起生転血(不妊症)

 前例(急がば廻れ)の娘さん、2年ほどで激しかったバセドー氏病の症状も改善し、精神的にも余裕が出てきたためか、結婚して2年もなるのに妊娠しないので、病院にいったところ排卵誘発剤の服用をすすめられたが、あまり気が進まないので、漢方でなんとかして欲しいという遠隔地からの電話相談です。

 この頃は体調はすこぶる良好で、軽い生理痛がある程度で、ほかに取り上げるほどの問題もありませんと。そこで、
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を送って差し上げました。

 2ヶ月ほどすると、おかげさまでどうも妊娠したようですという電話、そこで薬方を転じて、当帰芍薬散をすぐに送って差し上げました。やがて時期が満ち、めでたく珠のような女児を出産、肌がとてもきれいな児でしたと御礼の電話がありました。

 ところが、それから3年ほどして、電話がかかってきて、また子どもが欲しいのでなんとかして欲しいというのです。実はさきの一児を出産後、1年ほどして妊娠したのですが、流産してしまい、その後妊娠の徴候がまったくありませんと。

 体調をたずねてみますと、最近ひどく手足が冷え、鼻炎がひどく、鼻水が流れ、難儀しており、また、その上、ときどき、みずおちが ひどく痛むことがあるというのです。生理のほうはあまり著変がなく、少し遅れ勝ちで、生理時やや腰が重く、下腹がはる程度でした。

 そこで今度は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
乾姜を別包として送って差し上げました。これを2ヶ月ほど飲むとまためでたく妊娠、そこで、また当帰芍薬散と乾姜に転方し、今年(平成13年)の10月初旬の佳日、めでたく第二子を出産しました。

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 同じ人に発した不妊症でもその時の健康状態により血の状態が異なる症例です。
最初の時は少陽病実証の血(おけつ:生理活性を失った悪い血)証で、二度目は表裏(体表部と体内部)が寒えているために血流が阻害された厥陰病の血証でした。
変に応じて薬方を変へ、二度にわたりこした例をあげました。鼻炎の方も冷えの改善と共にすこぶる良好です。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。