「立ち合え、テツヤ!」

「マリオブラザーズ」
じゃたろう

このゲームをやった事がある人は、大抵「殺し合い」も経験している事と思う。
そう、本来協力プレイの二人同時アクションゲームなのに、「対戦」風に楽しむ事も可能なのである。
遊び方に幅のあるゲームっていいなあ。

協力プレイの方はというと…
10面あたりまで行くと、あとはもうまったく変わらないステージが延々と続く。
10巻あたりまで行くと、もう既に変わらない絵柄がずっと続くゴルゴのようなものだ。
なので、先に進めば進むほど技術が要求されるというわけではない。
言うなら、「精神力がどこまでもつか」という問題なのである。

「生命力の戦いだ」(注:あかりはここよ)

協力プレイでは、井上トトロ(HN)という人物と組んで、343面まで行った。
まあまあの記録であると思う。
しかし私が得意とするのは協力プレイでもなく、まして単独プレイでもなかった。

私はこのゲームの対戦…「殺し合い」において十数年もの間無敗を誇り続けていたのだ。
それは生きたまま神話となるかと思っていたが、それがまさかあのような形で崩壊しようとは…

高校時代、私は対戦相手を探し続けていた。
そう、強者を求め続けていたのだ。
「マリオブラザーズ? えっ、オレ得意やで」
そう言う相手を捜して来ては、対戦を申し込む。
しかし自称「得意」という連中も、

「あのな、あれな、相手が敵を取ろうとした瞬間に(※注1)、下から起こすとええんよな」
「相手が敵を蹴ろうとした瞬間に、Pow(※注2)で敵を起こすんな」
(※注1)解説しよう。このゲームはスーパーマリオのアレのように、敵の歩いている床を下からどつくと、敵を眠らせることが出来るのだ。そしてその眠っている間に敵に体当たりすると、敵を倒す事が出来るのだ。
(※注2)解説しよう。このゲームには画面中央に「Pow」と書かれたボックスが浮かんでいて、それをどつくと、画面上すべての敵を眠らせることが出来るのだ(眠っている敵は逆に起きてしまう)。


こんな事を言うような連中だった。
こんなものが上級者同士の対戦で通用するとでも思っているのだろうか。
小内刈りしか技を持たずに「柔道が得意」と言ってのけるようなものだ。

「お前も、オレをたおすことか゛て゛きないのか・・・
 オレより強い奴はもういないのか・・・」
と少し寂しそうに語っていたベガ様(もしくはバイソン将軍)の気持ちが痛いほどよく判る。
確かに、来る相手、来る相手すべてに圧勝をしてしまうというのは、とても虚しいものなのだ。

「わかるかね看守諸君ッ」
「わたしはねッ」
「敗れ去りたいのだよッッ」

たまにいい動きをする者にも出会った。珍しくもなく、相手にもならない者も多かった。
しかし彼らはすべて同じように、4ラウンド内(※注3)に決着が付いた。
そう、5面までもった対戦相手すらいなかったのだ。
(※注3)解説しよう。私はこのゲームで対戦をする場合、ひとつの面を1ラウンドと呼んでいたのだ。

「戦う相手が     欲しい」
鬼が哭いた。

次第に、誰も私との対戦を受けてくれなくなってしまった。
一回殺されることすらきわめてまれ(※注4)。そんな相手とは確かに戦いたくないだろう。
(※注4)解説しよう。このゲームは残機(主人公はマリオとルイージだけど)数はデフォルトで2(0を含めて3)で、1回のエクステンドがあるのだ。
自慢? ええ、自慢ですとも。

そしてその日、私は対戦を渋るテツヤ(仮名)に「ハンデマッチ」を突きつけた。
「開始早々、俺は2回わざと死ぬ。つまり、いきなり後をなくしてやる」
ハンデの内容はこういうものだった。
それなら…と、テツヤも対戦を呑んだ。
そしてラウーン、ワーン、ファイッ!

「あ」

伝説終了

…こうすればよかったとか、アレを使用ったら勝てたとか、そういうような疑問の入る余地の多い敗北だが、負けは負けだ。
こうして私は「マリオブラザーズ常勝無敗」の看板を下ろす事になる。

それからの私の人生は悲惨だった。
酒、女、バクチ、タバコ…俺はそれでやられちまった(嘘)。

この勝負から判った事。
勝ちに倦んでいても、それでもやはり敗北とはたいへんにイヤーなものであるという事。
あと、あまり調子に乗ると足元を掬われる、という事。
このふたつが判っただけでもよしとしよう。
…くそーっ、くやしーっ!
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