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4枚の絵画 昼の輝き 1

 

 ●白き雌鹿亭
「酒をどんどんもってこい! 大富豪のロレンツォ様のおごりなん
だぁ!」
 そう酒場で叫ぶ迷惑な髭面のおやじは、男の名前はアルクィンと
言う。その隣では、ニコニコ笑いながら酒を共にしているのちょっと
太った男が、ここストークで知らない者はいないと言われる大富豪
ロレンツォである。
 アルクィンとロレンツォが並ぶと、貧相なアルクィンは物乞いに、
ふっくら太ったロレンツォは大金持ちに見えるし、現実も似たような
ものだった。
「へへ、しかし、このアルクィンの作品を評価していただけるとはお
目が高い」
「ホッホッホ、いえいえ、あなたの作風はとても興味深い。私のデミ
ナスコレクションのとはひけが取らない」
 ロレンツォの自慢げな台詞はアルクィンの表情をこわばらせた。そ
れと同時にアルクィンのコップの中にある酒はロレンツォにかけられた。
「わるいなぁ、旦那。俺はデミナスの作品と比較されんのが、でぇき
れぇなんだ。悪いが商談はナシだ。帰らせてもらうぜ」
「そうですか。それは残念」ロレンツォの声は全く残念そうではない。
 ロレンツォはアルクィンの無礼な行為にもニコニコしている。
「ああ、すまないねぇ、ここにいる皆さんには嫌な思いをさせた。そ
のかわりに今夜の飲み代はこのロレンツォが出すから好きなだけ
飲み食いしてくれ!」
 ロレンツォの宣言は、白き雌鹿亭の客の歓声を読んだのは言うま
でもない。

 そんな盛り上がった宴の中、パッセルは白き雌鹿亭に戻ってきた。
「おお、パッセルいいところに来た。今夜は忙しくなるから覚悟しと
け!」
 親父の声にパッセルは生意気にも、やれやれといいたげに肩を
竦める。
 ちょうどそのとき、ムーンティア・エクセリオンが入ってくる。ティア
は狂喜乱舞する大人達の狂宴を目の当たりにする。
「お、お帰り、悪いが食事は外でしてくれねぇか? 今日はあんた
の所まで手が回りそうもない」
 白き雌鹿亭のおやじは、忙しい手を休めてティアに言う。
 ティアは、大人達の狂宴にうんざりしたように頷くと、外の出ようと
したとき、妙な視線を感じて、酒場の方に振り返る。そこにはあのロ
レンツォがいた。ティアは、ロレンツォの瞳に一瞬だけ吸い込まれる。
 ロレンツォはティアのことを見て値踏みしているようだ。ティアの背
筋が寒くなるのを感じるが、その場を動くことが出来ない。ロレン
ツォはニコニコしながらティアの方に歩み寄る。
「おお、お嬢ちゃん、ワシの所に来て綺麗な洋服を着てオシャレをし
たいと思わないかい?」
「な、なにを!!」
 この突然の無粋な男の誘いに狼狽してしまうティア。
 狼狽している間に、ロレンツォは歩み寄る。
 たじろぐ、ティアの右手を握る小さな手があった。
「早く! こっちから逃げるよ!」
「君は!」
 ティアの右手を引っ張るのは「夜のやすらぎ」を持つ少年だった。
 そして、2人はそのまま狭い路地裏の中に消えていった。



 

 呟き尾形 2005年5月8日 アップ

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