ツーリングレポート
四国八十八ヵ所を走る
−土佐の国−
室戸岬を目指して海岸線を南下する。
北風に押されて快走、のはずが予想に反して向かい風。
ぜんぜん前に進まない。
■1月12日(金)晴れ
岬を回れば追い風か?そんなわけがない。
半島上の風車は悲しきかな北西を向いている。不思議な風向き。
ひとまず馴染みの岬のバス待合所へ行き休憩、猫と戯れる。
なんか雰囲気が違うと思ったら、小屋がサッシ戸に改装されていた。
24番最御崎寺へは登山道を往復し、25番津照寺を経て26番金剛頂寺へと向かう。
寺へは小高い山を上がって行くが、眼下に太平洋を見下ろせて気分がいい。
海沿いの道は、強烈な風で押し戻されるほど。
吉良川の古い町並みを抜け、やがて奈半利の町に入る。
「三十二士温泉」なるものがあったので、これ幸いと飛び込む。
休憩室でテレビを見ていると明日から大寒波が到来、高知でも積雪があるらしい。
「ヤバイなあ」
バス停小屋で底冷えの夜を過ごす。

■1月13日(土)雪のち雨のち曇り
風邪ひいたか?くしゃみと鼻水が止まらない。
朝一番のバスが来る前に外へ出る。
27番神峯寺への登りに差しかかったところで、荷物を降ろして道端に放置する。
空車にしたとはいえ、棚田をストレートに貫くような坂道はしんどい。
「チリリン、チリリン・・・」
鈴の音が聞こえると思ったら、下から遍路が一人歩いてくる。見ればご年配な男性。
恐ろしい健脚ぶりですぐに追い付き、「真っ縦」と呼ばれるへんろ道に消えていった。
名前通りのこんな斜面に「よくぞ作ったな」と思える車道を押して上がる。
到着と同時に雪が舞い始め、足早に寺をあとにする。
安芸からは自転車道に進み夜須町へ。
寒風の中を28番大日寺から30番善楽寺と巡って高知市街に入る。
今日はBH(ビジネスホテル)泊にしていたからよかったものの、
これほど寒いとテントは辛い。

■1月14日(日)晴れ
身を切る寒さ。まぶしい朝日を浴びながら、31番竹林寺へと五台山に登る。
高知市街の背後の山は、雪で真っ白になっている。
続く32番禅師峰寺も小高い山の上。
南側に展望が開け、整然と並ぶビニールハウスの向こうに太平洋が輝く。
浦戸大橋の手前を右に入り、点滅信号のある交差点を左に曲がれば渡船乗り場に着く。
33番雪渓寺へは浦戸湾をこの渡船で渡るが、今日は日曜なので便数が少ない。
待つ間、待合室でテレビを見ながらボーっと過ごすが、
なんか地元の人になれた気分で、こういう時間は楽しい。
34番種間寺付近は田園地帯を水路に沿って走る。
小学校のマラソン大会だろうか、田んぼの周りを走っている。
相変わらず滴る鼻水、体が重たく走るペースが上がらないが、のどかな風景に心が和む。
今日は平野部を巡るだけなのに時間がかかる。
久礼まで行きたかったが、調子も悪いし早々に切り上げて須崎で泊まろう。
36番青龍寺を打ち終え、須崎市街に入ったところでコンビニで休憩する。
少し先のほうで事故があったらしく車が停滞している。
「あらまあ〜」
派手な事故。コンビニに寄らずに走っていたら巻き込まれていたかもしれない。
今日もBH泊。
■1月15日(月)曇りのち雪のち晴れ
寝過ごして出発が遅れてしまった。
今日の札所は窪川の岩本寺だけなので、ツーリング主体の一日になる。
できれば足摺岬まで行きたい。
久礼坂に差しかかるところで、ママチャリに乗った遍路に会う。
やたらとお接待の話を持ち出し、私に接待をせがんでいるのが見えみえだが、無視して先を急ぐ。
こっちはかなり降ったみたいで、七子峠に上ったとたんに雪色が濃くなる。
車道に雪はないものの、バシャバシャしぶきを上げながら、ほどなく37番岩本寺に到着。
境内は雪一色で風情があった。

「寒ーっ」
寒風をもろに受けながら片坂を下り、山間の道を進む。
路肩は雪に覆われ、日陰に入ると路面に積雪も多く、恐る恐る走る。
佐賀の町から海に出て、佐賀公園で休憩する。
自転車はグショグショ、フレームに凍り付いた雪をペットボトルの水で洗い流す。
そうこうしているうちに雪が降り始めた。
中村市街の手前をショートカットして四万十川に出る。
雪は一旦止んだが、伊豆田トンネル辺りで再びボタ雪吹雪きとなる。
「ひえー」
南国土佐は南に行くほど寒くなる。土佐清水で宿に逃げ込む。
■1月16日(火)雪のち曇り
夕べしんしんと雪が降っていたが、積雪はないみたいだ。薄日も覗いている。
荷物は民宿に置かせてもらい、38番金剛福寺のある足摺岬まで往復する。
半島部に入るやいなや冷たい北西風にあおられ、吹雪き状態となる。
「おいおい、四国最南端やろ?ここは」
岬に到着すると一転して晴れ。という、わけが分からん天気。
参拝後、遊歩道でも歩こうと思っていたが、この寒さでは観光気分になれず退散する。
再び吹雪きの中を土佐清水に戻り、おカミさんの見送りを受けて民宿をあとにする。
39番延光寺へは山間部を横切って行くつもりだったが、
この雪ではどうにもならんだろうと、一旦中村まで戻り、国道で行く。
強烈な風と横殴りに吹きつける雪の中を、1時間に10km満たないスピードでこぎ進む。
「いったい、いつまで続くんやこの天気!」
叫んでないとやってられない。
「どっから来たん?兄ちゃんかいな?」
延光寺の門前で、ハイテンションな4人組のおばちゃん連中に出くわす。
『いえ、おじさんです。徳島です』
「いやホンマ、おっさんやわ」(う・・・)
「え〜?ワテらも徳島やん」(聞けば隣り町)
「いやっ見てみ、この人自転車やで。ここまで来たん?」(ほっとけ)
「寒いのに元気やなあ、やっぱり若いわ兄ちゃんやわ。キャハハ・・・」
ハイテンションなまま、寺へ入っていった。(何しに来たんや)
八十八ヵ所はいろんな人達が周っている。
宿毛で今日もBH泊。もうテントで寝る気にはならない。
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