「何故か」ヴォードビルショーにだけは、脚本を書き下ろす三谷さんの過去の作品の再演。
大津事件を扱うという話だけを聞いていたので、なんとなく裁判官とかそういう人が主人公なのかと思っていたが、主人公は意外にも当時の松方内閣総理大臣。一夜の内に、死刑にするかどうかを決めてしまうあたりは、史実と違うような気がするが、面白いのであまり気にしない。
情けない内閣をやるとしたら確かにこの劇団は、適役な役者が多い。
佐渡さんのやる松方正義なんてめちゃくちゃはまり役だし、佐藤さんの演じる陸奥宗光も怪しさと情けなさも絶品。
特に今回、よかったと思ったのは坂本あきらさんだった。
過去にそれほど見たことがあるわけではないが、見るたびにまったく印象の違う役をやっているし、それがよくはまっている。悪く言えば、特徴がないのかもしれないが、どんな役でも無難にこなし、今回の西郷従道のような役(僕はこの舞台上で一番難しい役ではないかと思ってみていた天真爛漫な役)を、見事にこなし、要所要所で、舞台に弛緩をもたらし、コメディとしての下地を作っていたように感じた。
それから、伊藤四朗さん。はっきりいってあのスキップは反則!
どうして明治の元勲伊藤博文があそこでスキップしちゃうかなぁ。見た瞬間、笑い転げてストーリーを忘れてしまうかと思った。この縦横無尽さは、伊藤さんのすごさ。この舞台のいいとこ、出てきた瞬間から片っ端から掠め取っていった感じだった。
今、劇団で三谷作品を見ようとしたらこのヴォードビルショーで見るしかない。そして、劇団で見る三谷作品とプロデュース公演で見る三谷作品に微妙な違いがあるような気がしてならない。
今回の舞台は、一応、坂本あきらさん、伊藤四朗さんが客演ということになっているが、坂本さんは元劇団員なので、広義に解釈すれば、伊藤四朗さん以外はみんな劇団員のようなもの。気心の知れあっている劇団員同士の微妙な間の弛緩のようなものが、三谷作品特有の緊張感と化学反応を起こしたとき、プロデュース公演の醸し出す緊張感とは違う何か不思議な場が舞台上に作られているような気がする。
同じ伊藤四朗さんが出演されていた「バットニュース★グッドタイミング」と無意識に頭の中で比較していたのだが、張り詰めた緊張感が、その笑いを極限まで追求していたプロデュース公演とは違い、今回の舞台では、まだその辺の詰めが甘い。
しかし、プロデュース公演では絶対不可能な4ヶ月にもわたるロングランでこの作品は鍛えられる。
一ヶ月後の東京公演の終盤に再度見に行く。その時に、気心が知れ、三十年にわたり一緒に芝居を作りつづけてきた劇団員達によって練り上げられた時、この舞台はプロデュース公演を越えるような気がする。
できれば、来年3月の東京公演にも行きたいが、チケットが確保できていない(泣)
あ、忘れるところだった。
この芝居の前に「東京オードブルショー」と銘打ってショートコントとダンス(佐藤B作さんまで踊る!)があった。
基本的には、「あほんだらすけ」的なのりのもの。
でも、短すぎてちょっと中途半端な感じがした。他の日の出し物に期待!?