ケーブルの中を伝わる電気信号の速さについて


ケーブルの位相を合わせましたとは??
 先日、ある展示会に行きましたら、ケーブル特性を説明している説明員の方が、
「このケーブルは低域から高域まで位相を合わせました!!」と言っておられました。
思わず、「そんな事出来ないでしょ??」と言ってしまいました。
 課題1の議論で音楽信号には20Hzから100kHz程度の信号が含まれていると申しました。
即ち、色々な周波数の波が混在して音楽信号を造っていますが、アンプから出た色々な
信号の走る速さが同じなら、スピーカーにはアンプと同じ波形の信号が到着しますが、
走る速さが違うと波形は違ってしまいます。4端子回路理論では位相定数と言う言葉を
使うので「位相を合わせた」との表現になりますが、実際は信号の伝搬速度の指標となります。
当HPの「販売店」で販売している「SP−6Pスピーカーケーブル」の伝搬時間を
下図に示します。100Hzでは50ns/m、10kHzでは6.5ns/mです。
 世の中に出ているケーブルのカタログ、解説文の中には、
導体構造や撚方法を変えることで、音声帯域の信号伝播速度を一定にしてある、
との記述を見掛けますが、
ケーブル構造を少し変えた程度でこの大きな差のある曲線を
横一直線には出来ません。
 因みに周波数が非常に高くなる(1MHz以上)と一定値に近づきます。
一定値とは;
 伝搬時間;Tpd=(√ε)/0.3  (ns/m)   ε;絶縁物の比誘電率
   と成ります。
ケーブル技術では周波数は変化はしませんので、波長が短くなった訳で、
これを波長短縮率(=1/√ε)と称します。

真空の比誘電率はε=1ですので、光の速さは=3.33 (ns/m)と成ります。

話が横道にそれてしまいましたが、
オーディオケーブルは短いので位相差は実際には問題にならないでしょう。
例えば、100ns/mの速さとは1秒間に10000km進む速さ(地球を1/4周)ですから、
せいぜい10m程度のケーブルを議論するには無視しても良いのでは無いでしょうか。

 それよりも電気信号を空気の振動に変換するスピーカーの方が位相問題はもっと大きな
問題です。これを考えたらケーブルの位相問題はネグリジブルでしょうが、
上記した4桁の帯域をカバーする広帯域ケーブルでは、音の解像度が良くなるので、
スピーカーから出てくる音の位相が合っていると聞こえることが起こるかもしれません。
私の耳がそこまで判定する能力を持っていないのは残念なことです。








位相定数と伝播速度の関係

 ケーブル内を伝わる信号の伝播速度()は電磁気学理論を基にしたケーブル伝送理論
では次のように示されます.

   V=ω/β  ・・・・・@

 ω、βに関しては次の定義がされています;

























・・A



 位相定数の定義式Aから分かるようにβはケーブルの往復の導体抵抗(R)、インダクタンス(L)、静電容量(C)、漏洩量(G)のすべてが絡んだ値になっています。周波数(ω)に直接絡んだ乗数はL,Cです。(細かい話をすればR,L,G,C共に夫々周波数特性を持っていますが。)よって、導体の構造を変えただけではL、C,Gは変更が出来ませんから伝播速度の周波数特性は一定に出来ません
 
一例として同軸ケーブルの伝播速度と1mの長さを伝わるのに必要な時間を伝播時間として「図1」に示します。伝播速度の変化は波長が変動すると考えることも出来ます。この観点から波長が短くなる割合で示した、波長短縮率の周波数特性を「図2」に示します。
 
一般的には音声帯域の20kHz以下では伝播速度は大きく変動します。100kHz以上ではほぼ一定の値に収束します。以上からオーディオ用ケーブルが対象とする周波数帯域で伝播速度を一定にするのは不可能です。

「図1」

「図2」