誤治

 午前10時頃、家内のいとこから、「実は息子のことですが、明後日高校入試を控えているのに、顔が少し赤く腫れあがり、目が半分ほどにふさがって、眼瞼を中心として湿疹ができて、困っている」という電話がありました。

 詳しく尋ねてみますと、「2日前、風邪気味であったので、夜、置き薬を飲んで寝たが、それでも治ってしまわなかったので、昨日も一日薬を飲んで、今朝起きてみると顔が赤くはれあがっていた」というのです。その母親は、薬の副作用やろかとあれこれ心配しています。

 熱を尋ねると、熱はまだ下がっておらず、食欲も普通ですし、のどの渇きもみられません。そこですぐ薬を取りに来るように告げて、1時間置きに2つの薬方を一緒に飲むようにといって
桂枝湯(けいしとう)麻黄湯(まおうとう)のエキス(桂枝麻黄各半湯の意)を6包ずつ渡しました。

 翌日目が覚めたときには完全に赤味も腫れも湿疹も引いて、熱も下がり、無事高校入試を受けることができました。

 50歳代の男性、この方は息子さんが喘息で、奥さんは慢性腎炎で私の薬局と縁の深い大村の婦人のご主人です。

 ここ2年ばかり、風邪を引くと顔が少し赤く腫れ上がり、その上に赤い湿疹様のものができ、困っているというのです。病院では、ストロフルスといわれ、新薬と一緒に、漢方薬の十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)を貰って飲んでいるが、効がないといいます。

 その時のどが渇きますかとたずねますと、少し渇くという答えが返ってきました。そこで、この方には
桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)を差し上げました。これを2ヶ月ほど飲んで、風邪を引いても赤く腫れ上がるようなことはなくなりました。

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 この二人は風邪を引いて「適度な発汗」を誤ったために風邪がまだ表に滞って、悪さをしていたものですが、桂麻三兄弟(桂枝二麻黄一湯、桂枝麻黄各半湯、桂枝二越婢一湯)は風邪がこじれてまだ体表部にとどまっているものに実によく効きます。
 また、虚弱な子供などが風邪を引いて、新薬の風邪薬を飲ませると、ほんの少し一時的に熱は下がるが二三時間すると反って前よりも熱が跳ね上がるという状態が続き、なかなか治ってしまわないものがあります。このような時には柴胡桂枝乾姜湯や、真武湯が奏効する場合が多いですので、一応覚えておくと役に立ちます。
 風邪は万病のもとと言われますが、風邪そのものにも、
のどの痛くなる風邪や、鼻血のでる風邪腹の痛くなる風邪下痢する風邪吐き気のする風邪ぐったりして虚脱感を伴う風邪など色々あります。
 一般に漢方薬は慢性病の薬だと考えられておりますが、
本来『傷寒論』は、風邪などのような急性発熱病の治術書であり、それぞれの病態に応じた優れた薬方があります。便利なエキス剤もあり、普通の風邪なら三日もあれば気持ちよく治ってしまいますし、特別な場合を除き一週間もあればたいていのものは治ってしまいます。新薬の値段もかなり高くなってきていますので、風邪を引いたら近くの漢方薬局にいって調合してもらってみてはどうでしょう。自然療法のすばらしさを実感してみてください。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。