Section 1; AVケーブルのエージングとは? アイドリングのこと
元々、”エージング”を日本語に直すと”劣化”で、ケーブルの寿命を示します。電源コード&ケーブルは、住宅内外の配線に使用されますが、これの寿命は通常の使用方法では20年以上はあります。電力会社の配電線(電柱に配線されているもの)の20年経ったものの特性評価をしたデーターを見たことがありますが、表面は紫外線劣化をして色が変わったりしていますが、内部はほとんど特性変化は有りませんでした。(ただ海岸部や環境の悪い場所に配線されていると特性の低下がより進むと思います。) 汎用電線・ケーブルに付いてのデーターベースは「電線総合技術センター;JECTEC」のHPに各種公開されています。http://www.jectec.or.jp/03cable/index.html
本来この議論は、AVケーブルで使用中、ほとんどは使用開始時に音が変わる現象に付いて議論したいのだと思います。AVケーブルでは、使用開始初期に音が変わる現象が認識されていますが、それが何に起因しているかを知る事が大切です。
初期の音質変化はケーブルが内在している機械的歪に起因していると考えられています。銅線は太い銅線から、使用するのに必要なサイズに伸線されますが、この際に機械的ストレスを受けます。この為、引張強度が上がり、伸びが無くなり、導電率が下がる現象が起きます。この改善のため、通常の伸線工程ではアニール(焼屯)工程を入れ、特性を戻します。この様に出来た銅線は軟銅線と言われます。軟銅線自体にはほとんど歪は残っていません。特に機器への給電に使用される電源コードは<PS>E法で軟銅線を使用する規定に成っていますので、電源コードでは、経時的な音の変化はほとんど起こらないと考えられます。
一方、AVケーブルの中には硬銅線のまま導体に使用しているケースが有ります。例えばPCOCC−H、LC−OFC等は硬銅線です。これらの導体を使用して造られたケーブルでは、使用初期に”経時的”に音が変わることが確認されています。この”経時的”変化は1週間程度使用することで、一般的にはおさまりますので、その後も日々音が変わっていくような現象ではありません。上記した様な”エージング=劣化”の意味合いとは違います。私はこの初期の変化を”アイドリング”と言っています。
オーディオシステムもスイッチを入れた直後と、半導体や真空管が温まった安定状態では音が違うと言う事は常識だと思います。
ケーブルも一度、配線を外して機械的ストレスをかけると音が変わる事があります。昔、もうお亡くなりになりましたが、著名な評論家の方が、ケーブルを何回もくにゃぐにゃ曲げると、”アニールされて音が明瞭に成る”と雑誌に報告されていましたが、これは”アニール”では無く、”加工硬化”して音が変わったことに外なりません。いずれにしても、ケーブルに機械的ストレスをかけると音は変わる可能性があり、逆に静置している場合には、音の変化は起こらないと言えます。