ホーム > 目次 > 小説 > 4枚の絵画

4枚の絵画 朝の目覚め 6

 

 シャウティー・ラウケマップは、今、自分がここにいる経緯を話し
終えた。
「じゃぁ、パッセル。それがあの子の名前なんだ」
 ムーンティア・エクセリオンは、納得したという口調でうなづきな
がらそう言った。
 しかし、ティアは、ふと少年が、シャウティーに言った言葉を思
い出した。
 ”あ、君はシャウティー・・・・もうわかちゃったの?”
 これは、パッセルがシャウティーを知っていたはずだが、シャウ
ティーの話を聞く限りではパッセルとシャウティーの面識は感じら
れなかった。
「それって、おかしくない?」
 ティアは早速その疑問を、シン・マーヴェリックとシャウティーに
伝えた。
「たしかに、それはそうだね。
 シャウティーはパッセルと知り合いだったの?」
 シンの質問にシャウティーは首を横に振る。
「私は、絵画から送られたイメージでパッセルのことは知っていま
したが、実際、パッセルと面識はありません」とシャウティーの返
事だった。
「どういうことなんだろうね、シン」
「わからない。でも、パッセルはシャウティーの名前と顔、そして
シャウティーの目的を知っていたから逃げたということなら、話の
つじつまはあうよね」シンはそう応えた。
 そして、シンは今朝の夢の事を、ふと思い出していた。

------------------------------------------------
 夜空の月がやけにまぶしく見えるのはなぜだろう。シンは音を
立てないようにベットから降りると、そっとティアの顔をのぞき込
みクスリと笑う。
(まったく、大人しくしてりゃ、こんなに可愛いのにな)
 シンはそう思ったことを振り払うかのように首を振ると、そのまま
音を立てずに部屋を出た。
 シンは、月の光から隠れるようにナイトギルドに向かった。不意
に月が雲の中に隠れ、本当の夜の闇に包まれた。
 騎士は、さまざまな訓練をうけている。
 昼の野戦の訓練もあるが、戦争は昼間にあるばかりではなく、
夜襲は戦の常套手段でもある。
 騎士の仕事は戦う事であると同時に、さまざまな局面で指揮を
とることもまた騎士の仕事である。
 指揮をとるためには、伝令の情報と自分の目によって得た現状
の情報が重要になる。
 ”見えない”という状態では、冷静になることは難しいし、そのよ
うなことに気を使うよりも、もっとやらねばならぬ事があるのが騎
士である。
 そのため、騎士であるシンは、夜目にならす訓練もうけている。
 だが、そんなシンもさすがにそこで止まらざる得なかった。
 自分の体と外が全く区別が付かない。自然の状態では月や星
の光が少なからずあるはずなのに、不自然なほど、自分の体が
闇にとけ込んでいる。
 自分の意識だけに成ったような感覚に襲われる。
 シンはとっさに、これは魔法による闇であることを察知する。
 そして、脳裏に映る映像の方がよっぽど鮮明で明るく感じる。
「探したぞ、シン・マーヴェリック」
「ドラグスレイバー・・・バハトゥーン」
 ドラグスレイバー・・・。
 それは、5歳の子供でも知っている御伽噺である。
 登場する怪物で、12神と7つの魔神の争いのときに、12神の
兵がギガスガーディアンという巨人であるのに対し、7つの魔神
はドラグスレイバーという竜の化身が先頭にたって争ったという
伝説の存在である。
 そのドラグスレバーの指揮をとるドラグスレイバーの称号をバ
ハトゥーンといった。
 そして、シンは、過去に御伽噺にすぎなかったドラグスレバー
探索隊に参加し、その存在を目の当たりにしたことがある。 
「汝は試練に耐える覚悟は出来たか?」
 バハトゥーンは沈黙するシンに向けて言う。
「試練?」
 寝耳に水とばかりにシンは目を見開く。
「・・・・覚悟は出来たかと聞いている。言葉が分からぬか、シン。
では言葉を変えよう。なぜ我が汝のことを探しているかを知りたく
はないのか? そして、汝がドラグスレイバーとかかわる運命に
あるのか・・・」
 呪文の詠唱のようにバハトゥーンの言葉が闇に響く。
 シンは、とっさに、この言葉も、ひとつの魔法であることに気が
ついた。
 このままだまっていれば、魔法に取り込まれる。
 魔法に対抗するには意思の力であり、意思の力保つためには、
今のような混乱と迷いは邪魔な存在である。
 シンは覚悟を決めて、試練に乗ることにした。
「受けるよ。その試練」
「ほう。魔法に耐えたか。
 それでこそ、あのお方が見込んだ男だ」
 バハトゥーンは思わせぶりな言葉を呟く。
(あのお方・・・・どういうこと?
 バハトゥーンは、誰かに仕えているってことだよね?)
 シンは自問する。
「では、展覧会の開演だ」
 バハトゥーンがそう呟き指を鳴らすと、そこは嫌みなほど明るい
光に照らされ、白い壁に囲まれた部屋であることが分かる。
 四方の壁には、幻想的なまでにふくよかな体格の女性の絵が
それぞれの壁に立てかけられている。
 ある絵はシンを挑発するように、木のベットの上で気怠げに寝
そべり、ある絵は誘惑するかのように、シンの瞳を見つめ、ある
絵にはその汚れ無き美しさに魅了され、ある絵はただ疲れて近く
の木に寄り添って眠っているだけなのに、切なげに何かを無言で
語っているかのようで目を離せなかった。
 額の中の女性達は見るからに幻想的で、実際に存在しない女
性であることは確実であったのだが、何よりも現実的な魅力が
あった。
「汝を挑発するのは夕べの夢想、汝を誘惑するのは昼の輝き、汝
を魅了するのは朝の目覚め、そして汝が今見つめているのが夜
のやすらぎ」
 バハトゥーンは淡々と絵を紹介していく。
「我は汝に願う。この中にいる女性達を絵の中から解放してくれん
ことを・・・・
 真実を知りたければ北の洞窟の中に・・・・」
 バハトゥーンはそれだけ言うと蜃気楼のように朧気な存在となり、
そして彼女たちとともにいなくなった。
 1人取り残されたシンは、夢の中から現実に引き戻されたよう
な虚無感に襲われる。朝日の光と朝の臭いがここにいるシンこそ
が、本当のシンであることを知らせてくれた。
「あ、あれは、いったい・・・」
 シンの口からはそんな言葉しかでなかった。分かっているのは
自分はただ単純に混乱していることと、すべてから取り残された
ような苦痛に襲われていることだった」
 

-------------------------------------------------

 

 呟き尾形 2005年4月17日 アップ
呟き尾形 2005年4月24日 修正

戻る 次へ

タイトルへ戻る 


質問、感想などは、4枚の絵画掲示板などに書き込みしていただければ、モチベーションもあがります(笑)