ツーリングレポート

池田から徳島へ
−見の越編−

1997年8月10日(日)〜8月12日(火)

「次は山間部を帰ってこよう」
と思ったのは、先日、FCYCLOのN.Y.erさんの迎撃で、
池田から徳島まで吉野川に沿って走ったときのことだった。
今年のお盆休みは予定がなく、どこにも行かないつもりでいたが、
夏空に誘われて、早々に「見の越(みのこし)行き」を実行することにした。


■8月10日(日)晴

ほとんど思いつきである。
午前中、家の雑用を済ませ部屋で涼んでいると、
窓の外で白い雲がゆっくり流れている。
「もったいないなあ〜こんな天気に」
時刻表をめくると午後の池田行きの急行に間に合いそうだ。
大急ぎでリュックに荷物を放り込んで、家を飛び出した。

JR徳島駅に着いたのは発車時刻の30分前。
「イテッ!」ギアで手のひらを切る、
「うおー、どこじゃ!」ハブのスプリングが飛んで見失う。
あせりまくりの輪行作業、
ハンドルがはみ出しているがお構いなし、
13時40分発の急行「よしの川」は、
そんな苦労を知る由もなく静かに動き出した。

汗をぬぐってホッと一息、車内でリュックの中身を詰め直す。
そもそも、この「見の越」を考えた理由は3つある。
1.この大きな50リットルのリュック。
  去年、キャンプツーリング用にと買っておいたが、一度も担いだことがなかった。
2.池田から徳島まで徳島県を正真正銘?「横断」したかった。
3.そして徳島のチャリダーとして一度「見の越」を経験しておくこと。

さて、午後4時過ぎJR池田駅を走り出す。
R192池田大橋から吉野川右岸をまっすぐ進む。
とりあえず今日は祖谷渓キャンプ村で1泊し、明日、見の越に向おう。

重いリュックが早速腰にくる。
テントはともかく、シュラフは余分だったか?と後悔するが仕方ない。
祖谷口から祖谷街道(県道32号)に入ったとたん夕立に見舞われ、
雨宿りする場所がなく、いきなりビショ濡れになってしまった。
「わざわざ濡れにきたのか、今日は」

キャンプ村の手前、出合の集落で買い出しして、キャンプ村に着いたのは午後6時。
「雨上がりの地面にテントを張るのはイヤだなあ」と思っていたが、
管理棟へ受付に行くと「集会場を使ってもいいよ」とのこと。
大阪から来たグループ1つ、静岡から来たライダー1人、
先客がいたが、おじゃまさせてもらう。

管理棟でカップラーメンがあったので買い、湯ももらった。
自販機もあったので買い出しする必要はなかった。
温水シャワー(¥100)は場内に一ヶ所ある。

さすがに祖谷の山中、夜中は冷え込んだ。
持ってきたシュラフはお荷物ではなかったようだ。

■8月11日(月)晴

6時起床。祖谷川の川面に朝もやが立つ。天気は良さそうだ。
6時40分出発、祖谷川の深いV字渓谷が時折顔を見せる祖谷街道を、
上流に向かってひたひた走る。
以前ここを逆行したときは延々の下りだったが、思ったほどの上りではない。
30分ほどで祖谷温泉、ここから一宇まで下りになる。
静かな朝の一宇の集落を抜け、8時、かずら橋に到着。
リュックを「ヨイショ」と肩から下ろし、ベンチに腰掛け一息いれる。

祖谷街道をさらに進む。
剣山へのメインルート、貞光−見の越間が6月の台風で通行止(時間制限)
になっているせいで、迂回してくる車で交通量が結構多い。
R438にスイッチして、9時40分、京上に到着。
観光物産センターで遅めの朝食を摂る。
ボトルに水をいただくと、親切に氷まで入れてくれた。

これよりR439をひたすら上って行く。大きな集落もない。
落合、久保、緑濃い山間の道をもくもくと進む。
既にリュック背負ってのペダリングが苦痛になっている。
時々、自転車下りて腰を伸ばしながら、11時15分、
やっとの思いで菅生の集落に着く。

商店が2軒、バス停になっている方の店でアイスクリームを買う。
105円。
さすがにここまで来ると、しっかり消費税も取られる。が、なんだか逆にうれしくなる。
店の前で小休止、狭い道にぞくぞくと県外ナンバーの車がやっきて対向もままならない。
向かいの家の男の子が近寄ってきて、自慢の三輪車を見せてくれた。
「ボク、今日は何してたの?」
「チエちゃんとこに行ってた」と斜面の上にある家を指さす。
「ふ〜ん、チエちゃんは友だち?」
「・・・」
はにかんで、ニッコリうつむくボクに素朴さを感じた。

菅生を過ぎると徐々に上りが急になる。
12時25分、名頃の集落。
自販機があったのでジュースを2本買い、川の対岸にある小学校で大休止。
まだ42km程しか走っていないのに、えらく疲れた。
頭から水をかぶり、上半身裸になって寝る。

13時45分。名頃を出てすぐ、何やら賑やかな場所が現れた。
すっかり忘れていたが「奥祖谷かずら橋」である。
名頃で休まず、ここまで来ていればよかった。
民宿兼食堂、自販機、トイレもあり休憩するにはちょうどいい。

かずら橋見学は、入場料500円と少々高いが、せっかく来たのだから立ち寄ってみる。
遊歩道を少し下りて行くと二重のかずら橋が架かっている。
「本家」かずら橋よりは観光地化されてなく、こちらの方がずっとよい。

ここから谷間の奥に目をやると、遠くに見の越の建物が見える。
「あと少しだ」
しかし長々と続く坂道は、なかなか辿り着かせてくれない。
剣山山頂部は雲に覆われて見えない。
徐々に高度を増し、最後の標高差100mを急な勾配で登り詰めると見の越に到着する。

15時30分、見の越
着いたとたん、ひどい雨になる。
レストハウスに逃げ込み、汗だくのTシャツを着替える。結構肌寒い。
天気が良ければこのまま剣山山頂に登ってみたかったが、さすがに躊躇する。
登山リフトの終業時間は5時。
こんな天気、こんな時間にもかかわらず、リフトに乗り込む人は多い。
今日はこの辺の民宿に泊まって、明朝登ってみようか。
とも考えたが、せっかく苦しい思いで担いできたテント、宿代ももったいない。
雨が止むのを待って、そのまま中尾山(なこやま)高原キャンプ場に向うことにした。

見の越トンネルを抜けると、息を呑むような雄大なスケールが広がる。
この感動を味わうためにも、見の越を越えるならぜひ西側からアプローチして欲しい。
待望のダウンヒルを楽しむのも束の間、中尾山に向かう林道との分岐に突き当たる。
左へ、林道はいったん上り坂で始まるが、あとは緩やかな下り、眼下に穴吹川の谷を見下ろす。

17時10分、中尾山高原キャンプ場
ここは木屋平村営の立派な施設で、キャンプするには何不自由ない。
グラススキー場や体育館、テニスコートも持っている。
池の横にある中尾山食堂がキャンプ受付。
「高いなあ〜」
おばちゃんに文句を言いながら1000円払う。
キャンプ客用の風呂もちゃんとある。
家庭の風呂並だがこれは大いに助かった。
「風呂はありますか?」と尋ねたため、事前に入浴料300円取られたが、
黙って利用しても、わからないだろう。

隣接の宿泊施設「平成荘」で夕食を食べ、
標高1000mの高原の、心地よい風に吹かれながら夜が更けていった。

■8月12日(火)晴

7時45分、中尾山をあとにして再び林道を戻る。
キャンプ場から直接に木屋平へ下る道もあるが、あえてR438に戻る。

今日も剣山の頂は雲に隠れて見えない。
急峻な斜面の道をくねくねと下り、川上に出る。
この辺りはかつて、大規模な水害で地形が大きく様変わりしたらしい。
土砂で埋もれただろう広々とした谷間に、2車線の道が付けられ豪快に下って行ける。

中尾山から下りてきた道と合流し谷口の集落を抜け、
穴吹川の清流を見ながら行くとやがて、川井峠に差し掛かる場所に休憩所がある。
さっき追い越していったオフロードバイクが止まっていた。
北海道から陸路を走って来た学生さんで、四国を廻ってまた陸路を帰るらしい。タフである。
今日が初日の阿波踊りを非常に楽しみにしていた。

少し漕いでは足をつき、リュックの底をシートの上に乗せて休む。
腰を伸ばし伸ばししながら10時50分、川井峠に着く。
これより鮎喰川の谷を神山に下って行く道は狭く、長い坂道である。
出きることなら徳島側からアプローチしたくないが、
一人のサイクリストが苦しそうに上がって来ていた。
「今日はどこまで行くのだろう」
軽く手を挙げ挨拶を交わす。

さて、神山に入ると道は広くなり、鮎喰川に沿って悠々と走れるようになる。
このままR439を行けばもう一つ峠を越えることになり、道も再び狭くなる。
ましてや風景も良いとは言えない。

いい加減、腰は限界にきていたため、少しでも楽をしようと鮎喰川に沿う道を選ぶ。
広野で右岸に渡り、そのままR192の上鮎喰橋に出る。
浴衣姿で阿波踊りに向かう人達を横目に、街の中を賢明にペダルを漕いで帰って行く。

「自分ひとり、汗だくで何やってんだろ」
私の短いお盆休みは、腰痛と共に終わった。


1日目
■距離:18.3km
■時間:1:07:41(NET)
■AVE.:16.1km/h
■MAX.:35.8km/h
2日目
■距離:61.5km
■時間:5:14:27(NET)
■AVE.:11.7km/h
■MAX.:41.4km/h
3日目
■距離:78.8km
■時間:4:12:47(NET)
■AVE.:18.7km/h
■MAX.:64.2km/h

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