国際フォーラム 映像の力――日越両国文化の比較と交流のために――
2003年8月31日・9月1日 於越日人材協力センター(ハノイ貿易大学内)
ドイモイ政策の開始以降、ベトナム研究者にとって最大の変化は史料状況の激変であった。文書館が公開され、外国人研究者も直接一次史料に触れることができるようになった。ここでは、この数年報告者が進めてきた研究の一端を報告するとともに、外国人研究者である我々日本人がベトナム史研究を行う上で、どのような問題があるのかを述べる。
『大越史記全書』のうち、近世以降を記す部分は「大越史記本紀続編」と命名されている。従来最古とされてきた《正和本》の記述は極めて簡略であり、そこから得られる情報も自ずと限られていた。しかし、1988年、新たな版本《NVH本》が発見された。両者の記述には大きな違いがあるが、報告者が検討したところ、その差異には重要な意味があること分かった。ここでは黎朝皇帝についての記述を取り上げる。
両者の検討から、NVH本は当時黎朝の実権を握っていた鄭氏を称揚するだけでなく、鄭氏と黎朝皇帝との一体性を協調する傾向があることが指摘できる。つまり、そのような操作を必要とする状況があったと考えられる。
このような史料に密着した議論を展開する上で、原史料への接近は不可欠である。近年、ベトナム国内で原文を附した史料の公刊が盛んになっており、研究者にとっての環境は大きく改善された。しかし、いまだベトナム語を解せない学部学生が日本で研究を進めるには、依然として困難が残っている。研究書や論文の入手だけでなく、それらへのアクセスを保証する工具書類の整備や専門書を読みこなすためのベトナム語力を育成する場所が不足している。
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