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4枚の絵画 昼の輝き 5

 

●『展覧会の絵』
「・・・・ど、どういうこと・・・・」
 シンは『展覧会の絵』につくと愕然としていた。『展覧
会の絵』とは美術品を扱った店らしいのだが、店には大
きな額にバハトゥーンとその仲間達が描かれていた。バ
ハトゥーンが大きく描かれ、彼の傍らにはに仕える神官。
その後ろには杖を持った老魔術師。そして、絵の背景の
代わりにあの4枚の絵の女性が描かれていた。
「アルクィンなら白き雌鹿亭で飲んだくれているよ」
 聞き覚えのある声に思わず振り返ると、そこにはジョア
ンナがいた。ジョアンナは、昨日とはうって変わって、しっ
かりした服装で、シンは声をかけられなければ、ジョアン
ナであることに気が付かなかっただろう。
「どうしてあなたがここに?」
「ああ、ここの主が今日の客だったんだけど・・・・、白き雌
鹿亭で飲んだくれているから、キャンセル料だけ貰って帰
ろうと思ってね。
 まぁ、おかげであんたに会えたから運がいいんだね。ど
うだい? 前にも言ったとおり、あんたなら商売抜きでい
いよ」
 後半は妖艶な笑みを浮かべる。ジョアンナのさそいは、
強い理性を持った男でなければ、断れない状況である。
「ああ、いいよ。ちょうど食事時だし」
「・・・あ、いや、そういう意味じゃなくて・・・って、まぁ、そ
こがあなたのいいところか」
 ジョアンナは肩をすくめる。
 シンとジョアンナは、そのまま、暗くなる繁華街に消えて
いった。

「あはは、あんた、おもしろいわね」
 酒場でテーブルにあふれんばかりに酒と料理を置いて、
ジョアンナが大声で笑う。
 シンは、少なからず不本意な表情をした。
 シンは、これまでのムーンティア・セクセリオンとの旅の
エピソードをジョアンナに聞かれて、素直に話していた。
 それほど、他人を笑わせる話だとは思えない。
 だが、ジョアンナは楽しそうに笑っている。
「いや、ほんと、シン、あんたは、おもしろいよ。
 ちょっと、ティアに同情するよ」
「そんな、ティアは大事な友達だし、そりゃ、すこしはひど
い目にあわせたけど・・・」
「そういう意味じゃないよ。すこしは、ティアの気持ちを察
してあげな。
 ってこと。
 でも、まぁ、そこがあんたのいいところか」
 ジョアンナはそういって、酒をぐいっと飲み干した後、乳
房の谷間がはだけた胸元から、髪飾りをだす。
 シンは髪飾りを見ると、プラチナを台座にし、七色に輝く
小さなダイヤをちりばめられ、ダイヤの輝きは昼間の太陽
の輝きにもみえ、よりいっそうダイヤの輝きを引き立ててい
る。
 プラチナとダイヤの精巧な細工が施されているにも関わ
らず、それは暗殺用の暗器でもあることを、シンは見抜く。
「これは?」
「今日、付き合ってくれた、お礼よ」
「そうじゃなくて、これは・・・」
 シンがそういいかけるとジョアンナは目の前の髪飾りが、
暗器であることをしらないということを悟った。
「ああ、アルクィンからもらったものよ。代金のかわりにね。
 だから、ここは、ご馳走して。
 それでね、シン。あんたにいってもピンと来ないだろうけ
ど、ティアも女の子なわけ・・・」
 ジョアンナは、シンにウィンクした。
「あ、うん」
 シンは、そういいながら、暗器を手を伸ばした。ジョアン
ナは、シンに恋愛についての心得を語り始めているが、す
でにシンの耳には届いていない。
「「「「寂しいの? シン?」」」」
 シンが暗器を手に取った瞬間に、複数の女性達の声が
どこからともなく聞こえてくる。
「「「「クスクス、やっぱり覚えてないのね。私達はあなたに
殺されてからずっとあなたのそばにいたのよ。・・・・ねぇ、
シン。生きてて何になるの?」」」」
 シンは彼女達の言葉を聞いたとき、生きていていること
すべてが虚しくなる。
(生キテイテ何ニナル?)
そんな思いが彼を支配したとき、彼は手元にあった髪飾り
の先を自分の咽に突きけたい衝動にかられた。
「ねぇ、シン、どうしたのさ、怖い顔して・・・」とジョアンナ。
(気配を感じる。俺に幻覚の魔法をかけた人間が外にいる)
 シンは酒場の窓を見ると人影が動くのを見抜いた。
(あれだ!)
 ジョアンナは、そんなシンに気づくことなく、話を続けている。
「ところで、ティアの事なんだけどって、どうしたの?」
「あ、いや、ちょっとだけごめん、その・・・急用を」
「ええ、いいわ。ティアをさがしていらっしゃい。
 ここは、私のおごり」
 ジョアンナは、自分の話が効果があったのだと確信をもっ
た笑みをうかべたが、シンはそれどころではない。

 シンが髪飾りをもって、路地裏にでると、 邪気のある笑み
を浮かべた少年がいた。
「チェ、失敗かぁ、でもさすがだね。バハトゥーンの言うとお
りだ」
 少年の声が残念そうに響く。
 シンは、少年の外見にだまされることなく、反射的に手に
あった髪飾りを少年に向けて投げつけた。少年の笑みが
消え、老人のようなシワだらけの顔になったかと思うと、そ
のまま断末魔を上げる。
「ぎゃぁぁぁぁ! おのれ若造! なぜお前が【昼の輝き】を
持っているぅぅぅ、聞いて無いぞ、ワシは聞いてないぞぉ、
バハトゥゥゥゥゥーン!」
 老人の断末魔が響くと、老人はそこに倒れ、煙を上げな
がら口をぱくぱくさせている。音にならない声は直接シンの
頭に話しかける。
「お主の行動により、朝のめざめの女性は解き放たれた 
今お主は運命の岐路にある。お主が過去と戦うのなら金
のブレスレットを捜すが良い! 過去に背を向け、新しき
道を選ぶのであれば、お主の心の中の姫君を探し出せば
いい。どちらも望まぬのならば、お主の欲する
がままにすれば良い」
 老人の顔を持つ少年は煙のように消え、壁に突き刺さる
髪飾りだけの残っていた。




 

 呟き尾形 2005年7月17日 アップ

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