会計学の部屋(会計、簿記、経理、税務)

 国際会計基準の初歩
 

 第1章 財務諸表の作成と表示に関する枠組み

 第2章 財務諸表の表示(IAS1)

 第3章 棚卸資産(IAS2)

 第4章 キャッシュフロー計算書(IAS7)

 第5章 期間損益(IAS8)

 第6章 有形固定資産(IAS16)

 第7章 リース(IAS17)

 第8章 収益(IAS18)

 第9章 外貨換算会計(IAS21)

 第10章 借入コスト(IAS23)

 第11章 金融商品の表示(IAS32)

 第12章 引当金(IAS37)

 第13章 無形資産(IAS38)

 第14章 金融商品の認識と測定(IAS39)
 
 

 第1章 財務諸表の作成と表示に関する枠組み

 1 「財務諸表の作成と表示に関する枠組み」とは何か
 国際会計基準委員会(以下、IASC)は、1989年に「財務諸表の作成と表示に関する枠組み」(以下、「枠組み」)を公表しました。この枠組みは、財務諸表を作成し、表示するための基礎となる概念を規定しています。
 「枠組み」の目的は、「枠組み」のイントロダクションで、次のように示しています(par.1.)。

 ・将来の国際会計基準(以下、IAS)の作成や現行のIASの見直しの際にIASB(以下、IASB)の手助けになる、
 ・財務諸表の表示に関する規則、基準及び手続きの調和化を促進する際のIASBの手助けになる、
 ・国内の会計基準を設定する際に各国の会計基準設定主体の手助けになる、
 ・IASを適用し、あるいは、まだIASの課題となっていないテーマを扱う際に、財務諸表作成者の手助けになる、
 ・財務諸表がIASに準拠しているかどうかの監査意見形成の際に監査人の手助けになる、
 ・IASに準拠して作成された財務諸表に含まれる情報を解釈する際の財務諸表利用者の手助けになる、
 ・IASの形成のプロセスに関しての情報をIASCの作業に関心を持つ人達に提供する。

 簡単にいえば、IASの作成や修正並びに適用に関する基礎とするものが、「枠組み」というように考えられるわけです。
 このような目的のために設定された「枠組み」は、狭義のIASではなく、特定のIASを扱っているものでもありません(par.2.)。また、この「枠組み」の規定とそれぞれのIASとの間に、差異がある場合には、それぞれのIASに従うことになります。ただし、「枠組み」は、IASBが、IASの作成や修正を行うにあたっての指針となるものですから、それぞれのIASは、今後の修正等を通じて「枠組み」と徐々に一致されていくことになります(par.3.)。

 2 財務諸表の目的
 「枠組み」は、財務報告の主要な一部をなすのが財務諸表であって、それには、貸借対照表、損益計算書、財政状態変動表及び注記や補足資料が含まれるとしています(par.7.)。
 その上で、「枠組み」は、「財務諸表の目的は、広範な利用者が経済的意思決定を行う際に、企業の財政状態、経営成績及び財政状態の変動に関する有用な情報を提供することにある。」(par.12)としています。ここでいっている財務諸表の利用者には、投資家、従業員、融資先、仕入先、得意先、政府及び監督官庁、公衆が含まれています(par.9.)が、「枠組み」は、すべての利用者の情報要求に応えることはできないとし、むしろ、投資家の情報要求を満たすことで、他の多くの財務諸表の利用者の情報要求を満たす(par.10)と考えています。
 具体的には、現金及び現金同等物を発生させる企業の能力を評価し、それらの時期や確実性を評価するために役立つ情報の提供が、投資家を含む多くの利用者の共通する情報要求として考えられています(par.15.)。
 従って、「枠組み」において、財務報告の主要な一部である財務諸表とは、投資家、従業員、融資先、取引先、政府、公衆等の広範な会計情報の利用者が、合理的な経済的意思決定を行うにあたって、企業の現金及び現金同等物を獲得する能力と現金及び現金同等物の発生の時期や確実性を評価できるように、企業の財政状態、経営成績及び財政状態の変動に関する情報を、貸借対照表、損益計算書、財政状態変動表、注記及び補足資料を通じて提供するものであるといえます。
 企業の現金及び現金同等物を発生させる能力を評価するために重要となる情報は、企業の財政状態、経営成績、財政状態の変動に関連した情報に含まれている(par.15.)わけですが、その関係は以下の通りです。
 企業の財政状態は、企業が支配する経済的資源、その財務構造、流動性及び支払能力並びに企業の経営環境への適合能力によって、影響されるものです。企業の支配する経済的資源とその資源を調整した能力に関する情報は、将来の現金及び現金同等物を獲得する企業の能力を予測するのに有用です。財務構造は、将来の借入の必要性や将来の利益の配分の予測にとって有用です。流動性や支払能力に関する情報は、将来の財務契約をリこうする企業の能力を判断するのに有用です(par.16.)。
 企業の経営成績は、将来支配するであろう経済的資源の変動の可能性を評価することに関係し、その情報は、現存の経済的資源によってキャッシュフローを獲得する企業能力の予測や企業の追加資源の使用に関しての、その効率性を判断するのに有用です(par.17)。
 企業の財政状態の変動に関する情報は、営業活動、投資活動、財務活動を評価するために有用です。財政状態の変動を表すために用いられる資金概念には、現金、当座資産、運転資本、総資本等が考えられます(par.18.)。
 企業の財政状態、経営成績及び財政状態の変動を表現するために、貸借対照表、損益計算書、財政状態変動表が作成されるわけですが、これらは、それぞれが他の財務諸表を補完する関係となっていることになります。

 3 基礎的前提
 「枠組み」では、財務諸表を作成し、表示するにあたっての基本的前提として、発生主義と継続企業を挙げています。
 ・発生主義
 「枠組み」では、財務諸表を発生主義に基づいて作成することで、財務諸表の目的は達成されるものであって、現金及び現金同等物の収支の時に認識するよりも、発生主義による情報の方が経済的意思決定にとって有用な情報となると考えています(par.22.)

 ・継続企業
 財務諸表を作成する場合、通常、その企業は予見しうる将来にわたって事業活動を継続する、言い換えると、途中で清算したり、大幅な縮小をしたりする意図を企業は有していないという考えに基づいて作成されなければなりません(par.23)。

 4 財務諸表の質的特徴
 財務諸表の質的特徴とは、財務諸表が作成され、表示されるにあたって、適用される基準で、利用者の意思決定に有用な会計情報とは、どのようなものか規定しているものです。
 「枠組み」では、理解可能性、目的適合性、信頼性、比較可能性の4つを挙げています。
 ・理解可能性
 「枠組み」において、「財務諸表が提供する情報の重要な特性は、その情報が利用者にとって理解しやすいということである。」(par.25.)としている。如何なる情報もその利用者にとって理解できるものでなければ、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。しかし、ここで想定されている利用者は、事業や経済活動及び会計に関する知識を有し、勤勉に会計情報の解釈に努めようとする利用者を意味しています(par.25.)。そのために、ある利用者にとってだけ理解が困難であると想定されるといった場合に、その情報は、理解可能性を失っているとはいいません(par.25.)。

 ・目的適合性
 目的適合性は、その情報利用者の目的(要求)に適合したものでなければならない(par.26.)のは、いうまでもないことです。情報を処理するということは、どのような情報についてであれ、想定される利用者の必要なものを提供しなければ意味がありません。例えば、自動車を買おうとしている人(情報利用者)に、家のカタログ(情報)を渡しても、全く情報要求に合致していないので、その情報は、利用者にとって有用(目的適合的)とはいえません。
 目的適合性を有するには、利用者が過去、現在、未来の事象を評価したり、利用者の行った過去の評価の確認や訂正に役立てることで、経済的意思決定に影響しなければなりません(par.26.)。それは、情報のもつ予測的役割と確認的役割に関連しているといえます(par.27.)。現在の財政状態や過去の経営成績は、将来の財政状態や経営成績を予測するのに役立つという意味で予測価値を有していますし、また、過去に利用者が行った「この企業は、来年は***になるだろう」という予測を確認することで確認価値(アメリカ財務会計審議会「財務会計の諸概念報告書 第2号『会計情報の質的特徴』」(以下、SFAC2)によれば、フィードバック価値)を有しています。
 目的適合的な情報は、予測価値を有するかフィードバック価値を有するか、その両者を有していなければならないのです。
 また、「枠組み」は、目的適合性に関連するものとして、重要性を挙げています。重要性は、その取引その他の事象が情報利用者の判断を左右するものであるかという有用性の境界線としての役割を有しています。

 ・信頼性
 「枠組み」において、「情報が有用であるためには、信頼しうるものでなければならない。情報は、重大な誤謬及び偏向が除去され、また、それが表示しようとするかあるいは表示されることが合理的に期待される事実を忠実に表現したものとして、利用者が信頼する時、信頼性の特性を有する。」(par.31.)としています。目的適合的な情報であっても、それが信頼するにたるものでなければ、情報利用者は、その情報を参考にできないし、あるいは、誤った意思決定を行ってしまうかもしれない。
 「枠組み」において、信頼性と関連する質的特徴には、表現上の忠実性、実質優先主義、中立性、慎重性が挙げられています。この中に、SFAC2の信頼性の基準としてある検証可能性(第三者がある会計行為の結果の適否を判断することができるかどうか)が挙げられていませんが、信頼しうるかどうかの判断の基礎には、検証可能な資料に基づくことが含意されていると考えられます。
 表現上の忠実性は、「それが、表示しようとするかあるいは表示されることが合理的に期待される取引その他の事象を忠実に表現しなければならない。」(par.33.)とするもので、かなり噛み砕くと「事実をありのままに表現する」ということになるでしょう。
 実質優先主義は、「取引その他の事象は、単に法的形式に従うのではなく、その実質と経済的実態に則して会計処理され表示されることが必要である。」(par.35.)として示されており、法的形式主義の反対として考えられます。例えば、ファイナンスリースを法的にみれば、賃貸借として会計処理することになりますが、その経済的実質を考慮することで、当該リース資産を他の所有する固定資産同様に会計処理することになるわけです。
 中立性は、不偏性ともいわれ、財務諸表が、ある定められた結果を表現するように意図的に情報を選択したりすることを排除することです(par.36.)。それは、ある利用者に偏った財務諸表の作成や表示は、財務諸表の信頼性を失わせることを意味します。
 慎重性は、財務諸表の作成者に対して、取引その他の事象に不可避的に内在している不確実性を、その性質や範囲の開示するによって、または、財務諸表の作成にあたって用心深さをもって実行することによって、処理するべきであるという意味です(par.37.)。その一方で、故意に過剰な慎重性の適用はすべきではないということも含んでいます(par.37.)。
 完全性は、他の制約はあるとしても、できる限り十分な情報を提供するべきであるという意味です(par.38.)。目的適合的な情報は、できる限りすべて提供するということです。

 ・比較可能性
 比較可能性は、財務諸表が各期間を通じて比較することができなくてはならないということ、また、他の企業との比較ができなくてはならないということを意味しています(par.39.)。従って、企業の財務諸表の作成にあたっては、目的適合性や信頼性と不適合な場合を除いて、首尾一貫して行わなくてはならないということです。

 目的適合性と信頼性に対して、適時性による制約とベネフィットとコストのバランスによる制約があります。どれ程目的適合的で信頼できる情報であって、意思決定をする時になければ、意味はありません。また、そうした情報を提供するために係った費用とそれによって生じた意思決定の効果とのバランスが良くなければ、もう少しいえば、その情報を提供した場合の意思決定の効果とコストの差と、その情報を提供しなかった場合の意思決定の効果とコストの差を考慮して財務諸表の作成をしなければなりません。また、実務上、質的特徴間のバランスが必要になってきます。

 5 財務諸表の構成要素
 財務諸表は、いくつかの要素から成り立っています。
 ・財政状態に係る構成要素
 財政状態を表す構成要素には、資産、負債、持分があります。
 ・資産
 「枠組み」では「資産とは、過去の事象の結果として特定の企業が支配し、将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源をいう。」(par.49.)と定義されています。
 この定義において、まず、資産は、「過去の事象の結果として」ということですから、将来の事象(予測)によるものではないということです。例えば、ある商品を販売目的で購入しようという意思を企業が有していても、当該商品は棚卸資産とはならないのです。
 次に、資産は、企業に「支配されている」ということです。ここでいう支配には、法的な支配もありますが、その経済的資源の経済的便益を排他的に受領できるということを意味しています。例えば、所有権を有している機械装置について、自分だけが利用し、そこから得られる経済的便益を受取っている場合にのみ、その機械装置は資産となるといえます。
 「将来の経済的便益とは、企業への現金及び現金同等物の流入に直接的にまたは間接的に貢献する潜在能力をいう。」(par.53)と示されています。そして、「直接的に」とは、その資産の利用や処分によって企業に現金及び現金同等物が流入することで、「間接的に」とは、現金及び現金同等物が流出するのを押さえることを意味します。
 従って、資産は、過去の事象の結果として、現金及び現金同等物を直接的にまたは間接的に生み出す能力を有すると期待される経済的資源のうちで、当該企業にのみその経済的便益をもたらすものといえます。

 ・負債
 「枠組み」では、「負債とは、過去の事象から発生した特定の企業の現在の義務であり、これを履行するためには経済的便益を有する資源が当該企業から流出すると予想されるものをいう。」(par.49.)と定義されています。
 まず、資産と同様に負債も「過去の事象から発生した」ものでなければなりません。例えば、金融機関から借入をすれば、その借入金の返済の義務が生じるわけですが、その借入という過去の事象があって借入金は現在の負債となるので、将来の借入予定から借入金という負債は生じないのです。
 次に、負債の定義における重要な特徴は、負債は「現在の義務である」ということです。ここでいう義務は、法的な義務を基礎としていますが、取引慣行や良好な取引関係を維持したり、公正な行動の要望からも生じます。例えば、製品保証のための金額は、過去の販売という事象に対する現在の義務と考えられるので負債となります。
 そして、負債は、将来の経済的便益を減少させることに特徴があります。経済的便益は、現金及び現金同等物の流入を意味しますが、それを減少させるというのが負債の特徴となります。例えば、買掛金の支払のためには、現金で支払うか、為替手形で支払うか(売掛金の減少)とことになります。

 ・持分
 「枠組み」では、「持分とは、特定の企業のすべての負債を控除した残余の資産に対する請求権である。」(par.49.)と定義されています。
 持分は、貸借対照表上、株主からの拠出金(資本金)、留保利益、留保利益の処分を表示する準備金と資本維持修正を表示する準備金等に分類されます。

 ・経営成績に係る構成要素
 経営成績を表すための構成要素として、収益と費用があります。
 ・収益
 「枠組み」では、「収益とは、当該会計期間中の資産の流入や増加、負債の減少の形をとる経済的便益の増加であり、持分参加者からの拠出に関するもの以外の持分の増加をもたらすものをいう。」(par.70.)と定義されています。
 この定義を簡単にいえば、株主等の出資者からの持分(資本)の増加以外の持分の増加をいい、それは、経済的便益の純増加分を意味しています。従って、増資による持分の増加等は収益として処理されません。また、追加借入は、経済的便益の流入と同時に将来の経済的便益の流出とが生じ、経済的便益の純増加はないので、収益とはなりません。
 収益には、企業の通常の活動によって発生する売上、報酬、利益、配当、ロイヤリティー及び賃借料等の狭義の収益と利得(通常の活動以外から発生した収益の定義を満たす経済的便益の増加)とが含まれています(par.74&75.)。
 「枠組み」では、利得に該当するものとして、非流動資産の処分から発生する利得、市場性ある有価証券の再評価や固定資産の帳簿価額の増加からの未実現利得が例として挙げられています(par.76.)。

 ・費用
 「枠組み」では、「費用とは、当該会計期間中の資産の流出薬研か、負債の減少の形をとる経済的便益の減少であり、持分参加者への分配に関連するもの以外の持分の減少をもたらすものをいう。」(par.70.)と定義されています。
 この定義を簡単にいえば、株主等の出資者への持分(資本)の源生以外の持分の減少をいい、それは、経済的便益の純減性分を意味しています。従って、株主への配当等は費用として処理されません。
 費用には、企業の通常の活動によって発生する売上原価、賃金、減価償却費等の狭義の費用と損失(通常の活動以外から発生した費用の定義を満たす経済的便益の減少)とが含まれます(par.78.&79.)。
 「枠組み」では、損失に該当するものとして、火災や洪水等の自然災害から発生した損失、非流動資産の処分から発生した損失、外貨建借入金の為替レートの高等による未実現損失が例として挙げられています(par.80.)。

 6 構成要素の認識
 認識とは、ある項目が、構成要素の定義を満たし、当該項目に関連する将来の経済的便益の流出入の発生の可能性が高く(蓋然性規準)、当該項目が信頼性をもって測定することができる原価や価値を有している(測定の信頼性規準)場合に、当該項目を貸借対処表や損益計算書に組み入れることで、認識には、文字と金額で描写し、それを貸借対照表や損益計算書の合計数値に含めることです(par.82.&83.)。
 蓋然性の規準は、ある項目に関連する将来の経済的便益の流出入することが予想される確実性の度合いに関連しています。例えば、売掛金について、その回収可能性がある場合には、反証がない限り貸借対照表に計上しなければなりません。ただし、ある程度の貸倒は通常発生するわけですから、それについては、経済的便益の予想される減少を費用として認識することになります(par.85.)。
 測定の信頼性規準は、ある項目が信頼性をもって測定できるかどうかが認識の規準となります。つまり、定義を見たし、蓋然性が会っても、ある項目が、信頼性をもって測定できない場合には、認識されないことになりますが、これは、合理的な見積りさえも排除するものではありません(par.86.)。この規準によれば、例えば、訴訟から予想される収入額は、資産と収益の定義を満たし、蓋然性規準も満たしていても、その収入額が信頼性をもって測定されない場合には、資産や収益として認識されません(par.86.)。
 従って、ある項目を、資産、負債、収益、費用として貸借対照表や損益計算書に計上するかどうかは、その項目が、それぞれの定義を満たし、発生の可能性が高く、測定の信頼性が確保された場合となります。蓋然性や測定の信頼性そのものは、「枠組み」ではなく、それぞれの会計基準において示されることになります。
 また、費用の認識にあたっては、費用収益の対応が挙げられます。「枠組み」では、「費用は、原価の発生と特定の収益項目の稼得との間の直接的な関連に基づいて損益計算書に認識される。」(par.95.)か、「経済的便益が南紀化の会計期間にわたって発生すると予想され、収益との関係が間接的にのみ決定される場合には、費用は組織的かつ合理的な配分手続きで損益計算書に認識される。」(par.96.)としています。
 ただし、費用収益対応の原則は、「枠組み」においては二次的で、この原則によって、資産や負債の定義を満たさない項目が貸借対照表に認識されることはありません(par.95.)。例えば、ある支出が将来の経済的便益をもたらさない場合や、将来の経済的便益が資産として認識するに足りない場合等には、費用収益の対応から繰り延べられるような項目も、損益計算書で費用として認識されます(par.97.)。

 7 構成要素の測定
 「枠組み」において、「測定とは、財務諸表の構成要素が認識され、貸借対照表や損益計算書に記載される金額を決定するプロセスで、特定の測定基礎の選択を含む。」(par.99.)と定義されています。
 「枠組み」では、測定基礎として、取得原価(歴史的原価)、現在原価、実現可能価額(あるいは決済価額)、現在価値を挙げています。
 ・取得原価
 「取得原価によれば、資産は、その取得時に支払われた現金または現金同等物の金額あるいは取得するために与えられた対価の公正価値の金額で記録され、負債は、義務との交換によって受領した金額やある状況において通常の事業過程で弁済するために支払うことが予想される現金または現金同等物の金額で記録される。」(par.100.)とされています。

 ・現在原価
 「現在原価によれば、資産は、同一(同等)の資産を現時点で取得した場合に支払わなければならない現金または現金同等物の金額で記載され、負債は、義務を現時点で弁済するために必要とされるであろう割引を除外した現金または現金同等物の金額で記載される。」(par.100.)とされています。

 ・実現可能価額(決済価額)
 「実現可能価額によれば、資産は、経常的な処分によって資産を売却する場合に現時点で得ることができるであろう現金または現金同等物の金額で記載され、決済価額によれば、負債は、通常の事業過程で負債を弁済するために支払われるであろう割引を除外した現金または現金同等物の金額、即ち、決済価額で記載される。」(par.100.)とされています。

 ・現在価値
 「現在価値によれば、資産は、通常の事業過程で生じるであろう将来の正味現金流入額の現在割引価値で記載され、負債は、通常の事業過程で負債を弁済するために必要とされるであろう将来の正味現金流出額の現在割引価値で記載される。」(par.100.)とされています。

 ○確認問題
 Q.1.「枠組み」において、財務諸表が提供する情報の質的特徴の説明で、誤っているのは次のうちどれか。
 A.情報は、利用者の目的(要求)に適合しなければならない。
 B.情報は、信頼し得るものでなければならない。
 C.情報は、各期間または他の企業と比較できるものでなければならない。
 D.情報は、すべての利用者に理解できるものでなければならない。

 解答 D。「枠組み」における理解可能性は、すべての利用者ではなく、ある程度の知識と理解しようという意思を有している利用者を想定しています。

 Q.2.「枠組み」において、財務諸表が提供する情報の質的特徴の説明で、正しいのは次のうちどれか。
 A.財務諸表の質的特徴は、目的適合性、検証可能性、不偏性、量的表現可能性である。
 B.財務諸表は、真実かつ公正な概観を表示するものでなければならない。
 C.目的適合性が最高規範で、信頼性はその下位に位置づけられる。
 D.財務諸表の目的は有用な情報の提供なので、有用性が最高規範である。

 解答 D。 「枠組み」において、財務諸表の質的特徴として挙げられている4つは、財務諸表が有用であるためのものです。Aは、アメリカ会計学会基礎的会計理論作成委員会『基礎的会計理論』(1966年)の基準です。Cは、目的適合性と信頼性はトーレドオフの関係で、実際にはそれぞれの適切な均衡を図らなければなりません(par.45.)。

 Q.3.「枠組み」において、基本的前提とされているのはどれか。
 A.原価主義と実現主義
 B.発生主義と継続企業
 C.目的適合性と信頼性
 D.財務諸表とその利用者

 解答 B。 「枠組み」において、Aの原価主義と実現主義は、基本的前提となっていません。むしろ、原価主義は、幾つかある測定基礎の1つと考えられています。また、C.の目的適合性と信頼性は、有用な会計情報の質的特徴であり、財務諸表とその利用者も、財務諸表の作成と表示の直接的な前提ではありません。

 Q.4.「枠組み」における、財務諸表の構成要素に関する記述のうちで、誤っているのは、次のうちどれか。
 A.資産は、過去の事象の結果として、ある企業が支配し、将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源をいう。
 B.義務とは、法的義務だけではなく、取引慣行等からも生じる。
 C.費用収益対応の原則によって、支出に対して将来の経済的便益がない場合であっても、資産は繰延べ処理されなければならない。
 D.資産の測定は、取得原価だけとは限らない。

 解答 C。 「枠組み」において、ある支出を資産とするか費用とするかは、費用収益対応の原則によるのではなく、それぞれの定義、蓋然性、測定の信頼性に依存しています。
 

 第2章 財務諸表の表示(IAS1)

 1 IAS1の目的と範囲
 1997年に、IAS1『会計方針の開示』、IAS5『財務諸表に開示すべき情報』、IAS13『流動資産及び流動負債の表示』を廃止し、改訂したものが、IAS1『財務諸表の表示』です。
 IAS1は、当該企業の過年度財務諸表及び他の企業の財務諸表との比較可能性を確保するために、財務諸表の表示についての全般的な考慮事項、財務諸表の公正についての指針及び財務諸表の内容についての最小限の要求事項を規定しています。
 そして、IAS1の適用範囲は、IASに準拠して作成、表示される一般目的財務諸表の表示のすべてに適用されます。ここでいう「一般目的財務諸表とは、自己の特別に必要な情報に合わせた報告書を要求する立場にない利用者の要望を満たすための財務諸表であり、別個に掲示されるか、年次報告書や目論見書等の他の公開文書の中で掲示される財務諸表も含むが、要約中間財務情報には適用されない。」(par.2.)としています。
 また、IAS1は、銀行業や保険業も含むすべての企業の、個別財務諸表と連結財務諸表についても適用されます(par.2.&par.3.)。

 2 財務諸表の目的と財務諸表に対する責任
 IAS1において、「財務諸表は、ある企業の財政状態とその企業が行った取引についての財務的表現を体系的に行うものであり、一般目的財務諸表の目的は、経済的意思決定を行う広範囲の利用者にとって、有用な企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローについての情報を提供することである。また、一般目的財務諸表は、委託された資源に対する経営者の責務遂行の成果も示すものである。」(par.5.)としています。
 これは、基本的に、「枠組み」における財務諸表の目的(「枠組み」、par.12.-15.)と一致しています。
 更に、IAS1では、財務諸表には、資産、負債、資本、収益と費用及びキャッシュフローに関する情報を記載し、注記情報とともに、利用者が企業の将来のキャッシュフローを獲得する時期や確実性を予測するのに役立つものでなければならないとしています(par.5.)。
 これもまた、「枠組み」における規定(「枠組み」、par.15-21.)と一致しています。
 そして、財務諸表の作成と表示についての責任は、企業の取締役その他の支配機関にあるとされています(par.6.)。

 3 財務諸表の構成部分
 IAS1では、財務諸表の完全なセットには、次のものが含まれます(par.7.)。

 ・貸借対照表、
 ・損益計算書、
 ・株主持分のすべての変動に関する、または、株主との資本取引及び株主への分配以外の原因による株主持分の変動に関する計算書、
 ・キャッシュフロー計算書、
 ・会計方針及び説明的注記。

 これは、「枠組み」におけるものと基本的に一致しています。ただし、「枠組み」では、・株主持分変動計算書は含まれていませんでした。
 また、「枠組み」との違いとして、「枠組み」では、財政状態変動表(資金計算書)について、どのような資金概念を用いるか特定していませんでした(「枠組み」、par.7.&18.)が、1992年に改訂されたIAS7『キャッシュフロー計算書』を受ける形で、IAS1は、財政状態変動表について、キャッシュフロー計算書としています。

 4 全般的な考慮事項
 ・適正表示とIASへの準拠
 IAS1によれば、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの適正表示という財務諸表の目的は、IASを適切に適用し、必要な追加的開示をすれば、ほとんどすべての場合に達成される(par.10.)としています。
 IASの適切な適用とは、財務諸表が適用すべき各IAS及び解指針書のすべての規定に従っていることをいい、その場合にのみ、IASに準拠した旨を開示することになります(par.11.)。
 IASに準拠することが、むしろ有用な情報の提供に反するために、IASの規定とは違った財務諸表の作成や表示の基準を適用した(離脱)場合、次のことを開示しなければなりません(par.13.)。

 ・財務諸表が、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローを適正に表示していると、経営者が結論している旨、
 ・適正表示を達成するためにある基準から離脱したことを除いては、すべての重要な点で適用可能か基準書に準拠している旨、
 ・企業が離脱した基準及びその離脱の内容(その基準が求めたであろう処理、当該事情の下でその処理が誤解を招くと思われる理由と採用された処理を含む)、
 ・提起された各会計期間について、当該離脱が当該企業の純損益、資産、負債、資本及びキャッシュフローに及ぼす財務的影響。

 なお、他の処理でも適正表示されるというだけでは離脱は正当化されませんし、また、国内規定の存在によっても、離脱を正当化できません。

 ・会計方針
 財務諸表が、適用すべきIAS及び解釈指針書(以下、SIC)のすべての規定に準拠するように、経営者は企業の会計方針を選択適用しなければならず、具体的な規定がない場合には、経営者は、「枠組み」(「枠組み」、par.24.-42.)で示されている有用な会計情報の質的特徴である目的適合性及び信頼性(表現の忠実性、実質優先主義、中立性、慎重性、完全性)を満たすように、会計方針を設定しなければなりません(par.20.)。
 具体的規定がIAS及びSICになく経営者が自ら会計方針を設定する場合には、・類似した関連する問題についてのIASやSICの規定、・「枠組み」の構成要素の定義、認識及び測定に関する規定、・前記の・・に矛盾のない他の会計基準設定機関の公表文書や一般に認められた業界の実務を検討し、有用な会計情報の提供のための会計方針を選択することになります(par.22.)。
 なお、ここでいう会計方針とは、企業が財務諸表を作成し、表示するために採用する特定の原則、基礎、慣行、規則、実務をいいます(par.21.)。

 ・継続企業
 経営者は、企業が継続企業として存続する能力があるかどうかを検討して、企業を清算あるいは営業停止する意思がある場合や清算あるいは営業停止する以外の代替案がない場合を除いて、財務諸表は、継続企業の前提によって作成しなければなりません(par.23.)。そして、継続企業として存続する能力を検討した結果、継続企業の前提に疑問を生じさせる事象等を発見した場合には、その旨を開示しなければなりません(par.23.)。また、継続企業の基準で財務諸表を作成しない場合には、継続企業の基準で作成されていない旨を、そこでの財務諸表の作成の基準及び継続企業とは認められない理由とともに開示しなければなりません(par.23.)。
 継続企業の前提を採用しても適切であるかどうかを判断するにあたって、経営者は、予見しうる将来(12ヶ月以上)に関するすべての入手可能な情報を検討しなければなりません(par.24.)。

 ・発生主義
 「枠組み」(「枠組み」、par.22.)でも示されていますが、IAS1においても「企業はキャッシュフロー情報を除いて、発生主義会計により財務諸表を作成しなければならない。」(par.25.)としています。また、費用収益対応について、IAS1でも「枠組み」と同様の規定をし、「費用は、発生した原価と特定の収益項目との直接的関連(対応)の原則によって損益計算書に認識されるが、対応の概念を適用することで、定義に合致しない資産や負債を貸借対照表上に計上することは許されない。」(par.26.)としています。

 ・表示の継続性
 財務諸表上の項目の表示と分類は、ある期から次の期へと継続しなければなりません(par.27.)。ただし、企業の事業内容の重大な変化や財務諸表の表示の再検討によって、変更した方がより適切な表示になるような場合や表示の変更がIASやSICによって強制されている場合には、継続性は問われません(par.27.)。表示の変更を行った場合には、比較情報の組み替えを行います(par.28.)。なお、国内基準に従っての表示の変更はIAS1に合致する場合に認めれらます(par.28.)。

 ・重要性と合算
 「重要な各項目は財務諸表上で別個に表示しなければならない。」(par.29.)としています。ただし、重要性のない金額は、むしろ合算することで、適正表示が保たれることがあります。
 重要性の判断は、当該項目の性質(機能)と規模(金額)を考慮し、金額が大きくても性質が同様のものは、貸借対照表や損益計算書上で合算されることになります(par.31.)。

 ・相殺
 資産と負債は、他のIASで強制されているか許容されている場合以外には、相殺せずに別個に報告されなければならず、収益と費用は、他のIASで強制されているか許容されている場合や同一(類似)の取引その他の事象から生じる利得、損失及び関連費用に重要性がない場合を除いて、相殺せず別個に報告されなければなりません(par.34.&35.)。
 ただし、資産から評価性引当金を控除することは相殺には該当しません(par.36.)。
 相殺表示が取引の実質を反映する場合、例えば、投資や営業用資産等の非流動資産の処分の場合、その処分による損益を処分金額から当該資産の帳簿価額と関連売却費用とを控除して報告することがあります(par.36.)。

 ・比較情報
 「他のIASで強制や強要されていない限り、財務諸表注のすべての数値情報について、前期との比較情報を開示しなければならない。」(par.38.)としています。更に、「比較情報が、目的適合性がある場合には、文章による説明的情報も含めなければならない。」(par.38.)としています。
 また、「財務諸表における項目の表示や分類が変更される場合には、実行不可能な場合を除き、当期との比較可能性を確保するために比較情報の金額を再分類し、あらゆる再分類の性質、金額及び理由を開示しなければならず、実行不可能な場合には、再分類をしない理由と金額が再分類されたならば行われていたであろう変更の内容を開示しなければならない。」(par.40.)としています。

 5 財務諸表の識別と報告期間
 ・財務諸表の識別
 「財務諸表は、明瞭に識別し、同じ公表書類中の他の情報と区分しなければならない。」(par.44.)とし、IASを使用して作成された情報とそうでない情報とを利用者が識別できるようにしなければなりません(par.45.)。
 「財務諸表の各構成部分は明瞭に識別しなければならない。」(par.46.)としています。とりわけ、報告企業の名称または他の識別手段、財務諸表の対象が個別かグループか、貸借対照表日や財務諸表の対象期間のうちで財務諸表の当該構成部分にとって適切なもの、報告通貨、財務諸表中の表示単位については、目立つようにして、情報の適切な理解に必要であれば反復することになります(par.46.)。

 ・報告期間
 財務諸表は、少なくとも年に1回は作成しなければならず、企業の貸借対照表日が変更され、念じ財務諸表が1年よりも長いまたは短い期間で作成されるような例外的な場合には、1年以外の期間が使用された理由と損益計算書、持分変動表、キャッシュフロー計算書及びこれらに関する注記の比較情報の金額が比較可能でない旨を開示しなければなりません(par.49.)
 ただし、財務諸表が、実務上の理由から52週間で報告することを、企業が選択することを認めています(par.51.)。
 また、「枠組み」における適時性との関連で、企業は、財務諸表を貸借対照表日より6ヶ月以内に公表しなければならず、企業の事業活動の複雑さ等の経常的要因は、報告を遅延させる正当な理由とはなりません(par.52.)

 6 貸借対照表
 企業は、その事業活動の性質に応じて、流動資産と非流動資産、流動負債と非流動負債を貸借対照表上、別々の区分として表示するか、あるいは、資産と負債を流動性の順序に従って表示しなければならない(par.53.)として、流動と非流動を区分することを企業の判断に委ねています。ただし、いずれの場合にも、貸借対照表日から12ヶ月以内に回収または決済されるものとそうでないものとを混在している項目について、12ヶ月より後の回収または決裁予定額を開示しなければなりません。
 ・流動資産
 ある資産が、・企業の通常の営業循環過程の間に実現される予定であるか、通常の営業循環過程の間に販売または消費する目的で保有されている場合、・主として売買目的または短期保有目的で、貸借対照表日から12ヶ月以内に実現される予定である場合、・使用制限がない現金及び現金同等物である場合には、流動資産として分類しなければなりません(par.57.)。それ以外の項目はすべて非流動資産として分類しなければなりません(par.57.)。
 なお、非流動資産には、長期の有形資産、無形資産、営業用及び金融資産が含まれています(par.58.)。
 また、営業循環期間とは、循環過程に入る材料を取得し、それが現金または直ちに現金と交換可能なものとして実現するまでの期間をいい、この期間内に販売、消費、実現される棚卸資産や営業債権は、12ヶ月以内に実現しないようなものでも、流動資産として分類されます(par.59.)。これを、営業循環基準といいます。
 それに対して、例えば、市場性ある有価証券は、営業循環過程とは関係ないので、12ヶ月以内に実現すると予想されるかどうかで、流動か非流動かに区分されます。これを1年基準といいます。

 ・流動負債
 ある負債が、・企業の通常の営業循環過程の間に決済される予定である場合、・決済期限が貸借対照表日から12ヶ月以内である場合には、流動負債として分類し、そうでない場合には、非流動負債に分類しなければなりません(par.60.)。
 また、長期の有利子負債は、その期限が貸借対照表日から12ヶ月以内であっても、・当初の期限か12ヶ月を越え、・企業が当該債務を長期に渡って借換えする意向があり、・その意図が財務諸表の公表前に完了した契約によって裏付けられている場合、非流動負債としなければなりません(par.63.)。なお、これによって非流動負債とされた負債の金額は、その裏付けとなった情報とともに貸借対照表の注記で開示しなければなりません(par.63.)。
 また、営業循環内に返済期日が到来する債務のうち、借換え等が予定され、それが企業の自由意思で行える場合、非流動負債となります(par.64.)。

 ・貸借対照表本体に記載すべき情報
 貸借対照表の本体には、次の金額を表す項目を掲記しなければなりません(par.66.)。

 ・有形固定資産
 ・無形資産
 ・金融資産(・、・、・で示される金額を除く)
 ・持分法で会計処理されている投資
 ・棚卸資産
 ・営業債権その他の受取勘定
 ・現金及び現金同等物
 ・営業債務その他の支払勘定
 ・IAS12『法人所得税』に基づく税金負債及び税金資産
 ・引当金
 ・非流動有利子負債
 ・少数株主持分
 ・発行済資本金呼び剰余金

 なお、他のIASによって要求されている場合や財政状態の適正な表示に必要な場合には、・資産の性質、流動性金額的重要性、・企業内における各項目の機能、・各負債の金額、性質、返済予定時期等を検討して、追加的表示項目、その見出し及び小計を貸借対照表本体に計上しなければなりません(par.67.&70.)。

 ・貸借対照表本体か注記で記載すべき情報
 企業は、次の事項を貸借対照表の本体か注記で開示しなければなりません(par.74.)
 ・株式資本の種類ごとに、授権株式数、全額払込済みの発行済み株式数と未払込額のある発行済み株式数、1株当たりの額面金額または無額面である旨、期首と期末の社外流通株式数の調整、その種類の株式に付される権利や制限等、自己株式や子会社株式等の自社株式、オプション及び売渡し契約のために留保している株式やそれらについての契約条件金額棟
 ・株主持分の各種剰余金ごとの内容及び目的
 ・貸借対照表日後であるが、財務諸表の公表が承認される前に提案されたか宣言された配当の金額
 ・未認識の累積優先配当額

 7 損益計算書
 ・損益計算書の本体に記載すべき情報
 損益計算書の本体には、少なくとも次の金額を表す表示項目を記載しなければなりません(par.75.)。

 ・収益
 ・営業損益
 ・金融費用
 ・持分法適用の関連会社及びジョイントベンチャーの損益に対する持分
 ・税金費用
 ・経常損益
 ・異常損益項目
 ・少数株主持分
 ・当期純損益

 なお、他のIASによって要求されている場合や経営成績の適正な表示のために必要な場合、収益と費用の構成要素の重要性、性質及び機能等を検討して、追加的表示項目、見出し及び小計を損益計算書本体に計上しなければなりません(par.75.)。

 ・損益計算書の本体か注記に記載すべき情報
 「企業は、損益計算書の本体または損益計算書の注記のいずれかに、費用の性質に基づくか、企業内における機能に基づく分類を用いて、費用の分析を記載しなければならない。」(par.77.)とし、前者を費用性質法と呼び、後者を費用機能法(売上原価法)と呼んでいます。2つの分析方法は、安定性、損益の潜在的可能性及び予測可能性の点からみて異なるであろう経営成績の一定の構成要素を強調するために、費用を小分類するためのものです(par.79.)。
 費用性質法では、費用は、損益計算書上、減価償却費、材料仕入高、運送費、賃金給与、宣伝費等のようにその性質に従って集計されます(par.80.)。
 一方、費用機能法では、費用は、損益計算書上、売上原価、販売費、管理費等のようにその機能に従って集計されます(par.82.)。但し、この方法による場合には、償却費、人件費等の費用の性質に関して、追加情報を開示することになります(par.83.)。
 以下の表は、2つの方法による損益計算書です。()は、マイナスを意味しています。
 

費用性質法
費用機能法
収益
その他の収益
営業収益合計
棚卸増減高
材料等消費高
人件費
償却費
その他営業費
営業費合計
営業利益 
××× 
××× 
××× 
(×××)    
(×××)    
(×××)    
(×××)    
(×××)    
(×××)
 ××× 
収益
売上原価
売上総利益
その他営業収益
販売費
管理費
その他の営業費
営業利益 
××× 
××× 
××× 
××× 
(×××)
(×××)
(×××)
×××

 8 持分変動計算書
 財務諸表の独立の構成部分として、次の持分に関する計算書を表示しなけばなりません(par.86.)。

 ・当期純損益
 ・他のIASによって、直接、株主持分に計上された収益(利得含む)や費用(損失含む)の各項目とその合計
 ・IAS8『期間損益、重大な誤謬及び会計方針の変更』の標準処理による会計方針の変更の累積的影響額及び重大な誤謬の訂正

 なお、・株主との資本取引及び株主への分配、・留保利益や繰越損失の期首期末の各残高と期中の変動、・各種別の株式資本、株式プレミアム及び各種剰余金の期首期末の各残高と期中変動を個別に開示した調整表は、株主持分変動計算書の本体か注記で開示しなければなりません(par.86.)。

 9 財務諸表の注記と会計方針の記載
 財務諸表の注記には、会計方針の開示しなければなりません(par.91.)が、会計方針の開治にあたっては、財務諸表の作成に際して使用された測定基礎及び財務諸表を正しく理解するのに必要な個別の会計方針については、必ず開示しなければなりません(par.97.)。
 また、財務諸表の注記には、IASによって要求される情報で、財務諸表の他の場所に記載されていなものに関しての開示が必要になります(par.91.)。
 更に、財務諸表の本体に記載されていないが、適正な表示に必要とされる追加的情報が開示されなければなりません(par.91.)。

 ○確認問題
 Q.1.IAS1において、財務諸表の完全なセットに含まれないものはどれか。
 A.貸借対照表
 B.損益計算書
 C.キャッシュフロー計算書
 D.目論見書

 解答 D。 財務諸表の完全なセットには、A、B、Cの他に、株主持分変動計算書と会計方針及び説明的注記が含まれています。

 Q.2.IAS1における全般的考慮事項の説明で、正しいのはどれか。
 A.すべての財務諸表は、発生主義によって作成しなければならない。
 B.継続企業が前提なので、企業にその能力があるかどうかは問わない。
 C.すべてのIASとSICに従って財務諸表を作成した場合、IASに準拠した財務諸表である旨を開示しなければならない。
 D.評価性引当金控除後の金額は相殺になる。

 解答 C。 キャッシュフロー計算書は発生主義で作成しないので、Aは間違っています。継続企業が前提であっても、その能力がない場合には、継続企業を前提とした財務諸表は有用な会計情報とはいえないので、Bも間違いです。評価性引当金の控除は相殺には該当しないので、Dも間違いです。

 Q.3.IAS1による流動と非流動の区分の説明で、誤っているのはどれか。
 A.非流動資産には、金融資産が含まれる。
 B.使用制限がない場合、現金及び現金同等物は流動資産である。
 C.ある資産の金額に貸借対照表日から12ヶ月以内のものと12ヶ月を越えるものが混在している場合には、12ヶ月を越えて回収される資産の金額を開示しなければならない。
 D.長期の有利子負債は、その期限が12ヶ月以内であっても流動負債としてはならない。

 解答 D。 長期有利子負債は、その期限か12ヶ月以内であって、当初期限が12ヶ月を越え、長期に借換えの意思があって、その意思を裏付ける根拠がある場合を除いて、流動負債とします。

 Q.4.財務諸表の表示に関する記述で、正しいのはどれか。(国際会計テスト第3回第10問一部改正)
 A.異常損益は、損益計算書に記載される。
 B.異常損益は、株主持分変動計算書に記載される。
 C.会計方針の変更の累積影響額は、損益計算書に記載される。
 D.重大な誤謬の訂正額は、IAS8の標準処理によれば、株主持分変動計算書に記載される。

 解答 A。 異常損益は、損益計算書に記載されます。
 

 第3章 棚卸資産(IAS2)

 1 IAS2の目的と範囲
 IAS2は、取得原価主義会計における棚卸資産会計の処理を規定し、資産として認識し、資産として計上される原価の金額を決定することに関連しています。
 IAS2は、「・直接関連する役務提供を含む請負工事契約により発生する未成工事原価、・金融商品、・特定の業種で認められた会計慣行に従って正味実現可能価額で測定される範囲内での農林生産物、鉱物資源及び農産物の生産者の棚卸資産、・農業活動に関連する生物資産。」(par.1.)を除く棚卸資産に適用されます(par.1.)。

 2 棚卸資産の意義
 棚卸資産とは、資産のうち、「・通常の営業過程において販売を目的として保有されているもの、・このような販売を目的とする生産過程にあるもの、・生産過程や役務の提供にあたって消費される原材料や貯蔵品」(par.4.)をいいます。

 3 棚卸資産の測定
 「棚卸資産は、原価と正味実現可能価額とのいずれか低い価額で計上しなければならない。」(par.6.)として、棚卸資産の測定は低価基準で行うことを原則としています。
 ・原価
 棚卸資産の原価には、購入原価、加工費及び棚卸資産が現在の場所や状態に至るまでに発生したその他の原価のすべてを含みます(par.7.)。
 購入原価は、購入対価(棚卸資産そのものの値段)、企業が回収できない輸入関税等の税金及び棚卸資産の取得に係る運送費その他の費用で、値引や割戻は購入原価から控除されます(par.8.)。
 加工費には、直接労務費、製造間接費の配賦額からなります(par.10.)。
 製造間接費の配賦は、減価償却費や工場事務管理費等の固定費は、生産能力に基づいて配賦され、間接材料費や間接労務費等の変動費は、生産設備の実際使用料に基づいて配賦されます(par.11.)。
 その他の原価は、棚卸資産が現在の場所や状況に至るまでに発生したもので、製品設計費用等があり、・仕損に係る異常な製造原価、・次工程に移る前のものを除く保管費用、・現在の場所や状況に至る過程に関連しない管理部門の間接費、・販売費用は除かれます。
 なお、IAS41『農業』において、生物資産から収穫した時点で見積り販売時費用控除後の構成価値は、当該農産物の棚卸資産の原価として扱われます(par.16A.)。
 また、標準原価法や売価還元法は、適用結果と原価が類似する場合にのみ簡便法として認められています(par.17.)。
 原価配分の方法は、互換性のない棚卸資産の原価と特定プロジェクトのために製造されて他の棚卸資産から区分されている原価や役務の原価は、当該棚卸資産に直接帰属させる個別法で処理され、それ以外の場合には、先入先出法(先に購入したものを先に販売すると考えて、期末の棚卸は、最近購入したか製造されたものと仮定して計算する)、または、加重平均法(期首と期中の購入したり製造したりしたものの原価を加重して計算する)が、標準処理としてされており、後入先出法は、注記を伴った代替処理として認められています(par.19.-24.)。

 ・正味実現可能価額
 「正味実現可能価額とは、通常の営業過程における予想売価から、完成までに要する見積原価と販売に要する見積費用を控除した額である。」(par.4.)と定義されています。
 正味実現可能価額は、棚卸資産によって実現すると予想される金額の見積を行う時点において入手可能な、最も信頼しうる証拠に基づいて決定されなければなりません(par.27.)。
 ただし、確定済みの販売契約や役務提供契約を履行するために保有されている棚卸資産の正味実現可能価額は、契約価格に基づき算定されます。その際、契約量より在庫量が多い場合には、契約量について契約価格が適用され、それ以外は、通常の販売価格に基づいて算定されます(par.28.)。
 また、原材料の正味実現可能価額は、その再調達原価(取替原価)で測定されることもあります(par.29.)。

 ・低価法の適用
 棚卸資産について、低価基準が用いられるわけですが、いくつかの点で注意しなければなりません。
 例えば、生産に使用するための材料や貯蔵品は、それが組込まれる製品の販売価格が原価を下回らない場合で、原材料の価格の下落が製品の正味実現可能価額を原価より低くする場合を除いて、材料や貯蔵品の評価減は行われません(par.28.)。
 また、評価後の金額を新たな帳簿価額とする切放し法が適用されますが、評価減資他原因が消滅した場合には、洗い替え法で評価減を戻し入れて、新たにに低価基準によって帳簿価額を決定します(par.30.)。

 4 費用の認識
 販売された棚卸資産の帳簿価額は費用として認識され、評価減が生じた場合には、その金額は、発生期間の費用として認識されます(par.31.)。このように売却された棚卸資産の帳簿価額を費用として認識することは、費用と収益との対応させることになります(par.32.)。

 5 開示
 財務諸表には、次の事項が開示されなければなりません(par.34.)。

 ・棚卸資産の評価にあたって採用した会計方針
 ・棚卸資産の帳簿価額の合計と企業に適した分類ごとの帳簿価額
 ・正味実現可能価額で計上した棚卸資産の帳簿価額
 ・当期損益として認識した評価減の戻し入れ額
 ・戻し入れをした原因の状況や事象
 ・負債の担保のために供されている棚卸資産の帳簿価額
 ・後入先出法を適用した場合に、棚卸資産の貸借対照表価額と、標準処理による価額と正味実現可能価額のいずれか低い額、または、貸借対照表日の現在原価と正味実現可能価額のいずれか低い額のどちらかとの差額
 ・当期中に費用として認識された棚卸資産の原価、または、収益に対応する費用として当期中に認識された性質別分類による営業費用

 ○確認問題
 Q.1.IASによる処理として、正しいのはどれか。
 A.棚卸資産は、原価と再調達原価による低価基準で評価する。
 B.棚卸資産は、原価と正味実現可能価額による低価基準で評価する。
 C.棚卸資産は、原価で評価する。
 D.棚卸資産は、公正価値で評価する。

 解答 B。 IAS2によれば、棚卸資産は、原価と正味実現可能価額による低価基準で評価されます。

 Q.2.IAS2の規定で、誤っているのはどれか。
 A.正味実現可能価額とは、通常の営業過程における予想売価から、完成までに要する見積原価と販売に要する見積費用を控除した価額である。
 B.棚卸資産の原価は、購入原価、加工費及び棚卸資産を現在の場所や状況にするために要したその他の原価のすべてを含まなければならない。
 C.互換性のない棚卸資産や特定プロジェクトのために製造され他の棚卸資産と区分される財貨または役務の原価には、個別法が強制される。
 D.借入費用は、一切、棚卸資産の原価を構成しない。

 解答 D。 IAS23『借入コスト』で代替処理として認められる場合には、借入費用は、棚卸資産の原価を構成します。

 Q.3.以下のデータにから、各期末における棚卸資産の評価額として正しい組み合せはどれか。(単位:千円)(国際会計テスト第1回第21問一部改定)
 

 
2000年末
2001年末
 
製品X
材料Y
製品X
材料Y
帳簿価額 
60,000
15,000
70,000
16,000
正味実現可能価額 
64,000
65,000
取替原価 
12,000
15,000

 なお、材料Yは、製品Xの生産に使用されている。また、2001年末に、材料Yの価額が低くなったことが原因で、製品Xの正味実現可能価額が下落した。
  2000年度末  2001年度末
 A. 75,000    80,000
 B. 72,000    80,000
 C. 75,000    86,000
 D. 76,000    80,000

 解答 A。 IAS2で、棚卸資産の評価は、原価と正味実現価額と低価基準が強制されています。ただし、製品の生産のための材料は、関連する製品の正味実現可能価額を下落させる原因となっている場合に、評価減することになります。従って、2000年度末では(60,000+15,000)、2001年度末では(65,000+15,000)となります。

 Q.4.決算日現在、棚卸資産が1,000個ある。当該商品の原価は、1個あたり100千円であり、決算日の販売価格は105千円である。1,000個のうち500個については、1個あたり108千円の販売価格で確定済みの販売契約がある。なお、通常の1個あたりの直接販売費は10千円である。期末の棚卸資産の評価額はいくらか。
 A.95,000千円
 B.96,500千円
 C.100,000千円
 D.105,000千円

 解答 B。 確定済みの販売契約における正味実現可能価額は、当該契約の販売価格によりますので、98千円(=108千円−10千円)となり、残りの部分の正味実現可能価額は、95千円(=105千円−10千円)となります。どちらも帳簿価額(原価)よりも正味実現可能価額が低いので、確定済み販売契約分の評価額は、500個×98千円=49,000千円となり、残りは、500個×95千円=47,500千円となり、合計で、96,500千円となります。
 
 

 第4章 キャッシュフロー計算書(IAS7)

 1 IAS7の目的
 「枠組み」によれば、財務諸表の目的は、広範な会計情報の利用者が、合理的な経済的意思決定を行うにあたって、企業の現金及び現金同等物を獲得する能力と現金及び現金同等物の発生の時期や確実性を評価できるように、企業の財政状態、経営成績及び財政状態の変動に関する情報を提供することですが、この考え方を受けて、従来の運転資本概念を資金概念としていた財政状態変動表(資金計算書)から、より現金及び現金同等物の獲得能力、その時期や確実性を評価できる、現金及び現金同等物を資金概念としたキャッシュフロー計算書に取換えるために、IAS7は1992年に改訂され、公表されました。

 2 キャッシュフロー計算書に関連する概念
 キャッシュフロー計算書は、一定期間のキャッシュフローを表示する財務諸表です。これは、現金主義的な損益計算書と考えられます。
 キャッシュフローとは、現金及び現金同等物の流入と流出をいいます(par.6.)。
 現金は、手許現金(通貨の他にも現金勘定で処理される項目)と要求払預金(当座預金、普通預金、通知預金等)を意味しています(par.6.)。
 現金同等物は、短期の流動性の高い投資のうち、容易に一定金額に換金可能で、価値変動について僅少なリスクしか負わないものをいいます(par.6.)。現金同等物には、例えば、ある投資が取得日から短期(一般に3ヶ月以内)に期限の到来する国債等があります(par.7.)。また、要求払債務である当座借越は、負の現金同等物として扱われます(par.8.)。
 キャッシュフローは現金及び現金同等物の流出入をいいますから、現金及び現金同等物間の変動、例えば、当座預金へ現金を預け入れる等は、キャッシュフローから除かれます(par.9.)。
 上記のキャッシュフローに関連する用語は、日本の会計基準におけるものと相違はありません。
 IAS7では日本と同様に、キャッシュフローを営業活動、投資活動、財務活動に区分して、キャッシュフロー計算書に表示します。

 3 営業活動によるキャッシュフロー(以下、CFO)
 「営業活動とは、企業の主たる収益獲得活動をいい、投資活動や財務活動以外のその他の活動も含む。」(par.6.)としており、純損益の決定に関連する取引及びその他の事象に関連しています(par.14.)。
 CFOには、例えば、「・財貨の販売及び役務の提供による収入、・ロイヤリティ、報酬、手数料及びその他の収益による収入、・財貨や役務の仕入先に対する支出、・従業員に対するあるいは従業員のための支出、・保険会社の保険料収入並びに保険金、年金及びその他の保険契約上の給付金の支払、・財務活動や投資活動に結び付けられない、法人所得税の支払や還付、・短期売買目的で保有される契約からの収入及び支出」(par.14.)が含まれます。
 CFOの報告には、直接法と間接法があります。直接法は、主要な種類ごとの収入と支出を表示する方法で(par.18.)、間接法は、税金及び異常損益控除前純損益を非資金的性格の取引の影響、繰延べ見越し計上した損益、投資活動や財務活動に関連した損益を調整して表示する方法です(par.18.)。
 直接法と間接法の違いは以下のようになります。
 

直接法
間接法
得意先からの収入
仕入先への支出
従業員への支出
営業活動による現金獲得額
利息支払額
法人所得税支払額
異常損益項目控除前キャッシュフロー
震災に対する保険金収入
CFO
××× 
(×××)
(×××)
××× 
(×××)
(×××)
××× 

 ××× 
××× 

控除前純利益
減価償却費
為替差損
利息費用
運転資本増減前営業利益
営業債権の増加額
棚卸資産減少額
営業債務増加額
営業活動による現金獲得額
利息支払額
法人所得税支払額
異常損益項目控除前キャッシュフロー
震災による保険金収入
CFO
××× 
××× 
(×××)
 ××× 
××× 
(×××)
××× 
 ××× 
××× 
××× 
 ××× 
××× 

 ××× 
××× 

 4 投資活動によるキャッシュフロー
 「投資活動とは、長期性資産の取得や処分及び現金同等物には含まれないその他の投資の取得や処分をいう。」(par.6.)としており、現金及び現金同等物や運転資本以外の貸借対照表の借方項目の変動に係る取引をいいます。
 投資活動によるキャッシュフローには、例えば、「・資産計上された開発費や自家建設の有形固定資産に関連する支出を含む有形固定資産、無形資産及びその他の長期資産を取得するための支出、・有形固定資産、無形資産及びその他の長期資産の売却による収入、・現金同等物とされるか短期売買目的で保有される金融商品への支出を除く、他の企業の持分や債権及びジョイントベンチャーの持分の取得のための支出、・現金同等物とされるか短期売買目的で保有される金融商品に関する収入を除く、他の企業の持分や債権及びジョイントベンチャーの持分の処分からの収入、・金融機関からの貸出を除く、他者への貸出、・金融機関からの貸出を除く、他者への貸出の返済による収入、・短期売買目的で保有される場合や財務活動として分類される場合を除く、先物契約、先渡契約、オプション契約及びスワップ契約による支出、・短期売買目的で保有される場合や財務活動として分類される場合を除く、先物契約、先渡契約、オプション契約及びスワップ契約による収入」(par.16.)が含まれます。

 5 財務活動によるキャッシュフロー
 「財務活動とは、当該企業の持分資本及び借入の規模と公正に変動をもたらす活動をいう。」(par.6.)としており、運転資本以外の貸借対照表の貸方項目の変動に係る取引をいいます。
 財務活動によるキャッシュフローには、例えば、「・株式またはその他の持分証券の発行による収入、・企業自身の株式の買戻しや償還のための所有者への支出、・社債発行、借入金、手形借入、抵当権付借入及びその他の短期または長期の借入による収入、・借入金の返済による支出、・ファイナンスリースに関する負債残高を減少させる賃借人への支出」(par.17.)が含まれます。

 6 その他の取扱
 ・純額表示
 それぞれの活動から生じたキャッシュフローは、基本的には、総額で報告されなければなりません。
 「・キャッシュフローが当該企業よりもむしろ顧客の活動を反映している場合の顧客のための収入及び支出、・回転が早く、金額が大きく、かつ期日が近い項目に対する収入及び支出」(par.22.)については、純額表示が認められ、・の例として、銀行の要求払預金の受払い、投資会社が顧客のために保有する資金、集金された所有者に支払われる賃借料があり、・の例として、クレジットカード顧客に対する元本額の立替えとその返済、投資資産の取得及び売却、その他の短期借入金とその返済があります(par.23.)。

 ・外貨建てのキャッシュフロー
 外貨建取引によって生じたキャッシュフロー及び在外子会社のキャッシュフローは、当該キャッシュフローの発生日における報告通貨と当該外貨との間の為替レートを適用して、報告通貨で計上します(par.25.&26.)。なお、外貨レートの変動による未実現損益は、キャッシュフローとはなりませんが、外貨で保有されているか決済される現金及び現金同等物に対する為替レートの変動による影響額は、期首と期末の現金及び現金同等物を調整するために、キャッシュフロー計算書に計上されます(par.28.)。

 ・異常損益項目
 異常損益項目に関連したキャッシュフローは、その性質や現在及び将来の企業のキャッシュフローに対する影響を利用者が理解できるようにするために、営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローとは別個に開示されることになります(par.29.&30.)。

 ・利息及び配当金
 受取利息、受取配当金、支払利息及び支払配当金は、毎期継続した方法で、営業活動、投資活動あるいは財務活動に分類し、それぞれ別個に開示します(par.31.)。
 金融機関において、支払利息、受取利息及び受取配当金を、すべて営業活動に分類するか、支払利息を財務活動とし、受取利息及び受取配当金を投資活動に分類する方法のいずれかが認められています(par.33.)。なお、支払配当金は、営業活動か財務活動に分類されます(par.34.)。

 ・法人所得税
 法人所得税によるキャッシュフローは、投資活動や財務活動に明確に結び付く場合には、それぞれに適切に分類されますが、通常、CFOを構成するものとして扱われます(par.35.)。

 ・子会社及びその他の事業単位の取得と処分
 子会社やその他の事業単位の取得や処分によって生じたキャッシュフローの総額は、投資活動に分類され、・取得価額または処分価額の合計、・取得価額のうちで現金及び現金同等物で受取った部分、または、処分価額のうちで現金及び現金同等物で支払われた部分、・取得または処分された子会社やその他の事業単位の現金及び現金同等物の金額、・取得または処分された子会社やその他の事業単の現金及び現金同等物以外の資産及びすさいの金額を主要な区分ごとに要約したものを別個に開示しなければなりません(par.39.&40.)。

 ・非資金的取引
 ・直接関連する負債の引受けやファイナンスリースのいずれかによる資産の取得、・持分の発行による企業の取得、・負債の資本への転換のような、現金及び現金同等物の使用を必要としない投資取引及び財務取引といった非資金的取引は、キャッシュフローから除外され、これらの投資活動や財務活動に関するすべての適切な情報が提供できるように、他の財務諸表で開示しなければなりません(par.43.&44.)。

 ・その他の開示事項
 現金及び現金同等物の構成要素を開示し、キャッシュフロー計算書と貸借対照表におけるこれらの項目の金額を調整して表示しなければなりません(par.45.)。
 また、為替管理やその他の法律上の制約が適用される国で活動する子会社の現金及び現金同等物が親会社や他の子会社によって利用できないといったような、企業グループの現金及び現金同等物のうちで利用できない有用な金額がある場合には、経営者のコメントとともにそれらは開示されなければなりません(par.48.&49.)。

 ○確認問題
 Q.1.IAS7におけるキャッシュフロー計算書の分類に該当しないものはどれか。
 A.営業活動、投資活動、財務活動
 B.営業活動、投資報酬及び資金調達費用、税金、投資活動、財務活動
 C.営業活動、利息、税金、資本的支出及び財務的投資、子会社その他の事業単位の取得及び処分、株式配当金支払、流動資源の管理、財務活動
 D.事業活動、資金調達活動

 解答 A。 Aは、3分法といわれ、日本、アメリカ、オーストラリア、IAS等の多くの国で採用されています。Bは、5分法といわれ、イギリスの財務報告基準(以下、FRS)の第1号『キャッシュフロー計算書(1991年)』の分類方法で、Cは、7分法といわれ、FRS第1号『キャッシュフロー計算書(1996年改訂版)』の分類方法です。なお、Dは、以前に公表されていた日本の資金収支表によるものです。

 Q.2.IAS7におけるキャッシュフローの分類についての説明のうち、正しいのはどれか。
 A.自社株式の取得は、投資活動に分類しなければならない。
 B.支払利息は、営業活動に分類しなければならない。
 C.火災に伴う保険金収入は、営業活動、投資活動、財務活動とは別に計上しなければならない。
 D.在外子会社のキャッシュフローは、決算日の為替レートで換算しなければならない。

 解答 C。 Aについて、自社株式は財務活動に分類されます。Bについて、支払利息は、通常の場合、営業活動に分類されますが、投資活動や財務活動に毎期継続することを前提に分類できます。Cについて、異常損益については、営業活動、投資活動、財務活動とは区分して表示しなければなりません。Dについて、在外子会社のキャッシュフローは、その発生日の為替レートで換算します。

 Q.3.次のデータから、仕入先への支出として、正しいのはどれか。(国際会計テスト第1回73問一部改定)
 

 
2000年度末
2001年度末
棚卸資産
買掛金
売上原価 
20,000
18,000
250,000
22,000
17,000
270,000

 A.270,000
 B.271,000
 C.272,000
 D.273,000

 解答 D。 期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高=売上原価ですから、272,000円が当期仕入高となり、期首買掛金18,000円は支払済み、期末買掛金17,000円は未払いですので、273,000円が仕入先への支払となります。

 Q.4.次のデータから、以下の記述で誤っているのはどれか。(単位:千円)
 

売掛金増加額
棚卸資産増加額
前払家賃増加額
建物増加額
機械減少額
買掛金増加額
未払利息増加額
借入金減少額
社債増加額
自社株式増加額 
20,000
15,000
1,000
8,000
2,000
12,000
1,000
5,000
20,000
1,000
売上高
売上原価
人件費
家賃
建物減価償却費
機械減価償却費
支払利息
機械売却益
法人税等 
120,000
75,000
16,000
2,000
3,000
1,000
3,000
500
600

 なお、増減額は期首期末残高の差額で、有形固定資産の増減額は、帳簿価額(取得原価−減価償却累計額)の差額である。また、非資金的取引はない。
 A.営業活動によるキャッシュフローは、400千円である。
 B.投資活動によるキャッシュフローは、-9,500千円である。
 C.財務活動によるキャッシュフローは、14,000千円である。
 D.キャッシュフローは、6,900千円である。

 解答 D。 営業活動によるキャッシュフローは、得意先からの収入100,000千円(=売上高120,000千円−売掛金増加額20,000千円)、仕入先への支払78,000千円(=売上原価75,000千円+棚卸資産増加額15,000千円−買掛金増加額12,000千円)、人件費16,000千円、家賃支払額3,000千円(=家賃2,000千円+前払家賃増加額1,000千円)、利息支払額2,000千円(=支払利息3,000千円−未払利息増加額1,000千円)、法人税等支払額600千円で、400千円となります。投資活動によるキャッシュフローは、建物増加額8,000千円と建物減価償却費3,000千円を加算したものが新規建物への支出となり、機械減少額2,000千円から機械減価償却費1,000千円を控除した額が売却した機械の帳簿価額1,000千円で、これに売却益500千円を加算したものが機械の売却収入となりますので、-9,500千円となります。財務活動によるキャッシュフローは、14,000千円(=−借入金減少額5,000千円+社債増加額20,000千円−自社株式増加額1,000千円)となります。従って、正味キャッシュフローは4,900千円となり、これは、当期純利益19,900千円に貸借対照表項目を加算(機械減少額2,000千円、買掛金増加額12,000千円、未払利息増加額1,000千円、社債増加額20,000千円)及び減算(売掛金増加額20,000千円、棚卸資産増加額15,000千円、前払家賃増価額1,000千円、建物増加額8,000千円、借入金減少額5,000千円、自社株式増加額1,000千円)して確認できます。

 Q.5.IAS7において、現金同等物となるのは、次のうちどれか。
 A.普通預金
 B.一時保有の株式
 C.当座借越
 D.期限到来国債利札

 解答 C。 当座借越は負の現金同等物です。普通預金と期限到来国債利札は現金となります。また、一時保有の株式は投資活動に分類されるものです。
 
 

 第5章 期間損益(IAS8)

 1 IAS8の目的と範囲
 1993年に改訂されたIAS8『期間純損益、重大な誤謬及び会計方針の変更』は、損益計算書の作成と表示における損益計算書項目の分類開示及び会計処理についての規定です。IAS8では、損益計算書における経常的活動からの損益と異常損益の規定及び会計上の見積りの変更にについて取り扱っています。

 2 期間純損益
 IAS8では、「IASが他の取扱を規程しているか容認している場合を除き、一会計期間において認識されるすべての収益及び費用項目は、当該期間の純損益の算定に含めなければならない。」(par.7.)としており、これは、異常損益項目や会計上の見積りの変更による影響も期間純損益に含まれることと、「枠組み」の収益や費用の定義に合致しても、例えば、IAS16『有形固定資産』における再評価剰余金のように他のIASの規定で純損益の計算から除外されるべきものは期間純損益から除かれるということです。
 IAS8に従うと、期間純損益は、大きくわけて、経常的活動からの損益と異常損益項目に区分されます。IAS1でも、基本的にはこれらの区分表示を要求していましたが、これらの項目に含まれるものの規定がIAS8に示されています。
 ・異常損益項目
 「異常損益項目とは、企業の経常的活動とは明確に区分され、反復的にまたは定期的に発生すると見込まれないような事象や取引から発生する収益や費用をいう。」(par.6.)として、資産の接収や地震その他の自然災害を挙げています(par.14.)。ある事象が経常的活動と明確に区分されるかどうかは、事象が生じると予期される頻度ではなく、あくまで、当該企業が経常的に行っている事業との関連で考えることになりますので、ある企業では、異常損益項目であっても、他の企業では異常損益項目とならない場合もあります(par.13.)。

 ・経常的活動からの損益
 まず、経常的活動ですが、IAS8では、「経常的活動とは、事業の一部として企業が行うあらゆる事業活動及びその事業活動の推進や事業活動に伴ってあるいは派生して企業が行う事業活動をいう。」(par.6.)と定義しています。
 経常的活動に伴う収益及び費用は、IAS1のpar.75.と付録を参考にすれば、営業利益に含まれる項目の他に、金融費用、関連会社及びジョイントベンチャーからの損益、税金費用、少数株主持分損益が含まれます。
 これらの経常的損益は、期間業績の説明にとって独立表示することが、その規模、内容または金額から考えて適切なもの、例えば、・棚卸資産の正味実現可能価額への評価減や有形固定資産の回収可能価額への評価減及びそのような評価減の戻入れ、・企業のリストラクチャリング及びリストラクチャリングの費用に対する引当金の戻入れ、・有形固定資産項目の処分、・長期投資の処分、・廃止事業、・訴訟の解決、・その他の引当金の戻入れのような項目は、独立に開示することになります(par.16.&18.)。

 ・会計上の見積りの変更
 会計において、最新の入手可能な情報に基づく判断を伴うような見積り、例えば、不良債権、棚卸資産の陳腐化、償却資産の耐用年数や経済的便益の費用の予想パターン等の見積りが伴います。それは合理的である限り、財務諸表の作成にとって必要不可欠なものであって、信頼性を損なうものではありません(par.23.)。
 しかし、実際には、見積りの基礎となった状況の変化が生じたり、新しい情報、より多くの経験やその後の進展によって、見積りを修正しなければならない場合、見積りの変更の影響は、その変更期にだけ影響する場合は、その変更の期間の期間純損益に含め、変更期及びそれ以降の期間に影響する場合は、変更の影響する期間の期間純損益に含めることになります(par.24.&26.)。また、見積りの変更は、異常損益項目や重大な誤謬の定義には合致しません。
 見積りの変更が重要な場合には、その内容と金額を開示し、金額が算出不可能な場合にはその事実を開示しなければなりません(par.30.)。

 3 重大な誤謬
 「重大な誤謬とは、当期中に発見された誤謬であって、前期またはそれより前の会計期間の財務諸表が、その公表日においてもはや信頼できるものとは認められないほど重大なものをいう。」(par.6.)としており、例としては、実施することができない不正契約に基づく重要な金額の仕掛品や売掛金の経常等が挙げられます(par.32.)。
 IAS8の標準処理を適用すれば、過年度の重大な誤謬の訂正額は、利益剰余金の期首残高を修正し、比較情報は、実行できない場合を除いて、修正再表示されることになり、企業は、・重大な誤謬の内容、・当期及び開示される各過年度の訂正額、・比較情報に含まれる期間よりも前の期間に関する訂正額、・比較情報が修正表示される旨あるいは修正表示することができない旨を開示しなければなりません(par.34.&37.)。
 一方、認められる代替処理によれば、重大な誤謬の訂正額を当期純損益に含め、比較情報は過年度の財務諸表で報告された通りに表示することもできます(par.38.)。ただし、その場合には、・重大な誤謬の内容、・当期純損益に認識されている修正額、・仮定情報が開示される期間ごとの修正額と仮定情報が開示される期間よりも前の期間に関する修正額、・仮定情報を表示することが実行不可能な場合にはその旨を開示しなければなりません(par.38.&40.)。
 ここで、(追加的)仮定情報とは、公式の財務諸表を修正せず、他の方法を採用していた場合の財務諸表上の数値を算出して、公式財務諸表と並列開示する情報をいいます。

 4 会計方針の変更
 会計方針について、IAS1のpar.21.と同様に、IAS8では、「企業が財務諸表を作成するに当たって採用する特定の原則、基準、慣習、規則及び実務をいう。」(par.6.)としています。
 「会計方針の変更は、法や会計基準設定主体によって要求されている場合、または、その変更により財務諸表が事象や取引をより適切に表示することになると認められる場合にのみ、行わなければならない。」(par.42.)としており、以前に存在している事象や取引と実質的に異なる事象や取引に対する会計方針の採用、または、以前には存在していなかったあるいは存在していたが重要でなかった事象や取引に対する新しい会計方針の採用は、会計方針の変更にはなりません(par.44.)。会計方針の変更は、遡及的にまたは将来に向かって適用されます(par.45.)。遡及的適用は、新しい会計方針が、過去から常に用いられていたように適用するので、会計方針は、それらの事象や取引の発生日から適用されます(par.45.)。将来に向かっての適用は、新しい家計方針がその変更日以後に発生した事象や取引に適用され、利益剰余金の期首残高や当期純利益に対しての修正は生じません(par.45.)。
 会計方針の変更にあたって、他のIASを採用し、その際に、当該IASの規定に経過規定がある場合を除いて、IAS8の以下の処理の適用を受けます。
 IAS8は、会計方針の変更に係る標準処理として、会計方針の変更は、過年度の修正額を合理的に算定できる場合には、遡及的に適用され、その結果生じる修正額は、利益剰余金の期首残高を修正し、比較情報は、実行不可能な場合を除いて修正表示され、一方、過年度の修正額を合理的に算定できない場合には、将来に向かって適用されます(par.49.&52.)。
 標準処理によれば、会計方針の変更が、当期や過年度に重要な影響がある、または、将来の期間に重要な影響がある場合には、・変更の理由、・当期及び表示されている各期間に対する修正額、・比較情報に含まれる期間よりも前の期間に関する修正額、・比較情報が修正再表示されている旨、または、それができない旨を開示することになります(par.53.)。
 認められる代替処理によれば、過年度に係る修正額を合理的に算定できる場合には、遡及的に適用し、修正額は当期純損益に含め、比較情報は、過年度の過年度財務諸表の通りに開示し、過年度に係る修正額を合理的に算定できない場合には、将来に向かって適用されます(par.54.&56.)。
 代替処理によれば、会計方針の変更が、当期や過年度に重要な影響がある、または、将来の期間に重要な影響がある場合には、・変更の理由、・当期純損益に認識された修正額、・仮定情報が表示される期間ごとの修正額及び財務諸表に含まれる期間よりもまえの期間に関する修正額、または、それができない旨を開示することになります(par.57.)。

 ○確認問題
 Q.1.経常的活動に含まれないものは、次のうちどれか。
 A.廃止事業の損益
 B.関連会社の損益
 C.訴訟の解決に伴う損益
 D.外国政府による子会社の接収

 解答 D。 外国政府によって、子会社が接収された場合には、IAS8のpar.14.における資産の接収に該当するので、異常損益項目となります。

 Q.2.重大な誤謬があった場合のの処理として、誤っているのはどれか。
 A.重大な誤謬の修正額は、期間純損益に含めてはならない。
 B.重大な誤謬の修正額は、利益剰余金の期首残高を修正して開示しなければならない。
 C.重大な誤謬があった場合に比較情報は、実行可能な場合には、修正再表示しなければならない。
 D.比較情報は、過年度のままの財務諸表とすることも認められている。

 解答 A。 代替処理として、期間純損益に重大な誤謬の修正額を含めることができます。ただし、比較情報は過年度の公表財務諸表を開示したうえで、追加的仮定情報を可能な場合には開示しなければなりません。

 Q.3.2001年期に、自社使用目的で建設されている製造工場と工場内付属設備に係る借入費用の会計方針を、資産化する処理から費用化する処理へ変更した。なお、2000年期における資産化した借入費用は3,000、2000年期よりも前の期間に資産化された借入費用は5,000である。なお、2000年期の経常的活動からの利息及び税金控除前利益20,000、2000年期の利息費用0、法人所得税6,000、純利益14,000であった。会計方針の変更に伴う標準処理した場合の期間純利益はどれか。
 A.6,000
 B.9,000
 C.11,000
 D.11,900

 解答 D。 まず、経常的活動からの利息及び税金控除前利益20,000から遡及される2000年期の利息費用3,000を差引いて、経常的活動からの税引前利益17,000を算出します。次に、法人所得税を税引前利益に税率30%(=6,000÷20,000)を掛けて5,100を算出し、その結果、期間純利益11,900(=17,000−5,100)となります。
 
 

 第6章 有形固定資産(IAS16)

 1 IAS16の目的と範囲
 1982年に公表され、1998年に改訂されたIAS16『有形固定資産』は、有形固定資産会計の主要な問題点である固定資産の認識時点、その帳簿価額及びそれに関連して認識されるべき減価償却費に関しての規定をするものです。
 この基準の適用を免れるものには、農業活動に関連する生物資産や鉱業権、あるいは、再生不可能な天然資源の探鉱及び採取、投資不動産といったものが挙げられています(par.2.&4.)。

 2 有形固定資産の認識
 有形固定資産とは、財貨の生産、役務の提供、外部への賃貸、管理のために企業が保有され、一定期間を超えて使用されると予測される資産(par.6.)をいいます。
 有形固定資産の定義を満たし、蓋然性規準と測定の信頼性規準を満たした時には、有形固定資産は資産として計上しなければなりません(par.7.)。
 ・蓋然性規準
 入手可能な証拠に基づいて、当該資産に関連する将来の経済的便益が企業に流入する可能性(確実性)が高くなったと確証された場合、例えば、その資産の使用によるほとんどの経済的利益とリスクの両方が当該企業に生じることが契約やその他の証拠で確認できる場合には、蓋然性の規準を満たしたと考えられます(par.7.&9.)。契約を破棄しても違約金の支払がないような場合には、当該契約時点は蓋然性規準を満たす時点にはなりません。

 ・測定の信頼性規準
 当該資産の取得原価を信頼性をもって測定でき、即ち、測定の信頼性規準を満たす場合に、認識しなければなりません(par.7.)。これは、通常の交換取引であれば、請求書等の証拠によって容易に満たされます(par.10.)。

 3 有形固定資産の当初測定
 有形固定資産が認識される場合には、当該有形固定資産は、その取得原価をもって測定しなければなりません(par.14.)。
 有形固定資産の取得原価とは、有形固定資産の取得時や建設時に、当該資産を取得するために支出した現金や現金同等物の金額、あるいは、その他の引き渡した対価の公正価値(par.6.)をいい、これには、輸入関税や還付されない取得税を含む当該資産の購入価格と当該有形固定資産資産の意図した使用状況にするための直接付随費用(整地費用、搬入費用、取扱費用、据付費用、専門家報酬、IAS37「引当金、偶発債務及び偶発資産」で引当金と認められる範囲での資産の撤去や移設及び原状回復に係る見積り費用)を含みます。
 なお、管理費やその他の一般間接費、スタートアップ費用、生産準備費用は、当該資産の稼働可能な状態に直接必要とされる場合を除いて、期間損益を構成することになります(par.17.)。
 また、異なる資産を交換した場合、受入資産の取得原価は、受入資産の公正価値で測定され、類似資産を交換した場合は、引き渡した資産の帳簿価額が、受入資産の取得原価となります(par.21.&22.)。

 4 取得後の支出
 有形固定資産を取得した後に、当該資産への支出がなされることがありますが、その場合、支出によって当該資産の将来の経済的便益を増加させる時には、例えば、耐用年数を延長させるような改良、生産物の品質を大幅に改善するような改良、操業費用の大幅な削減を可能にする生産過程の採用といった時には、資産の帳簿価額に加算することになりますが、それ以外は、発生した期間の費用として認識されることになります(par.23.&24.)。
 前者は、資本的支出といわれ、後者は、収益的支出といわれ、この判断は、上記のように、ある支出が資産の定義を満たすかどうかが重要になります。

 5 当初認識後の測定
 ・減価償却
 有形固定資産の当初認識後の帳簿価額は、原則として、取得原価から減価償却累計額や減損損失累計額を控除した価額となります(par.28.)。
 減価償却とは、資産の償却可能価額(資産の取得原価または財務諸表計上額から残存価額を引いた価額)を規則的に、その耐用年数(企業によって資産が使用されると見込まれる期間、あるいは、企業が資産から得られると見込まれる生産高等の単位数)にわたって配分すること(par.6.)をいいます。
 耐用年数は、・当該資産の予想能力や実際生産高等の検討に基づいた予想される使用態様、・企業の修理及び保守計画や休止中の当該資産の管理及び維持等の運営上の要因に基づいた予想される物理的減耗、・生産技術の変化や工場、当該資産によって製造される製品や提供される役務の市場需要の変化からの技術的陳腐化、・当該資産に対する法的並びにその他の制約を考慮して、資産の企業にとっての予想される有用性から決定されます(par.43.&44.)。耐用年数は定期的に見直ししなければなりませんが、変更の必要がある場合には、IAS8の規定に従って、当期及びそれ以降の減価償却費を修正しなければなりません(par.49.)。
 残存価額は、資産の耐用年数到来時に、当該資産から得られると期待される金額から見積処分費用を控除した額をいいます(par.6.)。残存価額は、取得時点で見積もられますが、その後の価格の変化等で増額されることはありません(par.46.)。
 減価償却を行うにあたって、当該資産の経済的便益の消費パターンを反映した償却方法を採用することになります(par.41.)。償却方法には、定額法、定率法、生産高比例法があります(par.47.)。定額法は、耐用年数に渡って一定額の費用を計上するもので、定率法は、耐用年数に渡って逓減的に費用を計上するもので、生産高比例方法は、予測される資産の使用や生産高に応じて費用を計上するものです(par.47.)。これらから資産の経済的便益の消費パターンに基づいて選択し、毎期継続して適用することになります(par.47.)。減価償却方法は定期的に見直ししなければなりませんが、その際に、経済的便益の消費パターンの変化によって変更する必要がある場合には、IAS8の規定に従って、当期及びそれ以降の減価償却方法を適切な減価償却方法に変更して、会計処理を行わなければなりません(par.52.)。
 減価償却費は、IAS2に従って、製品や仕掛品に附加されたり、IAS38「無形資産」に従って、無形資産に附加されたりする場合を除いて、発生した期間の費用として認識しなければなりません(par.41.&48.)。

 ・減損
 有形固定資産は、減価償却の他に、IAS36「資産の減損」に従って、減損の会計処理によって、資産から費用化されていきます。減損損失とは、資産の帳簿価額が回収可能価額を超過する金額(par.6.)をいいます。
 回収可能価額とは、資産の正味売却価格(取引知識のある自発的当事者間で、独立第三者取引条件で資産を売却することから得られる金額から処分費用を控除した額)と使用価値(資産の継続的使用とその耐用年数の最終時における処分から生じる予測される見積将来キャッシュフローの現在価値)との高い金額(IAS36、par.5.)をいいます。資産の減損については、IAS16では取り扱っていません。

 ・再評価
 有形固定資産は、IAS16では、減価償却と減損を標準処理として、帳簿価額を構成することになりますが、代替的処理として、再評価が認められています(par.29.)。
 再評価は、再評価実施日において、帳簿価額を公正価値(通常、市場価値)とし、その後は、再評価による公正価値から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した再評価額を帳簿価額とする処理のことです(par.29.)。例えば、取得原価10,000万円、減価償却累計額5,000万円の建物の公正価値が7,000万円になった場合、帳簿価額を7,000万円に修正することになります。
 再評価にあたって、土地や建物の公正価値は、専門の鑑定士等によって評価される市場価値となりますが、工場や設備といった特殊で余り売買がされないものは、市場価値の証拠がないことがあり、その際には、減価償却後の再調達原価で評価されます。ここで、再調達原価(現在原価)とは、IAS15「物価変動の影響を反映する情報」のpar.13.によれば、「通常、新規もしくは中古の類似資産の現在の取得原価、あるいは、同等の生産能力やサービス提供能力もった資産の現在の取得原価」(「枠組み」、par.100.も参照)をいいます。
 再評価を行う場合、当該資産の属する企業の業務において性質と使用目的を類似する種類の有形固定資産全体、例えば、土地なら土地、機械装置なら機械装置のすべてを、同時に再評価しなければなりません(par.34.-37.)。
 再評価の結果、資産の帳簿価額が増加する場合には、以前の同一資産の再評価で費用とした部分までは収益として戻し入れ、それ以外は、再評価剰余金として、株主持分に直接貸方計上することになります(par.37.)。一方、再評価の結果、資産の帳簿価額が減少する場合には、同一資産に関連する再評価剰余金がある場合にはその範囲で再評価剰余金を借方記入して減少させ、それ以外は、費用として処理されます(par.38.)。
 再評価を行う際に、再評価日の減価償却累計額は、・再評価後の資産の帳簿価額が再評価額に等しくなるように、資産の減価償却累計額控除前の帳簿価額の変動に比例して改訂するか、・当該資産の減価償却累計額控除前の帳簿価額と相殺消去され、その純額が資産の再評価額に改訂することになります(par.33.)。
 先の例でいえば、・では、建物勘定を14,000万円(借方 建物 4,000万円)、減価償却累計額勘定を7,000万円(貸方 減価償却累計額 2,000万円)にして、建物の帳簿価額を7,000万円に改訂し、差額2,000万円を再評価剰余金とします。・では、建物勘定を7,000万円(貸方 建物 10,000万円、借方 建物 7,000万円)、減価償却累計額を0(借方 減価償却累計額 5,000万円)にして、建物の帳簿価額を7,000万円に改訂し、差額2,000万円を再評価剰余金とします。

 6 除却と処分
 除却や処分をした場合には、当該資産を貸借対照表から除外し、それによって生じた損益は、損益計算書上に収益か費用として認識しなければなりません(par.55.&56.)。

 7 開示
 財務諸表には、有形固定資産の種類ごとに、・減価償却累計額控除前の帳簿価額を決定するために用いられて測定規準、・採用された償却方法、採用された耐用年数あるいは減価償却率、・期首と期末の減価償却累計額控除前の帳簿価額と減価償却累計額(減損損失累計額を含む)、期首と期末の帳簿価額との調整表(増加、処分、企業結合による取得、再評価や減損による株主持分の増減、損益計算書に計上した減損損失と減損損失戻入、減価償却、在外事業体の財務諸表の換算による換算差額、その他の増減)を開示することになります(par.60.)。
 また、・所有権に対する制約や負債の担保として抵当に入っている有形固定資産の有無と金額、・有形固定資産の玄奘買う服のための見積り費用に関する会計方針、・建設中の有形固定資産に係る支出、・有形固定資産の購入契約の金額も開示することになります(par.61.)。

 ○確認問題
 Q.1.所有する建物(取得原価5,000万円、減価償却累計額3,000万円)の公正価値が1,500万円になっていた。この場合の仕訳で、誤っているのはどれか。なお、以前の当該資産の再評価による再評価剰余金はない。
 イ 減価償却累計額  3,000万円  建物       3,500万円
   固定資産再評価損  500万円
 ロ 固定資産再評価損  500万円  減価償却累計額   500万円
 ハ 固定資産再評価損  500万円  建物        500万円
 ニ 減価償却累計額   750万円  建物       1,250万円
   固定資産再評価損  500万円
 A.イとロ
 B.ロとハ
 C.ハとニ
 D.ロとニ

 解答 B。 再評価にあたって認められる処理は、イ(減価償却累計額を消去し、建物勘定を公正価値とする)とニ(増加割合または減少割合によって、建物勘定と減価償却累計額勘定を増減させる)の処理です。

 Q.2.IAS16による減価償却の規定として、誤っているのはどれか。
 A.減価償却費が製品や仕掛品等の棚卸資産の製造原価を構成する場合は、費用計上しなくてもよい。
 B.資産の耐用年数は、経済的耐用年数より短いこともある。
 C.減価償却方法は、毎期継続適用すれば、定額法、定率法、生産高比例法のいずれを採用しても企業の自由である。
 D.耐用年数や減価償却方法は、必要な場合には、変更できる。

 解答 C。 減価償却方法のうちどれを選択するかは、企業によっての当該資産の経済的便益の消費されるパターンを反映しなければならないので、企業の自由選択とはいえません。ただし、そのパターンを反映している場合には、どれを選択するかは企業の判断になります。

 Q.3.有形固定資産を他の有形固定資産との交換によって取得する場合、新たに取得した資産の取得原価の決定に関する記述のうち、正しいのはどれか。(国際会計テスト第3回第27問)
 A.異なる有形固定資産との交換であれ、同種の有形固定資産との交換であれ、受入資産の公正価値が、新資産の取得原価となる。
 B.異なる有形固定資産との交換であれ、同種の有形固定資産との交換であれ、引き渡し資産の帳簿価格をもって取得原価とする。
 C.異なる有形固定資産との交換の場合、引き渡した資産の帳簿価格をもって取得原価とする。同種の有形固定資産交換との場合、受入資産の構成価値をもって取得原価とする。
 D.異なる有形固定資産との交換の場合、受入資産の公正価値をもって取得原価とする。同種の有形固定資産の交換の場合、引き渡した資産の帳簿価額が取得原価となる。

 解答 D。 異種資産と同種資産では、交換によって受入れられた資産の取得原価は異なります。異種資産は、受入資産の公正価値によって、同種資産は、引き渡し資産の取得原価とされます。

 Q.4.有形固定資産の耐用年数に関する次の記述について、正しいものはどれか。(国際会計テスト第4回第28問)
 A.耐用年数を見直す場合、必ず公正価値による再評価と一体で行うことが必要で、公正価値に基づいて見直された耐用年数により減価償却費を計算する。過年度分は修正する必要はない。
 B.耐用年数を見直した場合でも減価償却費を修正する必要はない。最終的に廃棄ないし売却により耐用年数の見直し分が修正される。
 C.耐用年数を見直した場合、見積りの修正なので過年度の減価償却費を修正する必要はなく、当期以降の減価償却費が修正された金額となる。
 D.耐用年数を見直した場合、過去の見積りの間違いを修正するための過年度の減価償却費を修正するとともに当期の減価償却費を計上する。

 解答 C。 耐用年数の見直しによる修正は、会計上の見積りの変更なので、当期及びそれ以降の減価償却費の修正をすればよいことになっています。

 Q.5.以下の条件で、当期首に取得した機械装置の初年度減価償却費として、IAS16で認められていないのはどれか。

取得原価
55,000,000円
耐用年数 
10年
残存価額 
10%
償却率 
0.206
見積り総生産高 
100,000,000円
当期生産高 
30,000,000円

 A.4,950,000円
 B.11,330,000円
 C.9,000,000円
 D.16,500,000円

 解答 C。 Aは定額法、Bは定率法、Cは級数法、Dは生産高比例法による減価償却費です。IAS16では、級数法の処理が認められていませんので、Cが間違っていることになります。

 Q.6.IAS16で、有形固定資産の取得原価を構成するものはどれか。
 A.引当金として認められる範囲での資産の撤去に係る見積り費用。
 B.生産準備のための費用。
 C.自家建設資産の製作において発生した廃棄原材料。
 D.有形固定資産の故障を直した修繕費。

 解答 A。 稼働可能な状態にするための費用でない場合には、取得原価を構成しないので、Bは費用として処理され、自家建設資産の製作における廃棄原材料や異常な原価もまた費用とあります。有形固定資産の将来の経済的便益を向上させるような支出でない限り、費用として処理しなければなりません。
 
 

 第7章 リース(IAS17)

 1 IAS17の目的と範囲
 IAS17『リース』は、1997年に改訂されました。この基準は、リースに関する会計処理を範囲としていますが、リースでも、IAS40『投資不動産』やIAS41『農業』で扱われるリースに関しては適用されません(par.1.)。

 2 リース取引の意味と分類
 「リースとは、貸手が一括払または数次の支払を得て、契約期間中、資産の使用権を借手に移転する契約である。」(par.3.)とされています。もう少し簡単にいうと、一定の契約期間に貸手の資産を借手が使用するという賃貸借の契約です。
 リースは、その契約条件によって、ファイナンスリースとオペレーティングリースに区分されます。
 「ファイナンスリースとは、資産の所有に伴うリスクと経済的価値を実質的にすべて移転するリースをいう。この場合、所有権の移転の有無は問わない。」(par.3.)とし、一方、「オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のリースをいう。」(par.3.)としています。
 従って、リース契約を行う際に、その契約がファイナンスリースであるかないかが重要になります。その判断は、契約の形式というよりも取引の経済的実質によって分類されます。
 そこで、IAS17では、ファイナンスリースの定義にある資産の所有に伴うリスクと経済的価値を次のように示しています。「リスクとは、リース資産の遊休または技術的陳腐化により生じる損失の可能性及び経済的諸条件の変化に起因する収益額の変動の可能性を含む。」(par.5.)とし、「経済的価値とは、当該資産の経済的耐用年数にわたる活動により収益が生じるという期待及び価値評価または残存価値の実現による利得の期待によって表される。」(par.5.)としています。これは、単純にいえば、リースによって取得した資産でない資産、即ち、現金で購入したような資産を所有することと同様のリスクと経済的価値がある、例えば、固定資産でいえば、修繕費、保険料、固定資産税等があるでしょうし、その資産を利用することで得られる利点、例えば、製品を製造原価を引き下げる等があるでしょう。
 このように、リース資産の所有権は、貸手にあるものの、資産の使用に伴うメリットとデメリットのすべてが、借手にあるというようなリースを契約をファナンスリースといいます。
 ファイナンスリースに該当するリース契約として、IAS17は、次のものを挙げています(par.8.&9.)。

 ・当該リースにより、リース期間の終了までに、借手に資産の所有権が移転される。
 ・借手が当該資産の購入選択権を与えられており、その購入価額が選択権の行使日の公正価値よりもかなり低いと予想されるので、リース開始日において、当該選択権の行使が合理的に確実視される。
 ・所有権が移転しないとしてもリース期間が当該資産の経済的耐用年数の大部分を占める。
 ・リース開始日において、最低リース料総額の現在価値が、当該リース資産の公正価値と少なくとも一致する。
 ・リース資産が、その借手にのみ大きな変更なしで使用できるような特殊な性質のもの。
 ・借手が当該リース契約を解約できる場合には、その解約に関連する貸手の損失は、借手の負担となる。
 ・残存資産の公正価値変動による利得または損失は、借手に帰属する(例えば、当該リースの終了時における売却収益とほぼ一致する賃借料の割戻のような形態による)
 ・借手が、市場の賃借料相場より十分に低い賃借料で次期のリース契約を継続できる。

 ここにある、いくつかの用語は以下の通りの意味を有していいます。
 リース期間とは、解約不能なリースの契約期間と借手がリースを継続する選択権を有する期間の合計した期間(par.3.)をいいます。
 リース開始日とは、リースの契約日かリースの契約条項における義務を確約した日のいずれか早い日(par.3.)をいいます。
 経済的耐用年数とは、ある利用者による資産の経済的な使用可能予測期間あるいは予測生産高及び類似する単位(par.3.)をいいます。
 最低リース料総額とは、借手がリース期間にわたって支払を要する金額から、変動リース料や貸手の未清算の立替金を除き、保証残存価値(借手においては、借手及びその関係者が保証する残存価値で、貸手においては、借手、あるいは、貸手に関係のない第三者による保証される残存価値)を加算した金額(par.3.)をいいます。

 3 借手におけるリース
 ・ファイナンスリース
 借手は、ファイナンスリースをリースの開始日のリース資産の公正価値または最低リース料総額の現在価値のいずれか低い金額で、当該資産とリース契約に係る負債を計上することになります(par.12.)。なぜな