港町。ストーク。
旅の騎士、シン・マーベリックこと、シンは、人間になりたいと
いう願いをもつ、人魚のムーンティア・エクセリオンこと、ティア
と旅を続けていた。
人魚。上半身が人間で、下半身が魚という種族で、海に住む
ことに適正のある種族である。
特に、人魚の女性はマーメイドと呼ばれ、美しく神秘的なイ
メージが、人間の社会の伝承や伝説に付きまとっている。
シンと共に旅をするティアもその例外ではなく、月のような長
い金髪は神秘的で、かわいらしい容姿は、すれ違う男性を振り
向かせずにはいられなかった。
人魚というからには、とうぜん、ティアの下半身は魚のそれで
あるはずだが、人魚は、陸地をあるくとき、その身体を陸地に
適正を持たせる魔法を帯びた返信する能力を持っている。
だが、多くの人魚はわざわざ海より狭い陸に好んであがるこ
とはめったにない。
ただ、ティアの陸地への好奇心がもっと陸地を探求したい、な
によりも、人間になって、隣の騎士とずっと過ごしたいという気
持ちが勝っていた。
一方、シンは、そんなティアの気持ちを察することなく、ティア
が人間になりたいという願いがあるのだからと、一緒にティア
を人間にさせる方法を探索する旅にでている。
そんな中、伝説の魔法使いが、種族転換の魔法の薬を調合
することができるという噂をききつけた、この港町、ストークにく
ることになった。
シンとティアは、船を下りて、宿を探す。
「ねぇ、シン。ここなんか良いんじゃない?」
長い金髪をなびかせてムーンティア・エクセリオンこと、ティア
は、白い雌鹿の絵が描かれている宿屋の看板を指して言う。
「そうだね、それなりにこぎれいだし、ちょっと落ちつくにはいい
感じだよね」
シンはティアの言葉を聞くと、宿屋の値踏みをする。
シンは久々の都市であるだけに、路銀を稼ぐにはちょうど良
いと判断した。シンたちは、ストークににしばらく滞在すること
は決定済みである。
「ストークか、懐かしいな」
「懐かしいって、ここに来たことがあるの? シン?」
「あ・・・いや、そんなことより、早く部屋を取ろうよ」
話題をはぐらかすシン。ティアは、そのような態度をとるときの
シンが隠し事をしていると言うことを見抜く。
とりあえず、気を取り直し、ティアとシンは白き雌鹿亭のドアを
開いた。
「いらっしゃい! おや? 見ない顔だね。長期滞在だったら安
くしとくよ」
愛想良く笑う宿屋の親父は、なかなかどうしてたいした洞察
力の持ち主だ。旅人と見て、すかさず商談にはいる。それもシ
ンを見て、いきなり切り札を切ってくる当たりが抜け目無い。
「ああ、1カ月位だ」愛想のいい笑みを浮かべて答えるシン。
「よっしゃ、前払いは出来そうもないだろうから、支払いはいつ
でも良いよ。ただし、面倒なことは願い下げだ」
「ぷっ」
宿屋の親父の最後の条件にティアは、思わず噴出してしま
う。
シンにその気がなくとも、困った人を見れば頬って置けない
性格が災いしていろいろな面倒ごとに巻き込まれることを思い
出してしまったのだ。
シンは、そんなティアに反論しようと何か言おうとしたとき、客
席からドンと机を叩く音がする。
「おい、マイク! 酒が切れたよもってきな!」
シンと酒場の親父の商談は、酔った女性の叫び声で中断され
た。その女性は歳の頃は30前半で、だぶだぶの服を着ており、
金色の髪は朝に起きたばかりの髪に軽く手櫛をいれた程度で、
容姿の方は前髪に隠れ、ハッキリとは見えないが、やたら赤い
口紅が印象深い。
一見だらしなさそうに見えるのだが、大胆に開かれた胸元に
は、ふくよかな乳房を連想させるほどの谷間が見えた。
彼女は、美しいという言葉には似合わないが、彼女のだらし
なさは、真赤な唇とふくよかな乳房を、よりいっそう淫らに感じ
させた。
「ああ! わるいなジョアンナ! 今日のツケはここまでだ。だ
からさっさと仕事に行ってしまいな」と宿屋の親父はたちの悪い
客を追い払うかのように怒鳴る。
ティアには宿屋の親父の怒鳴り声の中には酔った女性への
思いやりが感じられた。シンの方は商談が中断されて、度惑っ
ている。
「フン、幼なじみのよしみで来てやったけど、こんな安酒しかな
いボロ酒場に来るんじゃなかったよ」
ジョアンナと呼ばれた女性はヨロヨロと立ち上がり、机をたた
きつけて嫌味を大声で叫ぶと、不意にシンが視界に入ったらし
い。千鳥足でシンに歩み寄る。
「いい男だねぇ、あんた好みだよ。こんど出会えたら商売抜きで
寝て上げるわ」
ジョアンナはシンに囁く、そして前髪をかき上げ、妖艶な色目
使いでシンを値踏みすると、彼の頬に軽くキスをした。
「え?」
頬に真っ赤なキスマークを残され、ドギマギするシン。
「シ、シンー!」
ティアは、この状況では顔を真赤にしてシンに叫ぶほか抗議
の術はなかった。
「あらあら、そっちのお譲ちゃんには刺激が強すぎたようね」
溜息混じりにジョアンナはそう呟くと気怠げに別れの挨拶をし
てから白き雌鹿亭を出ていった。
そんなシンとティアを見る酒場の親父は2人のにワインとミル
クを出した。
「少なくともここ1ヶ月は退屈することはなさそうだからな、これ
は挨拶がわりだ。それとこれから、今の幼馴染の無礼のお詫
びに、晩飯をおごってやるからまってな。
その間にちょっと上の部屋を片付けさせておくよ。おい、パッ
セル! お前明日休むんだから今日は倍は働けよ!」
シンとティアは親父の言葉に甘えてカウンターに落ちつくこと
にした。
「ねぇ、シン。さっきの女の人のことだけど・・・もしかして、知り
合い?」
「し、知らない人だよ」
「どうかなぁ。さっき、懐かしいとか言ってたじゃない?」
「・・・それは、昔、子供の頃ここに来たことがあるだけだよ」
「ふ〜ん、じゃぁ、そのとき、可愛い女の子とであったとか?」
とティアの牽制。
「そんなことないさ。ティア。
それに、昔の話だよ。なんで、ティアは、いつも俺の過去のこ
とを詮索するような話をするんだい?」
「え? それは・・・いーじゃない、そんなの。
僕は、知りたいことをシンに聞いているだけだもん」
2人の会話を聞いていると、仲がいいほど喧嘩するとは良く
言ったものだ。と酒場の親父は思う。
確かに、酒場の親父の言うとおり、高みの見物だけなら、この
2人を見ていると退屈する暇はないように思えた。
呟き尾形 2005年3月13日 アップ
呟き尾形 2005年3月20日 修正
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