ヨシノボリ属2.2 日本本土産(トウヨシノボリ)

Genus Rhinogobius  Part 2.2  Japanese mainland species (R. sp. OR)

 トウヨシノボリの生態・色斑の変異は豊富とされており,橙色型・宍道湖型・偽橙色型・縞鰭型などと区別することもある.湖沼やため池に陸封されていることも多い.



 
トウヨシノボリ (橙色型)
(2002.6.29採集、7.1撮影)

 写真すべて滋賀県の同一河川産。上が成熟した雄、下二つは雌。

 琵琶湖およびその流入河川産のトウヨシノボリは、他地域のものとはやや異なる独特の色斑をしており、「琵琶湖のトウヨシ」の意味で「琵琶トウ」と呼ぶ人もいる。

 雄の第一背鰭は著しく伸張し、雌雄とも頬部に細かな赤点が見られることも多い。
 飼育下での性質は荒く、攻撃的。

 琵琶湖産アユの放流に伴ってか、全国に分布するようになっているが、移植先の在来トウヨシや、同時に運ばれる可能性のあるビワヨシとの交雑集団となっている可能性もあり、本来の自然の姿を著しく乱すことが、非常に危惧される。

トウヨシノボリ (橙色型)

 写真は奥多摩湖産.

 奥多摩湖は,アユなどの放流に伴う国内移入魚の宝庫となっており,このヨシノボリも頬部の赤色斑などから琵琶湖由来と思われる.未発表データではあるが,mtDNAの分析結果も琵琶湖由来であることを示している.

トウヨシノボリ (偽橙色型)
(2001.4.15撮影)

 写真は東京都産(上:オス,下メス).

 かつて房総型とも呼ばれていた.関東地方のトウヨシノボリは流れの緩やかな泥底を好むとされる.この写真の地域集団は第一背鰭の棘が伸張しない.

 同水系の最上流部にある奥多摩湖に琵琶湖産トウヨシノボリが侵入し,大増殖しているため,下流域に生息する偽橙色型への影響が強く懸念される.

トウヨシノボリ (偽橙色型?)
(2003.5.16撮影)

 写真は千葉県印西市産(上:オス,下メス).

 これらは,偽橙色の分布する関東産だが,オスの第一背鰭が伸張する.オスにの尾鰭には点列があり,体側の赤点が琵琶湖産トウヨシよりも目立つ.メスはこれといった特徴がない.

トウヨシノボリ (偽橙色型)
(2003.12.4撮影)

 写真は千葉県流山市産(上:オス,下メス).

 上の印西産とは,大きな水系で言えば同じ水系だが,やや離れた場所のもの.泥底の用水路に棲息していた.ずんぐりした体型の典型的な偽橙色型.

トウヨシノボリ (偽橙色型?)
(2003.11.14撮影)

 写真は富山県産.

 魚類検索に従えば,これは偽橙色型か?

 同じ産地で,第一背びれは伸びず,ずんぐりした体型の個体(上の東京産偽橙色型と似ている)から,やや細身で第一背鰭の先が少し尖る個体まで混在していた.

 富山県のウキゴリ属の一種と同じ場所で採集された.

トウヨシノボリ縞鰭型
(撮影/辻本始氏)

 尾鰭に点列の縞模様があり,同じ河川に生息する「トウヨシノボリ」と棲み場所や色斑で区別できるために,新しい型として報告された(鈴木,1996).写真は上がオス,下がメス.
 また,縞鰭型は,雄の尾鰭下部(付け根ではない)に燈赤色斑が出るため,トウヨシノボリの他の型やカワヨシノボリと区別するためのポイントになるかもしれない.

 特徴として,第一背鰭が雄でも伸びないことや,尾鰭に点列があるのだが,「ビワヨシノボリ(仮称)」や「ウシヨシノボリ(仮称)」も同じ特徴を持つため,明仁ほか(2000)ではそれらも縞鰭型に含めている.

 また,瀬戸内地方に分布するようだが,人為的に運ばれたトウヨシと置き換わりつつあることが心配されている(明仁ほか,2000; 徳島県版RDB http://ourtokushima.net/kankyo/red.php).

 国土交通省の「河川水辺の国勢調査」では,独立種としてRhinogobius sp. SFの記号を独自に用いている.(SF = striped finのこと?)



引用文献

←前へ / 次へ→


ハゼ図鑑トップに戻る

向井のホームページへ