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 コンビニ型図書館のすすめ


 [1997年2月『朝日新聞 朝刊 論壇』に掲載されたもの。]

コンビニ



  コンビニ型図書館のすすめ

  

                                        大西 亥一郎


 民主主義の基礎を支える「情報民主主義」は、フローとしての情報を扱うマ
スメディア・本の出版・流通業界の役割と、ストックとしての「資料の収集」
「整理」「保存」そして「活用」という図書館の役割に期待するところが大き
い。特に「情報公開法(仮称)」の実効性をあげるためには図書館の重要性が
増すであろう。また、「活用」には、当然、電子情報も含まれることになる
が、「情報の公開」と自由・平等な「情報へのアクセス」が確保されねばなら
ない。

 こうみると図書館の役割は、早急に劇的に変化しなければならない。
 図書館の設置数は一九七五年から約二十年で倍の二二九七館へと増え、蔵書
冊数は約五倍、個人貸出冊数は約六倍となっている。(日本図書館協会「日本
の図書館一九九五」公共図書館経年変化)また、図書館の登録者数は九五年で
約二千七百万人である。だが、図書館の利用者を観察すると社会の中核的担い
手であるサラリーマン層がさほど多くないことに気づく。

 確かに、図書館のサービスは拡大している。

まちかど図書館、移動図書館、ヤングアダルト・児童・障害者サービス。ちな
みにアメリカではホームレスサービスやインターネットサービスまで見られ
る。

 しかし、余程時間的に恵まれなければ、図書館に出掛け、貸出を受け或いは
予約をし、二週間程度で利用を終えて、返却に行くのは無理がある。移動図書
館も開設時間・場所・設備、職員の勤務体制の制約などがあり、拡大はままな
らない。

 自宅にいながらにしてインターネットで、同一図書を複数人が読むことが出
来るという電子図書館は始まったばかりである。

 このような状況下では、豪華な施設を郊外に建設するより、街中に利用頻度
の高い図書・情報を集めたいわば「コンビニエンス図書館」を多数建設し、無
料の情報端末も設置すればどうだろうか。

  交通ターミナル近くに図書館は設置されだしているが、「キオスク」や「コ
ンビニ」のように、サラリーマンの通勤動線上には置かれていない。

  現に駅と、ビジネス街との通勤途上に設置されている図書館を見ると、そこ
に顕著な特色が現れる。

  昭和三十五年にターミナル図書館の先駆けとして設置された神戸市立三宮図
書館では、港とビジネスをテーマとするコーナーや洋書コーナーを設け、サラ
リーマン、OLの人気が高い。特に会社終業時以降の利用も多く、市内図書館
中の規模は小さいながらも職員は多忙である。

 こういった形態を更に特化させて、利用が多い資料を常備し、それ以外のも
のは物流と情報のネットワーク化によって、他館・中央館から取り寄せ又は閲
覧可能な体制を整えればいいわけである。

  例えば最新のビジネス・スポーツ・パソコン・文芸書等を取りそろえ、小さ
なブラウジング(軽読書)コーナーにはスツールとコーヒーの自動販売機もあ
る。さらに開館時間は退社時刻から午後八時乃至九時の間を核にして決める。
  職員の勤務体制の問題も出てくるだろうが、使う人の身になって、従来から
ある「アカデミック」な図書館より、もっと機動的で小回りがきき、開設が容
易な、コンピュータの端末のような図書館である。

  我が国の町村には図書館未設置のところがまだ圧倒的に多い。総てがそろっ
た独立図書館を設けるには財政的な制約があるからである。しかし、これも都
道府県立図書館が中心になって支援体制を組み、「コンビニエンス図書館化」
することで解決すると思われる。  情報は蓄積しても利用されねば意味がな
い。「無料で」「いつでも」「どこでも」「だれでも」「なんでも」利用可能
でなければならない。

 現在求められている新しい図書館は、行政の文化的象徴でもなく、専門的な
学者のものでもない。
 急激に進む、情報化・生涯学習化社会のために、サラリーマンが勤め帰りに
気軽に立ち寄れるような、図書館である。


(当時:兵庫県立図書館 調査専門員 司書 であった。)


                           031212

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