会計学入門

第1章 会計と会計学

第2章 会計の基礎概念(資産、負債、資本、収益、費用、利益)

第3章 簿記の仕組み(取引、勘定科目、仕訳、元帳)

第4章 財務諸表の作成(手続編 損益計算書と貸借対照表)

第5章 財務諸表の作成(理論編 会計原則)

第6章 製造原価の計算

第7章 財務諸表の分析

第8章 財務諸表の監査

第9章 管理会計

第10章 税務会計(法人所得と法人税)


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 第1章 会計と会計学

 1 会計の意義
 まず、会計とは何かを説明することにします。
 会計の定義として、最も代表的なものは、1966年、アメリカ会計学会(American Accounting Association、以下、AAA)の『基礎的会計理論に関する報告書』(A Statement of Basic Accounting Theory、以下、ASOBAT)において示された次のものです。

 「会計とは、情報利用者が、事情に精通した上で、判断や意思決定を行うことができるように、経済的な情報を識別し、測定し、伝達するプロセスである。」

 初学者にとって、この定義では、あまりに抽象的すぎるので分かりづらいかと思いますので、この定義をもう少し分析しながら、会計という行為を理解することにします。

 ・会計の対象(主体)は、何か。
 会計という行為は、企業だけではなく、家庭、政府、その他、経済活動を営む場面で行われます。会計が行われる場所を会計主体と呼びます。
 企業で行われる会計を企業会計と呼び、家庭で行われる会計を家計と呼び、政府で行われる会計を政府会計と呼びます。企業会計(営利会計)以外の会計を総称して、非営利会計と呼びます。
 会計学では、通常、企業会計を検討します。

 ・情報利用者とは、誰か。
 会計が情報を提供する人々には、様々な人がいます。
 企業会計において、会計情報の利用者として、投資家(現在の株主、潜在的な株主、その他企業の出資者)、債権者(金融機関等)、仕入先や得意先(売上先)といった取引先、従業員(労働組合等)、経営者や経営管理者、税務当局や地方自治体等の行政機関、一般大衆等が挙げられます。
 これらの会計情報の利用者は、企業等の会計主体を通じて、他の情報利用者と何らかの利害関係があるので、利害関係者とも呼ばれます。

 ・意思決定とは、何か。
 意思決定とは、一般的には、人が行動するに先立って行われる選択のことです。
 会計学では、会計情報の利用者の意思決定は、情報利用者それぞれの目的で、会計主体との係りをどうするのかを決めることとして考えています。
 例えば、投資家であれば、企業に投資するのか、金融機関であれば、融資をするのか、従業員であれば、仕事を続けるのかあるいは賃金給料の引上げを交渉するのか等々。このような意思決定に有用な情報を提供することが、会計の目的になります。

 ・経済的情報とは、何か。
 経済的情報とは、経済的活動(経済的事象)という事実を、情報利用者に役立つように加工した情報で、そのうち会計情報は、貨幣的表現した経済的情報です。
 会計情報を表現するための中心的方法は、貸借対照表、損益計算書、現金収支計算書等の財務諸表です。

 ・識別とは、何か。
 識別あるいは認識とは、経済的活動を会計事実(測定、伝達の対象となる事象)であるかを判断する過程です。
 企業が従業員を雇うという活動は、重要な活動ですが、その活動に係り、貨幣的評価ができるもの(例えば、広告代)を除いて、それは、会計事実ではありません。火災や盗難は、企業が行う活動ではありませんが、その事象によって、企業の資産の価値が変化しますから、火災や盗難は、会計事実として識別されるわけです。

 ・測定とは、何か。
 測定あるいは評価とは、識別(認識)された事象に対して、貨幣的評価額を与える過程です。
 例えば、10,000円の商品を購入するとします。その活動は、会計事実として認識されますが、その活動によって生じた商品の値段を決定することを測定といいます。商品を買ったという事実を認識し、その商品が10,000円であると測定するということです。

 ・伝達とは、何か。
 伝達とは、情報を情報利用者に提供(報告)することです。
 伝達のための手段が、先に示しました、財務諸表等の形式です。

 以上の検討を踏まえて、企業会計を定義してみると次のようになります。
 企業会計とは、企業の行った諸活動のうち価値を変動させた事象を識別し、その事象を貨幣単位で測定し、適切な方法で、企業に関心がある人々に伝達することで、そうした人々の企業との係りに関する意思決定を支援するための行為である。

 2 財務会計(外部報告会計)と管理会計(内部報告会計)
 企業会計は、財務会計と管理会計に区分されます。
 ・財務会計(外部報告会計)
 企業の外部にいる情報利用者(株主、債権者等)に向けられた会計情報を認識、測定、伝達するための会計が、財務会計です。
 財務会計によって提供される情報は、損益計算書、貸借対照表、現金収支計算書の財務諸表が中心となっています。
 財務会計は、日本においては、その測定や伝達の手続きについて、商法(計算書類規則)、証券取引法(財務諸表規則)、税法(法人税法)の立法によって規制されています。

 ・管理会計(内部報告会計)
 企業の内部にいる情報利用者(経営者、管理者)に向けられた会計情報を認識、測定、伝達するための会計が、管理会計です。
 管理会計の領域には、(狭義の)意思決定会計と(狭義の)業績評価会計とに区分され、前者の範疇には、中長期経営計画(中長期予算)や個別構造計画(設備投資)等があり、後者の範疇には、短期経営計画(損益予算や部門別予算)、原価管理(標準原価計算、直接原価計算)等があります。
 管理会計は、財務会計のように対外的な情報と異なり、内部利用を中心としているので、法的な規制はありません。

 3 企業会計の役割
 企業会計は、このように企業内外の利害関係者の意思決定に役立つ情報を提供するわけです。
 経済や社会にとって、この会計によって提供される情報はなくてはならないものなのです。例えば、投資家は、企業の株を買うのか売るのか、そんな時、企業が儲かっているのか、配当は貰えるのは、倒産しないか等を気にするでしょう。銀行等の債権者も、自分の債権が回収できるのは、利息を払って貰えるのか、あるいは、もっと融資してもいいのか等を考えるでしょう。このように企業との係りを検討するためには、簡単にいえば、その企業が良いのか悪いのか、良ければ企業と係わり合おうとするでしょうが、反対に、悪ければ企業との係りを見直そうとするでしょう。
 企業が良いか悪いかは、単純に判断できないでしょうが、そのために使う情報が会計情報なのです。もう少し違った説明をすれば、会計情報というのは、医療用具(例えば、レントゲン)のようなものです。医者である利害関係者が、患者である企業の健康状態(財政状態や経営成績等)をチェックするため用具が、会計情報です。そして、有用な会計情報を適切に解釈して利用すれば、企業の状態を適正に判断してそのための処置を採ることができるわけです。
 そんなことから、E.ワルプは、著書『損益計算論』において、「会計は、すべての意識的な経済に付随する現象である。」といっています。これは、どんな経済下においても、会計というものは必須のものであるということを意味していて、会計が上記に述べたように重要な役割を持っているからです。

4 会計と会計学の歴史
 経済あるところに会計ありということですから、その歴史は古く、既に、1494年にイタリアの修道僧で数学者でもあるルカ.パチオリが、当時の複式簿記について紹介しています。これは、一般的に会計の最初の著書といわれています。
 その後、18世紀のイギリス産業革命を契機に、会計学はめざましい発展をしていくことになります。特に、原価計算に関する研究が中心となっていました。
 19世紀に入ってドイツの一般商法典の評価規定の制定を期に債権者保護思想を背景とした財産計算の議論が行われていましたが、1919年、E.シュマーレンバッハ『動的貸借対照表』によって、損益計算への会計学の基本的考え方が変化しました。この損益計算中心思考は、1929年の世界大恐慌によって、アメリカを始めとした国々で確立していくことになります。
 1966年、AAAのASOBATが、会計を利益計算の用具というよりも、情報提供機能を強調したことで、情報利用者志向会計の構築という考え方が世界的に広まっていきました。
 そして、この会計思考と、資本市場の国際化や企業の多国籍化といった環境が、国際的な会計基準の統一を目指す契機となったと考えられます。1973年に、国際会計基準委員会が設立することになりました。
 日本では、江戸時代に既に大福帳のような帳簿はありましたが、複式簿記が導入されるのは明治以降のことです。そして、第二次世界大戦後、1948年、経済安定本部に設けられた企業会計制度対策調査会が、1949年に企業会計原則が公表されました。1952年、同調査会は、大蔵省の審議会として企業会計審議会に移管し、改称されました。そして、現在、企業会計審議会によって、企業会計原則の修正やその他の意見書が公表され、これらが日本における一般に公正妥当な会計原則として扱われています。

 ◆複式簿記への称賛
 かの有名な詩人ゲーテは、「複式簿記は、人知の生んだ最も立派な発明である。心ある一家の長は誰しも自分の経済に複式簿記を用いねばならぬ。」と、複式簿記、しいては会計を称賛しています。

 5 会計学の体系
 会計学は、その研究対象を企業会計と非営利会計とに区分されます。
 企業会計に関する研究分野は、大きく分けて、財務会計論、管理会計論、監査論があります。財務会計分野には、簿記、財務会計論(財務諸表論)、税務会計論等があり、管理会計分野には、管理会計論、原価計算論等があり、監査論分野には、会計監査論、システム監査論等があります。原価計算論は、財務会計分野に属するものもあり、特に、原価管理論は、管理会計分野といえます。また、会計情報の利用に関する経営分析財務諸表分析といったものも、会計学の研究対象となります。
 非営利会計には、会計も含まれますが、会計学では、国や地方自治体に関する公益法人会計や学校法人会計が研究されています。

 ☆参考
 ここでは、会計とは何かをより良く理解するために、会計の定義や会計観をいくつか挙げておきます。
 ・J.F.シェアー
 「会計こそは各企業に対し、過去に対する誤りなき判定者であり、現在に対する欠くべからざる指導者であり、将来に対する信ずべき助言者である。」
 ※J.F.Sch?r, Buchhaltung und Bilanz, 5. Aufl., Berlin, 1922.  林良治訳『簿記会計学』新東洋出版社、1976年。

 ・E.シュマーレンバッハ
 「企業を他の有機体、例えば、人体と比較すると、企業会計は、記憶や神経の役割をいくらか果している。人間の神経は、人体のどこかに刺激が起こったかということを知らせる。傷害、欠乏、故障は、神経を通じて防衛機能を働かせる。同じように、企業会計、特に、内部会計は、他の粗雑な方法によっては明らかにできない経営上の欠陥、傷害及び処理上の失敗について経営首脳部に対して報告する役割を果している。」
 ※E.Schmalenbach, Kostenrechenung und Preispolitik, K?ln, 1956. 土岐政蔵訳『原価計算と価格政策』森山書店、1951年。

 ・W.A.ペイトン&A.C.リトルトン
 「会計の目的は、企業に関する財務上の資料を経営者、出資者および公衆の要請にかなうように蒐集編成して提示することにある。」
 ※W.A.Paton&A.C.Littleton, Corporate Accounting Standards, AAA, 1940. 中島省吾訳『会社会計基準序説(改訳版)』森山書店、1958年。

 ・W.A.ペイトン
 会計の主要な目的は、(1)経営者に対して企業の活動に関する充分な助言を与え(充分な情報を提供し)、かくして、繰り返し行われる経営者の意思決定を助けること及び(2)出資者、債権者、潜在的投資家、その他の利害関係者に対して企業の業績及び財政状態に関する妥当な情報を提供することにある。
 ※W.A.Paton, Accounting and Utilization of Resources, in: Taggart, editor, Paton on Accounting, The University of Michigan, 1964.

 ・C.A.モイヤー&R.K.マウツ
 企業会計の基本的機能は、企業に関する情報を提供することと企業の資産の保全に役立つことであり、企業会計は、経営者、株主その他の自己資本の醵出者、債権者、税務当局、監督機関、潜在的な投資家、潜在的な与信者、従業員、取引先等の各種の利害関係者が必要とする情報を提供しなければならない。
 ※C.A.Moyer&R.K.Mautz, Intermediate Accounting, Wiley, 1962.

 ・太田哲三
 企業会計の目的は、「企業の経営活動を記録し計算を行なって、一期間の経営の成果と、一定時点(決算日という)の財政状態を明らかにし、経営管理の資料を提供するとともに、これを企業の所有者その他の利害関係者に報告すること」である。
 ※太田哲三他著『新会計学通論(改訂版)』中央経済社、1982年。
 企業会計の役割は、企業の経営活動を貨幣数値で記録・計算し、一定の計算期間の企業活動の成果と一定時点における財政状態を明らかにして、企業の経営者及び企業に利害関係をもつ人々に報告することである。
 ※太田哲三、新井益太郎他著『新会計学原理(改訂版)』同文舘、1982年。

 ・番場嘉一郎
 「企業会計は、外部に発表する財務諸表(対外報告)の作成を通じて、企業外部の利害関係者に奉仕することを目的とするとともに、会計記録および会計報告を通じて企業内部者、すなわち、経営責任者の経営計画および管理に資することを目的とするものである。」
 ※番場嘉一郎著『棚卸資産会計』国元書房、1963年。

 ・吉田寛
 「会計とは、一般に、一経済主体に属する経済活動を一定の計算システムに従って価値計数的に把握し、その経済的成果及び経済的状態を測定、報告する手段」である。
 ※吉田寛著『会計情報の理論(第2版)』日本経営出版会、1970年。


 第2章 会計の基礎概念

 ここでは、会計上用いられる重要な概念について、簡単に説明します。

 1 資産
 資産とは、将来、現金を生むもの(価値があるもの)をいいます。これを潜在的用役(サービスポテンシャル)といいます。
 資産には、現金、売掛金、受取手形、商品、製品、建物、機械、土地等があります。

 2 負債(他人資本)
 負債とは、将来、現金で支払われるものをいいます。
 例えば、支払手形、買掛金、借入金等があります。

 3 資本(自己資本)
 資本とは、企業の元手を意味しています。
 例えば、株式会社の場合、企業は株式を発行し、それを購入した株主から現金等の資産を受入れます。この株主によって、提供された部分を資本といいます。

 4 収益
 収益とは、ある期間において、経済活動の結果生じた、資産の増加の原因を意味します。
 例えば、ある商品を10,000円で販売した場合、10,000円の資産(この場合、現金や売掛金等)が増えます。その資産の増加の原因、この場合、売上を収益といいます。

 5 費用
 費用は、収益とは反対に、ある期間において、経済活動の結果生じた、資産の減少の原因を意味します。
 例えば、従業員に給料を支払ったとします。その際、給料の分だけ、現金等の資産が減少します。この現金等の資産が減少したのは、給料という費用を支払ったためです。

 6 利益
 利益は、一定期間に経済活動を行った結果、どれだけの価値が増えたかを意味しています。
 例えば、10,000円で買った商品を20,000円で売った場合、売上という収益が20,000円で、仕入という費用が10,000円ですから、10,000円の利益が生じたことになります。

 7 諸概念の関係
 会計では、上記の概念は、利益を中心にして、次のような関係として捉えられます。

 資産=負債+資本
 利益=期末資本−期首資本
 利益=収益−費用

 (期末資産−期末負債)−(期首資産−期首負債)=収益−費用=利益

 この等式の関係は、後で示す取引の8要素という会計の処理における基本的仕組みによって、支えられています。

図表 貸借対照表と損益計算書

貸借対照表
損益計算書
資産
負債
費用
収益
資本
利益
利益

 ☆参考
 ここでは、資産とは何かをより良く理解するために、代表的な資産の定義について、いくつか見解を挙げておきます。
 ・W.ヴァッター
 「資産は、本質的に経済的なものである。資産は、将来の事象に対して、変形されるか、交換されるか、あるいは保管されるかによる用役潜在力の形態の、将来の欲望を満足の具体化したものである。」
 ※W.Vatter, The Fund Theory of Accounting and Its Implications for Financial Reports, The University of Chicago Press, 1947. 飯岡透他訳『資金会計論』同文舘、1971年。

 ・R.J.チェンバース
 資産とは、「ある実体が占有している分離可能な手段」であり、「手段とは、効用をもつ希少な客体(財とサービス)である。」
 ※R.J.Chambers, Accounting Evaluation & Economic Behavior, reprinted, Scholars Book Company, 1974. 塩原一郎訳『現代会計学原理(上)』創成社、1984年。

 ・R.N.アンソニー
 「資産は、主体の資本がとっている形態である。資産は、貨幣項目と未費消の原価と投資からなっている。報告された金額は、それぞれの形態に拘束された資本の金額である。」
 ※R.N.Anthony, Future Directions for Financial Accounting, IRWIN, 1984. 佐藤倫正訳『財務会計論』白桃書房、1989年。

 ・アメリカ会計学会
 「資産とは、特定の会計的実体の中で企業の諸目的に充用されている経済的資源である。資産は予想される業務活動に利用しうるあるいは役立ちうる、用役潜在分の総計額である。」
 ※AAA, Accounting and Reporting Standards for Corporate Financial Statements, 1957 revision. 中島省吾訳編『(増訂)AAA会計原則』中央経済社、1971年。

 ・アメリカ財務会計審議会(FASB)
 「資産とは、過去の取引または事象の結果として、ある特定の実態により取得または支配されている、発生の可能性の高い将来の経済的便益である。」
 FASB, "Elements of Financial Statements", 1985.


 第3章 簿記の仕組み(取引、勘定科目、仕訳、元帳)

 1 簿記の一巡
 財務会計は、最終的に財務諸表を作成するまでの一連の手続きからなっています。その流れは、以下のようになります。

 取引の発生→仕訳帳に仕訳記入→元帳へ転記→試算表作成→決算手続き→貸借対照表及び損益計算書の作成

 2 取引
 会計上の取引とは、会計事実として取り扱われる事象で、経済的価値の変動をもたらす事象をいいます。
 通常、企業の取引といった場合、契約は含まれますが、会計上の取引には含まれません。一方、先にも示しましたように、火災や盗難等は、会計上の取引として扱われます。
 そして、取引は、先に挙げた諸概念によって、表現されます。表現するにあたって、会計では、借方(左側)と貸方(右側)という2つの場所を設けます。そして、取引は、次の表(これを取引の8要素といいます)のように処理されます。

図表 取引の8要素

 例えば、銀行から100,000円の現金を借りた場合には、この取引は、借入という負債が増え、また、現金という資産が増えます。借方に、現金が増えたことを記述し、貸方に借入金が増えたことを記録します。

 3 勘定科目
 勘定科目は、ある取引を表現するために用いる名称です。良く使われる勘定科目には次のようなものがあります。
 ・資産に関する勘定科目
 流動資産
  当座資産
   現金(通貨、他人振出小切手、送金為替手形、郵便為替証書等)
   当座預金(無利息の要求払預金で、引出しは小切手で行われる預金)
   普通預金(利息付の要求払い預金)
   定期預金(一定期間の引出しは原則として行わない契約の預金)
   受取手形(収入代金として受取る約束手形と為替手形)
   売掛金(得意先への売上債権)
   仮払金(原因が特定されていない支出)
   前払金(ある資産を取得するために支払われる手付金)
   未収入金(売上以外で生じた未収入の債権)
  棚卸資産
   商品(企業が保有する商品)
   製品(自社によって製造され完成した生産物)
   材料(製品を製造するために必要な、保有されている物品)
   仕掛品(製造の中途にある生産物)
   半製品(完成していないが、仕掛品と違い販売可能な中間生産物)
   貯蔵品(保有されている工場消耗品、事務用消耗品等)
 固定資産
  有形固定資産
   建物(事業に利用される店舗、事務所、工場、倉庫、社宅等)
   建物付属設備(建物に付随する照明設備、空調設備、昇降機等)
   機械装置(製造に用いられる成型機やコンベア等)
   車両運搬具(事業用の鉄道、自動車、バイク等の陸上運搬具)
   工具器具備品(金型、パソコン、金庫、コピー等)
   土地(事業に利用される土地)
  無形固定資産
   借地権(他人の土地を利用する権利)
   特許権(発明等によって取得する独占的な排他権)
   電話加入権(電話を利用するための権利)
  投資等
   投資有価証券(長期的に保有する有価証券)
   保険積立金(企業が受取る契約で役員や従業員への保険の積立分)
  繰延資産
   創立費(会社設立のための定款作成費、登記費用等)
   開業費(会社設立から事業が開始されるまでの宣伝費や支払利息等)
   新株発行費(増資のために株式を発行するために要する費用)
   社債発行費(社債を発行するための手数料や募集費用等)

 ・負債に関する勘定科目
 流動負債
   支払手形(仕入代金の支払いのために振出す約束手形や為替手形)
   買掛金(仕入先に対する未払いの仕入債務)
   未払金(仕入先以外に支払うべき債務)
   未払費用(支払期日にはなっていないが、受取った役務の未払対価)
   預り金(従業員や取引先から預かった源泉所得税や社会保険料等)
   前受金(資産を引き渡す前に受け取る手付金)
   短期借入金(1年未満に銀行等へ支払うべき融資)
   未払法人税等(確定した未払の法人税や住民税)
 固定負債
   長期借入金(1年以上先に返済すべき借入)
   受入保証金(預かっている保証金)
   社債(資金調達のために発行した債券のみ返済分)

 ・資本に関する勘定科目
 資本金(企業の出資者によって提供されて元手)
 資本準備金(出資者との取引によって生じた積立分)
 利益準備金(債務支払能力維持のために商法上積立てを要する利益部分)
 別途積立金(特定の目的をもたない利益の留保分)

 ・収益に関する勘定科目
 売上高
 受取利息
 受取配当金
 雑収入

 ・費用に関する勘定科目
 仕入高
 役員報酬
 賃金給与
 退職金
 法定福利費
 福利厚生費
 外注費
 旅費交通費
 通信費
 接待交際費
 地代家賃
 リース料
 保険料
 水道光熱費
 消耗品費
 広告宣伝費
 諸会費
 顧問料
 支払手数料
 修繕費
 減価償却費
 雑費
 支払利息

 4 仕訳
 仕訳とは、取引を勘定科目を使って記録することをいいます。
 以下、取引例を使いながら、仕訳をみていくことにします。
 ・A社は、B社より商品100,000円を購入し、代金は翌月払いとした。また、引取費用5,000円は現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
仕入
105,000
買掛金
現金
100,000
5,000

 この取引において、商品を購入したということですから、仕入という行為が行われたことを意味しています。そして、これは、商品を売るための努力ですから、仕入という費用として記録します。また、商品の購入代金を直ぐに払わない取引、掛取引ですから、買掛金という負債が増えたことになります。また、取得原価は、購入対価(商品100,000円)と付随費用(引取費用5,000円)の合計となりますから、仕入は、105,000円と計上されいます。

 ・A社は、C社に・の商品を300,000円で売却し、代金のうち半分は現金で、残りは約束手形で受取った。また、商品の運送費3,000円は、現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
現金
受取手形
荷造発送費
147,000
150,000
3,000
売上
300,000

 この取引は、商品を売却したわけですから、会社にとっては、活動の成果です。そこで、会社が商品を売ったという行為を表す売上という収益の勘定科目を貸方に記入します。そして、商品を売却することで、現金という資産が増え、また、受取手形という資産が増えることことを記入します。また、売上に係る運送費は、仕入れの際の付随費用とは異なり、荷造発送費や運賃として、売上から差引かずに、計上することになります。

 ・A社は、事務所建物1,000,000円を購入した。代金は小切手を振り出して支払った。

借方
金額
貸方
金額
建物
1,000,000
当座預金
1,000,000

 この取引は、建物という資産が増えたことと、小切手で支払ったこと、つまり、当座預金が減ったことを意味していますから、建物という資産の増加を借方で示し、当座預金という資産の減少を貸方で示すことになります。

 ・A社は、銀行より500,000円の融資を受けた。融資金額は、当社の普通預金に入金した。

借方
金額
貸方
金額
普通預金
500,000
借入金
500,000

 この取引は、銀行からお金を借りて、それを普通預金に預け入れた分けですから、普通預金が増加して、その原因として、借入金という負債が増えたことを表すことになります。

 ・従業員の給料100,000を源泉所得税10,000円を差引いて、現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
給料
100,000
預り金
現金
10,000
90,000

 給料を支払った際の仕訳です。給料という費用が発生します。現金という資産が支払いによって減ります。また、源泉所得税(住民税、社会保険料等もあります)を差引くわけですが、これは、従業員から預かって、納付するものですので、この源泉所得税は、後で企業から現金が流出する負債ですので、預り金という負債が増加したことになります。

 ・電気料金20,000円と水道料金10,000円が、普通預金から引き落とされた。

借方
金額
貸方
金額
水道光熱費
30,000
普通預金
30,000

 電気料金と水道料金いう費用の発生と普通預金の減少を示すことになります。電気料金、ガス料金、水道料金等は、水道光熱費で処理します。

 ・A社は、新聞広告の代金50,000円を当社振出の約束手形で支払った。

借方
金額
貸方
金額
広告宣伝費
50,000
支払手形
50,000

 広告宣伝費という費用と、その代金の支払に充てるために手形を振出したので、支払手形という負債の増加として、支払手形を貸方に記入します。

 ・従業員が出張に行くことになり、出張費用20,000円を現金で渡した。後日、次のように精算した。宿泊費10,000、土産代3,000、電話代2,000円、タクシー代1,000、従業員飲食代1,000であり、残りは精算した。

借方
金額
貸方
金額
仮払金

旅費交通費
交際費
通信費
福利厚生費
現金

20,000

11,000
3,000
2,000
1,000
3,000

現金

仮払金

20,000

20,000

 従業員の出張費用をとりあえず預けた場合には、仮払金という勘定科目を使います。これは、後日、精算して現金で戻ってきますので、資産ですから、資産の増加として、借方に記入します。そして、精算する場合には、仮払金という資産は消滅しますので貸方に記入し、その明細を適切な勘定科目に振替えます。

 ・A社は、商品200,000円を仕入れ、代金のうち半分をB社振出の約束手形で支払い、残りは、C社振出の小切手で支払った。

借方
金額
貸方
金額
仕入
200,000
受取手形
現金
150,000
150,000

 商品を仕入れた取引ですから、仕入という費用が発生します。代金のうちB社振出の手形は、A社がB社から受取った際には、受取手形を借方に記入しています。その手形が無くなったのですから、反対に貸方に記入します。このように、受取った手形を支払のために他人に渡すことを裏書といい、受取手形の代わりに裏書手形と記入することもできます。また、他社振出の小切手は、受け取った際には、現金として処理されていますから、その小切手で支払ったので、当座預金ではなく、現金で処理します。

 ・A社は、掛で仕入れた商品100,000円分を返品した。

借方
金額
貸方
金額
買掛金
100,000
仕入
100,000

 仕入れた商品を返品した場合には、その仕入という費用を取り消すことになりますから、費用の発生の表現とは逆に、仕入という費用を貸方に記入します。また、それに伴い、代金を掛で買っていた場合には、その負債も減少しますので、買掛金は借方に記入することになります。現金で支払っていて返品代金を受け取っていなければ、未収入金(未収金)で処理します。

 ・A社は、かねて受取っていた約束手形400,000円を銀行で割引き、割引料10,000円を差引かれ、当座預金に預け入れた。

借方
金額
貸方
金額
当座預金
支払割引料
390,000
10,000
受取手形
400,000

 以前に受取っていた手形ですから受取手形で表現されています。この受取手形を割引いたということで、受取手形はなくなります。従って、受取手形を貸方に記入します。受取手形がなくなって、当座預金が割引料を引かれた分を除いて増えましから、借方に記入します。手形を期日以前に割引く場合には、銀行で期日までの利息を差引かれますが、この部分は、支払利息割引料や支払割引料という勘定科目で処理されます。

 ・現金の残高を確認したところ、帳簿よりも1,000円少なかった。

借方
金額
貸方
金額
現金過不足
1,000
現金
1,000

 実際に、帳簿の現金残高と手許の現金残高(金庫の中身)が違ってしまうことがあります。そんな時に使われるのが、現金過不足勘定です。ただし、後日、原因が判明した場合、適切に修正仕訳を行うことになります。逆に、決算まで判明しない場合は、費用(雑損失や雑費)、または、収益(雑益や雑収入)として処理されます。仕訳をするときは、実際の現金に合わせるので、実際の現金が少ない場合は、帳簿の現金を減らし、反対に、実際の現金が多い場合には、帳簿の現金を増やします。

 ・A社は、B社から掛けで仕入れた商品100,000円の貨物引換証を受け取った。後日、商品が到着し、引取費用3,000円を現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
未着品

仕入

100,000

103,000

買掛金

未着品
現金

100,000

100,000
3,000

 商品は、まだ受取っていないけれども、貨物引換証や船荷証券といった貨物代表証券を受取った際には、未着品あるいは未着商品という資産の勘定科目で処理します。後日、商品が届いた際、借方に仕入、貸方に未着品で処理します。

 ・A社は、委託販売のために、B社に商品(原価150,000円、売価200,000円)を積送し、運賃や保険料等の諸費用5,000円を現金で支払った。後日、B社から上記分の売上計算書(売上高200,000円、手数料10,000円)とともに、郵便為替証書を受取った。

借方
金額
貸方
金額
積送品

現金
仕入

155,000

190,000
155,000

仕入
現金

売上
積送品

150,000
5,000

190,000
155,000

 これは、委託販売に関する取引です。委託時に商品を発送します(商品が減少します)ので、仕入から積送品という資産の勘定科目に振替えます。未着品の取引と同様に、取引が完結した場合(未着品であれば商品が到着するか貨物代表証券を他人に渡し商品を売却する場合、積送品であれば商品が販売されるか販売されず商品が戻ってきた場合)に、積送品から仕入れに振替えます。積送品の売却において、上記のように、売上高から委託手数料を差引く方法の他に、売上高を総額(200,000円)で計上し、販売手数料を計上することもできます。なお、郵便為替証書は、他人振出小切手と同様に、現金として処理します。

 ・A社(資本金10,000,000円、利益準備金2,400,000円、未処分利益3,000,000)は、配当金700,000円、役員賞与400,000円、事業拡張積立金300,000円、別途積立金900,000円で利益処分することにした。

借方
金額
貸方
金額
未処分利益
3,000,000
利益準備金
未払配当金
未払役員賞与金
事業拡張積立金
別途積立金
繰越利益
100,000
700,000
400,000
900,000
300,000
600,000

 株式会社が株主総会を通じて、利益処分を決定した場合の取引です。利益を処分するので、未処分利益が減少します。そして、配当金や役員賞与金という配分が行われることになります。両方とも後で現金で支払われるものですので、負債として処理されます。配当金や役員賞与金を行う場合には、利益準備金を資本金の4分の1になるまで、配当金と役員賞与金の10%を積み立てなくてはなりません。従って、ここでは、資本金の4分の1である2,500,000まで積み立てるには、後100,000円を積み立てる必要があり、配当金と役員賞与金の合計の10%は110,000円ですが、100,000円積み立てればいいことになります。また、利益は、資産を増加したり負債を減少させたりするための積極的な目的(事業拡張のためや建物の新築のため等)や費用等の発生に備えるための消極的な目的(配当支払に備えるためや偶発損失に備えるため等)に応じて積み立てられることがあります。ここでは、事業拡張のためのものです。また、無目的に利益を留保するための別途積立金があります。

 5 元帳
 元帳は、仕訳帳とともに、主要簿といわれる重要な帳簿です。これは、勘定科目ごとに集計するための帳簿です。元帳を記入する際にも、取引の8要素に従って行います。
 ・商品200,000円を仕入れ、代金は掛とした。

買掛金

借方
金額
貸方
金額
仕入
200,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
買掛金
200,000

 まず、仕入という費用が発生しましたから、仕入の元帳には、費用の発生を表す借方に相手科目である買掛金と金額が記入されます。そして、仕入によって買掛金が増加していますから、負債の減少を表す貸方に相手科目である仕入と金額を記入します。

 ・A社は、商品500,000円をB社に販売し、B社振出小切手で受取った。

現金

借方
金額
貸方
金額
売上
500,000

売上

借方
金額
貸方
金額
現金
500,000

 商品を売却したわけですから、売上の元帳の貸方に記入することになりますが、その相手科目は、他社振出の小切手ですから、現金が記入されます。そして、他社振出の小切手を受け取ったわけですから、現金が増加したことになりますので、借方に記入します。

 ・普通預金から電話代20,000円とリース料30,000円が引落とされた。

普通預金

借方
金額
貸方
金額
諸口
50,000

通信費

借方
金額
貸方
金額
普通預金
20,000

リース料

借方
金額
貸方
金額
普通預金
30,000

 普通預金から電話代とリース料が支払われたために、普通預金は減少しましたので、普通預金にを貸方記入します。その際、減少の原因が2つ以上あるので、諸口とするか通信費とリース料とを別々に貸方記入することもできます。そして、通信費とリース料(賃借料)の元帳には、その発生によって、普通預金が減少したので、それぞれの借方に普通預金と記入します。

 ・A社は、自動車1,000,000円を購入し、代金のうち半分は、小切手を振出し支払い、残りは、翌月に払うこととした。

当座預金

借方
金額
貸方
金額
車両運搬具
500,000

車両運搬具

借方
金額
貸方
金額
諸口
1,000,000

未払金

借方
金額
貸方
金額
車両運搬具
500,000

 自動車という資産が増加しましたので、車両運搬具の元帳の借方に記入をします。車両運搬具を購入したことで、当座預金という資産が減少し、未払金という負債が増加していますから、それぞれの元帳の貸方に相手科目の車両運搬具とともに金額を記入します。

 ・当座預金から、借入金400,000円とともに、利息20,000円が引き落とされた。

当座預金

借方
金額
貸方
金額
諸口
420,000

借入金

借方
金額
貸方
金額
当座預金
400,000

支払利息

借方
金額
貸方
金額
当座預金
20,000

 借入金の返済と利息の支払が行われ、当座預金が減少したことを記入します。そして、借入金という負債の減少があったので、借入金の元帳には、当座預金から返済したことが分かるように、借方に当座預金と記入し、返済額を記入します。また、支払利息という費用の発生も同様に記入します。

 ・A社は、B社に対する買掛金500,000円の支払のために、得意先C社充てに、為替手形を振り出し、C社の引受を得て、B社に支払った。

売掛金

借方
金額
貸方
金額
買掛金
500,000

買掛金

借方
金額
貸方
金額
売掛金
500,000

 為替手形に関する取引ですが、ここで注意するのは、この為替手形の支払人はC社であるということです。まず、B社に対する買掛金の支払によって、買掛金という負債が減少していますので、買掛金の元帳の借方に記入します。では、買掛金の支払に充てられた振出手形はA社にとって何かということを考えます。得意先C社は、A社にとっては売掛金が残っているということを理解して下さい。そして、その売掛金の代金で支払ったというように考えます。ですから、売掛金が減少したように記入します。

 ・A社は、次のように予定納税を現金で支払った。法人税1,000,000円、法人市民税200,000円、法人県民税200,000円、事業税400,000円。

現金

借方
金額
貸方
金額
諸口
1,800,000

仮払法人税等

借方
金額
貸方
金額
現金
1,400,000

租税公課

借方
金額
貸方
金額
現金
400,000

 企業は、利益(所得)が上がると法人税等の税金を払いますが、この取引は、予定納税の支払です。注意するのは、法人税、住民税、県民税は利益処分といわれる項目で、租税公課として処理しませんが、事業税は、費用(損金)ですので、租税公課とします。また、この取引は、予定納税ですので、仮払法人税等という資産の勘定科目で処理します。あるいは、法人税等という損益計算書に示される勘定科目(費用ではなく、利益処分として表示されます)で処理します。

 ・A社は、額面総額5,000,000円の社債を額面100円につき98円で発行し、払込金は、当座預金とした。

当座預金

借方
金額
貸方
金額
社債
4,900,000

社債発行差金

借方
金額
貸方
金額
社債
100,000

社債

借方
金額
貸方
金額
諸口
5,000,000

 株式会社が広く資金を調達するために、社債という債券を発行することがあります。社債は、償還日に額面総額を返済するもので負債です。従って、仕訳の考え方は、借入金に似ています。社債の返済総額は額面総額と同額ですので5,000,000円となりますが、割引発行をしており、実際の手取額は、5,000,000÷100×98=4,900,000が当座預金になります。そして、差額は、社債発行差金という繰延資産で処理されます。

 ○練習問題
 次の取引を仕訳して、元帳転記しましょう。また、締め切れるものは締め切りましょう。(当初、現金1,000,000円と資本金1,000,000円があったとします。)

 商品1,000,000円を仕入れ、代金のうち半分は現金で支払い、残りは掛とした。
 上記商品700,000円を1,500,000円で売却し、代金のうち半分は、小切手で受取り、残りは約束手形で受取った。
 当座預金を開設し、現金750,000円を預け入れた。
 家賃150,000円と賃金150,000円を現金で支払った。
 事務用備品を購入し、代金500,000円は、約束手形を振出して支払った。

現金

当座預金

受取手形

備品

支払手形

買掛金

資本金

売上

仕入

地代家賃

賃金

解答

 商品1,000,000円を仕入れ、代金のうち半分は現金で支払い、残りは掛とした。
仕入 1,000,000
現金   500,000
買掛金 500,000
 上記商品700,000円を1,500,000円で売却し、代金のうち半分は、小切手で受取り、残りは約束手形で受取った。 現金   750,000
受取手形 750,000
売上  1,500,000
 当座預金を開設し、現金750,000円を預け入れた。 当座預金 750,000 現金   750,000
 家賃150,000円と賃金150,000円を現金で支払った。 地代家賃 150,000
賃金   150,000
現金   300,000
 事務用備品を購入し、代金500,000円は、約束手形を振出して支払った。 備品   500,000 支払手形 500,000

現金

資本金
1,000,000
仕入
500,000
売上
750,000
当座預金
750,000
諸口
300,000
次期繰越
200,000

当座預金

現金
750,000
次期繰越
750,000

受取手形

売上
750,000
次期繰越
750,000

備品

支払手形
500,000
次期繰越
500,000

支払手形

次期繰越
500,000
備品
500,000

買掛金

次期繰越
500,000
仕入
500,000

資本金

次期繰越
1,000,000
現金
1,000,000

売上

損益
1,500,000
諸口
1,500,000

仕入

諸口
1,000,000

地代家賃

現金
150,000
損益
150,000

賃金

現金
150,000
損益
150,000

損益

地代家賃
150,000
売上
150,000
賃金
150,000

 貸借対照表項目(資産、負債、資本)は、決算期以降も繰り越されて残るものですから、次期繰越として、締め切ります。例えば、3月31日の決算日にある現金200,000という残高は4月1日の次期にも残っているということです。一方、損益計算書項目(収益、費用)は、一定期間の成果と努力ですから、次期に繰り越すことができません。そこで、損益勘定という勘定科目にまとめます。例えば、当期の売上高1,500,000は、次期の売上とは関係がありません。売上が無いかもしれませんから。



 第4章 財務諸表の作成(手続編 損益計算書と貸借対照表)

 先に、取引を記録することを説明しました。ここでは、それをまとめて株主や債権者等に提供する財務諸表の作成の手続きを説明していきます。

 1 売上原価の算定
 売上原価とは、売上に係った原価をいいます。例えば、100円で買ったものを200円で売ったとすると、200円の売上に係る原価は100円です。従って、単純に利益は、売上の200円から売上原価の100円を引いて、100円となります。
 ところが、100円で買ってきて、そのうち半分を100円で売ったとすると売上原価はどうなるでしょうか。売上は100円ですが、その売上のために係った原価は、仕入れた100円ではなくて、その半分の50円になります。100円のうち半分を売ったからです。
 次に、100円で買ってきて、前に仕入れた残りの分と一緒に300円売ったとします。この場合の売上原価は、50円+100円の150円となります。
 従って、売上原価の計算は以下のように行います。

 売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高

 次に一連の商品売買取引から売上原価の計算をみていくことにします。
 株式会社千葉商事(決算日3月31日)の次の取引から売上原価を算出しましょう。(ただし、4月1日現在の在庫はないものとします。)

 2001年4月20日 商品Aを単価300円で1,000個、掛仕入れた。

借方
金額
貸方
金額
仕入
300,000
買掛金
300,000

 2001年7月15日 商品Aを単価500円で700個、掛売した。

借方
金額
貸方
金額
売掛金
350,000
売上
350,000

 2001年9月3日 商品Bを単価200円で500個、掛仕入した。

借方
金額
貸方
金額
仕入
100,000
買掛金
100,000

 2001年11月10日 商品Aを単価600円で200個、掛売した。

借方
金額
貸方
金額
売掛金
120,000
売上
120,000

 2001年12月25日 商品Aを単価300円で200個、商品Bを単価200円で100個、掛仕入した。

借方
金額
貸方
金額
仕入
80,000
買掛金
80,000

 2001年2月20日 商品Bを単価300円で500個、掛売した。

借方
金額
貸方
金額
売掛金
150,000
売上
150,000

 2001年3月31日 決算を迎えた。

商品Aの仕入数量
商品Aの仕入高
商品Aの在庫数量
商品Aの在庫金額
商品Aの売上原価
1,200個
360,000円
300個
90,000円
270,000円
商品Bの仕入数量
商品Bの仕入高
商品Bの在庫数量
商品Bの在庫金額
商品Bの売上原価
600個
120,000円
100個
20,000円
100,000円

仕入

借方
金額
貸方
金額
買掛金
300,000
買掛金
100,000
買掛金
80,000

決算仕訳

借方
金額
貸方
金額
繰越商品
110,000
仕入
110,000

仕入

借方 金額 貸方
金額
買掛金
300,000
繰越商品
110,000
買掛金
100,000
損益
370,000
買掛金
80,000

 ◆棚卸資産の記録法と計算方法
 棚卸資産(商品、製品等)を記録するための帳簿として、商品有高帳があります。また、棚卸資産の計算方法には、先入先出法、後入先出法、移動平均法、総平均法があります。
 5月1日  埼玉物産より、単価200円で、100個仕入れ。
 5月3日  大坂商事より、単価180円で、300個仕入れ。
 5月9日  群馬商店へ、単価300円で200個売上。
 5月13日  茨城商店より、単価190円で、200個仕入。
 5月16日 5月13日の茨城商店からの仕入のうち50個を返品。
 5月24日 埼玉物産より、単価170円で、400個仕入れ。
 5月25日 熊本商事へ、単価320円で、250個売上。
 5月29日 奈良商会へ、単価310円で、200個売上。

       商品有高帳 商品A     先入先出法

日付
摘要
増加(受入)
減少(払出)
残高
単価
数量
金額
単価
数量
金額
単価
数量
金額
5.1 埼玉物産
200
100
20,000
200
100
20,000
5.3 大坂商事
180
300
54,000
200
180
100
300
20,000
54,000
5.9 群馬商店
200
180
100
100
20,000
18,000
180
200
36,000
5.13 茨城商店
190
200
38,000
180
190
200
200
36,000
38,000
5.16 茨城商店
190
50
9,500
180
190
200
150
36,000
28,500
5.24 埼玉物産
170
400
68,000
180
190
170
200
150
400
36,000
28,500
68,000
5.25 熊本商事
180
190
200
50
36,000
9,500
190
170
100
400
19,000
68,000
5.29 奈良商会
190
170
100
100
19,000
17,000
170
300
51,000
5.31 次月繰越
170
300
51,000
1,000
180,000
1,000
180,000

 先入先出法による売上原価は、月初棚卸高0円+当月仕入高180,000円−月末棚卸高51,000円=129,000円となります。

       商品有高帳 商品A     後入先出法

日付
摘要
増加(受入)
減少(払出)
残高
単価
数量
金額
単価
数量
金額
単価
数量
金額
5.1 埼玉物産
200
100
20,000
200
100
20,000
5.3 大坂商事
180
300
54,000
200
180
100
300
20,000
54,000
5.9 群馬商店
180
200
36,000
200
180
100
100
20,000
18,000
5.13 茨城商店
190
200
38,000
200
180
190
100
100
200
20,000
18,000
38,000
5.16 茨城商店
190
50
9,500
200
180
190
100
100
150
20,000
18,000
28,500
5.24 埼玉物産
170
400
68,000
200
180
190
170
100
100
150
400
20,000
18,000
28,500
68,000
5.25 熊本商事
170
250
42,500
200
180
190
170
100
100
150
150
20,000
18,000
28,500
25,500
5.29 奈良商会
190
170
50
150
9,500
25,500
200
180
190
100
100
100
20,000
18,000
19,000
5.31 次月繰越
200
180
190
100
100
100
20,000
18,000
19,000
1,000
180,000
1,000
180,000

 後入先出法による売上原価は、月初棚卸高0円+当月仕入高180,000円−月末棚卸高57,000円=123,000円となります。

       商品有高帳 商品A     移動平均法

日付
摘要
増加(受入)
減少(払出)
残高
単価
数量
金額
単価
数量
金額
単価
数量
金額
5.1 埼玉物産
200
100
20,000
200
100
20,000
5.3 大坂商事
180
300
54,000
185
400
74,000
5.9 群馬商店
185
200
37,000
185
200
37,000
5.13 茨城商店
190
200
38,000
188
400
75,000
5.16 茨城商店
188
50
9,400
188
350
65,600
5.24 埼玉物産
170
400
68,000
178
750
133,600
5.25 熊本商事
178
250
44,500
178
500
89,100
5.29 奈良商会
178
200
35,600
178
300
53,500
5.31 次月繰越
178
300
53,500
1,000
180,000
1,000
180,000
小数点以下四捨五入
 移動平均法による売上原価は、月初棚卸高0円+当月仕入高180,000円−月末棚卸高53,500円=126,500円となります。
 移動平均法における返品の処理は、先入先出法や後入先出法とは異なり、仕入時の単価(例題では、190円)でも、返品時の平均単価(例題では、188円)のいずれでも構いません。ただし、繰り越された(前月分の)商品については、返品時の単価を用いることが簡便です。

 ◆棚卸減耗費と商品評価損
 期末棚卸の算定において、棚卸減耗費と商品評価損があります。
 棚卸減耗費とは、商品の帳簿数量と実地数量の差を意味しています。上記の例では、期末棚卸数量は、帳簿上300個ですが、実際には、290個だったとします。この10個分の損が棚卸減耗損です。
 商品評価損とは、商品の取得原価(帳簿上の単価)よりも時価(実際の単価)が下がってしまった場合の差を意味します。上記の移動平均法の例では、帳簿上の単価は、178円ですが、実際の単価は、175円であったとすれば、差額3円が商品評価損です。

図表 期末棚卸高の計算(棚卸減耗費と商品評価損)

 商品評価損=(取得原価−時価)×実地棚卸高 棚卸減耗費=(帳簿数量−実地数量)×取得原価
 期末棚卸高=実地数量×時価 

 棚卸減耗費=(300−290)×178=1,780
 商品評価損=(178−175)×290=870
 期末棚卸高=290×175=50,750
      =53,400−1,780−870

 2 減価償却の算定
 減価償却とは、固定資産を使用することによって、あるいは、時の経過によって、その価値が減少しますが、それを、耐用年数という固定資産の予定利用期間に配分する手続きです。例えば、1,000円の資産を4年で使うと、単純には、毎年250円づつその価値が減少することは想像できるでしょう。
 この減価償却の計算方法には、定額法、定率法、級数法、生産高比例法があります。
 ・定額法
 定額法とは、耐用期間を通じて、一定金額の減価償却を計上する方法をいいます。

 減価償却費=(取得原価−残存価額)÷耐用年数

 自動車1,200,000円を4月1日に購入した。自動車の耐用年数は6年で、残存価額は取得原価の10%とする。
 減価償却費=(1,200,000−120,000)÷6=108,000
決算仕訳

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
108,000
車両運搬具
108,000
借方
金額
貸方
金額
減価償却費
108,000
減価償却累計額
108,000

 ・定率法
 定率法とは、帳簿残高に一定の償却率を乗じて減価償却を計上する方法をいいます。

 減価償却費=帳簿残高×償却率

 自動車1,200,000円を4月1日に購入した。自動車の耐用年数は6年で、残存価額は10%とする。償却率は0.319である。
 減価償却費=1,200,000×0.319=382,800
決算仕訳

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
382,800
車両運搬具
382,800
借方
金額
貸方
金額
減価償却費
382,800
減価償却累計額
382,800

 ※2年目以降の減価償却費は次の通りである。
 2年目の減価償却費=(1,200,000−382,800)×0.319=260,687
 3年目の減価償却費=(1,200,000−643,487)×0.319=177,528
 4年目の減価償却費=(1,200,000−821,015)×0.319=120,896
 5年目の減価償却費=(1,200,000−941,911)×0.319=82,330
 6年目の減価償却費=1,080,000−1,024,241=55,759
 6年目の減価償却、つまり、最後の償却は、残存価額1,080,000円と減価償却累計額1,024,241円の差額を計上します。

 ・級数法
 級数法とは、耐用年数を合計したもので、当該償却年度の残存耐用年数を徐したものを償却率として、それを帳簿価額から残存価額を引いたものに掛けて減価償却費を計上する方法です。

 減価償却費=(取得原価−残存価額)×(当該年度残存耐用年数÷耐用年数累計)

 自動車1,200,000円を4月1日に購入した。自動車の耐用年数は6年で、残存価額は10%とする。
 減価償却費=(1,200,000−120,000)×(6÷21)=308,571
 21=1+2+3+4+5+6
決算仕訳

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
308,571
車両運搬具
308,571
借方
金額
貸方
金額
減価償却費
308,571
減価償却累計額
308,571

 2年目の減価償却費=(1,200,000−120,000)×5÷21=257,143
 3年目の減価償却費=(1,200,000−120,000)×4÷21=205,714
 4年目の減価償却費=(1,200,000−120,000)×3÷21=154,286
 5年目の減価償却費=(1,200,000−120,000)×2÷21=102,857
 6年目の減価償却費=(1,200,000−120,000)×1÷21=51,429

 ・生産高比例法
 生産高比例法とは、予定総生産高で当該年度の生産高を除した償却率を取得原価から残存価額を差引いたものに掛けて減価償却を計上する方法です。

 減価償却費=(取得原価−残存価額)×(実際生産高÷予定総生産高)

 自動車1,200,000円を4月1日に購入した。残存価額は10%とする。予定総走行距離は500,000kmで、当期走行距離は50,000kmであった。
 減価償却費=(1,200,000−120,000)×(50,000÷500,000)=108,000
決算仕訳

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
108,000
車両運搬具
108,000
借方
金額
貸方
金額
減価償却費
108,000
減価償却累計額
108,000

 以上が、減価償却費の計算方法の代表的なものです。償却費の貸借対照表上の表示方法には、直接法と間接法があります。上記の例で決算仕訳の上段が直接法、下段が間接法での処理です。

 ◆リース資産の処理
 賃貸借取引のうちで、機械装置等の動産をリース会社から借りることをリースといいますが、リースした資産の処理について2つの処理方法があります。1つは、支払ったリース料をリース料という費用の勘定科目で処理する方法と、もう1つは、リース資産を有形固定資産として、つまり、所有権のある他の保有している有形固定資産と同様に資産に計上して、減価償却をする方法です。
 どちらの処理を採用するかは、そのリース契約によって異なります。リース契約において、中途解約ができないもので、リース資産の保守料金、保険、固定資産税等の資産を取得して利用することによって係る費用やリスクを借手の企業が負担する契約であるファイナンスリース取引の場合には、資産計上しなければなりません。

 3 有価証券評価損益の算定
 会計上の有価証券とは、企業の保有する他社の株式や社債、国債や公債をいいます。従って、法律上の有価証券とは手形等を含まない点で異なっています。
 保有する有価証券が、帳簿価額と異なっている場合には、その差額が損益として処理されることがあります。この差額を有価証券評価益または有価証券評価損といいます。
 有価証券は、その保有意図によって、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式、その他有価証券に区分され、それぞれ、評価方法と評価差額の扱いが異なります。
 次の取引を例にとって、それぞれ説明していきます。
 株式会社青森産業(決算日3月31日)は、2001年3月20日に、京都工業株式会社の社債(額面10,000,000円)を9,900,000円で購入した。その後、同社債の時価は、2001年3月31日時点で10,000,000円、2002年3月31日時点で10,020,000円であったとする。

 ・売買目的有価証券
 売買目的有価証券とは、市場価格の変動によって差益を得ようとする目的で保有(取得)する有価証券で、このような有価証券は、期末において時価で評価し、評価差額は損益として扱われます。
 ・洗い替え法
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
100,000
有価証券運用益
100,000

2001年4月1日期首振替仕訳

借方
金額
貸方
金額
有価証券運用益
100,000
有価証券
100,000

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
120,000
有価証券運用益
120,000

 ・切放し法
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
100,000
有価証券運用益
100,000

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
20,000
有価証券運用益
20,000

 ・満期保有目的の債券
 満期保有目的の債券とは、満期まで所有する意図をもって保有する、つまり、長期利殖目的で保有する社債、国債等の債券で、このような有価証券は、期末の貸借対照表価額は取得原価で評価し、評価損益を計上しない。
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
仕訳なし

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
仕訳なし

 ・子会社株式及び関連会社株式
 子会社(ある企業によって、議決権の過半数を所有してされているか、取締役会等の意思決定機関を実質的に支配されている会社)や関連会社(ある企業によって、議決権の20%〜50%を所有され、重要な影響を与えられている会社)への投資については、取得原価によって評価する。
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
仕訳なし

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
仕訳なし

 ・その他有価証券
 その他有価証券は、上記に該当しない有価証券で、時価をもって評価するが、評価差額は、洗い替え法で、資本の部に計上するか、または、時価が取得原価を上回る場合に資本の部に計上し、時価が取得原価を下回る場合に、当期損失とする方法による。
 ・洗い替え法
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
100,000
有価証券評価差額
100,000

2001年4月1日期首振替仕訳

借方
金額
貸方
金額
有価証券評価差額
100,000
有価証券
100,000

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
120,000
有価証券評価差額
120,000

 ・切放し法
2001年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
100,000
有価証券評価差額
100,000

2002年3月31日決算整理

借方
金額
貸方
金額
有価証券
20,000
有価証券評価差額
20,000

 以上は、時価がある有価証券に関する処理ですが、時価のない有価証券については、取得原価で評価することになります。
 また、時価が著しく下落して回復の見込みがない場合には、商法上の強制評価減、つまり、時価で評価しなければなりません。

 4 引当金の算定
 引当金とは、適正な損益計算を行うために、いまだ生じていないが、将来生じる費用のうちで、その原因が当期の企業活動に起因するものを計上するための項目をいいます。
 引当金には、評価性引当金(資産を評価する際に生じる引当金=受取額が減少する)と負債性引当金(将来支払が生じる引当金)があります。評価性引当金には、貸倒引当金等があり、負債性引当金には、退職給付引当金、賞与引当金、製品保証引当金、修繕引当金等があります。
 次にいくつかの引当金について説明していきます。
 ・貸倒引当金
 貸倒引当金は、受取手形、売掛金、貸付金等の金銭債権の期末残高に対する回収不能を見積り、それを当期の費用にするための引当金です。
 小売業を営むA社は、決算にあたって、以下の債権に対して貸倒引当金を法定繰入率(14年度)の0.15%を設定した。受取手形1,500,000円、売掛金3,000,000円、貸付金1,000,000。ただし、B社に対しては、売掛金1,000,000円と買掛金500,000円がある。なお、決算時点で、貸倒引当金の残高に2,000円あった。
差額補充法

借方
金額
貸方
金額
貸倒引当金繰入
5,500
貸倒引当金
5,500

洗い替え法

借方
金額
貸方
金額
貸倒引当金
貸倒引当金繰入
2,000
7,500
貸倒引当金戻入
貸倒引当金
2,000
7,500

 貸倒引当金は、会計上は、適切な見積によりますが、税法上、金銭債権のうちで、実質的に債権と見なさないものを除いた部分に、一定の率を乗じて求めます。この例でいえば、金銭債権5,500,000円のうち、B社に対する500,000円(買掛金の部分)は、実質的には同一取引先への債権と債務の関係ですので、相殺した上で、貸倒引当金の設定対象になります。

 ・製品保証引当金
 販売した商品や商品について、一定期間内に無償で修理をする保証をしている際に、その修理に係る費用を引当てるのが、製品保証引当金または商品保証引当金です。当期に製品を販売したことから、無償修理に係る費用が、決算時点に、潜在的に存在するということです。
 製本保証引当金を設定する際には、借方に製品保証引当金繰入(製品保証費、製品保証引当損)を用いて記入し、貸方に製品保証引当金を用いて記入します。また、保証によって修理を行い、それに係る費用が生じた場合には、製品保証引当金を借方に記入して減少させます。

 ・修繕引当金
 修繕引当金は、当期に実施する予定の経常的な修繕を、次期に行うことになった場合に、その費用を当期の費用とする場合にもいいられます。また、数年ごとに行われる定期的大修繕に備えて引当てる修繕引当金を特別修繕引当金といいます。
 修繕引当金を設定する際には、借方に修繕引当金繰入を用い、貸方に修繕引当金を用います。また、修繕が行われた場合には、修繕引当金を借方に記入して減少させます。

 ・退職給付引当金
 退職給付引当金は、従業員の退職時に支払われる退職金や退職年金のうちで、当期にその対価の負担すべき金額を引当てるための勘定科目です。
 退職給付引当金を設定する際には、借方に退職給付引当金繰入(退職給付費用)を用い、貸方に退職給付引当金を用いて記入します。

 5 収益、費用の繰延べと見越し
 収益、費用の繰延べとは、会計期間において計上すべきでないものを次期に繰り越して計上することいい、逆に、収益、費用の見越しとは、会計期間において計上すべきものを当期に見越し計上することをいいます。その際、未収収益、前払費用、前受収益、未払費用等の勘定科目が用いられます。
 例えば、3月31日決算の会社が、3月に4月分の家賃を支払った場合、その家賃は、いつの費用に計上するべきでしょうか。もちろん、決算日以降の4月の費用になるはずです。この場合に、支払った家賃を、前払家賃として処理するのが繰延べです。
 また、例えば、電気料金等は、月末時点の使用料ではないので、その請求されている日(3月20日)の翌日から決算までの残りの使用料を計算して、未払費用という負債を計上することを見越しといいます。
 A社(決算日3月31日)の次の取引を仕訳していき、収益、費用の繰延べ見越しを確認してみます。
 1月5日 1年分の火災保険料120,000円(月額10,000円)を現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
保険料
120,000
現金
120,000

 3月20日 給料280,000円(2月21日〜3月20日分、1日あたり10,000円)を現金で支払った。

借方
金額
貸方
金額
給料
280,000
現金
280,000

 3月31日 決算を迎えた。

借方
金額
貸方
金額
前払保険料
給料
90,000
100,000
保険料
未払給料
90,000
100,000

 ◯練習問題(第3章と第4章のまとめ問題)
 A社(決算日3月31日)の4月1日現在の財政状態は以下の通りです。一連の取引から、A社の損益計算書及び貸借対照表を作成してみましょう。

貸借対照表

借方
金額
貸方
金額
現金
当座預金
受取手形
売掛金
貸倒引当金
売買目的有価証券
商品
建物
建物減価償却累計額
備品
備品減価償却累計額
新株発行費
300,000
2,000,000
1,500,000
3,000,000
(50,000)
950,000
1,200,000
5,000,000
(1,500,000)
4,000,000
(900,000)
500,000
16,000,000
支払手形
買掛金
借入金
資本金
利益準備金
別途積立金
未処分利益
800,000
2,200,000
3,000,000
8,000,000
500,000
500,000
1,000,000

16,000,000

 ()は控除(−)を意味しています。

 ・商品1,000,000円を掛で仕入れた。なお、引取費用3,000円は、小切手を振出して支払った。
 ・商品1,800,000を販売し、代金のうち半分は、自社振出小切手で受取り、残りは約束手形で受取った。なお、発送費5,000円は現金で支払った。
 ・従業員の給料1,000,000円を、社会保険料100,000円、源泉所得税及び住民税200,000円を差引、現金で支払った。
 ・売掛金のうち2,000,000円を約束手形で受取り、直ちに、割引料10,000円を差引き、割引いた。手取金額のうち、半分は、当座預金とし、残りは手許現金とした。
 ・買掛金の支払のために、得意先B社引受の為替手形1,000,000円を振出した。
 ・商品500,000円を注文していたが、本日、貨物代表証券を受け取った。
 ・上記・の商品を受け取り、引取費用5,000円とともに、約束手形を振出して支払った。
 ・従業員の出張のために、出張費用20,000円を現金で仮払した。
 ・上記・の出張費用の明細は、次の通りであった。タクシー代3,000円、電話代1,000円、宿泊代12,000円、土産代5,000円。差額は、従業員に現金で支払った。
 ・売買目的有価証券(簿価450,000円)を600,000円で売却し、取引手数料10,000円を差引かれ、差額は当座預金とした。
 ・商品400,000円を委託販売のために、発送した。発送費用4,000円は、現金で支払った。
 ・借入金1,000,000円と利息50,000円が当座預金から引き落とされた。
 ・上記・の委託していた商品の売上計算書(売上高700,000円、委託販売手数料70,000円、発送費10,000円)と売上代金分の郵便為替証書が届いた。
 ・コンピュータ(取得原価1,000,000円、減価償却累計額200,000円)を500,000円で下取りし、新たにコンピュータ1,500,000円を購入した。購入代金と下取り金額との差額は、小切手で支払った。
 ・支払手形800,000円と買掛金200,000円を支払うために、得意先B社から受取っていた約束手形1,000,000円を裏書した。
 ・次の諸経費を小切手で支払った。水道代20,000円、電気代150,000円、電話代50,000円、家賃240,000円、保険料90,000円。
 ・社会保険料200,000円と源泉所得税及び住民税200,000円を小切手で支払った。
 ・商品2,400,000円を販売し、代金のうち半分は約束手形で受取った。
 ・従業員の慰安旅行費100,000円を小切手で支払った。
 ・次の資料に基づき、決算整理を行った。
 ・貸倒引当金を売上債権の5%設定した。なお、裏書していた手形は、無事に決済されている。
 ・売買目的有価証券の期末市場価格は、550,000円である。
 ・帳簿棚卸高は、数量15,000個、単価100円であったが、実地棚卸の結果、数量14,900個、単価99円であった。
 ・建物は、耐用年数30年、残存価額10%で定額法によって減価償却している。備品は、償却率25%で定率法によって償却している。なお、新規取得資産は、4月に購入している。
 ・新株発行費は、前期に支出したもので、均等償却している。
 ・保険料90,000円は、次期分が50,000円含まれている。

解答
貸借対照表

借方
金額
貸方
金額
現金
当座預金
受取手形
売掛金
貸倒引当金
売買目的有価証券
商品
前払費用
建物
建物減価償却累計額
備品
備品減価償却累計額
新株発行費
資産合計
1,185,000
1,382,000
2,600,000
1,200,000
(135,000)
550,000
1,475,100
50,000
5,000,000
(1,650,000)
4,500,000
(1,650,000)
250,000
14,757,100
支払手形
買掛金
短期借入金
資本金
利益準備金
別途積立金
当期未処分利益

負債資本合計

505,000
2,000,000
2,000,000
8,000,000
500,000
500,000
1,252,100

14,757,100

損益計算書

借方
金額
貸方
金額
売上原価
給料
法定福利費
福利厚生費
発送費
交際費
旅費交通費
通信費
委託販売手数料
水道光熱費
保険料
減価償却費
地代家賃
貸倒引当金繰入額
支払利息割引料
新株発行費償却
固定資産売却損
当期純利益
借方合計
1,236,900
1,000,000
100,000
100,000
15,000
5,000
15,000
51,000
70,000
170,000
40,000
1,100,000
240,000
85,000
60,000
250,000
300,000
252,100
5,090,000
売上高
有価証券売却益
有価証券評価益




貸方合計

4,900,000
140,000
50,000



5,090,000

 ☆参考
 ここでは、第3の財務諸表といわれるキャッシュフロー計算書について説明します。
 キャッシュフロー計算書(現金収支計算書)とは、一定期間における現金及び現金同等物の収入と支出を表示するための財務諸表です。
 国際会計基準(以下、IAS)改訂第7号、アメリカ財務会計基準(以下、FAS)第95号、イギリス財務報告基準(FRS)改訂第1号における、キャッシュフロー計算書の目的は、次の表の通りです。

図表 現金収支計算書の目的

国際会計基準
アメリカ
イギリス
・企業の純資産の変動、流動性、支払能力及び財務弾力性を評価すること

・企業の現金及び現金同等物を獲得する能力を評価すること

・他の企業の将来の現金収支の現在価値を評価し、比較分析するための方法を開発すること

・会計処理の影響を排除し、経営成績の指標を比較可能なものとすること

・過去に行った将来の現金収支の評価の検証、収益性の正味現金収支との関係及び価格変動の影響を調査すること

・将来の現金創出能力を評価すること

・債務返済能力、配当支払能力及び外部からの資金調達を行う能力を評価すること

・純利益とそれに関連する現金収支との際の原因を評価すること

・現金・非現金の投資・財務取引の財政状態への影響を評価すること

・異なる企業の現金収支業績の比較を促進するために、現金収支の重要な構成要素を区分にして期間中の現金の収入と支出を報告すること

・企業の流動性、支払能力、財務適応能力の評価を支援する情報を提供すること

*歴史的現金収支情報は収益性と現金創出能力との関係を示し、嫁得利益の質を示す

 さて、キャッシュフロー計算書の作成における現金概念には、現金勘定で処理される通貨、他人振出小切手、郵便為替証書、期限到来公社債利札等に加え、当座預金や普通預金といった要求払い預金が含まれます。また、現金同等物とは、容易に換金可能でリスクの低い短期投資のことで、即ち、現金と同等の支払能力のある資産、例えば、取得した時点で期限の到来が3ヶ月以内の国債があります。また、当座借越については、負の現金同等物として扱われることになります。
 キャッシュフロー計算書は、一定期間のキャッシュフロー(現金及び現金同等物の収支)状況を、営業活動、投資活動、財務活動に区分して表示するものです。このように、営業活動、投資活動、財務活動の3つにキャッシュフローの源泉や使途を区分する方法を3区分法といい、日本、アメリカ、オーストラリア、国際会計基準等の殆どの会計基準は、この方法を採用しています。イギリスにおいては、7区分法(営業活動、投資報酬及び資金調達費用、税金、資本的支出及び財務的投資、取得及び処分、株式配当金支出、流動資源の管理、財務)が採用されています。
 キャッシュフロー計算書の作成における営業活動は、損益計算書における営業利益の計算に関連するキャッシュフローの他に、投資活動や財務活動に分類されない活動からのキャッシュフローが含まれます。営業活動によるキャッシュフロー