巻1

一部

【才−ノ】
1
一 1
苗字に[才−ノ](えぐなし えだなし えだぬき もぎき もげき もてぎ ももき もみき)がある。『日本大辭典言泉』「ほんあみ」項に「庶[才−ノ]長春」とある。
【刃*一】
2
一 3
H16-05
m28
2-01-04
[刃*一]の沢(うすのさわ)は、山形県東田川郡立川町の地名。『米沢文庫本倭玉篇』に「ジン ウシ」、『玉篇略』に「チウ ウシ」、『同文通考』に「譌字 丑也」とある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあるが、国字ではなく、「丑」の異体字にすぎない。『中文大辭典』に「丑之俗字」とある。
【(切−刀)△七△七】
2a
一 5
u3402
1-14-03
『大漢語林』が「キ。喜の俗字。喜の草書体に基づく文字。七十七歳を喜寿というのは、この字が七十七にみえることによる。」として国字とする。喜の草書体に基づく文字であれば、[十△七△七]・[七△七△七]・[ヒ△ヒ△ヒ]などがあるにもかかわらず、[(切−刀)△七△七]のみ国字とするのは理由がない。喜寿の説明の「七十七に見える」というのであれば、[十△七△七]の方がより適切である。この字形が中国等の草書体にもないとすれば、喜の和製異体字とはいえるが国字ではない。
【丁+弗】
3
一 6
『文教温故』に「佛頂の省字」とある。
【一*偏】
4
一 11
『世尊寺本字鏡』に「ヒトリ」とある。
【並+並】
5
一 15
『日本人の作った漢字』が杉本つとむ著『西鶴語彙管見』を典拠に「ならぶ」意の国字とする。
【一*{勦−力+(骨旧字体−月+夫)}】
5a
一 21
『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「鳥坂城鶴[一*{勦−力+(骨旧字体−月+夫)}](とつさかのじょうつるのすごもり)享保6年11月初演」とある。『国字の字典』・『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』は「つる」を「鶴」とするが『歌舞伎評判記集成』の影印からすると「[霜−相+(隹+鳥)]」が正しい。

|部

【中−口】
5b
| 0
H16-09
m67
1-14-04
苗字に[中−口](すすむ・たていち)がある。『説文解字』にあるが、独立した文字として用いられることはないといわれ、日本の苗字が独立した文字として使われる例外といえる。国字ではないが、それに準じたものとはいえるだろう。
【中+キ−口】
5c
| 3
片仮名「トキ」の合字。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
【中+モ−口】
5d
| 3
『文教温故』に「[中+モ−口](トモ)」とある。片仮名「トモ」の合字。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
【中+云−口】
5e
| 4
「ト云」の合字。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
【中△中△中】
6
| 11
『世尊寺本字鏡』に「アヤシ」とある。

丶部

【々】
7
丶 2
01-25
m97
同じ漢字が続くときに使われる記号。苗字や地名にも使われるので、和製漢字(国字)といっていいだろう。『中華字海』に「音義待考。字出《北大方正漢字内碼字典》」とある。北大とは、北京大学のこと。日本向けの書籍に使われるのであろうか。
『臺語大字典』は、記号と考えているためか、親字としては、立項していないが、音が同じことをあらわすために本文のほとんど全てのページに用いられている。手書きの字典であるため、「〃」、「々」、その中間的な形のものとがあるが、いずれにしても、「々」が、相当数使われていることには間違いない。著者は、1946年生まれで、日本の植民地教育の影響も受けていないと考えられるため、「二の字点」が、日本で変化したものでない可能性もある。
福井大学教育学部国語科の岡島昭浩氏のページで、おどり字に関する文部省の通知(21年3月とあるが案で施行されなかったようである)の中に「同(どう)の字點」とある。(どう)は現物ではルビである。他に「ゝ」を「一ツ點」、「〃」を「ノノ點」、「く」を縦にのばしたような形で二文字以上繰り返すことをあらわす記号を「くノ字點」、「〃」を左右逆転して続けて書いた字形を「二ノ字點」としている。「くノ字點」・「二ノ字點」の「ノ」は、「の」とも書かれている。
『解説字体辞典』は、「くり返し符号などと字体」の項で、「楷書の中でのくり返し符号の用い方と、1字の中にくり返し符号が組み込まれている漢字について説明する」として実例を示して詳しい説明をしている。「々の符号はいつ頃から使われたものか、はっきりわからない。明治以降、現在の活字印刷とともに生まれたのではないかと思われる」とある。また「楷書には、くり返し符号を混ぜていない」として多くの実例を示し、例外として「東大寺献物帳」をあげ、このような例は、「中国にも、我が国の江戸時代以前にも例を見ない。」とするが、「行書では、くり返し符号を使ってもよい」とする。なお多くの実例を挙げた後に、「々は、伝統を重んずるものや、行書の中には書かない方がよく(下略)」とし、行書の場合に書くべきくり返し符号の形を実例によって示す。『解説字体辞典』の著者は、文部省において書写書道を指導してきた立場の人であり、退官後もその中心的な立場にある。そのためか、常用漢字表の字体は、ある程度尊重しているが、『康煕字典』の流れを汲む漢和辞典の字体には反対の立場であり、『康煕字典』において俗字とされているものも、伝統的な楷書の形、書写体として尊重していることが多い。このことを理解のうえ使用するのであれば、実例も多く参考になると考えられる。『大谷大学本節用集』に「佐々嶋磯 サヽシマノサキ」また「和布耳 メミ々」、『合類節用集』に「寸々 ズンズン」とある。くり返し符号は、現在普通には、ひらがなの場合「ゝ」、カタカナの場合「ヽ」、漢字の場合「々」と使い分けられているが、『大谷大学本節用集』の後の例では、カタカナに「々」が使われており、未分化であったのだろう。
【丼】
8
丶 4
48-07
m101
『説文解字』の「井」の隷書体と同形であり、「どんぶり」は国訓と考えられる。『学研漢和大字典』は「容器の中に食べ物のはいった姿を描いた象形文字。中国固有の丼(セイ)とは関係がない。」として国字とする。このような考え方にたてば、同形であっても意味的に中国のものと完全に異なる場合は、国字とされる可能性が高くなる。「椿(つばき)」など国訓とされる多くの文字について見直しが必要となるが、見直しが行われているようには見られない。「丼(どんぶり)」の字のみのようである。同書のハンディ版『漢字源』の最新版は同様の解説をしながら、国字とはせず、「日本語特有の意味」をあらわすマークをつけている。

ノ部

【〆】
8a
ノ 1
01-26
m116
普通には「シメ」と読む国字だが、苗字に〆渡(ぬきと ぬくと)がある。地名でも「シメ」と読むことが多いが、宮城県桃生郡桃生町に十〆西(じゅっかんにし)がある。これは「貫目」のことを「〆(かんめ)」とも書くことによるのだろうか。
【氏−一】
9
ノ 2
笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』が『遠西醫方名物考』を引き「ゲレーン・グレーン」とする。『遠西醫方名物考』の秤量符にこの字があり、「一錢ヲ六十ニ分カチタル其一(中略)和蘭ニ是ヲ傑列印(ゲレイン)ト呼ブ。(中略)Gヲ以テ符號トス。故ニ是ヲ略シテ[氏−一]ニ作ル」とある。字形は、『遠西醫方名物考』にいうように「G」から作られたもので、『遠西醫方名物考』(大阪府立中之島図書館蔵本)によって示すと、親字にあるように第三画が第一画に接してはおらず、第二画に接している。第二画の撥ねと第三画で楷書体の「入」の字のごとくになっている。当辞典の親字の字形は、諸書に掲出されている字形によったが、『遠西醫方名物考』(大阪府立中之島図書館蔵本)を基準にするとかなり不正確なものといえる。正確な字形は、同書を見ていただきたい。同書には、当辞典に取らなかった「オンス」・「ポンド」などもある。ただ「ゲレイン」も含め、外来の単位記号を漢字体にしたものであり、国字と呼ぶべきものであるかは、いささか疑問である。1ゲレインは、1/480オンス。約0.0648g。
【メ*メ】
10
ノ 3
『国字の字典』が『文教温故』を引き「声聞(しょうもん)」の意の国字とする。『同文通考』に「シャバ 佛氏娑婆二合ノ省字」とある。
【乃#木】
11
ノ 5
『国字の字典』が『譬喩尽』から「[乃#木]頭(ずくにゅう)」と引き、「木菟入(ずくにゅう)・木菟(みみずく)入道」の意の国字とする。
【久△久△久】
12
ノ 8
『名義抄(観智院本)』に「ナツ」とある。

乙部

【九+九】
13
乙 3
『名義抄』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「アツマル」とある。九に「あつまる」の意があることから、二つ併せてその意を強めた国字か。
【旭−日+九】
14
乙 3
『音訓篇立』に「アツマル」とある。「九+九」を参照。
【九△九△九】
15
乙 5
『名義抄(観智院本)』に「アツマル」とある。『国字の字典』は『伊京集』を引いて「あつまる」意の国字とする。「[九+九]・[旭−日+九]」をなお強めたものか。『音訓篇立』には「ヤム音 ツカム」とある。
【九+旦】
16
乙 6
『名義抄』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「アシタ」とある。「旭(あした)」の異体字か。

二部

【亞+十】
17
二 8
中教出版『書の基本資料1漢字の研究』に「デカアール」の意の国字とあるが、典拠は示されていない。
【亞+百】
18
二 12
『漢字要覧』に「ヘクトアール」、『文字ノいろいろ』に「ヘクタール」とある。『国字の字典』は『漢字要覧』を典拠に「ヘクタール」の意の国字とするが、字形を[亜+百]と誤る。字形は『漢字要覧』のものを掲げた。『文字ノいろいろ』・『国字の字典』の偏は土偏などのように最終画を左から右へ跳ね上げる形である。
【亞+厘】
19
二 15
『漢字要覧』「サンチアール」、『文字ノいろいろ』に「センチアール」とある。『国字の字典』は『漢字要覧』を典拠に「センチアール」の意の国字とするが、字形を[亜+厘]と誤る。字形は『文字ノいろいろ』のものを掲げた。『国字の字典』の偏は土偏などのように最終画を左から右へ跳ね上げる形である。

亠部

【効−力+加】
20
亠 9
『世尊寺本字鏡』に「シルシ」とある。
【交/加】
21
亠 9
『世尊寺本字鏡』・『音訓篇立』に「シルシ」とある。
【交*加】
22
亠 9
『国字の字典』が『譬喩尽』を引き「感(かま)け」の意の国字とする。
【交−父+排】
23
亠 11
『拾篇目集』に「ソムク」とある。

人/イ部

【神*人】
24
人 9
来留間慎一作のコミックの名前に『魔[神*人]伝』がある。
【企−止+七】
24a
人 2
『篇目次第』に「ツシ 无」とある。国字「辻」の異体字で、国字ということになるのだろうか。
【企−止+十】
25
人 2
H16-36
m366
2-01-26
『大漢和辭典』には「サン 傘の略字」とあるが、『広漢和辞典』・『大漢語林』には同じ解説ながら国字とある。いずれも典拠がない。「傘」の異体字であり、中台日韓ともに漢字規格にある。『龍龕手鑑(宋本)』に「今」の異体字とある。国字とはいえないであろう。ただ「八十歳」を「[企−止+十]寿」というのは、日本的用法であろう。
【会】
26
人 4
18-81
m460
『漢語大字典』・『中華字海』に「會的簡化字」とあるが、『中華大字典』にはない。
【企−止+里】
27
人 7
苗字に[企−止+里](かつ)がある。
【今+年】
28
人 8
『芝居番付(大阪府立中之島図書館蔵)』に「[今+年]豊歳[花/浪]賑」とある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』には、「[今+年]豊歳[花+浪]賑(ことしほうねん なにわのにぎわい)文久元年8月初演」とある。[花/浪]参照。
【合+含】
28a
人 11
『世尊寺本字鏡』に「フクム」とある。
【休−木+七】
29
人 2
『名義抄』に「俗[叶−十+七]字」とある。
【休−木+小】
30
人 3
『倭字攷』に「ワラハ」とある。『中華字海』が『字彙補』を典拠に「同[休−木+少]」とし、『廣韻』を典拠に「[休−木+少][休−木+少]」を「小子」とする。ほとんど漢字そのものである。
【休−木+巛】
31
人 3
『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』・『字鏡集白河本』に「アム」とある。「浴(あ)む」意の国字か。
【休−木+己】
32
人 3
苗字に[休−木+己](たえ)がある。
【休−木+弓】
33
人 3
苗字に[休−木+弓]田(かわた ひきた)がある。「低」の異体字[休−木+弖]のなお転じたものか。
【伝】
34
人 4
37-33
m462'
『中華字海』は『白虎通』から引用するが「音義未詳」とする。日本の文字とは関係ないと考えられる。「傳」の和製異体字か。『漢韓最新理想玉篇』に「傳略字」とあるのは、日本の用法が伝わったものか。
【休−木+勾】
35
人 4
苗字に[休−木+勾]坂(さぎさか)がある。
【休−木+匂】
36
人 4
苗字に[休−木+匂]坂(さきさか・さぎさか)がある。
【休−木+天】
37
人 4
韓国国字とされることがあるが、「佛」の異体字として『字彙補』など中国の字書にあり、漢字である。『異體字辨』などの江戸期の異体字資料に見られるほか、古壮字にも同義であり、中国の影響を受けた漢字圏諸国共通の「佛」の異体字と考えられる。
【休−木+夫】
38
人 4
『国字の字典』が『大字典』から「せ つま おっと」と引き、国字とする。『漢語大字典』が『改併四聲篇海』を典拠に「同“夫”」とする。国訓でもなく、漢字そのものか。
【休−木+弖】
39
人 4
苗字に[休−木+弖]田(ひきた)がある。「弖・[休−木+弖]・[石+弖]」はそれぞれ「[砥−石]・低・砥」の異体字で、国字ではない。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「カタフク」また「タル」とある。「弖」・[休−木+弓]参照。
【休−木+元】
40
人 4
『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「モテアソフ」とある。『中華字海』が『龍龕手鑑(宋本)』を典拠に「音元義未詳」とする。国字ではない。
【休−木+攵】
41
人 4
『音訓篇立』に「ウカフ」とある。
【休−木+乏】
42
人 5
『名義抄(観智院本)』に「ウカフ ウカウ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「ウカヽフ」とある。「窺(うかが)う」意の国字か。
【休−木+石】
43
人 5
u4f66
『名義抄』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「カト石」とある。台湾の規格にあるが、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあり、『臺語大字典』・『漢語大字典』・『中華大字典』などになく、台湾での意味用法等は未詳である。
【価】
44
人 6
18-33
m628'
『国字の字典』が『文教温故』を引き「西仏」の意の国字とする。『名義抄』に「ユク」、『字鏡鈔』に「火季反 ユク」、『篇目次第』に「サ反 ユク」とある。『漢語大字典』が『改併四聲篇海』を典拠に「音似。像」、『中華字海』が『字彙補』を典拠に「同似」とする。『名義抄』などの「ユク」の訓があるものは、「価」の「にんべん」を「ぎょうにんべん」にした文字の異体字、常用漢字の「価」は「價」の異体字から採用されたものといずれも意味的にも字源的にも異なると考えられるが、国字とするのは問題がある。
【休−木+西】
45
人 6
『大字源』が『国字の字典』にある「価」を「西佛」の省字として誤って活字化したものか。この字形はこの意味では、本来存在しないものである。『中華字海』が『重編国語辞典』を典拠に「同[休−木+介]」とする。
【休−木+字】
46
人 6
『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「トル」、『音訓篇立』に「ホツ音 コロシトル」とある。前者は「俘」の、後者は「休−木+孛」の異体字であろうか。『国字の字典』は『法華三大部難字記』を引いて「舎人子(とねりこ)」の意の国字とする。
【休−木+企】
47
人 6
『名義抄(観智院本)』に「俗企字」とある。
【休−木+考】
48
人 6
u4fa4
『国字の字典』に「はたらく」意の国字とあるが、韓国でも「陳述書」の意の国字とされる。笹原宏之著『位相文字の性格と実態』に「1933年創業の(株)マンテンの創長横田辰三氏が「頭を使ってこそはたらくといえる」という信念から改造した新たな国字である。社章・社訓・著書にも使われ、[休−木+考]くなどのほか、[休−木+考]動という音さえもあるため文字といえる」とある。『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。
【俤】
49
人 7
48-63
m719
『書言字考節用集』に「ヲモカケ 本朝俗字」、『異體字辨』に「オモカゲ」、『同文通考』に「ヲモカゲ」、『和字正俗通』に「ヲモカケ」、『國字考』・『倭字攷』に「オモカケ」、『和漢三才圖會』に「ヲモカケ 爲面影之訓」とある。中国の漢字規格にあり、『漢語大字典』は梁啓超の『中国歴史研究法』を引くが、日本字とする。『古壮字字典』に「同伴」の意であるが、典拠もなく、詳しいことはわからない。国字としていいだろう。
【俥】
50
人 7
48-64
m720
明治5年11月14日付け東京日々新聞に「[馬+車]と俥の文字」の見出しで「方今文明の際凡そ事簡易にして、明解なるを尊ぶ、因って爾後馬車を[馬+車]と書し、人力車を俥と書し、文書往復し、文路の諸君それ之を記せよ。大簡堂主人誌。」とある。これによって人力車の意味で使われ始めたのは、人力車が発明された明治2年からこの記事の明治5年の間であることがわかる。中国で使われる船上動力機器の簡称としての用法は、1975年10月14日の『解放軍報』が初出もしくはそれに近いもので、それを使う機関士の尊称としての用法はなお新しい。始期が明らかでないが仏教で(儀軌)の略字としても用いられており、誤字とはされるが『令集解』にも使われている(新訂増補國史大系『令集解』第二286ページ頭注に「俥[孫−系+亥]、印本作陳訴」とある)ことも考慮しなければならない。中国象棋の駒の名称の一つとしての用法は、増川宏一著『将棋の起源』に「13世紀頃以後は敵味方の駒の表記が異なり、一方は相、師、仕、俥、[休−木+馬]、炮、兵で、他方は象、将、士、車、馬、砲、卒になっている。」とある。そうすると国字とはいえなくなる。国訓とするのが適切であろう。なお、尾崎紅葉が作ったとする俗説があるが、明治5年でも紅葉は6歳であり、まともな検討の余地がないのは当然のことである。『漢字の研究』に「ジンリキ」、『大字典』に「國字 クルマ 人力車 會意 最近の國字にして人力車のこと。」、『新修漢和大字典』(國字)に「くるま」、『新大字典』に「国字 〔会意〕 くるま。人力車。明治時代にできた国字で、人力車のこと。」、『大漢語林』に「国字 くるま。人力車。」、『漢語林』・『旺文社漢字典』に「国字 くるま」など、いずれも同様な解説で、仏教略字や中国象棋の駒としての用法を知らないが如く取り扱っていない。現代中国での新しい用法は別として、位相的に使用範囲が限定されるといってもこの2つの用法は、無視すべきではない。
【俣】
51
人 7
43-83
m718
丹羽基二著『日本姓氏大辞典』などに多くの苗字があげられているが、「俣東(のなみ)」以外は「また」と読む。『倭字攷』に『古事記』などを典拠に「マタ 股」とあり、『国字の字典』が「又」の意の国字とする。笹原宏之著『異体字・崩し字に字源俗解を介した漢字の国字化』に「国字は元来、日本で作られた漢字をさす。しかし、漢字の異体字や行書体・草書体が日本で楷書として固定化したため国字とよばれるようになったにすぎないものがある。各氏が説く「俟」>「俣」「[俣−天+矢]」などの説が知られる」とある。『原本玉篇』を簡略化して作られたといわれる『篆隷万象名義』もこの字形であり、書写の影響も否定はできないが、中国から入ってきた当初からこの字形であった可能性もある。「俟」の隷書体にもあり国字とするのは問題がある。『運歩色葉集』に「マタ」、『篇目次第』に「牛矩切 キュ反 ク反 ヲホキナリ」、『音訓篇立』に「ク音 マタ イタム マツ」とある。
【休−木+志】
52
人 7
u4fe7
『法華三大部難字記』に「タシナミ・キワメタリ」とあり、『国字の字典』は国字とする。台湾の規格にあるが、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあり、『臺語大字典』・『漢語大字典』・『中華大字典』などになく、台湾での意味用法等は未詳である。
【休−木+君】
53
人 7
u4fb0
m635
『音訓篇立』に「ノコキリ」とある。漢字本来の意味は、「くるしむ・せむし」などで、この意味はない。国訓と考えられる。
【休−木+串】
54
人 7
『名義抄(観智院本)』に「クヒ」とある。「杭・株」の意の国字か。
【休−木+(五*子)】
55
人 7
『法華三大部難字記』に「フ トリコ」とある。『中華字海』などにないが、「フ」の音が付けられているところをみると、「俘」の異体字であろうか。
【休−木+芳】
56
人 7
苗字に[休−木+芳]島(しかま しがま かしま)がある。
【倹】
57
人 8
23-80
m823
『中華字海』に「同儉。見日本《常用漢字表》」とある。また「剣 同劍。字見《宋元以来俗字譜》」とある。このことから和製異体字ではないことが類推できる。
【俣−天+矢】
58
人 8
u3468
m824
2-1-62
『中華字海』が『宋元以来俗字譜』を典拠に「同侯」とする。国訓と考えられる。「俣」を参照。
【休−木+夜】
59
人 8
『音訓篇立』に「アフク」とある。
【休−木+肯】
60
人 8
『音訓篇立』に「キカフ」とある。
【休−木+定】
61
人 8
『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』・『音訓篇立』に「ウツス」とある。
【休−木+妻】
62
人 8
『音訓篇立』に「サイミ」とある。「菜味」の意の国字であろうか。あるいは、麻織物の一種「細美」のことであろうか。
【他+可】
63
人 8
『名義抄』の仏教系などの文字を集字したところにあるが、注文がない。『中華字海』などにないが、漢字と考えられる字も同じ箇所にあり、仏教の内典などでしか用いられなかったため字書に載らなかった文字かもしれない。
【休−木+耶】
64
人 9
H17-86
1-14-34
国字とされることもあるが、韓国南部の旧国名「伽[休−木+耶]」に関係する事物(伽[休−木+耶]琴など)に用いられる韓国国字である。
【休−木+飛】
65
人 9
苗字に古[休−木+飛](ことび)がある。
【休−木+政】
66
人 9
『名義抄(観智院本)』に「俗政字」とある。
【休−木+(天*目)】
66a
人 9
『音訓篇立』に「アフク」とある。
【俣−天+早】
67
人 9
『国字の字典』が『伊京集』を引き「流行らす」意の国字とする。
【休−木+草】
68
人 9
『名義抄』に「ハヤウス」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』・『字鏡集白河本』に「ハヤラス」とある。『字鏡集白河本』は、4画の草冠である。
【休−木+(道−首+有)】
69
人 9
『名義抄(観智院本)』に「クツカヘル」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「クツカヘス」、『字鏡集寛元本』に「クツヘス」とある。『字鏡集寛元本』は「クツカヘス」を書写時に誤ったものか。『国字の字典』は『伊京集』を引き「覆す」意の国字とする。
【休−木+持】
70
人 9
『名義抄(観智院本)』に「俗持字」とある。『中華字海』が『龍龕手鑑(宋本)』を典拠に「音池義未詳」とする。国字ではない。
【伯+欠】
71
人 9
『篇目次第』に「ソクツケシ 无」とある。「フクツケシ」の誤りか。
【伯+攵】
72
人 9
『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「フクツケシ」とある。「フクツケシ」は欲が深いこと。
【休−木+怠】
73
人 9
笹原宏之著『国字と位相』に「渡辺淳一『うたかた』に気[休−木+怠]いと使われている。」とある。「怠」の個人的な異体字のようにも見えるが、『名義抄(観智院本)』に「[休−木+(公*心)] [休−木+空] キハム マレリ [休−木+怠] 上字誤作歟」とある。
【休−木+風】
74
人 9
H17-71
m851
岩波文庫版『日本永代蔵』に「仇」の異体字とある。『漢字百科大事典』は西鶴の『日本永代蔵』から「あだ」と引く。『漢語大字典』に「地名。姓。」とある。西鶴の個人的な用字法とも考えられるが、広い意味で国訓といえるか。
【休−木+荏】
75
人 9
『皇朝造字攷』に「佐桃」とある。典拠とされる『新撰字鏡享和本』のほか『新撰字鏡群書本』・『新撰字鏡天治本』も木偏である。『皇朝造字攷』は木部の中に人部と注記してこの字を置く。何か別意があるのか、不明である。
【休−木+(虫+也)】
76
人 9
『名義抄』に「俗地字」とある。『中華字海』が『龍龕手鑑』を典拠に「音舌義未詳」とする。国字ではない。
【休−木+弱】
77
人 10
『名義抄』・『伊呂波字類抄(早川流石写)』に「イヤシ」とある。「卑し・賤し」の意の国字か。
【休−木+(大*言)】
78
人 10
苗字に[休−木+(大*言)](せん)がある。
【休−木+哥】
79
人 10
『名義抄』に「ツカヒ人」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』・『音訓篇立』に「ツカヒヽト」、『字鏡集白河本』に「カ ツカヒヽト」とある。「使人(つかひひと)。召使。使者。」の意の国字か。
【休−木+{(一*田)+欠}】
79a
人 10
『字鏡集白河本』に「フクツケシ」とある。
【働】
80
人 11
38-15
m1079
『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「[巷−己+土 ハタラク 動 働 訛]」、『明応五年版節用集』・『大谷大学本節用集』に「ハタラキ」、『運歩色葉集』に「ハタラキ 動 同」、『増刊下学集』・『弘治二年本節用集』・『早大本節用集』・『天正十七年本節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』に「ハタラク」、『同文通考』に「ハタラキ 活也動也」とある。『名義抄』で「ハタラク」の訓があるのは「跳・[鮎−占+各]」のみで「働」の字はない。このごろには「働」の字はまだなかったのであろうか。『中華大字典』・『中文大辭典』などに「日本字」とある。『字鏡抄』に「リョウ リャク 掠 俗 トフ ハコ ノリ コハシ カスム ウハウ カタム アツム ウツ」とあるのは別字を書写時に誤ったものか。『辞書にない「あて字」の辞典』が、梶井基次郎『書翰』・永井荷風『荷風随筆』から「自働車」と引用し「=自動車」、長谷川四郎『張徳義』から「自働的」と引用し「=自動的」とする。『運歩色葉集』に「ハタラキ 動 同」とある用法が、かなり近い時代まで残っていたことがわかる。このような事例に対して『大系漢字明解』に、「ドウ ハタラク 動の俗字なり。勞働、自働は勞働、自動なり。」とある。これらからすると、国字として作られたものではなく、「動」の和製異体字としてできたものが、「労働・働く」などの場合にのみ用法が残り、国字と考えられるようになったものとも考えられる。
【休−木+亀】
81
人 11
苗字に[休−木+亀]井(かめい)がある。
【休−木+康】
82
人 11
『字鏡鈔』に「イタワシ」、『篇目次第』に「イタハシ 无」、『音訓篇立』に「イタハシ」とある。
【休−木+鳥】
83
人 11
『国字問題十講』に「『東京毎夕新聞社』の懸賞で一等に当選した飛行機の意を表す文字」とある。この文字は『龍龕手鑑(宋本)』にあり、このような文字が当選することは問題がある。「男△男△男」参照。
【休−木+冨】
84
人 11
『国字の字典』が『[瑣−貝+月]玉集』を引き「諂(へつら)う」意の国字とする。
【休−木+常】
85
人 11
『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』・『篇目次第』に「ナリハヒ」とある。「生業(なりわい)」の意の国字か。
【休−木+(方+長)】
86
人 12
『名義抄(観智院本)』に「俗[方+長]字」とある。「張」の異体字か。
【佛+佛】
87
人 12
『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』に「ヲヒラカナリ」、『字鏡集寛元本』に「タヒラカナリ」、『篇目次第』に「ヲヒラカナリ 无」とある。「タヒラカナリ」が正しいか。
【休−木+(要−女+舛)】
88
人 12
H18-49
1-14-38
補助漢字にある文字であるが、日本規格協会の『JIS X 0212-1990』が音義未詳とする。『中華字海』に「同仙」とある。「仙」の異体字である。
【休−木+(西*国)】
89
人 14
「休−木+(西*國)」に同じ。青森県上北郡東北町[休−木+(西*國)]沢(ほとけざわ)を[休−木+(西*国)]沢とも表記する。
【休−木+(要−女+国)】
90
人 14
2-03-02
「休−木+(西*国)」がこの字形となることがある。
【休−木+歴】
91
人 14
『音訓篇立』に「ウレフ ウルフ」とある。
【似+眞】
93
人 15
『歌舞伎評判記集成』(役者福若志)に「物[似+眞]鸚鵡鳥(ものまねおおむのとり)」とある。
【休−木+磊】
94
人 15
『名義抄(観智院本)』に「俗儡字」とある。
【休−木+(磨−石+心)】
95
人 15
『名義抄(観智院本)』に「ウルフ」とある。
【休−木+(言△生△攵)】
96
人 16
『篇目次第』に「カウ カタトル ハナヒル」とある。「ハナヒル」は、くしゃみをすること。
【休−木+(西*國)】
97
人 17
([休−木+(西*國)]沢 ほとけざわ)は青森県上北郡東北町の地名。『書言字考節用集』に「ホトケ 支那ノ俗字」とある。国字とされることがあるが、「休−木+(西*国)」とともに「[休−木+天]・[休−木+西]・[休−木+(西*大*明)]・[休−木+(西*域*哲)]」などと同じく、佛の異体字の一つにすぎず、この字形自体も中国で作られたことがわかる。笹原宏之著『佛の一異体字[休−木+(西*國)]について』にも詳しい。
【休−木+(要−女+國)】
98
人 17
[休−木+(西*國)]がこの字形となることがある。
【休−木+雙】
99
人 18
『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「[休−木+雙]娘山崎通(ふたりむすめ やまざきがよい)寛保2年12月初演」とある。
【佛△佛△佛】
100
人 19
『字鏡鈔』に「サカシ マカト」とある。『篇目次第』に「サカシ マコト 无」とある。「賢し」などの意の国字か。
【信+言+信】
101
人 23
『法華三大部難字記』に「タカフ」とある。「違う」意の国字か。

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大原 望<n-oohara@mue.biglobe.ne.jp> Copyright (C) Nozomu Oohara,1998-2000