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4枚の絵画 昼の輝き 7

 


●過去の夢
 シャウティーの意識がまどろみの沼に沈み、底なし沼
にただ沈んでいくような感覚に襲われた後、ふとシャウ
ティーは谷底に向かって落下していることに気がつく。
 そして、谷底にはおぞましい亡者の行列が並んでいた。
 亡者を率いる死人使いが奇声をあげていた。
「オーホッホッホッホ、いたわいたわ、あのお方を復活さ
せるにふさわしい生け贄が!
 おいアンデットども、そこの神官の小娘を捕らえろ!」
 野太い男の声が気色の悪い声色を使い生ける屍に命
じる。
 小さな村では、亡者たちが無力な人間たち虐殺劇を繰
り広げられていた。
 村の神官は村人を守るために、神の加護を使い果たし、
もう祈るしかできなくなっていた。
 死人使いの男は、神官の前に立ちはだかり、口紅で真
赤に染めた唇を狂気の笑みにゆがめ真赤な舌で舌なめ
ずりをする。
「う〜ん、いいわ。好みよ、あなた。あなたが改宗するな
ら、105人目の愛人にしてもいいわぁ」
 神官は、侮蔑のまなざしで死人使いを見る。
「よっぽど死にたいらしいわねぇ」
 死人使いは人差し指で神官を指さすと神官は頭を抱え
て苦しみ出す。
 苦痛の呪文。
 この世で体験できる苦痛を、相手に錯覚させる呪文で
ある。
 肉体に実際傷を与えるわけではない魔法だが、実際
に傷を与えないからこそ、普通では死んでしまうような
傷の苦痛を生きながらも感じ続けなければいけないも
のである。
 その苦痛に耐えられるものなど、人間には不可能だ
といえるだろう。
 神に仕える神官も例外ではない。
 神官は
「助けてくれ!」
「助けてくれ!」
 と繰り返し叫ぶだけである。
「ああ、神官様!」
 シャウティーは叫ぶ。
 シャウティーは威厳のある何事にも動じない過去の神官
と今そこにある神官の姿を無意識のうちに比較してしまう
自分を恥じた。
 そして、神官はついに拷問に屈した。
 改宗するから、この呪縛から解いてくれと死人使いに哀
願する。
 そのとき、シャウティーの中で何かがはじけた。
 この世でもっとも信頼していた存在に裏切られ、生きて
いることにすべての価値が失われ、その場で立っていら
れなくなる。
 目の前の信仰を捨てた男への尊敬の念が音を立てて
崩れるのが分かる。
「オーホッホッホッホ、小娘も抵抗するのをやめたようね。
 素直で可愛いわよ子猫ちゃん。 でも私は雌には興味
がないの。
 でもあのお方はあなたのような小娘を好むのよ」
 男は妖艶な笑みを浮かべ、さっそくシャウティーを縛り、
儀式の用意を村人にさせた。
 村人はシャウティーに同情する者もいたのだが、それ
以上に彼女への憎しみを感じる。しかし、今のシャウ
ティーにはどうでも良いことだった。
 時はただ流れ、儀式の時が近づく。
 すると、シャウティーの心の奥から純粋な<悪>が浮か
び上がってくる。この<悪>は紛れもなく自分の外から
やってきたはずなのに、自分の内から浮かび上がるの
はなぜだろう? と言う疑問に答えるように男は叫ぶ。
「おお! 我らが神が、彼女の中に!」
 シャウティー何も感じなくなったはずのシャウティーなの
だが、この<悪>だけは受け入れることが出来なかった。
圧倒的な嫌悪を感じる。
 その瞬間、彼女の秘めた力が暴走する。
 彼女が気が付くと、彼女の知る懐かしい村や美しい森
はどこにもなく、ただの荒野が広がっていた。

 場面は変わり、4枚の絵が飾られる白い部屋にシャウ
ティーがいた。4枚の内の1枚が朝日をあびて燃え上が
る。絵の中の彼女は苦しみよりも安堵の表情が感じられ
る。
 彼女は救われたのだ。シャウティーはそう感じた。
 そして、絵が燃えて無くなる瞬間に彼女は女性ではな
く、老人の姿を見せると老人は「お主は、運命の岐路にい
る。あくまで、過去にこだわるのなら北の洞窟へ! 過去
を忘れ未来を選ぶなら白き雌鹿の憩いの家へ!」と叫ぶ
と、そのまま消えて無くなった。


呟き尾形 2006年3月26日 アップ

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