verry berry Merry-go-round
---番外編 : フロイトいらず。
その日、朝からの様子は可笑しかった。
目が合うとすぐに逸らすし、かと言えば熱っぽい視線を送ってくる。
今も仕事が一段楽したので、執務室のソファーに寝転んで仮眠していただけなのに。
「……?」
頬を撫でる柔らかい感触に、ふっと目を覚ますと傍らにはが微笑っていた。
「あ…。なんだか気持ち良さそうだったので、つい…」
頬を紅くして引っ込めようとした手を捕えて口付けた。
「あ――」
が小さい声を漏らした。
それでも、いつもとは違い、ロイの好きなようにさせている。
「今日は、逃げないんだな」
くすり、と笑ってから今度はうやうやしく甲にキスを落とす。
視線はもう捕えた。
「………君に触れても?」
「―――ッ」
一瞬、息を飲んだように言葉を詰まらせただったが、暫くしてロイの首に腕を回した。
――それは肯定。
2人は暫く抱き締め合っていたが、不意にロイの抱き締める腕に力が込められる。
「大佐…?」
驚いて顔を上げたの唇を一瞬にして奪う。
深く深く何度も角度を変えながら口内を侵していく。
開いた隙間から侵入したロイは戸惑う舌を強引に絡ませて蹂躙する。
その間にも、素早く身体を反転させて自分より一回りも小さな身体に覆い被さった。
「っぁ・・・・」
苦しそうなの息を気付かって一度開放してやる。
すると2人を繋ぐかのような銀色の糸が後に残って輝いた。
肩を上下させ、必死に息を整えるを見下ろし、彼女がその潤んだ瞳を開くのを
じっと、待った。
「・・・・・・」
名前を呼ぶとの身体がピクリと反応する。
そしてがゆっくりと瞳を開いてロイを下から見つめた。
その瞳はとろんとしていると同時に涙が光っていた。目の際を舌でなぞると、恥ずかしそうに俯いてロイの胸に手を当てる。
「すごく、ドキドキしてますね…」
「……ああ」
「あの、大佐…その……優しく――」
「―――大丈夫だ。解っている」
「はっ・・・あ、ん・・・・やぁっ」
が鼻にかかった声を上げる。いつもとは違う、女の声。
ロイはその声に煽られて愛撫を続けた。
の白い肌に舌を這わせ、処々に赤い痕を残していく。
首筋にも、鎖骨にも柔らかい胸にも。
「ぁ・・・んんっ!・・・・・あっ」
胸の蕾を口に含むとから一層高い声があがった。
舌で転がす度にの身体がびくんと震える。
それがひどく愛しかった。
「」
熱っぽい瞳で囁きながらロイの手はの下肢に伸びる。
そしてその中心の奥へと指が滑り込んだ。
「――っあぁぁっん・・・んぅ・・」
「綺麗だな・・・」
指を優しく、しかし激しく動かしながらロイが言うと、は羞恥のあまり横を向いてしまった。
「……?どうした?」
「だっ・・て・・・綺、麗なんっかじゃ・・・ッ」
「いや――」
綺麗だ
「大佐……」
交差した瞳を媒介にして、また深く口付けを交わす。
ロイの想いを乗せた熱い舌にも必死に応えようとする、その姿、その媚態、熱い吐息に、頭の芯がくらくらした。
***
「――お?何やってんだよ、」
「あ、ハボック。ちょっとこの書類を大佐に届けに来たんだけど返事がないのよ」
「そりゃおかしいな。俺もこの時間ならいいって言われて来たんだぜ?――どれ」
扉を少し大きめにノックするも――
反応なし。
「いないのかな?勝手に入るのも不味いし――出直すよ」
そう踵を返そうとした時に、2人の耳にくぐもった声が聞こえた。
「ん?誰かいるみたいだな」
「う、うん、なんか声がしたわね」
「んじゃ、ちょっくら…」
失礼しまーす、と、ハボックが扉を開ける。最初に飛び込んできたのは無人のデスク。
次にうめき声と、ソファーの上の人影。
「やっぱりな、どーせそうだろうと思った」
「あはは、さっきの寝言だったんだ。それにしても、なんか幸せそうな顔して寝てるよね――」
くすりと笑いながら、そう言いかけたの言葉は語尾まで到達せずにとまる。
「――う…、……君はなかなかに大胆、だな」
「は?」
もハボックも同時に大佐の寝顔を覗き込んだ。
「だ…だめだ、そんなに急かしては…!くっ…、私は、君が感じてくれた方が――」
「……」
「………」
「………………」
「……………………………ど――」
「どんな夢見てるんですか!?スケベ変態セクハラ上司ーーー!!」
バサバサバサ――。
東方司令部全域を揺るがすだろう大声と、降らされた書類の雨にロイはびくっと飛び起きた。
「――む・・・?おや、。君はいつの間に服を――」
頭を振りながら呟いたそれは、あまりにも失言だった。
顔を真っ赤にしつつ、尚も叫ぼうとしたの方をハボックがぽん、と叩いた。
「まー、ちょっと待て」
とりあえずハボックは、深い溜息と共に自分の耳を塞ぐ。
さあ、これで――余波回避の態勢は万全だ。
「――よし、いいぞ」
合図を送ると、今度こそは一気に吐き出そうとしたけれど、一度ずらされたタイミングを立て直すのは難しかった。
だから、出てきた言葉は一つだけ。
「――大ッッッッッ嫌い!!」
その書類だけ、お願いしますね!
言い捨てて、早足で走り去ったの背中は勢いよく閉められた扉によって、すぐに見えなくなった。
「……ハボック」
「……なんすか」
「つまりは、そういうことなのか」
あまりのショックに固りつつも、状況を把握してきたロイに、ハボックは嘆息交じりに呟いた。
「あー…その。大佐もソートー溜まってるんすね」
「うるさい――!」
怒鳴りつつ、額に手を当てて、これからどうフォローするか頭を悩ませるのは
ロイ=マスタング、東方司令部大佐(29歳・独身)その人。
焔の錬金術師でもあり、異例の出世頭でもあり、今まで女性に不自由したことのない彼の――
明日はどっちだ?
羽柴サマへ
2004/08/12