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もうだいぶ昔のことです。朝起きて調剤室に座って落ち着いたころ、なんとなく胸の中がこわばったような、引きつったような違和感を感じました。その違和感は食道に沿うように感じられます。
一体どうしたことだろうと考えて見るのですが、なかなか原因が思い浮かびません。胸中のことでもあるし、なんとなく不安を覚えながら、あれこれ思いをめぐらせていたのですが、午後になってやっと二日前の出来事に思い当たりました。
その日の昼食に、家内と2人で出前のチャンポンを食べていたとき、急に家内が話し掛けてきたので、それについ返事をしたところ、口に入れたばかりの熱い麺を一気に飲み込んでしまったのです。そのときの胸の苦しかったことといったらありませんでした。あわてて水を飲んでおいたのですが、その後すっかり忘れていました。
そういう訳で、原因が分かったものですから一安心、さて何を飲むべきかと考えをめぐらしてみますと、この食道の炎症によるこわばったような、ひきつれるような、なんともいえない感じは、心中おうのう、心中結痛の梔子し湯のようです。そこでさっそく煎じて飲んでみますと、その喉ごしのよさから適方であることが実感できました。たった一日で二剤を服用して簡単に治ってしまいました。
梔子(クチナシの実)は食道や胃の炎症に実によく効きます。大塚先生創製の甘草、梔子、黄連のわずか三味からなる、甘連梔子湯も胃潰瘍に実によく応じます。梔子は胸中の欝熱を去るばかりでなく、炎症や潰瘍の出血にも優れた効を発揮します。梔子には不思議な効用があるようで、唾石を去る効能もさることながら、食道癌が治ったという症例もみられます。
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