2008.3月の魚

ヌエハゼ Siphonogobius nue

 

 1998年に新属新種として記載された沿岸性のハゼなのですが,採集例が少なく,画像もほとんど見かけないことから,稀な種類なのだと,ずっと思っていました.特に,以前,原記載の産地に行ったときは全くの空振りで,「あそこは環境が変わっていなくなった」ということを後で聞いたために,必要な環境が狭い範囲に限られた稀種という印象を強めていました.

 その後も,東海地方の某所で釣れることがあるというウワサは耳にしていたのですが,狙って取れるものではないだろうと思って,名前どおりの幻の魚と考えていたのですが,最近になって,その場所ではそれほど少ないわけではない(ヌエハゼを採るつもりで行けば,ちゃんと釣れる程度)という話を聞いたので,それならば今度こそヌエの姿を見たいと思って採集に挑戦してみました.

 現地は波があってテトラポッドに近づきにくいことが多いので,可能な限り天候が穏やかで潮が引く時と考えていたのですが,その上で,なんとなく早春が採りやすいんじゃないかという直感と,夜行性ではないかという印象をもとに,チャンスをうかがっていたところ,ついに好機到来! 自分の誕生日だったのですが,他に予定も無く,翌日も休日で,天気も良く,潮も良く,ここで行かずにいつ行くのか,という絶好の日だったので,夜間の干潮にあわせて出かけてみました.

 採集方法は,あえて釣りではない方法で,おそらくこれが最適と予想したもの(何を使ったかはヒミツ)を持ってチャレンジしたところ・・・ついに捕獲成功!

 しかし,ものすごく地味です・・・どうみても単なるドロメみたいだし,口が小さいからヌエで間違いないとは思ったけれど,これは,魚類学者であっても,普通種のドロメだと思って思って見過ごすよなぁ(苦笑)

 ポイントが分かったので,同じ場所でしばし採集していると,すぐに10尾ほど採れたので標本用に確保して終了.少なくとも,そのポイントではかなり高密度で生息しているのではないでしょうか? 実際,他のハゼはそのときは採れなかったし,クサフグの次にたくさん採れたくらいですから・・・
(その時のその場所での採集物は,ヌエハゼ以外はクサフグ・ボラ・ナミノハナ・カサゴのみです)

 他の地域での生息状況はわかりませんが,もしかしたら意外に多くの場所に多数生息しているのかもしれません.ただ,あまりハゼ採りポイントではない環境にいることや,一見して何の特徴も無いドロメっぽい姿から,ハゼマニアの目を逃れているだけなのでしょうか? 身近な場所に,他の良く知られたハゼたちにまぎれて気づかれずにいるところなど,妖怪っぽくてとても良いですね.分布や生態がとても気になります.



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