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 ペンギン堂医方漢方の心を今に伝える隔月誌より抜粋1-1
                           〒520-2153 滋賀県大津市一里山二丁目14-13
                             発行所:ペンギンドウ薬局附属 びわこ漢方研究所
                             発行人:中川 義雄(昭)

  間違ってはいけない漢方薬の使い方  

         漢方と出会ったのが、昭和四十五年に購入した「症候による漢方治療の実際」(大塚敬節著)で
 
          ある。大学を出て製薬メ−カ−
の拡宣の仕事についたが挫折してしまい、そこで大学の先輩の経

          営するドラッグストアに誘われて、およそ二十年間、薬の相談販売をしてきた。そのドラッグストア

          に勤務して、まもなく先輩が紹介してくれたのが、前出の書籍である。七百頁を超える分厚い本で

          あるが、何度も何度 も読み返し強い衝撃を覚えた。自らのライフワ−クに出会った気がした。以

          来様々な漢方書を読み続けている。漢方と言っても数々あって、日本に仏教と共に伝来した古代

          の民間療法、室町時代に伝わったとされる後世要方、江戸時代のルネッサ ンスの象徴である古

          医方、明治時代から関東以北で拡まった一貫堂医学、ここ最近日本へ紹介された中医学、中国

          の南の暖かい所で培われた温病学等々である。流石に、最近は、漢方は迷信であると、暴言を

          吐く 医師はいなくなったのだが・・・。

           漢方は立派な医学であり、論理的、唯物論的に体系化されている。基礎的なものから臨床まで、

          現代医学を上回る勉強と経験が必要と言われている。十年近く前に発生した小柴胡湯事件なるも

          のがあった。全国で小柴胡湯を服用した患者さんが十人前後亡くなられたのである。当時C型肝

          炎の蔓延と共に大量に使用されたのであり、そのお陰で大多数の患者が救われたのであるが、漢

          方的な弁証論治がなされなかったが為に起こった不幸な出来事であった。傷寒論なる難解な古医
  
          書にその使い方が記載されており、その通り使用されれば、ほぼ必ずと言ってよい程効果が出る

          のであって、この様な結果にはならなかったであろう。
 

           毎年寒い季節になると流行るのが風邪である。文字通り「風」の「邪」である。その風邪にかかる

          事を「風に中る」と古人は言ったのであり、 傷寒論という古医書では中風の病と言っている。中風

          の病にも色々種類があるが、日本ではその代表格が葛根湯になる訳である。そして傷寒論では葛

          根湯の使い方を厳重に規定しているのである。何故ならば、使い方を誤れば心臓に悪影響を及ぼ

          し、極端な場合は三途の川をさまようことにもなりかねない。傷寒論では、「太陽病、項背強几几、
  
          無汗、悪風、葛根湯主之。」と規定しているのである。即ち、項から背中に沿って凝りがあって、汗
 
          はなく、寒気があり、そして脈が浮いている時と規定されているのである。


          蛇足ではあるが、ついでに付け加えておきたいのが、夏風邪は一体どうか、という事である。そう

         です。よくよく前文を見て頂くと、汗は無く、寒気があり、と規定されており、夏の風邪は、有汗で、寒

         気が無い事が多く、合わないという事である。そして、その夏風邪に対しては、温病学や中医学では、

         別の処方、メニューが準備されている。温病学の発展した地域は、中国の南の温かい所であり(亜

         熱帯の所もある)、当初、日本へ伝来した傷寒論は、どちらかと言うと、中国北部の寒い所で発展し

         た理論である。

          交通手段の発展、グローバル化した世界、消費を奨励している経済等々が、昔の日本には上陸し

         なかった南の暖かい地域に棲息しているウイルスを日本に持ち込む事になった。斯くして、日本の漢

        方を江戸時代に比べて、更に難しくしているのである。五月の連休の後、またお盆の休みの後等に

        流行る咽痛や熱発等は、恐らくこれらが原因しているからであろう。今、世界が一番問題にしている

        地球温暖化現象も、漢方の世界に大いに影響を及ぼしているのであろう。

                                                    C 2002 Yosio Nakagawa

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