加減方?合方?

 もう10年以上も前のことです。
ある日、知り合いの鍼灸師の方がひょっこりと訪ねて見え、先生、家内の漢方薬をお願いしたいのですがといいます。

 どうしたのですかとお尋ねしますと、実は3ヶ月ほど前カゼを引いていたのですが、その後、お腹から何か突き上げるような感じがしたり時々急に動悸がしたりして、毎日2回は外出しなければ気がすまなかった家内が、塞ぎこんで部屋から出ようともしません。

 それで、鍼灸学校時代の友人の薬剤師に、漢方処方を送ってもらっていたのですが、はかばかしくないので相談にきましたというのです。

 奥様をお連れしてみてくださいと云ったところ、翌日早速連れてこられました。やや肥満はしていますがしまりが無く顔色も優れません。

 そこで、柴胡加竜骨牡蛎湯
去大黄加白朮甘草として二週間分を差し上げてみました。

 次に薬を取りにこられたとき「おかげさまで、だいぶ調子がよいようです。便秘傾向がありますので大黄を去らないでお願いします」といいます。この鍼灸師の方は漢方の方もかなり勉強しておられ、そのためそういったのでしょうが、どうも大黄が向くようには思えません。

 そこで柴胡加竜骨牡蛎湯去大黄加白朮甘草に大黄0.5gを別包として数包一緒に差し上げて見ました。

 それから二、三日して鍼灸師さんより、「やはり駄目でした、お腹がひどく痛んで家内から叱られました。大黄を加えないで飲んでいます」と電話がありました。

 その薬方もなくなり、それから更に二週間分を服用し、「やっと朝から晩まで外を飛び回るようになりました」ということでお礼に見えられました。

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 柴胡加竜骨牡蛎湯去大黄(柴胡、半夏、茯苓、桂枝、黄ごん、大棗、生姜、人参、竜骨、牡蛎)に白朮、甘草を加味しましたのは、これらを加えることによって、新たに
桂枝甘草湯(桂枝、甘草)、
苓桂朮甘湯(桂枝、甘草、白朮、茯苓)、
苓桂甘棗湯(桂枝、甘草、大棗、茯苓)、
茯苓甘草湯(桂枝、甘草、茯苓、生姜)、
の薬方の方意を加え、上に迫る気と水を考えてのことです。

 要するにこの加減方はたった二つの薬味を加えただけですが、方意的には、柴胡加竜骨牡蛎湯去大黄に桂枝甘草湯、苓桂朮甘湯、苓桂甘棗湯、茯苓甘草湯を合方
したことになる訳です。
詳しくは「漢方の特質」の「無限に広がる薬方」を参照ください。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。