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鵜川薫 |
プロフィール
1975年1月9日 東京都出身
1998年 ウルトラセブン3部作
1999年 ウルトラセブン〜1999最終章6部作
2002年 ウルトラセブン”EVOLUTION”全5部作
血液型 A型
特技・趣味 フィットネスボクシング、水泳、バスケットボール、ピアノ、絵画
好きな食べ物 ラーメン、カレー
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<平成ウルトラセブン総論>
ウルトラセブン「太陽エネルギー作戦」
旧作「ウルトラセブン」をリアルタイムで楽しんだ世代としては、新作が登場したからといって単純に胸はずませるわけにはいかない。旧作をしのげるはずもなく、「なにをいまさらウルトラセブン」というむきもあるかもしれない。テレビでは相変わらず円谷プロの新作特撮ムービーが盛んなようだが、「どうせ子供向け番組さ。大人の鑑賞に耐えるものか」と笑う方もおられるだろう。
私はいわゆる怪獣ファン、SF映画ファンではない。子供時代に大いに楽しませてもらった「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「ゴジラ」など円谷プロ作品群に敬意は抱いているものの、正直、「ウルトラセブン・太陽エネルギー作戦」を正座して鑑賞するつもりはなかった。たまたま衛星放送で平成ウルトラセブン全作が流れることを知り、セブンのスーツやウルトラホークなどの模型がどのくらい進化したのか、好奇心からのぞいたにすぎなかったのである。
ところが、特撮よりむしろ、きわめて重いメッセージを随所にふくんだドラマ構成・脚本の質の高さに、心底驚き、画面に釘付けとなった。特撮技術を駆使するだけの子供だまし映画などではなかった。昨今では劇場用映画ですらほとんど描かなくなった、人間社会に対する鋭い問いかけ・洞察が各編に盛り込まれており、むしろ不条理な社会状況に翻弄されがちな大人にこそ、勧めたい作品群に仕上がっている。
「平成ウルトラセブン」の各タイトルはつぎの通り。
<TVスペシャル>
ウルトラセブン
『太陽エネルギー作戦』
『地球星人の大地』
<オリジナルビデオシリーズ>
☆ウルトラセブン誕生30周年記念3部作
『失われた記憶』
『地球より永遠に』
『太陽の背信』
☆ウルトラセブン1999最終章6部作
『栄光と伝説』
『空飛ぶ大鉄塊』
『果実が熟す日』
『約束の果て』
『模造された男』
『わたしは地球人』
☆ウルトラセブン誕生35周年“EVOLUTION”5部作
『イノセント』(EPISODE:4)
『ダーク・サイド』(EPISODE:1)
『パーフェクト・ワールド』(EPISODE:2)
『ネバーランド』(EPISODE:3)
『アカシックレコード』(EPISODE:5)
平成セブンが、旧作をしのげたかどうか賛否両論があるようだ。実際、熱心な旧「ウルトラセブン」ファンのあいだからは、ウルトラ警備隊を退職し主婦となったアンヌの台詞「セブン!」に対して批判が寄せられたり、セブン、隊員、星人などの設定上の要望・疑問も指摘されている。
けれども、ものを作る立場からすれば、逆に考えたいと思う。古典的な「ウルトラセブン」シリーズの世界観を引き継ぎ、さらに新しい作品を生み出す苦労は並大抵ではなかったはずである。画質ひとつとっても、旧作のようなフィルムではなくビデオ撮影で旧作のテイストを再現するのはそう簡単ではなかっただろう。
現代の円谷プロでなければ表現できない、これだけメッセージ性の強い新しい「ウルトラセブン」が手に入ったのである。多少のほころびは当然のことで、むしろファンが指摘するわずかな程度ですんだことが私には奇跡のように思える。これが別のプロダクション、別のスタッフの手で制作されていればどうなっただろう。それこそ目もあてられないものになり果てたのではないか。
平成ウルトラセブンには新しい魅力がいくつもあるが、ひときわ異彩を放ったのが、カザモリ・マサキ隊員(山崎勝之)の演技力とハヤカワ・ミサト隊員(鵜川薫)の存在感である。特にミサトは回を重ねるごとに魅力を大きく増し、“EVOLUTION”5部作は彼女の存在なしに成立しなかった。鵜川薫は円谷プロ作品になくてはならないポジションを獲得したといっていい。
カザモリ隊員、サトミ隊員が登場するのは<ウルトラセブン誕生30周年記念3部作>以降の14本だが、ここでは全作品の印象をおおまかに記しておきたい。
●『太陽エネルギー作戦』
ハイパーソーラーシステムが太陽エネルギーを注入し、セブンを復活させるというアイディアは、スポンサーとセブンの設定にぴったりはまっている。つまり通産省の要請が、太陽エネルギーのヒーロー、セブンの胸の太陽電池のきらめきと結びつくのである。
長いブランクを経てよみがえったセブン作品を安心して賞できるのは、なつかしい名優、毒蝮三太夫(フルハシ隊長)、ひし美ゆり子(アンヌ)のおかげ。しかもアンヌは息子をダンと名づけているのだから、脚本家は女性が使う禁じ手に通じているとみた(よい子のみんなは決して真似しないように)。また、少女がアンヌを「おばさん!」と呼ぶのが時の流れを感じさせる(よい子のみんなはこれも真似しないように)。アンヌが自宅でお茶を入れるシーンで、ソーラーシステムが紹介されるのだが、どうしてもプロパガンダ風のカットになったのはスポンサーの手前、仕方がないか。
"小さいお友だち"のための教訓:
1 正義のヒーローも政治力のバックアップなしに甦ることはできない。
2 太陽電池(Solar power)でよみがえったセブンがエレキング(Electric power)を倒すのだから、日本政府は脱電力志向である。
●『地球星人の大地』
この作品あたりから、重いメッセージがこめられているから要注意である。
環境生態学のトネザキ教授は、「地球環境を救うためだ」というメトロン星人の口実を信じて、未来都市実現に協力した。ところがそれは……このように研究者は注意していないと、さまざまな理由づけによって、利用され、あっさり捨てられる運命にある。作品ではたまたまメトロン星人が悪玉であるが、このような詐術は人間社会でもいくらでもある話。場合によってはそうした口実の嘘を知りながら、研究費ほしさにすりよっていく科学者もいるだろう。科学者・研究者たちにモラルを期待してよいものかどうか、ここは"大きいお友だち"もふくめ、じっくり考えたいところである。
この作品は、その後のモロボシ・ダンの姿を見るだけでも、鑑賞する値打ちが充分ある。若い頃より風格ある新しいダン。「失われた記憶」以降は長髪をヘアバンドでまとめ、スティーブン・セガール風のしゃれたジャケットを身につけ、素手の格闘シーンも説得力あふれるモロボシ・ダンである。
森次晃嗣氏は、2007年現在、俳優業のかたわら、鵠沼海岸にて「JOLI CHAPEAU」というお店を経営しておられる。お店では<モロボシ・ダンのハヤシライス>を注文できるだけでなく、ウルトラアイをおみやげに購入できる。さらに森次氏のシャンソン・ライブ、ジャズ・ライブもある。もちろん俳優としてもテレビ、映画、舞台で着実なキャリへアを築かれているから、急にダン役を乞われても、ひきしまった演技が披露できたのだろう。
なお、このテレビ・スペシャルも当初は3部作の予定だったらしい。『地球星人の大地』は、メトロン星人の基地でセブンが爆破にまきこまれたところで終わり。スタッフも、セブン(ダン)のその後は3作目で語るつもりだったのだ。それがいきなりの打ち切り。当時のスタッフも視聴者も呆然としたようだが、政府系スポンサーにとって、「太陽エネルギー」「ゴミ」という中心テーマは別として、付随する社会矛盾をするどく告発する作品など迷惑だったのかもしれない。この後、セブンがビデオシリーズとなって復活し、「オメガファイル」、「フレンドシップ計画」が語られていく経緯を見ると、セブン制作自体が体制側の秘密に接近しすぎたため打ち切られたと想像するが、考えすぎだろうか。
<鵜川薫>
『失われた記憶』からウルトラ警備隊のメンバーも一新され、いよいよサトミ隊員(鵜川薫)が登場する。万事につけ頼りないカザモリ隊員(山崎勝之)を、ルミ隊員といっしょになって、からかうのは現代の風潮を感じさせる。アンヌがダンをからかったり、暴力をふるったりしたことがあっただろうか。謎の植物を調査中にへらへらしていたカザモリを、サトミはパンチで文字どおり吹き飛ばしてしまうのである("小さいお友だち"は絶対に真似しないように)。鵜川本人のフィットネスボクシングが、やや唐突に表現されたシーンだが、サトミのパワフルな性格設定が、次第にシリーズそのものを牽引していく大きな原動力となる。
Supreme 鵜川薫 ビデオ版
鵜川薫は射るような瞳が美しく、サトミの正義感、ひいてはウルトラ警備隊の正統派の「正義」を表現するのにぴったりだった。里帰りした実家で「(警備隊を)やめちゃおうかなあ」などとつぶやく日常的なシーンよりも、大鉄塊を破壊しようとしたセブンに「やめて!」と叫んで止めたり、「みんな、どいてええええ!」と火炎を放射するシーンのほうがリアリティに富んでいるのは、やはり戦闘ものが資質にあっているのだろう。それでいて、父親が出版社を経営していたという設定、本人も童話を書いたりするあたりに、知的な雰囲気も違和感なく表現できるのだから、俳優業ばかりでなく制作サイドでも才能を発揮してくれるかもしれない。
EVOLUTIONで再登場したサトミは、「なんでお前、もどってきたんだ?」と男性隊員から問われるが、あれだけストーリーがめまぐるしく急転回する以上、各ストーリーをつなぐ鎖として、強力な求心力をもっている彼女を起用しなければ最後の5作はとてももたなかっただろう。この点、円谷プロの判断は適切だった。サトミは先輩隊員としての貫禄を示しながら、流れ弾にあたり、カザモリの腕の中で動かなくなるのが残念。
<山崎勝之>
一方、カザモリ隊員役は、本人からダンへの人格変移を演じわけるむずかしい役どころ。山崎勝之は森次氏から、ダンのしゃべり方、変身ポーズ、そしてあのかけ声「デュワッ!」を直々に教わったそうだが、見事に演じわけた。頼りない青年だったはずのカザモリが、ダン=セブンとして生きなければならない苦悩すらにじませる。俳優は衣装や小道具を演技のよりどころとすることが多い。だがカザモリは隊員服を脱いで、平服でひとり放浪するあたりから、孤独なヒーローとしての輝きを一段と増す。これは衣装などに頼らなくとも役柄を表現できるという証である。
また、サトミの人間的な成長とカザモリの人格変移がシンクロしているため、あたかもふたりが宇宙的な運命の糸であらかじめ結ばれている気配すら感じる。サトミを抱き抱えたカザモリが「サトミ!」と呼びかけるシーンが、山崎の演技の見せ場であり、シリーズ最高のハイライトとなった。
<ウルトラ警備隊>
新生「ウルトラ警備隊」は表面上、若い隊員たちが集まった同好会のような雰囲気だが、それを統括する上部組織に亀裂が見えかくれしはじめ、自分たちの存在意義すら問われる。これは、アンヌが所属していたころの「ウルトラ警備隊」とは決定的に異なるポイントで、現代の社会構造をみごとに反映させた緊張感が漂っている。旧作「警備隊」関係者はすべて善玉という前提であったのに対し、「オメガファイル」の存在、「フレンドシップ計画」の本当の目的が明らかになるにつれ、地球防衛軍がだれのために存在しているのか不明瞭になってくる。さらにマスコミの影響で組織の予算が削減されるなど、「ウルトラ警備隊」という組織体そのものが人間によって問い直されるところまで追いつめられる。
シリーズの中で、警備隊隊員たちがお互いに疑心暗鬼におちいるのが印象的だが、何よりもショッキングなのは、キリヤマ元隊長の暗殺である。オメガファイルにアクセスしたキリヤマは、地球防衛軍によって拉致、謀殺された可能性が暗示される。さらにフルハシ参謀にクーデターの容疑がかかるなど、人間世界の矛盾がダイレクトに投影されている。特殊な電磁波で人間の脳波をコントロールし、子どもを洗脳して大人を抹殺させたり、レモジョ星系人が歯科医に化けミズノ隊員に盗聴器をしかけるなど、これも人間の営みを綿密に観察したシナリオが「曲がった時代」の闇を的確にとらえてするどい。
セブン・シリーズは、旧作の時点で社会的メッセージ性が強いことで有名だったが、表現者にほとんど自由を許さなくなった現代でも、ここまで思いきった描写に踏み込めた円谷プロに心から拍手を送りたい。
(瀬戸信也 2007.11.22)
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