洋食と和食

 8年ほど前のことです。
 相談者は、大村から息子さん(園児)の喘息の漢方薬を取りに来ていた40才代の婦人ですが、「最近、息子は全く喘息の発作を起こさなくなり、食欲も旺盛になり、肥えてきて、非常に元気になりました。お陰で今年は運動会にも始めて参加できましたし、おばあちゃんも大変喜んでくれました。もう少し続けさせようとおもいますが、自分の病気も治して欲しい」というのです。

 「この喘息の子の妊娠中、軽い妊娠腎にかかり、それが慢性化して慢性腎炎となり現在に至っている。これまでは、大した障害もなく、過ごしていたが、数カ月前から腰が痛み、5分以上も台所仕事をしようものならとてもつらくてどうしようもない。病院にかかり漢方治療をうけてはいるがあまりはかばかしくない」といわれるので、病院でもらっている漢方薬をみせていただくと、津村の17番で、五苓散(ごれいさん)でした。

 ところがこの婦人は体格は普通で、尿利の減少はありますが、顔色はあまりすぐれず、足は冷え、少しむくみ気味で、汗はそれほどかくようではないし、口渇もありません。五苓散証(五苓散の効く体質)ではないようです。そこで、この婦人には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を差し上げました。これを2カ月ほど飲むと腰の痛みもよくなり、台所仕事もできるようになりました。

 また、諌早からの40才代の婦人ですが、4年前、出産してから、どうも体調がすぐれず、1年以上、病院で漢方治療を受けているが、あまりはかばかしくないのでと相談にみえました。

 貰っている薬方は桂枝茯苓丸加味逍遥散です。産後のこと故、血剤(血に効く薬)をあげているのでしょうが、婦人の訴えは、なんとなくさむけがして、ときどき微熱が出、体が疲れやすく、夏は特にその傾向が強く、少し家事で無理をしようものなら、寝込んでしまうというのです。その上、食欲はあまりなくそれに便秘があります。

 そこで私は、これを寒瘧の類症とみて柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を差し上げました。4週間でさむけと、微熱がとれてしまいましので、次に清暑益気湯(せいしょえっきとう)にかえたのですが、だんだん疲れが減じ、食欲が増し、便通もついてきました。薬を取りに来るご主人も大分丈夫になりましたと喜んでくれ、さらに3ヶ月ほど続服して、休薬となりました。

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 西洋料理を一生懸命修行して、西洋料理の一流のコックになっても、やはり和食を作るとなると、そう簡単にはいかないでしょう。それと同様、医師法が制定されて以来、西洋医学一辺倒となり、日本の伝統的漢方医学は、医師の資格と無関係になり、西洋医学を修めてなった一般の医師にとっては、漢方を使いこなすことはそう簡単にはいかないのです。 
  私も漢方の勉強を始めたのは大学を卒業してからで、30年余りになりますが、それでもまだ頂上が見えないどころか、自分の立っている場所もわからないくらいに奥が深いのです。漢方は職人芸的なところがあり、なかなか一朝一夕にはなり難く、長年の習練と経験に培われた観の目
が必要です。西洋医学だけだった国々でも、自然療法の研究がさかんな昨今、そろそろ日本でも、各大学の医学部や薬学部に、専門の漢方科ができてもよいのではないでしょうか。漢方医、漢方薬剤師なるものが存在してもよいとおもうのです。漢方が正しく発展し、病気で苦しんでいる人たちのために少しでも多く役立つためには、西洋医薬学より独立した医薬学として法的にも、社会的にも早急に認知される必要があると考えます。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。