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図書館を情報ネットの核に
[1998年11月28日『読売新聞 朝刊 論点』に掲載されたもの。]
図書館を情報ネットの核に
大西亥一郎
生涯学習時代を迎えて、その有力な核施設である図書館は、いま転換期にあ
る。
社会の国際化や情報化に伴う図書館資料(書籍等)の急激な増加に、図書館
の選択・収集・整理の能力が追い付かない。また、資料のデジタル化とCDー
ROM等に見られる提供媒体の変化、そして伝達手段としてのインターネット
の普及が、図書館の存在価値を根本から問い直している。
つまり、文献資料を提供するだけではなく、情報そのものを提供する情報セ
ンターとしての機能を併せ持たなければ、人類の文化遺産を守り、情報提供の
安定装置としての役割を果たせなくなりつつあるのだ。
図書館は、公共図書館と国立国会図書館、大学図書館、学校図書館、さらに
企業や議会などにある専門図書館の五つに分類できる。
国立国会図書館は出版物を網羅的に収集するだけでなく、「日本全国書誌」
の作成、データベースの構築などで、文献情報の交通整理を行っている。所蔵
資料は六百八十万冊相当に達し、二千二年に開館予定の関西館(仮称)での利
用を目指して、電子図書館事業も進められている。
大学図書館では、文部省の学術情報ネットワークシステムが稼働し、公共図
書館でも財政力のある都道府県立図書館では、資料の電子化や、インターネッ
トの利用が進められている。
これらの図書館については、時代の変化を踏まえて、転換を急ぎつつある。
問題は、数の上で圧倒的に多い学校図書館、それに公共図書館の中でも第一
線図書館と呼ばれる中小図書館(主に市町村立図書館)だ。
学校図書館の整備は極めて不十分である。ようやく司書教諭の配置が義務化
されたことは、情報教育の場としての図書館の持つ意義が認められたと考えて
よいであろう。しかし、資料費の増額も司書教諭の専任化も難しいとしたら画
餅に等しくなる恐れがある。
一方、中小図書館も、戦後活発になった貸出業務に追われて、新しい動きに
対応しかねている。町の無料の貸本屋になっていては、紙に印刷された活字媒
体以外の情報が増大しつつある現在、「情報を提供する」図書館の使命を果た
すことはできない。レファレンスサービスという、質問受付サービスも、消化
不良を起こしている。
学校図書館や中小図書館を活性化するには二つの視点がある。
一つは情報のネットワーク化で、まず学校間・学校図書館間のネットワーク
化を図る必要がある。幸い、情報機器の進歩で、書籍情報のデータベース化、
インターネットに載せるファイル形式の作成も安価で容易になった。
小中高等学校単位でも市販ソフトで比較的容易に構築でき、インターネット
上にデータを公開できる。学校相互に資料検索をし、相互に貸借する。資料の
電子化が進めば、ネットワーク上で資料そのものを見ることが出来る。同じ地
域社会の核として中小図書館との間でも、ネットワークを構築しなければなら
ない。
いま一つの視点は、物流のネットワーク化である。資料が完全に電子化され
ればともかく、当面は、資料の物流を考えねばならない。この場面で中小図書
館の役割が重要だ。
地域に密着した中小図書館では、従来からBMといわれる移動図書館用の車
を持っているところが多い。これを学校間で運行する。中小図書館が地域の核
になって、書籍という資料の物流ネットワークを構築する動きを加速すべきで
ある。これを軌道に乗せるには、都道府県立図書館の強力な支援も欠かせな
い。
我が国は、来世紀に向けて情報の社会的基盤の整備を急がねばならない。国
立国会図書館や大学を中心に、大きくは米国で進められる「情報スーパーハイ
ウェイ構想」や「アメリカン・メモリー(文化遺産の電子化構想)」等に倣う
のも必要なことである。
それには、まず個人や地域社会がネットワーク化されねば、ウェブ(蜘蛛の
巣)状の広がりも深さもないツリー構造の中央集権的情報化社会になる恐れが
ある。
もともと地域社会の核であった、学校や学校図書館、さらに中小図書館とい
った文献情報の宝庫が、結びつけられ、情報センターとして機能することで、
それは避けられる。市民のための情報ネットワークの核としての図書館の役割
は大きい。
(当時:兵庫県立図書館 調査専門員 司書 であった。)
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