20■3月13日(火)晴れ
JR湯田温泉駅は一晩中明かりが点いていた。
おまけに通過列車の音で5時に起こされ「ぐっすり」とはいかなかった。
この駅の乗降客は多いみたいで、始発からぞくぞく人がやってくる。
私もバッグを引き取りに行くため列車に乗る。
3度の乗り換えで門司港駅着。
門司署では丁寧に対応してくれた。
バッグを拾ったのは、非番でたまたま通りがかった同署員とのことで、
これが不幸中の幸いだったかもしれない。
いずれにせよ何かと縁の深くなった門司の町。
このまま旅が順調に行けば、おそらく終着もこの町になるだろう。
お昼過ぎ、湯田温泉に帰って今日も「温泉の森」で過ごす。
家に置いてきた片割れのバッグを、郵便局留めで送るよう手配したが、
届くのは明日になるらしいので、もう1日滞在する。
これで4バッグからも解放されて荷物も元通り。
新しく買い揃えた物もあり、いろいろ無駄が生じたが嬉しい誤算。
アクシデントがあるたびに知恵も付くし、いい教訓になった。
(走行距離2km)
21■3月14日(水)晴れ
山口郵便局で用事を済ませて出発。
防府市まで自転車道があるようだが、どこを通っているかわからないし、
距離も延びそうなので、国道262号線で直に南下する。
2バッグになり、ウイックロン製のTシャツも戻ってきて快適なもんだ。
防府市街から国道2号線を、山陽本線や山陽自動車道と絡んで走り、
新南陽市から徳山市街にかけては、
工業地帯をうねるようなアップダウンで進む。
さっきからコンビニに寄りたいのに、
こんなときに限ってなかなか見つからない。
徳山市を過ぎれば、のどかな山間部に入ってゆくが、
さすが国道2号線だけあって交通量は減ることなく、再々怖い目に遭う。
大きな峠を越えてやっと岩国市に入る。
錦帯橋近くの公園に寝床の目星を付けて、スーパーに買い出しに行く。
「こんにちは!野宿ですか?」
子供連れの主婦にいきなり声を掛けられ面食らう。
きっとアウトドアなファミリーなのだろう、
小汚い旅行者にも理解ある人がいる。と思うと心強い。
(走行距離108km)
22■3月15日(木)曇りのち晴れ
久しぶりに暖かく過ごせた夜だった。
夜半からの雨でスッキリしない天気の中、広島市に向かう。
併走する山陽本線に、ひっきりなしにいろんな電車が来て、
普段目にしない田舎もんは、つい嬉しくなる。
男という生き物は元来電車好きなのかもしれない。
宮島口を過ぎ、次第にゴミゴミした市街部に入ってゆく。
渋滞した車の横を走るのは、気恥ずかしくて苦手だ。
広島は一度来ているので、素通りして呉へと向かう。
マツダの大きな工場を見て右折、
国道2号線を離れ瀬戸内側の道へと進む。
町並みが途切れたところで、右手に海が広がりホッとする。
天気も回復して風は軽いフォローでペダルも軽い。
そうこうしているうちにすぐ呉市街を通過、
少し遠回りになるが「音戸の瀬戸」経由で2号線を東進する。
安浦町への峠で向こうから歩いてきた老人に呼び止められた。
酒焼けして顔が真っ赤な老人である。
「広(さっき通ってきた町)までどれくらいあるかね」(来るか?)
「カバン盗まれてしまってな」(そ〜ら来た)
「電車賃など持ってねえか?」(やっぱり)
「スミマセン持ってないですね」
悪いけどすぐ立ち去る。あんたに飲ます酒代はないのだ。
そろそろ寝場所と思い、トイレがてら安登駅に立ち寄る。
トイレから出てくると同業者が来ていた。
高知の青年A君で、大阪を出発して沖縄に向かっているとのこと。
今日はその彼と一緒に最終電車を待つことになった。
(走行距離104km)
23■3月16日(金)晴れ
春は一体いつ来るのか。
夕べは寒さにたまらず、隣の駐輪場にテントを張って寝た。
彼は西へ私は東へ。互いの無事を祈って出発する。
明日は天気が崩れるらしいので、
今日は頑張って倉敷辺りまで走っておきたい。
カキの養殖棚が浮かぶ三津湾を眺めながら、朝日に向かって走る。
竹原市に入って休憩。
ここは古い町並みが保存されている、いわゆる小京都。
学生時代に訪れたことがあったので、再訪を楽しみにしていたが、
なにせ20年も前のことである、もう記憶に残っている町ではなかった。
瀬戸内らしい穏やかな風景が広がる海岸線を走る。
「おや?」
三原市への峠を越えると前方に見覚えのある橋が見えてきた。
「おお!あれは多々羅大橋ではないか」
尾道に向かっているのだから当然とはいえ、
「そうか、もうしまなみ海道か・・・」
予期してなかった光景に感動する。
尾道はラーメンを食べることなく素通りして、福山市へ向かう。
これより先、しばらく内陸部を我慢の走行が続き、ややお疲れモード。
前方を行く元気な走りの女子校生にも離されてゆく始末。
「情けないのお〜」
どうにか倉敷市街にたどり着き、運動公園の東屋で日没を待つ。
(走行距離129km)
24■3月17日(土)雨
夜明け前から雨がパタパタとテントを打ち始めた。
朝から雨だと動き出すのも億劫になる。
ま、今日は岡山に移動するだけだから、急ぐこともない。
倉敷美観地区にフラッと寄って、
ちんたら走って岡山市街に10時到着。
イトーヨーカドーに入って、BHを予約して、
チェックインの時間まで暇潰しする。
(走行距離25km)
25■3月18日(日)晴れ
夕べは爆睡。やはりベッドはいい。
グズグズしていると、ホテルを出たのは9時半をまわっていた。
体が怠けてしまって、なかなかエンジンがかからない。
「気合いが入らんなあ」
とっくに昼を過ぎているというのに、道草ばかり食って全然前に進まない。
備前市から国道2号線を離れて日生に進む。
JR日生駅のすぐ前は、小豆島へのフェリー乗り場になっていて、
下船した人がドドッと乗り換えに押し寄せてくる。
こじんまりした港だが、なかなか活気があっていい。
岡山県から兵庫県へ。
峠を越えて赤穂市に入り、ツーリングマップルも関西版に替わる。
今日は相生市まで行きたかったが、
雰囲気がいいこの町で寝床を探すことにした。
海浜公園なる所に行ってみたが気に入らず、5kmの無駄足。
結局、町を出てひとつ先の駅まで行くことにする。
「おや?」
北海道でお馴染みのセイコーマートがあるではないか。
鳥取にあるのは知っていたが、こんな所にもあるとは。
JR坂越駅で終電を待つが、
列車にかなりの遅れが出たようで人の出入りが慌ただしい。
落ち着かないし、睡魔が襲ってきたので、
千種川の河川敷に移動してテントを張る。
(走行距離69km)
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