麻痺と過敏

  ある日家内の母親がやってきて、末娘が産後浮腫をきたし、歩くのにも不自由していて、ここ一月余り病院通いをしているが、余りはかばかしくないと家内に愚痴をこぼしています。すぐによこすようにいっておいたところ、翌日さっそくやってきました。

 浮腫のほかに、動悸や息切れ頭痛足の裏のほてり疲労倦怠感便秘傾向などがあります。家内の妹なので腹をみせてもらうと、臍部で動悸が亢進していて、脈は結滞していて浮弱でやや数(さく:通常より早く打つ脈)でした。通常、浮腫に対しては白朮、茯苓の入った薬方を考えるところですが、私はお産による虚労(疲労により気血の運行がさまたげられて起こる病気)とみて、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)を服用させました。するとわずか1ヶ月で浮腫は消退してしまいました。

 それから一週間ほどして、またやってきて、今度は左上腕が服が触れるだけでヒリヒリして痛いといいます。私はしばらく考えて、血痺(貧血した人が、皮膚にしまりがないため、かぜなどの外感に触発されて皮膚の知覚麻痺を生じる病)の黄耆桂枝五物湯(おうぎけいしごもつとう)を服用させました。するとまた、わずか二週間で知覚過敏は治ってしまいましたが、念のため、あと二週間服用させ廃薬となりました。

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 東洞も不眠の酸棗仁湯を用いて嗜眠を治していますし、大塚先生も皮膚の痒みを血痺の黄耆桂枝五物湯で治しています。私は知覚過敏に用いてみました。不眠と嗜眠痒みと知覚麻痺知覚過敏と知覚麻痺、漢方の妙をつくづく実感したしだいです。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。