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 ペンギン堂医方漢方の心を今に伝える隔月誌より抜粋2-1
                             〒520-2153 滋賀県大津市一里山二丁目14-13
                                発行所:ペンギンドウ薬局附属 びわこ漢方研究所
                                 発行人:中川 義雄(昭)

雑     感  

       過日NHKの番組で、中国を代表する一料理「魯菜(ろさい)」(山東料理)を継承している佐藤孟子さんの番組を見た。

      それは正に、薬膳であり、とってつけた今風の薬膳とは全く違っている。彼女は70才代の老婦人で、ご主人と二人で、

      四谷で魯菜料理の店を営んでおられる。そもそも佐藤さんは、山東省で10代の時、皿洗い、雑用から料理の世界に入

      ったとのことである 。厳しい修行だったことは容易に想像がつく。それは当然の事乍ら、化学調味料は使わないし、砂

     糖も一切使わない、甘味は素材から引き出すことを旨とし、どうしてもと言う時は、膠飴(水飴から作ったもの)を使い、

     大棗
桂皮、陳皮、拘杞子、生姜、甘草、木天蓼(もくてんりょう)等の薬草から甘味を引き出すらしい。彼女が何故、正統

     派とも言うべき真の魯菜を継承できたかは、やはり努力の人で、老板(料理長)が見込んだからであろう。寛いだ気分で

     見ていたので、薬草がそれ以上、目に貯まらなかったが、前出の薬草の効能を考えてみた時、それは正に、宇宙的で、

     全人的で、人を慮(おもんばかった)った「持成(もてな)し」の精神が充分に伺える。胃腸の弱い人、腰の悪い人、心臓

     が弱く浮腫(むくみ)み易い人、風邪を引き易い人等々である。番組では現代の新魯菜料理の紹介もしていたが、甘み

     を出す為には
塩の四倍の白砂糖を使いなさいとその料理長は誇らしげ言っていた。前号で若干触れていたが、過重の

     甘味は脾胃(胃腸の働き)を損ない、胃下垂、下痢、出血、免疫能の異常、低下等を引き起こす。特にアトピ−性皮膚炎、
 
     癌、リウ
チを治す為には、腸管を整えることが先決であろう。腸の消化管組織にあるM細胞から取り込まれたある種の

     物質(NBG(イミュト−ル))が、特殊かされたリンパ節(バイエル板)を刺激し、IgAを産生する。更にIgAを産生するリンパ

     球は、他の粘液組織へと移動し、そこでIgAを分泌するのであ
る。これは単なる消化管だけの問題でなく、全身の粘液組

     織の問題(免疫力)という事を物語っている。話は若干それたが、要は免疫力を向上させるためには、胃腸(漢方でいう

     脾胃)を整えることが大切であり、その為には、甘味を過量に摂らないことも免疫力を向上させる一つの方策であるという

     事である。そうすると、新魯菜は、もはや薬膳ではないという事が出来る。今年の五月、連休を利用して、観光を兼ねて北

     京は行った。他の目的は、中国で漢方書を手に入れる事でもあり、お陰で帰りの荷物の重量が増し、ほとほ と困った。漢

     方の専門書のコ−ナ−では、その本の豊富さと価格の安さ、更に英訳本が数多く揃っていたのが驚きであった。日本人

     の著した中国語訳も揃っている。 何冊かピックアップして選んでいた所、現地のガイドさんから片言の日本語で「お父さん

     (私の事)、これ分かるんですか」と聞かれた。「何とか・・・」と答えると、「私、解らない」と言うんです。中国人が中国語の

     漢方の本が読めないなんて事があるんだ・・・。これもまた驚きであった。話は変わりますが、ガイドさんの説明で、皇帝

     のいた所は、黄色の屋根瓦、黄色の垂れ幕等、黄色を使ったという事があった。黄色は地上の王を意味し、一番重要な所

     (物)を意味している。漢方の弁証論治の一方法に五行論があるが、青は春で肝臓を、赤は夏で心臓を、白は秋で肺を、

     黒は冬で腎臓を意味し、黄色は土用で脾胃を意味している。従って、脾胃(黄色)は人体の中で一番重要な所という事に

     なる。これは、いみじくも免疫の話と一致するのである。金の時代に李杲(東垣)が著した「脾胃論」がある。それは、土は

     万物の母であり、脾胃を確かなものにする事が最重要課題で、そこから健康が生まれるという考えであり、医王湯なる処

     方を考え出した。医王湯とは、現代では補中益気湯と名付けられている。「甘」「黄」「脾胃」「王(皇帝)」「土用」等は、同じ

     範疇に入るのである。序(ちなみ)に、胃に関係する話題として、ピロリ菌について書いてみたい。漢方処方の中に紫桂湯

     加茴香牡蛎というのがある。牡蛎 はカキ殻のことであるが、北海道のサロマ湖に注ぐトカロチ川流域には六ヶ所の牧場

     があり、その糞尿処理にホタテ貝を、また瀬戸内海に面する養豚業者から出る糞尿処理にアコヤ貝を利用している実験

     がある。何れも貝殻を敷き詰めた所に汚物と水を共に流すというものであるが、貝を使うと使わないでは、BOD(生物学

     的酸素要求量)は3450mgから17mgに、およそ200分に1に減ったというものである。つまり、大腸菌始めバクテリアが200

     分の1になったという事である。自然の培地と人間の胃袋とでは環境が違うかも知れないが、過去に当店で胃腸症状をこ

     の紫桂湯加茴香牡蛎で治したかたがおられるが、ひょっとしたら、ピロリ菌の除去が出来ていたのかも知れない。      


                                                            C 2002 Yosio Nakagawa

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