継続は力なり

 もう25年以上も前の事です。
 30歳代の女性が相談にみえたのですが、この婦人は、数カ月前、お産をし、
産後の肥立ちが悪く痩せて、貧血して顔色は蒼白で、倦怠感がはなはだしく、すこしでも家事をしようものなら、起きていられなくなり、そのほか、腰が痛み頭は重く冷え性小便は遠いなどの症状も見られます。いかにも虚弱な体質のようです。

 私はこれに対し、
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を差し上げました。ところが意に反して病状は余り改善しません。3カ月しても、すこしはよいようなのですが、とくに目立った効果は見られません。
6カ月ほどすると婦人はしびれを切らし、もうやめましようかと言い出しました。それでもなお、私にはこの薬方できっと治るという、なぜか確信のようなものがありました。

 体質の弱い方は、薬の効果もなかなか現れにくい時があります。そこで、もうすこしがまんして続けるように勧めました。その婦人は効果があまり見られないにもかかわらず、私の言葉を容れて辛抱強く服用してくれました。

 すると、それまでほとんど顕著な効果がみられなかったにもかかわらず、
8カ月目に入り、急に体の調子がよくなり、1カ月あまりで、諸症状は拭うがごとくとれてしまい、家事をしても疲れなくなり、私はもとより、婦人の喜びようは一通りではありませんでした。

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 一般に1ヵ月しても効果があまりみられないような場合、私は薬方を変えるのを常としています。しかし、このときは、この薬方でかならず治るという直感めいたものがありました。私は経験からきた自分の直感を大事にしています。8ヵ月もかかったのは、おそらく授乳が影響していたためでしょう。授乳をしている婦人では授乳期がおわって急速に薬が効きはじめることがあります。
それにしても、この婦人の、私に対する
信頼と、辛抱強さがなかったなら、いかに漢方 がすぐれていても、治ることはできなかったでしょう、信頼と辛抱強さに乾杯。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。