ツーリングレポート

四国八十八ヵ所を走る
−阿波の国−

2001年1月8日(月)〜1月11日(木)

しんしんと冷える暗い夜道をライトが照らす。
「この寒い時期になんで遍路など・・・」
ま、これもひとつの試練。
本来なら歩いて周りたいが、時間がないし、未知なる世界。
とりあえず自転車で体験しておこう。


■1月8日(月)晴れ

というわけで、早朝5時半に家を出て、スタート地点の1番札所霊山寺を目指す。
こんな時間に美容院の明かりが灯っている。
そう、今日は成人の日。新しい世界への門出を祝う日。
「遍路に旅立つのにふさわしいのお〜」
こじつけか、ひとり納得しながら吉野川大橋の上で朝日を拝む。

霊山寺に着いたのは8時前、早速、寺の横にある案内所に遍路グッズを買いに入る。
「あんた、自転車かい?」
店のおばちゃんがおもむろに必要最小限の物を机の上に並べた。
線香、ローソク、納め札、納経帳。
これに経本、数珠、頭陀袋(ずたぶくろ)、そして白衣をプラスして、しめて9950円也。
いきなり福沢諭吉が消えた。

折り目が入った白衣に、肩から下げた頭陀袋。
白光りしていて気恥ずかしい。
「八十八ヶ所周り終える頃には、ボロボロになるんやろなあ〜」

本堂の前に立つ。マニュアルに従って作法、お経は読めない。
一礼して門前に出る。
「ま、どうにかなるじゃろ」

さあ、遍路(仮にも)としての一歩を踏み出す。
何度も通ったことのあるこの辺りの道も、違った次元で見て取れるだろう。
なるべく遍路道に沿って走る。
へんろみち保存協力会の「へんろシール」が導いてくれる。
いままで気付かなかった頼もしい道しるべ。これから世話になるぜい。

今日は休日のせいか、日帰り遍路ツアーの観光バスが多い。
ドドっとやって来ては、リーダー格の人が大声でお経を唱え、大合唱が始まる。
その間に添乗員は、全員の納経帳を入れた大きなバッグを担いで納経所へ行き、授印を済ませる。
これに遭遇すると納経所でかなり待たされることになる。
このパターンを学習したので、時間差攻撃をしようとするが、相手はバスなのになぜか一緒になる。
「またかよ」
4番から9番までそんなことを繰り返す。

10番切幡寺。切幡山を中腹まで333段と234段の急な石段を登る。
いままでの道程が楽だっただけに苦しいアプローチ。
心臓ばくばくで辿り着くが、後から思えばこの程度は序の口であった。
納経終了時間も押し迫り、次の11番藤井寺へ急ぐ。

吉野川を渡り川島町へ。
へんろシールに従い進み続けると、最後急な上りで民家の庭に入ってしまった。
どうやら完全な遍路道。時間がないのでその先は歩く。
少し下れば境内に出た。本堂左には焼山寺に続く「遍路ころがし」への突入口がある。
静まりかえった寺を出て自転車まで戻り、さっき曲がった遍路道の分岐に戻る。
寺への車道はこの道を直進した信号交差点を右である。

一旦鴨島町市街に行ってコンビニで食料調達し、藤井寺の駐車場にテントを張る。
県内の霊場巡りは軽装でもよかったのだが、
予行演習と冬場のテントを経験すべく、あえて本番装備で来た。
日没が早いし、寒いし、寝袋に入るしかない。
まだ7時前、退屈な夜を過ごす。


■1月9日(火)曇りのち雨

「バリバリバリ」
結露して凍っているテントを撤収する。
調子の悪いサイクルメーターをいじってみるが治らない。諦めて出発する。
すぐに梨の木峠への登りに入り、ギアを変えるが、ディレイラーも調子が悪くて再々チェーンが外れる。
「クソったれい!」
今日は難所の12番焼山寺が控えているというのに無駄な時間ばかり食う。

神山町内のスーパーの角を右に入れば焼山寺への道。まずは腹ごしらえ。
谷道を緩やかに上り詰めた左右内の集落に、遍路休憩所がある。
重い荷物はここに置き、身軽にして焼山寺への激坂に挑む。
田中食堂前から坂が始まり、常識はずれの斜度が続く。
杖杉庵で呼吸を整え後半戦、多少は常識的な坂になるがそれでも急、やっとの思いで辿り着く。
杉の大木を包むように凛とした空気が漂い、静寂とした境内には誰もいない。
納経所に行くと「食事中」とあるので1時になるのを待つ。

「おお!」
150円を覚悟していた自販機に、なんと100円ものがあるではないか。
暖かい缶コーヒーで一息いれる。
1時間15分かけて登った道を10分で下り、鮎喰川沿いを次の13番大日寺へ急ぐ。
既に体力は使い切り状態。果たして今日のノルマをこなせるだろうか。

16時45分、17番井戸寺。
速射連打でどうにか間に合い、名物の「面影の井戸」を覗き込んでみる。
自分の顔が水面に映れば長寿、映らなければ不幸にみまわれるらしいが、
薄暗い夕暮れ時に映るわけがない。
雨の夜道を帰宅途中、小さな溝にはまって豪快に転倒、サドル部分を破損する。
「井戸を覗くんじゃなかった」
白光りしていた白衣と頭陀袋は、2日目にして既に汗と泥にまみれていた。

■1月10日(水)晴れ

自転車を修理して、ついでにタイヤを新品に交換。
試乗を兼ねて自宅近くの18番恩山寺、19番立江寺まで走る。
2日間の自転車遍路体験を終え、装備を再検討、荷物をまとめ直して明日に備える。


■1月11日(木)晴れ

仕切り直して、いざ出発。
果たして行き倒れずに帰って来られるだろうか。

室戸岬までは走り慣れた道。
20番鶴林寺への激坂も勝手がわかっているとはいえ、この重い荷物ではどうにもならん。
「こんなことなら、ここも昨日済ませておけばよかった」
と思っても後の祭り、さっさと降りて自転車を押し上げる。

鶴林寺に嫌気をさし、21番太龍寺はロープウェイで上がる。
楽して上がったものの、急坂の長い下りにブレーキを握る手がしびれる。
下りでこれほど苦痛を感じたのは初めてである。

23番薬王寺で徳島県の霊場は終えるが、牟岐町内で日没となる。
おとといの転倒の件があるから、暗くなっての行動は控えることにした。
日が短いと幾らも行動できない。(自分のペースが遅いだけか・・・)
JR浅川駅にテント設営。

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