15、 『ピーチな体験』
作・斉藤アキヒロ
上演時間25分
【あらすじ】
いつものように車で家路につくサラリーマン。
峠を越えると、助手席と後部座席に3人の幽霊が座っている。
幽霊は座っている。
ただそれだけ。
降りることはできない。
【ストーリー】
疲れた男は、夕靄の立ちこめる正丸峠を帰っていく。
スピードを落としてトンネルを抜ける。
傍らを見ると。
隣に青ざめた男が口をあんぐりとあけて、
濁った目を天井に向けて、
座っていた。
驚いて急停車する。
目を開けると、そこにはまだ男がいた。
叫ぶ。
背後にも気配を感じ、振り返ると
そこには女性と少女の青白い顔が。
パニックに陥る主人公。
しかし。
いつまでたっても、幽霊たちは襲ってこない。
突然気づいて、車から降りようとするがドアはロックされている。
ただ時間だけが過ぎていく。
何か自分に恨みがあるのか尋ねる。
返事はない。
誰かに伝えたいメッセージがあるのか尋ねる。
返事はない。
いたずらならもうびっくりしたから帰ってくれ!
答えない。
この峠にいる霊かと考え、
車を発進させる。
どこまで行っても霊は去らない。
対向車に助けを求めるが、誰も気づかないで通り過ぎる。
ツーリング中のハーレーに並ばれるが、
外人で話が通じない。
ガソリンスタンドを発見。
店員にうち明けるが、店員はマニュアルどおりに愛想だけよく、
満タンにだけして、送り出されてしまう。
幽霊たちは変わらない。
相変わらずガボッと口を開け、虚空をどんよりとみつめるだけ。
と思っていたら泣いた。
と思っていたら笑っていた。
また虚空を見つめている。
ついに街中に入ってしまう。
交番を思い出し、警官に訴える。
横のシートを指さすと、幽霊たちはぐったりしている。
まるで死体のように。
逮捕しようとする警官を振りきって走り出す車。
家についてしまう。
車をガレ−ジに突っ込んで、ガラスを妻に叩き割ってもらって脱出し、
そのあとセメントで埋めてしまおう。
あるいは、前の空き地でガソリンぶっかけて燃やしてしまおう。
そう考えて、妻を呼ぶと、
妻も車で逃げようとして叫んでいた。
門の中では、ぎっしりと幽霊たちが口を開けて立っていた。
【解説】
えー、コメディです。
ディスコミュニケーションがテーマなわけですが。
文字通りトワイライトゾーンみたいな話ですね。尺も25分だし。
これが実質的な僕の処女作になります。
「3匹は子ネコ」と一緒で内容を忘れてしまったもんで、あらすじを書くためにビデ
オを見直しました。
いや俺が細い!痩せていた。今の半分ぐらいしかない。髪も天パーじゃない。
(解説とは関係ないんですけどね。)
そしてうまい!芝居が!思わず笑っちゃう!ただならぬ才能を感じさせます。
笑っちゃうと言えば幽霊たちの演技。
牟田オイディプス王子の真骨頂を見た気がします。
後部座席にはベアトリスとカテリーナ。
舞台装置は平台を重ねて作った坂があるだけ。
自動車は、ボール紙や茶紙を丸めたり切り張りしたりしてオープンカーを作り、
上からペンキでスプレーしました。
バイクもガソリンスタンドもボール紙製。大ホールなのでみんな巨大。
初めはギアを握る感じで僕が左手だけで支え、(ハリボテの車の中に、十字の支柱が
入っているのです)
あとは、乗り込んできた幽霊たちに支柱を握ってもらってます。
そのまま客席の通路を練り歩いたり、
ドライアイスをたきまくったり、やりたい放題でした。
にも関わらず、下ネタがいつもに比べて少ないのは、
結婚したばかりで、家内の両親が見に来ることがわかっていたからです。
結局化けの皮はその後の芝居ではがれるんですが。
幽霊のエキストラをやっていただいた方に病気やトラブル多発。
以後ウチの劇団ではお守りがかかせません。
城門のわきに塩が盛ってあるのをお気づきの方、いらっしゃいますか?
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