外なりません。
この歪みは音質にも現れるのでは無いでしょうか? そう考えても不思議は有りません。
本来の正しい姿で使用すればきれいな電界分布になるはずが、結線方法によっては歪を
持ったものになってしまう危険性があります。
確かに左図のように平衡で使用するには、シールドからリード線を出さなければならない等の
面倒くささはあります。 UTP−1の如く、シールド付き平衡型ケーブルのシールドをオープン
にしても機器がEMIの伝導ノイズを発してない限り、ほとんどの場合には問題なく使用できると
考えますので、シールドのオープンでの使用をトライしてみては如何でしょうか。
「4C−XEW」は2重編組の外部導体を備えているため、EMIノイズ対策も万全で、
アナログオーディオケーブル、デジタルケーブル、画像用ケーブルとして使用できます。

平衡型ケーブルとしての使い方 平衡型ケーブルを不平衡型ケーブルとして使用した例
(ハイパーバランス)
PCオーディオの世界;
1対、2重シールド オーディオケーブル;ST−1P
最近、愛用されることが多くなったPCオーディオの世界では、AES/EBU AES3
でシールド付きバランス型ケーブルにXLRコネクタを付けた伝送方式も採用されています。
この用途向けにST−1P 1対、2重シールド オーディオケーブルの製品化を行いました。
当規格ではケーブルの特性インピーダンス(Zo)を110Ωと規定しています。
一方、当方式の周波数帯域は44kHz〜10MHzですが、この帯域ではケーブルの
Zoは変化しており、一定値に収束していませんので、ST−1Pでは200kHzで、
Zo=110Ωに、LANの周波数帯である100MHzでZo=100Ωに成るよう
設計をいたしました。
シールド付きアナログオーディオケーブル;
カッド型(4心)バランス オーディオケーブル(マイクロフォンケーブル);ST-1Q
カッド型ケーブルは、一般的には4心の絶縁線心の互いに対角に位置する2線心を端末で接続して、下記の配列図では“(赤+紫)x(白+白)”で1回線を形成します。通信ケーブルの世界ではこの様な使用方法を「重信回線」と称します。重信回線では、例えば配列図の赤線心と紫の線心を足し合わせると2線心の合計は中心の黒点(●)の位置にあることに成ります。白線心と白の線心の足し合わせも同様に中心の黒点(●)の位置にあることに成ります。即ち、往復線路は2本とも中心にあることに成り、流れる電流の方向は逆です。この事は外部へノイズを出し難い、と同時にノイズを受けにくいという特長を持っています
